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『食』×『IT』で北海道に新たなエッセンスを20180301

この記事は2018年3月1日に公開した情報です。

『食』×『IT』で北海道に新たなエッセンスを

時にはWebコンテンツの分析・解析・改善を行うWebマーケター、時にはカフェで料理教室を行う先生、時には地方創生事業を行うプランナー・・・とさまざまな顔を持ち、2017年4月に「株式会社TREASURE IN STOMACH」という会社を札幌で立ち上げた、若き起業家 小笠愛里沙さん。札幌で主に食関連事業とプロモーション関連事業を行っています。このちょっと変わった会社名が気になるところですが・・・お話をうかがうと、このお名前にはこれまでの生き方・考え方が色濃くあらわされたものだと分かりました。まずは会社を立ち上げる前、大学生の頃からのお話を聞かせていただきました。

『食』との出会い

「数字をいじるのが好きだった」という小笠さん、高校生までを生まれ育った札幌で過ごし、大学で物理を勉強したいという理由から東京理科大学へ進学します。大学生活では、物理の研究に精を出すかたわら、個人経営のケーキ屋さんで3年間アルバイトをしていました。そのケーキ屋さんで調理のお仕事を手伝っているうちに、『食』というジャンルにのめり込んでいったといいます。実はこのアルバイトとの出会いが、後の人生を大きく左右することになります。

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この『食』への探究心はアルバイトだけには留まりません。研究室で地道な作業などちょっと疲れた時などには、この料理の腕前を振るって同級生や後輩達を喜ばせていたんだとか。時には研修室のビーカーで珈琲を振る舞ったこともあるらしく、なんとも研究者っぽいエピソードです。

そして時は流れ、卒業も迫ってきた頃、周りは研究分野での大学院進学が多いなか、小笠さんは「物理の世界では天才が一人いれば大丈夫。自分はもっと別の世界で生きたい」と思い立ち、卒業後の進路は「就職」を選択します。

『IT』との出会い

「研究を続けていた反動もあり、人とコミュニケーションを取りながら、新しいモノを世に生み出す仕事がしたい」そんな想いから、Webマーケティングやインターネット広告を得意とする東京の広告代理店に就職します。お仕事の内容は企画営業。「とにかくいろんな業界をつまみ食いのように見ることができました(笑)」と、インターネット広告の提案や分析などを主に扱い、さまざまな業界に触れたといいます。

就職して2年が経ったころ、ご家庭の事情で急遽、地元札幌に戻ることになります。札幌に戻って半年間はケーキ屋さんと鞄作りのアルバイト、また広告代理店での経験を活かして、Webマーケティングの仕事をフリーランスで行いました。そうしているうちに、今度は札幌のWebデザイン会社に就職を決めます。「東京での広告代理店の経験はさまざまな業界に触れ、とても良い経験だったけど、最初にやりたかった『新しいモノを世に生み出す仕事』とは少し違いました。今度の仕事は『生み出す』可能性を感じて決めました」と、新しいフィールドへと向かいます。

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Webデザイン会社では、クライアントのWebサイトがどれだけ見られているかといった分析・解析を行ったり、新しい施策を提案したりと、ここでも幅広いお仕事をされます。Webデザイン会社でのお仕事、と聞くとWebサイト自体の見た目や作りなどをデザインする仕事と思いお話をうかがっていたのですが、小笠さんはこういいます、「実はデザイナーにはなろうとは全然思っていなくて、ITやWebを活用した企画自体のデザインをしたかったんです」。この『IT』と先に出てきた『食』というキーワード、この2つの想いが強くつのり、更なるステップへと進んでいきます。

起業の決意。そしていきなりのテレアポ!?

Webデザイン会社を1年ほどで退職。その後の半年間は今後のプランやビジョンなどをノートにひたすら書き出したりするなど、これからのステップへ向けた充電期間として過ごします。そして「北海道の素晴らしい『食』にもっと付加価値を持たせたものづくりをしたい」という想いから、「自立して、会社をつくりたい」と会社を設立。しかし、ただ会社をつくったところで仕事が舞い込んでくるわけではないので、そこで起こしたアクションがなんと北海道庁へのテレアポでした。「知り合いもいませんし、今考えると本当に奇跡的ですね(笑)」と、笑顔の小笠さん。

ogasa4.jpg「ものづくり」というビジョンの実現をさせるための第一歩がテレアポだったのです。

アポイントに成功した後、北海道の現状と課題を分析し、社会貢献度の高い改善施策を提案したいと「北海道の食のブランディング」という企画書をたずさえ、北海道庁へ単身でプレゼンへと乗り込みます。その企画書のテーマは、北海道への想いが詰まった「北海道の『食』のリブランディング」。少し具体的に例を挙げますと、大根の出荷において、少し傷んでしまっているであったり、少し熟し過ぎたといった廃棄してしまうもの、実はこの大根にも一つプラスαの要素を加え情報発信することで、全く違った価値が生まれるといったものだったといいます。

ogasa10.jpg「今までそんな電話はかかってきたことはないですよ(笑)。しかもプレゼンでは淡々とスゴいことを話して・・・北海道にはなかなかいない人材だなと思いましたね」と振り返る、当時、北海道庁へのプレゼンに同席した前田さん

このプレゼンがみごと実を結び、北海道庁とのお仕事がスタートします。「株式会社TREASURE IN STOMACH」いよいよ本格業務始動です。

動き出した北海道の仕事

「一言でいうと、『食』と『IT』の会社。『食』だけじゃダメ、『IT』だけじゃダメ。どっちもないとTREASURE IN STOMACHじゃない」。『食』、『IT』どちらに対しても強い想いが感じられます。会社を立ち上げることは大変だったのでは?と聞いてみたところ、「私はフリーランスの仕事をしていたこともあるので、この起業は自分を律するための社会的責任を生ませるためのようなもの。だから、大変でいいんです。いや、でも実はそんなに大変だとは思っていないんですけどね(笑)」と笑顔で答える姿が印象的でした。

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かくして進み出したご自身の会社。北海道庁が運営するSNSの運用や「ふるさとワーキングホリデー」という移住イベントのポスター作り、最近では「北海道新幹線つながるNAVI」という北海道新幹線のPRに関する企画・PR施策・SNS運用にも携わられています。この「北海道新幹線つながるNAVI」のSNS運用ではまさに小笠さんらしい切り口で、新幹線が通るエリアのご当地グルメを国内外の旅行者にも伝わりやすいようにと、Instagramやインフルエンサーを活用して運営していらっしゃいます。

ogasa6.jpgInstagram用の写真撮影のため、実際に自ら足を運んで撮影されています

ご自身のベースとおっしゃる『食』の面でも活躍は止まりません。
株式会社サッポロドラッグストアーが運営している道産食品・雑貨のセレクトショップである「北海道くらし百貨店」さんからPRについての相談を受け、道産食材を使用したレシピ監修を行っています。

ogasa12.jpg北海道森町、駒ケ岳山麓で有機栽培されたかぼちゃのペーストを使用した簡単でヘルシーなレシピを提供

他にも、東京にあるベースフード株式会社が製造・販売している「完全栄養パスタ BASE PASTA」のPRの一環として、道産食材とコラボしたレシピ提供もされています。

ogasa17.JPG10種類以上の栄養豊富な食材が練り込まれた、世界初の完全栄養 BASE PASTA。紫蘇とシーチキンのあっさりレシピです。

また、Instagramに趣味でお菓子をアップしていたところ、とあるホテルのシェフの方から「料理と栄養の知識をぜひ若い人にも伝えて欲しい」と連絡があり、料理学校で講師をした経験もあるといいます。

これからの会社、そして自分

こんなにたくさんのお仕事されていたらなかなかお休みになれないのでは?と思ったのですが、「今はだいたい週2日は休みですよ。私はONとOFFの差が激しくて・・・休みの日は結構寝てますね(笑)。東京での仕事も経験している私としては北海道はとっても優しい土地柄。あんまり甘えすぎないようにしなくちゃ(笑)」とおっしゃいます。

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これからのビジョンついては「もう少し料理をしたいなと思っています。自社コンテンツを持って、北海道の食材を使ったおもしろいお菓子などの商品を作り出すこともしたいなと。そうやって生み出した北海道産を道外の人へ発信したいというのもあります」と、北海道への想いを更なる表現方法で考えられています。

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一見、直接的な繋がりがあまりないようにも思えた『食』×『IT』。
アルバイトの経験をきっかけにご自身のベースにまで発展した『食』の探求、就職でWebに関するお仕事に関わったことから得た『IT』のナレッジ。そして、これらが掛け合わされて生まれた「株式会社TREASURE IN STOMACH」。しっかりと繋がりました。

最後に、『食』×『IT』を組み合わせ、さらには両立させることができる訳を聞いてみました。
「完成形(目標)を想像して、それに必要な情報や材料を一つずつ組み立て、効率的な段取りを組んで行く・・・。企画やプロモーションの仕事をしている時も、料理をしている時も、同じ気分なんです。『食』と『IT』考え方は全部一緒です」。

北海道に新たなエッセンスを加え、今までにない価値が生む。これからもそんな小笠さんの活躍が楽しみです。

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株式会社TREASURE IN STOMACH
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『食』×『IT』で北海道に新たなエッセンスを

この記事は2018年2月1日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。