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岩見沢で100年の歴史を守る米農家20180111

この記事は2018年1月11日に公開した情報です。

岩見沢で100年の歴史を守る米農家

岩見沢の農地を守る4代目

「倉田さんのところのお米が美味しくて、もう他では買えないよ」


そんな声が北海道岩見沢市にある倉田農場に届きます。

夏になると野外音楽フェスティバル「JOIN ALIVE(ジョインアライブ)」の地としても有名になった岩見沢。そこから車で5分もかからない志文町というところに、ゆめぴりか、ななつぼし、あやひめ、おぼろづきといった北海道岩見沢米を生産販売している家族経営の農業法人「倉田農場」があります。

札幌から高速道路を走ること1時間。岩見沢の看板が見えた頃から雪が降り始めてきました。

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そこは綺麗な雪に身をまとった倉田農場。
ピンポンとチャイムを鳴らすと、奥様である倉田真奈美さんが温たかなご自宅に迎え入れてくださいました。

kurta_farm13.jpg可愛らしい飾り付けも

改めてご紹介します、こちらが倉田真二さん。倉田農場の4代目です。

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なんと、この農地の歴史は100年も前から続いています。真二さんの曾祖父がこの地に入植し、代々と受け継がれ今日まで守られてきました。

真二さんにとって物心ついた頃から、いつも隣に「農業」が存在していたこともあり「自分も農家になるんだろうなぁ」という漠然とした思いを抱え、小さな頃から農業のお手伝いをしていたそうです。

kurata_farm3.jpgトラクターの運転席に乗せてもらうのが嬉しくて仕方なかったという真二さん

そして、高校卒業と同時に本格的に農業の道、倉田農場を継ぐべく力を入れ始めました。

お客様はほぼ日本全国網羅!

倉田農場で生産されているお米はJAに卸している他、平成16年から農場横での直営販売を始め、同時にネット販売もスタート。


kurata_farm4.jpg直営販売所。取材中も買うために訪れる方がいらっしゃいました

ネット販売となると、全国各地から注文・問い合わせが入ります。一番遠いところで沖縄から注文が入ることも。今では日本中、ほぼ全国から受注の経験があります。

多くの人に届けることが出来るネット販売に加え、直営販売もお客様からの感想がダイレクトに聞けるという良さがあり、「美味しかったからまた買いに来ました」と直接買いに来るリピーターも増えていると言います。

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しかし、「今回は美味しくなかったね」なんてシビアな言葉をいただいた経験も過去にはあったそうで・・・

「しゅんと気は落ち込みますが、どこかに問題がある証拠。そういった声も多くの人に認められるものをつくるための、頑張る糧となります」と真二さんは話します。
これもどんどん進化し、守られ続けてきた倉田農場のお米のうまみの秘密の1つ。

そんな自慢のお米を目の前で食べてもらうことができる「北海道のごはん展」というイベントが2017年10月、札幌で開催されていたのはご存知でしょうか。北海道内6つの米農家が出展したこのイベント。倉田さんご夫婦も出展していました。

このイベントでは、その場で自分たちが生産したお米を炊きたての状態で食べてもらい、そして食べ比べが出来るというもの。
自分たちがつくったお米を消費者が食べている姿を直接見るのは今回が初めてだったそうです。

「食べた時の、あの自然と頬が緩む表情をこの目で直接見ることが出来て、こちらもとても幸せな気持ちになりました。そして、かなり若い方々の来場も多く、それも嬉しかったですね」。

美味しいものを食べると自然と表情が綻ぶ、それは年齢問わず誰もが味わえる素敵な瞬間です。

雪に覆われても、農家は冬眠していません

さて、取材日もそうでしたが北海道の冬は雪が降り積もり、農地も雪に埋まってしまいます。冬の農家って何をしているの?休業状態?疑問をぶつけてみました。


kurata_farm7.jpgこの日一気に降り積もったため、雪かきをする真二さん

「案外冬もやることがあるんですよ。例えば、夏の繁忙期シーズンに向けて機械整備をしたり、こういう時期だからこそ団体や組合の集まりなどもあって、報告書類を作成したり・・・デスクワークもしています」。

kurta_farm15.jpg3つのモニターを前に真奈美さんとお仕事

他にも、勉強会に出席し、そこで学んだことを仲間同士で情報交換しているそうです。

「農家は収益をあげるまでが大変ですからね。情報交換も大事です。特に、今後農家になりたい!と思う人も、収益があがるようにある程度量が採れるように考え、勝負した方がいいですよ」と農家を夢見る人へのアドバイスもいただきました。

「農業女子」も活躍している現在

奥様の真奈美さんも、倉田農場を支える1人。

「農業女子プロジェクト」というものに参加したり、「お米アドバイザー」という資格を取得したりと、勢力的に活動しています。

農業女子プロジェクト?お米アドバイザー?
なんだか気になるワードがたくさん出てきましたよ。

kurata_farm9.jpg真奈美さんからいただいた名刺の裏には数々の資格の名前が並びます

「農業女子プロジェクトは、女性農業者が集まり、日々得た知識を活かして新たな商品やサービスなどを発信していくためのプロジェクトのことです。女性ならではの視点やアイディアが集まり、それを発信しています」。

農業=男性、というイメージをお持ちの方も多いかもしれませんが、今や女性も活躍している時代。このプロジェクトは全国に広がり、北海道地区メンバーは30名ほどいるそうです。

また、お米アドバイザーを始めとするお米に関するスペシャリストの証を取得している真奈美さん。仕事と家事の合間に勉強し、合格が分かった時の喜びは、やはり大きかったようです。

kurata_farm10.jpg「子どもに、お母さんも勉強するんだよ!という姿を見せることが出来て良かったです」と真奈美さん

「この資格を取ったことで、お客様にごはんの炊き方や水加減などのアドバイスを伝えることが出来るようになりました。今では得た知識で、お客様の質問にも自信を持って答えられます」とニコリ。

「そこそこの田舎」岩見沢

そんなお二人に、岩見沢という地での生活についても聞いてみました。


札幌からも距離が近いこの場所。確かに農地がたくさんある風景が広がってはいますが、「田舎といっても札幌まで高速道路を利用すれば札幌中心部まで50分位で着いてしまう、そういった都会にも隣接している『そこそこの田舎』なんです」と話す真二さん。

kurta_farm11.JPG倉田農場、夏の景色です。

生活には全く不便がなさそうな岩見沢。

ただ、唯一困るのが・・・
「雪の多さですね」と即答です。

kurata_farm14.jpg取材中、お米を買いに来たお客様のもとに真二さんがお米を運びます。ご覧いただけるように、足が雪に埋まっています。

「でも逆に四季もはっきりしているのが北海道の魅力ですよね。冬は雪が多いし寒いけど、夏は適度な気温。夏が暑すぎる関東と逆なだけです」。

真奈美さんも岩見沢の良さについて言葉を継ぎます。
「岩見沢は交通の便が良いので、朝イチの飛行機に乗れば10時や11時には東京都心に着いちゃう」。

また、岩見沢は「児童見守りシステム」という制度を導入。お子さんが学校に到着すると登録されている親御さん宛てにメールが届きます。そういった安心面もあり、子育てはしやすく、「そういうところは最先端のまちなんです」と笑う真奈美さん。

子どもたちに継がせようと思う?

現在高校2年生と、中学2年生のお子さんを持つ倉田さんご夫婦。気になる跡継ぎ問題、聞いてみました。


「継がせようと思っているわけではないです・・・けど、継いでくれたら嬉しいなっていうところが正直な思いです」とお二人。

ずっと先代から守ってきた農地。100年以上続いているこの場所は、やはりこれからも存続していきたいと思うもの。

「せっかくの兄弟、2人で力を合わせてやっていってほしいな〜なんて思いますけどね」と笑うお二人。

実は真二さんだけではなく、真奈美さんも栗山町の農家の家に生まれています。二人とも農家の家出身だからこそ、気持ちが分かる部分もあるのかもしれません。

「ちなみに私は、農家にだけは絶対に嫁がないぞ!と強く思っていたんです(笑)」と、ビックリ発言が飛び出した真奈美さん。

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農家の家に生まれ、小さい頃から家のお手伝いをし、その後JAに就職した真奈美さんは、ある日農業の傍ら酒屋のアルバイトをしていた真二さんと出会います。

「この人は農家じゃない、酒屋だ」と思った真奈美さんでしたが実は真二さんは農家だったというオチ。

そんな真奈美さんですが、真二さんのもとへ嫁ぎ、倉田農場の一員として自分でもお米を売るようになり、長男の手を引きながら次男を背負って配達に行くという経験の中で次第に気持ちも変わっていき・・・。

「ずっと頑張って守ってきたものだからこそ、息子たちに引き継ぎたいという思いが自然と生まれてきました」と話します。

一度は農業から離れたいと考えていた真奈美さんですが、
「自分の努力次第で収入は変わる。これって、農業の面白いところだと思うんです」と新たな魅力も再発見したそう。

真二さんも言葉を続けます。
「農業って夏は忙しいけど、冬はやり方次第で趣味に活かせる。冬の間はウィンタースポーツを楽しむ人も結構いますよね。子どもたちには、農業も案外良いところあるよって、納得した上でやってほしいです。農業は環境整備も大変だから自分がいる間に、ある程度の基盤固めはしておいてあげたいって思っています」。

100年以上守ってきた歴史。そして、どんどん増えていく倉田農場ファン。今は真二さん、真奈美さんご夫婦が先代からの想いを受け継ぎ、時代に合わせて多くの人に「北海道岩見沢で生産した倉田農場のお米」を届けています。

本格的な冬、雪に身を隠した倉田農場の農地は、雪がとけた頃、辺り一面金色に光るその日に向けて、今日も岩見沢の雪を堪能しているようです。

株式会社倉田農場 倉田真二さん・真奈美さんご夫妻
株式会社倉田農場 倉田真二さん・真奈美さんご夫妻
住所

北海道岩見沢市志文町766番地

電話

0126-23-0840

URL

http://kuratan.com

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岩見沢で100年の歴史を守る米農家

この記事は2017年11月21日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。