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上砂川町

会社も、家族も、まちも一緒に育っていく「かみすなライフ」20180104

この記事は2018年1月4日に公開した情報です。

会社も、家族も、まちも一緒に育っていく「かみすなライフ」

今、移住に熱いまち上砂川町

国道12号線が通り、ハイウェイオアシスやスイートロードで有名な北海道砂川市は道民の方なら恐らく聞いたことがあるという方もいるかと思いますが、『上砂川町』はご存知でしょうか?


かつて炭鉱で栄えたこのまちは、砂川市のすぐ隣。夏は暑すぎず、冬は山に囲まれているため比較的雪の量も多くない住みやすいまち。しかし、あまり認知度が高い町ではないかもしれません。そんな道内一小さなまち、上砂川町が「地域おこし協力隊」を軸に少しずつ「移住に熱いまち」となりつつあるのです。

今回ご紹介する佐藤亮佑さんも、上砂川町の地域おこし協力隊のひとり。

 satou_kurashi2.jpg笑顔で取材陣を迎え入れてくれた佐藤さん

佐藤さんが協力隊に着任したのは2015年7月。

札幌出身の佐藤さんは、就職で名古屋へ渡り、WEBの営業・ディレクターとして勤めていました。しかし目まぐるしい都会の生活と忙しい日々の中でだんだん「地元、北海道に帰りたい」という気持ちと「独立して自分の会社を立ち上げたい」という気持ちが強くなっていきます。

そんな中、たまたま見ていたテレビ番組で「地域おこし協力隊」という「町おこしをしながら定住を目指す」仕事と出会いました。

その後、佐藤さんのお母様の実家がある砂川市のすぐ隣町、上砂川町の協力隊に応募。採用が決まると、同僚であり、お付き合いをしていた志織さんを残し、佐藤さんはまずは単身上砂川町での生活を始めます。

都会との距離感が「ちょうどいい」町

「起業して会社を作ります!」
と採用当初から宣言していた佐藤さんは、着任してすぐに開業届を提出し、個人事業主としてWEB制作の事業「にこいち」を始めます。


satou_kurashi9.jpgにこいちのユニークさ溢れたパンフレットの1ページ

「にこいち」という屋号には「お客様とふたりでひとつ」という想いがこめられています。

お客様に寄り添って、本気で一緒に良いものを作っていきたいという気持ちで始めたWEB制作の事業ですが、本州で仕事をしていた佐藤さんにとって北海道の市場にはもちろん伝手などはありません。

そこで、札幌・旭川を中心に飛込みでの営業活動を始めました。

上砂川町なのに札幌や旭川へ?と思われるかもしれませんが、高速道路を利用すれば札幌や旭川までも1時間〜1時間半ほどで着いてしまいます。

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また、「北海道一小さなまち」とも言われる上砂川町にはコンビニはありますが、スーパーはありません。

しかし車で10分も行けば、お隣砂川市にはいくつもスーパーがあり、ホームセンターやドラッグストアもあるため、車さえあれば生活に不便することはまずありません。

『上砂川町』という単体で移住先として考えるのであれば不便さは否めませんが、生活圏への距離で考えると移住先候補として外さなくても良いまち。そんな便利さも踏まえ、上砂川町にはゆったりとした田舎の空気が流れ、憧れの「田舎暮らし」を体験することが出来るまちです。

こうして上砂川町と都市圏を行ったり来たりしながら、距離に阻まれることなく札幌での仕事を増やしていった佐藤さん。

2017年4月20日には「にこいち」は念願の法人化、株式会社となりました。

上砂川町で28年ぶりの結婚式、そして子育て

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佐藤さんが代表を務める「にこいち」ですが、もう一人大切なメンバーがいます。

それが彼女の志織さんです。
佐藤さんが上砂川町の協力隊となった2015年の冬には、志織さんも会社を辞め上砂川町を訪れました。

志織さんは今まで北海道に縁もゆかりもなく、初めて訪れる上砂川町の暮らしにとてもわくわくしている様子だったそう。志織さんの感想は「冬の景色がとってもきれい!」。雪がすべてを隠すこの季節を好きになってくれたようです。

そして佐藤さん同様WEBの仕事をしていた志織さんは、名古屋で残してきた仕事を片付け、フリーランスとしての仕事をこなしながら佐藤さんと『夫婦として』二人三脚で歩み始めました。

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地域おこし協力隊としてのまちおこしの仕事、そして「にこいち」での札幌を中心としたWEBの仕事と、忙しい日々の中で嬉しい出来事がありました。

それが長女、葵ちゃんの誕生です。

2017年の3月に砂川市立病院で生まれた葵ちゃんは、上砂川町でその年生まれた8人の中のひとり。

これだけの人数ですから、まちにとっては非常に嬉しいニュースであり、佐藤さん夫婦も「このまちは本当に色々な支援がありますね!」と言う通り、育児用品購入の支援金があったり、子育てをするお母さん同士も交流できる会「おひさまルーム」が開催されていたりと、本当に様々な支援が用意されています。

当然待機児童も無く、子育て世代にとってはこの支援の有無も移住を考えるきっかけになりそうです。また、子育て以外に町外からの定住にも様々な支援があるので、北海道への移住を考える方は見逃せません。

新しい家族が増えた佐藤さんご夫婦は、後回しとなっていた結婚式をこの上砂川町で挙げることにしました。きっかけは、二人とも大好きなとてもキレイな景色の広がる「奥沢キャンプ場」の魅力をもっとたくさんの人に知ってもらいたい!という気持ちでした。

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この奥沢キャンプ場は上砂川町の温泉施設「パンケの湯」からもすぐ近く、美しい日本庭園もある施設。

流行しているグランピング(※自然に囲まれたロケーションの中に、贅沢で快適な宿泊設備を用意して野営すること)をするのにも、きっと良いロケーションだという思いから、「ここでガーデンウェディングを挙げても、きっととっても素敵に違いない!」と考えたのです。

しかも、二人の式の様子をいろんな人に見てもらうことによって、もしかしたら他にも同じようにガーデンウェディングを挙げたいという人が出てくるかもしれない・・・そうすると上砂川町にもこの奥沢キャンプ場を「こんな風にも使えるんだ!」と思ってもらえるきっかけにもなる、と閃きました。

satou_kurashi5.jpg想いを込めた、結婚式のしおりも作成

まちにとってはなんと、28年ぶりの結婚式。

そのニュースは地方紙「プレス空知」の一面に大きく掲載されるほどのビッグニュースでした。

kamisuna_satou9.jpg大々的に新聞で取り上げられています!

当日は佐藤さんご夫婦のご家族はもちろん、お友達や上砂川町でお世話になった色々な方も集まり、とても楽しい二人らしい式を挙げることが出来ました。

残念ながら雨によって途中から屋内に移動となってしまったそうですが、それでも参加した方からの「とっても良かった!」というたくさんの声を受けて、奥沢キャンプ場の新しい使い方に目を向けてもらえるようになりました。

これからの3人の「かみすなライフ」

こうして3年前までは上砂川町に縁もゆかりもなかった一組の夫婦が、結婚し、子育てをし、会社を立ち上げるまでに至った上砂川町。

その魅力を佐藤さんに聞いてみると、なんと「なにもなかったところ」だと言います。

何にもないから、何でもできる。何にもないから、0からスタートできる。そして、唯一の存在になれる。

そんなところが北海道一小さなまち、上砂川町の魅力に映ったそうです。

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しかし、その何もなかった上砂川町には今や地域おこし協力隊のメンバーが数多く着任し、その働きによって少しずつ様々なことが動きはじめました。

2017年になってからは特に、地域おこし協力隊が主導となって交流カフェの運営が始まったり、また移住促進のためのシェアハウスができたりと進化を遂げ、佐藤さんはシェアハウスの管理人も委嘱されています。

今後上砂川町は、ますます移住を考える人たちにとって「ちょっと面白いまち」になっていくに違いありません。

satou_kurashi6.jpg佐藤さんが管理人を勤めるシェアハウスの前にて

一方、佐藤さん自身は今後この上砂川町でどう過ごしていきたいですか?と尋ねると「まだまだ先のことは全然想像できませんね」と話します。

2018年には佐藤さんの地域おこし協力隊としての任期も終了し、にこいちの仕事もますます忙しくなることでしょう。もしかしたら仕事の都合やお子さんの進学等で拠点が移ることもあるかもしれません。

しかし佐藤さんはこう言います。

「とにかく、この北海道で起業したいと思っていた僕にチャンスをくれた上砂川町に恩返しをしたいと思っています。もし自分たちが札幌などで働くことが多くなっても『にこいち』は上砂川町を離れません。そして会社を大きくして、今まで就職でまちの外に出ざるを得なかった人たちのためにも雇用を少しでも増やすお手伝いを出来たらと思っていますね」

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「にこいち」も娘さんの葵ちゃんも、まだまだ生まれたばかり。
きっとどちらもこの変わり続ける上砂川町で、暖かい人たちに見守られながらすくすくと育っていくに違いありません。

株式会社にこいち・上砂川町地域おこし協力隊 佐藤亮佑さん
住所

北海道空知郡上砂川町下鶉南2条2丁目1-4

電話

011-838-8087(株式会社にこいちの電話番号です)

URL

http://nicoichi.jp


会社も、家族も、まちも一緒に育っていく「かみすなライフ」

この記事は2017年10月31日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。