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北海道で暮らす人・暮らし方
苫前町

タフに、豊かに、人間らしく生きられるまち。20171113

タフに、豊かに、人間らしく生きられるまち。

一体何をやっている人?苫前の「ニシさん」。

北海道の北西部。留萌管内中部に位置する苫前町は、大きく二つのエリアに分けられます。一つは漁業が盛んな苫前エリア。もう一つは豊かな自然を活かした農業地帯が広がる古丹別エリアです。苫前エリアは夕日が美しいオロロンライン沿いにあり、石狩方面と道北をつなぐ幹線道路が通っているため、多くの方がこのまちを「海の町」とイメージしがち。けれど、名産のメロンが大手コンビニのソフトクリームに使われるなど、実は農業も産業を支える大切な柱です。人口は3,000人ほどの小さなまちですが、取材陣は行く先々で「ニシさん」なる人物の名前を耳にしました。ところが、ある人は「農業を手伝ってる」、またある人は「ホタテの養殖をやってるんだっけな」、さらに「雪かきボランティアは助かった」など、人物像はバラバラ。一体何をやっている人?あまりに気になり、「ニシさん」のご家族が経営している古丹別エリアの薬局を訪ねました。

苫前の危機的状況に早いうちから気がついて。

苫前町役場からクルマで約10分。古丹別エリアの小さなマチナカに「くすりの新光堂」が見えてきました。薬局とはいいながら、文房具や食品、さらにOA機器なども取り扱っているようで、よろず屋と表現したほうが正しそうな雰囲気です。

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「こんにちは!ようこそいらっしゃいました。ここはもともと祖母が商店として始め、近所に薬屋がないということから父の代で薬剤師を雇って薬局になったんです。ご覧の通り古丹別には商店がありませんからウチが辞めるわけにはいかず、お客様のご要望に応えていろいろと売るようにしています」。細身で引き締まった体型に、日焼けした肌。この人こそ、噂の「ニシさん」こと西大志さんです。

「苫前は昔から社会教育に力を入れているんです。子どもたちに農業や漁業、キャンプといった体験をさせ、地元の仕事や豊かな自然はかけがえのない宝物だと伝えています。最近もドローンを飛ばしたりするなどハイテクな農作業を見せたり、漁師が荒々しく作業する姿を間近で目にすることで、子どもたちから『カッコイイ』という声があがりました。僕もそんな教育を受けて育ってきたので、小学生のころから苫前のために何かしたいって思いが強かったんです」

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西さんは地元に戻ってくることを前提に滝川西高校に進み、家業の薬局に役立つ登録販売者の資格を取るために東京の専門学校へ。ところが、いざ苫前に帰ってみると、年々人口が減っていき、それに伴ってお店の売上も右肩下がり。周りの商店は次々と撤退を余儀なくされ、ほどなくして危機感を覚えたといいます。

「コレは早めに手を打たないとマズい、と。お店がなくなってしまってはせっかく働いて稼いでも、楽しみがなくなっちゃうんじゃないかって。そんなまちで僕の子どもたちを育て、しかも地元に残って生きていけと本心からいえるのか...そんな自問自答を繰り返しました。で、若い農家や漁師と集まっては苫前の未来について話し合うようになったんです」

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人口減少は嘆かない。大切なのは地域が一丸になること。

西さんは28歳のころ、若者が立ち上がらずして苫前は盛り上がらないと町議会議員に立候補。見事に当選を果たして、12年間、町政に携わりました。議会の場で繰り返し伝えてきたのは、人口減少の流れはそう簡単に止められないため、今いる町民が奮起しなければ先が開けないということ。地域の人々が一丸となって暮らしやすいまちづくりを進め、若者が農業や漁業で稼げる基盤をつくることが先決だと声をあげ続けました。けれど、結局はビジョンを共有することすらままならなかったと苦笑します。

「40歳のころ、居ても立ってもいられずに町長選に立候補しました。苫前を支えているのは間違いなく一次産業ですから、現場を知るためにも農家と一緒に畑で作業したり、漁師の船に乗せてもらったり。まちの素晴らしさを再発見するとともに、町民の皆さんに苫前の未来を考えてほしいと一石を投じる思いでした。ただ、結果からいうと、僕はまだ若輩者ですし、人生経験も足りず、落選してしまいましたが...」

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西さんは、それでもめげないバイタリティの持ち主。結果は残念でしたが、行政とは違ったまちづくりの受け皿をつくろうと「苫前町まちづくり企画」を立ち上げました。これまでに、北海道が進めている「~田舎暮らし『しごと』創造支援事業~」の受託や都会から雪かきボランティアを呼び込む「雪はねボランティアツアー」など、さまざまな取り組みにチャレンジしています。

ストイックに働き、稼ぎ、助け合う風土。

ところで、まちの人々は西さんのことを「農業を手伝っている人」、「船に乗っている人」など、さまざまな捉え方をしていました。実際のところは、どういう暮らしぶりなのでしょうか。

「ケガの功名というわけではないんですが、町長選の活動で知り合った漁業関係の漁師仲間が『お前はまず稼いだほうが良い』と助言してくれてホタテの養殖を手伝わせてくれたり、農家から選果場の作業を教えてもらったり。重機が扱えれば冬場は除雪の仕事もありますから、苫前には一年を通して働く場があるんですよね。おかげで何とか暮らせています。流行の多業というほどカッコイイものじゃないんだけど(笑)」

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そんな忙しい日々の合間を縫って、西さんは若手の農家や漁師と「未来ビジョンミーティング」なる会議を重ね、若者や子どもたちへ地元の魅力を伝える事業に取り組んでいます。寝る間も惜しいとまちづくりのアイデアを練ることにも熱心で、「例えば、夏休みに都会から家族を受け入れて農業や漁業の体験をしてもらう。そんなワーキングホリデー的なことができればお互いにメリットがありますよね」と案の一つを披露してくれました。

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「このまちは農家も漁師もストイックに働くので、一次産業の担い手は稼ぎが良いほうなんです。しかも汗を流して手にしたお金は、札幌や近隣で消費するのではなく町内の居酒屋で使うような人ばっかり。町民性なのでしょうか、みんな人間味があってお互いに助け合う人柄なんです。現に古丹別エリアは1500人くらいの規模ですが、人口に対して飲食店の数が多いほうだと思います。苫前で暮らし働くにはタフさが必要だけど、ほら、誰もが豊かで幸せそうに見えませんか?」

確かに、西さんの瞳には苦労を上回る喜びや暮らしの楽しさが宿っています。このまちには苫前・古丹別エリアにそれぞれ小中学校や保育所、病院もあり、子育て世代にも暮らしやすい環境です。農業や漁業に力一杯打ち込みながら、人として豊かな日々を送りたい方は、ぜひまちへ、そして西さんのもとへ足を運んでみてください。きっと、すてきなおせっかいを焼いてくれますよ。

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苫前町まちづくり企画
苫前町まちづくり企画
住所

北海道苫前郡苫前町字古丹別192-1

電話

0164-65-4524

URL

https://www.facebook.com/daishi.nishi?fref=hovercard&hc_location=chat

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タフに、豊かに、人間らしく生きられるまち。

この記事は2017年8月23日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。