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北海道で暮らす人・暮らし方
美深町

廃校も活用し「チョウザメ」を産業に!元地域おこし協力隊の今。20171106

廃校も活用し「チョウザメ」を産業に!元地域おこし協力隊の今。

チョウザメ事業は美深町のトッププロジェクト。

チョウザメといえば、キャビアとなる卵を産む魚。真っ先に思い浮かべる産地はロシアですが、実は北海道でも昭和初期までは天塩川や石狩川に生息し、身や卵は人々の貴重な食糧として扱われていたのだそうです。なかでも美深町はチョウザメととっても縁が深く、まちのトッププロジェクトとして養殖事業を手がけています。その始まりや進展をうかがいに、取材陣は道北へとクルマを走らせました。

35年以上前からチョウザメの養殖に挑戦。

札幌から美深までは約3時間。温泉やオートキャンプ場、カヌーなど、さまざまなアクティビティが楽しめる「びふかアイランド」に到着しました。その一角に「チョウザメ館」なる見学施設を発見!さっそく足を踏み入れると、美深町からチョウザメの養殖事業を託されている株式会社美深振興公社の鈴木渉太さんが笑顔で出迎えてくれました。さっそくですが、美深町とチョウザメの関係を教えてください。

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「1963年に日本とロシアとの友好の印として、チョウザメの稚魚とアユの卵を交換しました。その20年後に寒冷地での飼育実験として美深町の三日月湖に300尾を放流したのが養殖事業のきっかけです。実はキャビアがとれるようになるには8〜10年ほどかかるので、初の採卵に成功したのも1993年のことでした」

なるほど、キャビアづくりは、腰を据えてじっくり取り組まなければ事業化するのは難しい分野なのですね。美深町は1997年に本格的な飼育施設であり、町内外の人々にチョウザメをアピールするための「チョウザメ館」をオープンしました。

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「チョウザメの稚魚は本当にデリケートな魚。水道水をろ過して塩素を抜かなければ、たちまち死んでしまいます。エサに関しても稚魚のころは加水した柔らかいペレットを与え、成長に伴って硬いものに慣れさせているんですよ」

しかもチョウザメは「四季」を感じられないと産卵周期が狂ってしまうとか。スタッフの皆さんはボイラーを使って水温で春夏秋冬を演出しているというから驚きです。
「実はチョウザメって外見からはオスとメスの判別がつかず、一度お腹を開いて生殖腺を見なければなりません。メスはキャビアをとるために印をつけるのですが、なにせ数が多くて大変です」

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相当数のニーズが見込める北海道産のフレッシュキャビア。

長年の試行錯誤が実り、チョウザメの数は今や4000尾に。「チョウザメ館」が手狭になってきたことから、3年ほど前からは廃校となってしまった小学校のプールを新しい水槽として活用しています。さらにごく近い未来には、水力発電所の排水を利用する8ヘクタールもの養殖施設をつくる予定です。そうまでしてチョウザメに力を入れる理由はなんなのでしょうか?

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「輸入モノのキャビアは防腐処理の関係から塩濃度が高く塩辛いのが一般的。でも、国産の場合は塩をそれほど使わなくても良いので、フレッシュで卵のコクが口中に広がるようなおいしさです。北海道ブランドということも手伝って、キャビアの安定生産が可能になったら国内外からのニーズはかなり見込めます。それにオスの身も見逃してはいけない副産物。淡白で臭みがまったくないので、札幌のホテルやレストランからの問い合わせも多いんですよ」

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とはいえ、現状は安定して卵を生産できるところまでは届いておらず、「びふか温泉」で予約した方にしかキャビアを提供できないのだとか。「町民の皆さんにとっては35年以上も目に見える形で成果を示せていないのが正直なところ。だからこそ、キャビアの生産を軌道に乗せ、加工場をつくって雇用を生み出したり、町内の飲食店で『キャビア巻き』のようなご当地グルメを提供して人を呼び込んだり、6次産業化に展開するのが僕らの使命です」。鈴木さんの瞳の奥には、自分たちは町民の期待を背負っているんだという覚悟が揺れていました。

tyozame_bifuka_7.jpg「びふか温泉」で提供しているキャビアやチョウザメ料理。

釣り好きにとってはこれ以上ない環境!?

チョウザメを通じて美深の未来を熱い思いで見つめる鈴木さん。意外なことに、出身は十勝エリアの陸別町で、大学卒業後は札幌のガス会社で働いていました。

「それがどうして美深に?って思いますよね(笑)。僕は子どものころから釣りが趣味で魚が好きなんです。大学の水産学部を卒業した後は水族館の飼育員を目指そうと思いましたが、とにかく人気で狭き門。一度は諦めかけたものの、札幌で出会った妻にチョウザメ事業に携われるという地域おこし協力隊の話を教えてもらったんです」

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鈴木さんは、「そこにチョウザメがいるから」という超シンプルな理由で移住を決意。地域おこし協力隊の任期を終えた後は、美深振興公社で働くことになりました。ところで都会とのギャップは気にならなかったのでしょうか。

「僕はもともと田舎志向なんです。しかも美深はオホーツク海側へも、日本海側へもクルマで1時間程度ですし、町内には天塩川も流れているので、釣り好きにとっては楽園のよう(笑)。まちにはスーパーもあるし、病院もあるし、足りないものは近隣の名寄で手に入るし、不便だと感じたことはありませんね」

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最近、鈴木さんには待望のお子さんが生まれましたが、奥様が里帰り出産を選んだのでまだ一緒には住んでいないそうです。「妻と子どもが戻ってきたら忙しくなるので、今のうちに釣りを楽しんでおこうかな」。冗談めかして笑いますが、どこか寂しそうな表情には早く家族3人で美深の暮らしを楽しみたいという思いが現れているようでした。

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株式会社美深振興公社
株式会社美深振興公社
住所

北海道中川郡美深町字紋穂内139番地

電話

01656-2-2900

URL

http://www.bifukaonsen.com/

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廃校も活用し「チョウザメ」を産業に!元地域おこし協力隊の今。

この記事は2017年8月22日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。