漁業・かずの子・・・ハートのまち。日本海に面した夕陽が自慢の留萌です。
札幌から車で北上すること2時間ちょっと。日本海に面した留萌市に到着します。
留萌と言えば、漁業や水産加工のまち。また、かずの子の生産日本一としても有名です。そしてもう1つ。北海道の地図を見てみると、そのカタチに「おや?」と気づく方もいるかもしれません。実は、よく見ると留萌はハート型になっているのです。
知る人ぞ知る『ハートのまち』留萌。
そんな留萌で今回取材させていただいたのは『NPO法人 留萌観光協会』事務局長の佐藤雄一郎さんです。今から6年前、佐藤さんは地域おこし協力隊として留萌に入り、協力隊を経て留萌に定住した第一号になったのでした。
「初めまして、協力隊として留萌にやって来ました」
佐藤雄一郎さん
士別市出身の佐藤さん。高校まで士別市で過ごしたあと、北見工業大学へ入学し、大学院まで進みました。
卒業後、常呂町のホタテ漁師のもとで漁業を学んでいたある日の出来事です。佐藤さんがたまたまテレビを見ていると「喜茂別町で地域おこし協力隊を募集し、10人が集まった」というニュースを目にしました。
「地域おこし協力隊・・・?」
聞き慣れない言葉ではありましたが、佐藤さんは「へぇ。なんだか面白そうだなぁ」と思ったと言います。そこからの行動力は佐藤さんの魅力の1つ。早速、地域おこし協力隊を募集している地域を検索。その後出会うことになる留萌はもちろん、道東の内陸部の募集を目にしました。なぜその中から、留萌を選んだのでしょうか。
「留萌に決めたのは、そこに海があったから。漁業の仕事をしていたからこそ、海のあるところがいいと思ったんです」。
当時32歳。潔い決断でした。
その後無事留萌の協力隊として採用となり、このまちにやって来た佐藤さんが最初に苦労したのは『友達探し』だったと言います。
「全く知らない土地でしたからね。頼る人もいないし、まずは友達探しからスタートしました」。
初めの頃は協力隊の同期と共に、様々な場所へ顔を出したそうです。町内会や漁港へ行っては「初めまして。留萌の地域おこし協力隊です。何か僕たちに出来ることはありますか?」と、ひたすら挨拶まわり。もちろん声をかけられた町民側も当時まだ聞き慣れない職種に、「はて?」という雰囲気でしたよ、と佐藤さんは笑います。
協力隊として留萌にやって来てすぐ、市役所の中に席が設けられました。
「市役所に席があって、今思えば本当に良かったなと思っています」と佐藤さんは言いました。
おかげで多くの役所の人たちと出会い、どんどん人との繋がりが広がっていったそうです。友達・知人0人からスタートした佐藤さん。しかし今では、「お〜、雄一郎来たのか〜」と声をかけてくれる人たちがたくさん出来ました。
市役所。ここで佐藤さんは多くの人に出会います。
地域おこし協力隊の任期は最長3年。3年後が不確定な未来に不安はなかったのですか?と聞くと、「僕、楽観的なんですよね」と笑います。
「また漁業をやるために親方のところにお世話になるのもありだし、自分で小船でも買って漁をすればいいし、別になんとでもなるっていう気持ちでしたね」なんとも、佐藤さんらしい考えです。
笑顔が素敵な佐藤さん。取材中も笑いが絶えませんでした。
期待されていた結果は残せなかったかもしれない。でもこれは失敗ではない。
「実は、協力隊として過ごしたのは1年2カ月だけなんです」という佐藤さん。
「この1年2カ月の間に、たくさんの留萌市民の方々と接することができたと思います。高齢者が多く住む漁村地区に行っては、お話を聞いてあげることもしばしば。ただ、逆にこういうことしか出来ずに終わってしまった、という気持ちも正直少しあります。僕たちを受け入れてくれた行政側も、当時はまだ慣れない地域おこし協力隊という制度に戸惑ったところもあると思います。お互い手探り状態でしたからね。でも、これは僕にとって失敗でもなんでもありません。協力隊の時に出来た繋がりのおかげで、皆さんとの関係が出来て、今の僕がいます。今後互いに助け合えることも多くあると思いますし、今の仕事である観光業務でも関わることもあるので、皆さんとの関係は財産です。こうして色々な人と関われたことが協力隊時代に達成できたと思える1つです」。
佐藤さんはお話の中で何度も『人との出会い』について触れていました。
その出会いの中から「観光協会でチャレンジしてみないか」という誘いを受け、現在のNPO法人留萌観光協会の一員となったのです。現在観光協会は、留萌市で有名な「黄金岬」を眼下に置く『海のふるさと館』に事務所を置いて、夏は観光に全力で力を入れ、冬場は冬ならではの事業の実施や、夏に向けての事務作業などに勤しんでいます。
観光協会の業務内容は多岐に渡ります。事務所を構える海のふるさと館の運営はもちろん(イベントが行われるときもあります)、夏場の海水浴場の運営や観光施設等の維持管理など、幅広く観光協会が担っているのです。
「『これやって』と頼まれた時は、NOとは絶対言わないのがモットーです」と言う佐藤さん。そんな佐藤さんのモットーや人柄が留萌の皆さんに信頼され、親しまれている要因なのかもしれませんね。
夏場になると、イベントも毎月のように催されます。
「ウニ乗せ放題」「甘えび盛り放題」「ホタテ詰め放題」などの目玉企画で盛り上がる『うまいよ!るもい市』という水産イベントや、小学校の夏休み期間にはキャンプ場も大盛況。
今後は、現在取り組んでいる、手ぶらで海水浴場に来てそのままキャンプが出来る「元気テント村」というキャンプ地の充実を考えているそうです。キャンプ好きの方は必見ですね。
夏場は海水浴場が大盛況。夏休み期間はこのように賑わっています。
「留萌って何もないじゃん。でも、なんだか落ち着くから行っちゃうんだよね・・・」という留萌好きを増やしたい、それが佐藤さんの目標だそうです。
佐藤さんが言うには『コアな留萌ファン』が欲しいのだとか。
「今後はインバウンドに向けて、多言語用の案内を用意しなきゃいけないと思っていますし、もっと面白いこと、他のどこもやっていないようなことをやって、留萌という場所を知ってもらいたい、呼び込んでいきたいです」と、話してくださいました。
現在この観光協会のメンバーは全員で6名。人数は決して多い方ではないかもしれませんが、皆で留萌を盛り上げていこうと新しいアイデアを出し合い、日々奮闘中です。
協力隊に挑戦しようか悩む方々へのメッセージ
「最初はどうしても、その土地のコミュニティに入っていくのは大変だと思います。でも、まちの人と仲良くなればなるほど、案外もうこのまちから出て行きたくないなんて思ってしまうものです。だから、きっと大変なのは最初のうちだけですよ」。
地元にずっといると、地元の良さに気づかないことが多いとよく耳にします。
外から来た人こそ良さを見つけやすく、発信できることも多いはず。地域おこし協力隊のように、外からやって来た人がその地域の良さを発信し、その頑張っている姿を見て、地元の人たちも頑張ろうと思うきっかけになるのではないでしょうか。『頑張り』は絶対誰かに届くはず。
冬場も市民の方とイベントで楽しみます。
もし留萌で協力隊をやるのであれば・・・と佐藤さんは続けます。
「今日までの間で協力隊は何名も活躍しているし、受け入れ体制に関しては安心だと思います。僕の協力隊同期も、任期終了した今も留萌に定住しています。ご飯も美味しいし、大型スーパーや、大手飲食チェーン店もあって生活には本当に困りません。生活していて不便さを感じたこともないですね。休みの日も旭川や札幌に出ることも可能ですし、冬場は近郊にスノーボードとかわかさぎ釣りとかレジャーもしっかりあるし。留萌で協力隊を今後やりたい方、応援しますよ!」
- NPO法人 留萌観光協会 佐藤雄一郎さん
- 住所
北海道留萌市大町2丁目3-1
- 電話
0164-43-6817