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北海道で暮らす人・暮らし方
八雲町

目指す職場は、ふるさとの海にありました。20170110

この記事は2017年1月10日に公開した情報です。

目指す職場は、ふるさとの海にありました。

若い親方のもとで、漁師修業中の松岡直哉さん。

八雲町落部漁港を出港した「第八朝丸」の船上には、7人の乗組員。親方の村上朝克さんは40歳(写真左)。漁を仕切る親方衆の中でもかなり若手ですが、腕のいいホタテ漁師として一目置かれる存在です。そんな親方のもとで、2016年春から研修生として働いているのが松岡直哉さん(20歳/写真右)。八雲町で生まれ育ち、大阪の海洋専門学校へ進学。「育てる漁業」に関わる仕事に就きたいと、ふるさとへUターンし、漁師を目指しています。

hotateryoushi_matsuoka003.JPGホタテ養殖がメインの村上親方のもとで修行中

まじめに、丁寧に。危険だからこそ必要な資質。

漁業といえば、豪快でタフな仕事をイメージしますが、「育てる漁業」は細かく手間のかかる作業が多くあります。ホタテ養殖は、海中に浮遊するホタテの赤ちゃん(稚貝)を"採苗器"に付着させることから始まり、成長に合わせて籠を変えながら、海中で育てていく作業を繰り返します。

hotateryoushi_matsuoka111.JPGホタテの稚貝をひとつひとつ籠に移す作業

取材日当日松岡さんは、約2cmまで育った稚貝を籠に入れ、海中に投入する作業をしていました。揺れる船上で丁寧に稚貝を籠に移していきます。自分が今できることに集中し、ひとつひとつクリアしていく姿勢が感じられます。そんな松岡さんの仕事ぶりを村上親方は、「まじめだな」ときっぱり。船上の作業はいつも危険と隣り合わせ、まじめなくらいの慎重さが必要だと言います。「その点、松岡は大丈夫。あとは船の上で覚えていくしかない。これからだ」と話してくれました。
松岡さんの実家は八雲町ですが、漁師ではありません。いまの仕事を選んだのは、「釣り」が大きく影響しています。小さな頃からずっと釣りが好きだった松岡さんは、魚や海に関する勉強がしたいと、国内では唯一「養殖」の専門コースがある学校を選択。ここで、養殖の知識と技術を学び、船舶免許も取得。就職活動を始めた11月、偶然にも八雲町の村上さんからの求人を見つけたそうです。

hotateryoushi_matsuoka007.JPG専門学校で「養殖」を学び、船舶免許も持つ松岡さん

「学校の先生が村上さんに連絡してくれて、現場研修の了解をもらいました。その時は漁師になりたいわけではなく、まずどんな仕事か経験してみようという気持ちでした」。
研修は3週間、おもに籠の修理や貝の付着物を取る作業などを体験。その時に、「やっぱり自分は育てる漁業の仕事がしたい」と気持ちが固まったそうです。その後、学校を卒業して実家へ戻り、今年(2016年)の4月から漁師の研修生として「第八朝丸」で働いています。

北海道の海と川のそばで、働き続けたい。

ホタテ漁の船は夜中の2時に出発し、戻ってくるのは10時間後の昼ころになります。朝早いのは苦になりませんが、船上での作業は想像以上にいろいろあって覚えることが多いそう。忙しい時期は実家に帰らず、親方の宿舎で寝泊まりすることもあるほどです。
逆に、仕事が楽しいと思うときは?と聞くと、少し考えてから、「いろんな人と話せることですね」と、一見シャイに見える松岡さんからちょっと意外な答えが。
「落部の漁師さんは本当によく働いて、仕事が早いんです。自分の作業が終わったら、ほかの人の作業も手伝うくらいに。そんなプロの人たちと話をするのはとても楽しいですよ」と、にこやかに話してくれました。

村上さんのように、自分の船を持ち、漁の采配をふるう漁師は「親方」と呼ばれます。多くの人が関わるホタテ漁のような漁業は、親方のもとでのチームプレーがポイントとなるシゴト。人と話すことが「おもしろい」という松岡さんは、コミュニケーション力でも漁師の適性ありと感じました。
「うちの親方はなんでも一人でできてしまうスゴイ人。親方のようにはなれないけれど、ゆくゆくは漁師になりたいと思うようになりました」。
漁業は北海道の基幹産業ですが、船や資材を買う資金、何より技術の習得にかなり時間がかかるので、新規参入のハードルが高い業種と言われます。ただし、時代は「獲る漁業」から「育てる漁業」へと確実に向かっているので、今後は松岡さんのような人材が、より求められていくかもしれません。

hotateryoushi_matsuoka009.JPG

松岡さんに休日の過ごし方を聞くと、「釣りです」と即答。大阪の学校に行っていた時は、大好きな釣りがあまりできなかったので、「身近に川と海がある。やっぱり、北海道に帰ってきてよかったです」と、笑顔。松岡さんが、どんな漁師になり、どんな「育てる漁業」を目指すのか、期待がふくらみます。

落部漁業協同組合 松岡直哉さん
住所

北海道二海郡八雲町落部529

電話

0137-67-2211

URL

http://www.otoshibe-gyokyou.com/index.html


目指す職場は、ふるさとの海にありました。

この記事は2016年10月1日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。