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オアシスのような雑貨店を営んで。
中川町唯一のセレクトショップ『雑貨の店 ふだんぎ』。「自分がいいなって思うものを置いているだけなんです」と話すのは、オーナーの吉田順子さんです。木のぬくもりを感じる店内には、こだわりとセンスが光る文具や食器が並びます。中には、町内在住の木工クラフト作家、斎藤綾子さんが手掛けたアクセサリーや器も。「綾子ちゃんには、地元育ちの私には気づけない、中川町の良さを教えてもらっています。」斎藤さんにとっても「順子さん」は、親子ほどの年の差を越えた心を許せる友人です。
吉田さん(左)と、町の木工クラフト作家 斎藤さん(右) 斎藤さんはこの町での自分のお姉さんと慕う。
吉田さんは進学を機に町を離れましたが、26歳のときに帰郷。「本当は長く地元にいるつもりはなかったんですけど」町役場に職を得たこともあり、そのまま故郷で働いていました。その後、「私も母も雑貨が好きなので」自宅と内部でつないだ店舗を作り、2000年にオープンさせました。陳列棚の縁が頑丈に作られているのは、手すりの役割を持たせているから。歩くのが大変になったお母さんが店内をスムーズに移動するための工夫です。「お店にいても、両親がいる自宅にすぐに行けるんです。便利でしょう」との言葉に、自分がやりたいことと、家族の介護を両立しようとする力強さを感じます。
吉田さんの人生の選択とは。
品揃えの魅力はもとより、気さくで話しやすい吉田さんに会うためにお店を訪れる人は少なくありません。特に多いのは、結婚を機に移住してきた女性たちです。「この辺りにはあまり遊ぶ場所もないので、息抜きにいらっしゃいますね。」ときには不安や悩みを相談されることもありますが「私は聞いてもすぐに忘れてしまうので(笑)」と、決して他言はしません。人を惹きつける明るさと細やかな気遣い。信頼され、慕われる理由がよく分かります。
まるで町のオアシスのようなお店。しかし、最近は両親の介護に追われ、クローズの状態が続いています。「両親共に90歳代です。大きな町に比べ、受けられる介護サービスが限られているので、一人を留守番させて一人を病院に連れて行くことも簡単ではありません。毎日大変で、ときにはワーッと叫びたくなることもあります。」そんなときはどう乗り越えているのかお聞きすると「同じ状況にある幼稚園からの親友と長電話することで元気をもらい、何とかやっている感じですね。」快活に話す姿からは想像しにくいですが、これも現実です。思い通りにいかないことが多々ある中で、両親にとって「住み慣れた中川町」の「我が家」での暮らしを支え続けている吉田さん。人生の大きな選択であったことが伺えます。
店番などの手伝いを申し出てくれる人はたくさんいますが、お店は自分の手で、と決めています。「私の好きなものを置いて、それを気に入ってくださったお客様が、嬉しくて幸せな気持ちになってくれたらいいですね。」お客さんのため、自分のため、そして両親のための雑貨店。今後も無理のない範囲で長く続けてほしいと、多くの人が望んでいます。
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- 雑貨の店 ふだんぎ
- 住所
北海道中川郡中川町中川301
- 電話
01656-7-2231
※不定休ですので、ご来店の際はご注意ください。