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津別町

土地に執着しない夫婦が選んだ、津別という町。20161020

この記事は2016年10月20日に公開した情報です。

土地に執着しない夫婦が選んだ、津別という町。

家庭を持ちたい、自然の中で働きたい。その二つの思いから。

チェーンソーが唸りを上げている。木屑が水しぶきのように宙を舞う。「離れて」声がすると、樹齢24年のカラマツが弧を描きながらゆっくりと倒れていきました。
ここは林産業が盛んな津別町の道有林。仲間とともに間伐に取り組むのは、国安産業の亀井宏之さん。作業からは屈強な猛者を思い浮かべてしまいますが、ヘルメットの下で微笑む表情は意外なほど柔和です。

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出身は関西の堺市。大学卒業後長野でスキー場の仕事を経験し、その後添乗員として札幌に就職しました。主な仕事は利尻や礼文などの島でのトレッキングガイド。楽しかったけれど奥様との結婚を機に、家から通える仕事に就きたいと考えるようになりました。足を運んだのは就職相談機関。そこで『緑の雇用(*)』の話を聞きます。津別という町の国安産業という会社が人を募集しているということも。
「森の仕事に対する知識はゼロでしたが、チェーンソーやら刈払機やら何だか面白そうだなと。自然の中で働くのも好きでしたから」
もともと奥様共々土地には執着がないタイプ。亀井さんは会社訪問のその日に転職と明日からの住まいまで決めてしまったと笑います。

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木を伐り森を育てるというやりがいの大きな仕事。

国安産業は行政から委託を受け、植林や間伐作業に当たるほか、その伐り出しや材木の販売などにも取り組んでいます。亀井さんの所属は造林。春先から本格的な積雪目前の初冬まで、一年の大半を津別の森の中で過ごします。体力には自信があった亀井さんですが、初めての森の仕事は予想を上回るほどハードでした。
「最初のころは何事にも満身の力を込めてましたからね、体重も一気に10キロ落ちました。でも本当は力なんていらないんです。チェーンソーだって手を添えてるだけ。そこに気づくと森の仕事は随分楽になる。70歳の人が森で働ける理由もそこなんです」

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作業に慣れると、この仕事の醍醐味が見えてきます。土を起こし丁寧に植えた苗は健やかに伸びる。こまめに間伐した森には多彩な植生が満ちる。手をかけるほど森や山が豊かにそして美しく成長していくことが分かりました。
働く醍醐味は仕事仲間からも。時に危険と隣り合わせの造林の仕事はチームワークが不可欠です。ことあるごとに声をかけたり、皆で効率的な作業手順を導入したり。仕事場に互いを思いやる気風が生まれると、作業仲間は頻繁に笑顔を見せるようになりました。これが『きつい作業がやりがいある仕事に変わっていく』ということ。森の仕事で一番大切なのは仲間とのコミュニケーション...と、亀井さんが後輩たちにこう教える理由もそこにあるのです。
*〈緑の雇用〉林野庁が主催する森林の仕事紹介事業

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国安産業株式会社
住所

北海道網走郡津別町字達美148-5

電話

0152-76-2300


土地に執着しない夫婦が選んだ、津別という町。

この記事は2015年12月4日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。