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旭川市

元大手トップセールスマンが挑む「防水」の世界。日本防水総業20250307

元大手トップセールスマンが挑む「防水」の世界。日本防水総業

北海道第二の都市・旭川市。道内でも有数の雪の多いまちとして知られ、車を走らせると家々の屋根や軒下に積もる雪に目を奪われます。ところで、あれだけの雪が屋根に積もっているにも関わらず、私たちが「雨漏り」を見かける機会は少ないですよね。その理由は、屋根を雨や雪から守る「防水工」というプロが、建物の屋上という私たちに目には見えない場で活躍しているからです。

今回訪れた日本防水総業株式会社旭川支店は、札幌で100年、旭川でも半世紀の歴史を持つという老舗の防水工事会社。5年半前、異色の経歴から35歳で転職したという同社営業の恒石優希さんに、防水という仕事や、これまでのお話を伺いました。

未知の挑戦から、わずか3カ月で4万人の頂点に!?

恒石さんのご出身は北海道滝川市。大きな夢はなかったものの勉強には励んだそうで、地元の高校を卒業後は、北海道公務員の試験に合格し、就職へ。しかし机に向かう毎日に物足りなさを感じ、1年ほどで退職をしたのだそう。その後は警備員やトラック運転手など、さまざまな職業を渡り歩いていました。

転機が訪れたのは20歳の頃。岩見沢にある携帯電話ショップの販売員として働き始めた恒石さんは、ここで驚く才能を開花させます。なんと入社3カ月という短期間で、全国4万人いる販売員の中から売上1位を達成したのです。

nihonbousui_02.jpgこちらが、今回取材をさせていただいた、恒石優希さん。

「自分でもうまく表現できないんですが、販売の仕事が合っていたのかもしれません。そのまま店長を任されて...あれよあれよと、気付けば3店舗の統括をするようになっていました。当時はまだまだ販売に関する規制が少ない時代で、売りやすい時代というのもあったんでしょうかね」

というのも2,000年代初頭といえば、まだスマートフォンは誕生しておらず、携帯キャリア3社がしのぎを削っていた時代。カメラ付き、テレビ付き、スライド式...と、次々と新機能を搭載した機種(今で言う「ガラケー」)が登場し、現在では考えられないサイクルで機種交換が行われていました。

そうした熾烈(しれつ)な販売競争の時代で、恒石さんのハイパフォーマンスは瞬く間に本体のキャリア会社からの注目を集め、24歳で販売代理店の社員から東京本社直属の社員へとステップアップしました。

家族のために、全ての地位を捨て去った35歳。

異例尽くしの昇進を経て、全国の不採算店舗や売上不振店舗のてこ入れ、社員教育を一手に担っていた恒石さん。基本的には空知・上川地域の販売店に在籍していましたが、全国のショップや家電販売店、ショッピングモールの携帯電話売り場など、さまざまな所から委託を受けて飛び回っていたそうです。

「ちなみに家電量販店の売り場にいると、ついでに『エアコンはどれがいい?』『オススメのテレビは?』と家電について質問頂くこともあったので、この時に家電製品アドバイザーの資格も取得しています(笑)」

その後も部下たちの指導のかたわら、自身も常に全国1位の座を守り続け、年間売上は億単位を達成。プライベートではご結婚、長男の誕生を経て順風満帆な日々を送っていましたが、35歳で新たな岐路に立ちます。ついに管理職である北海道支社長への就任を打診されたのです。

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しかし恒石さんの思いは、全く異なる方角に向いていました。それは当時小学生だった愛する長男の存在です。

「息子は2歳の頃に発達障がいの診断を受けてました。小学校に入学してからは、なかなか学校の環境に馴染めずにいて、ようやく乗り越えて適応してきた矢先だったんです。支社長になると、当然ながら札幌での勤務になるし、その後も全国を転々とすることになる。家族を自分の転勤に巻き込みたくはなかったですし、自分も家族の元を離れたくはなかったんです。また現場でお客様と顔を合わせるのが好きな自分にとって、管理職はあまり魅力的に映りませんでした」

こうして、15年間で築き上げて来た地位を捨て去った恒石さん。過程にはさまざまな葛藤があったことも想像できますが「全く後悔していません。息子のためですから」と晴れやかな表情で笑います。

建設系への挑戦を後押しした、一通のメール。

転職には求人メディアが運営する転職エージェントサービスへと登録。税理士事務所や不動産企業、保険外交員など数多くの企業からのオファーが届いたそうで、面接をした全ての企業からは内定の打診があったのだそう。しかし、ある日届いたメールに強く心を動かされます。それこそが、日本防水総業旭川支店長を務める中村真也さんからのメッセージでした。

「どの企業も宛名を変えた定型文のメッセージだったんですけど、中村さんからの文面だけが手書きっぽいというか、きちんと僕の経歴を見て、きちんと自分の会社を説明して、きちんとご自身の言葉で書いた文面だったんです。おまけに『見学だけでも来てほしい』と、必死さが伝わる内容で...。正直、待遇でいえばもっと良い所もなかった訳ではありませんが、この熱意に押されたことが大きかったと思います。また全く聞いた事すらない『防水』っていうワードにも引っかかったんですよね」

ここで一度、同社が手掛ける「防水」の仕事について解説します。

nihonbousui_04.jpg左が中村支店長。若きリーダーとして、オープンな雰囲気を築いています。

現代の建物は雨や雪からの浸水を防ぐため、屋上に防水処理が施されています。その工法は大きく分けて3つあり、シート防水、塗膜防水、そして日本防水総業(特に旭川支店)が得意とするアスファルト防水。広い面積を防水する場合に向いていて、高耐久・高品質でメンテナンスも比較的容易。こうした特徴を持つことから、公共の建設物や病院、大型商業施設などに使用されています。実際、旭川市役所や駅前の某大型商業施設、市立病院や動物園の新館など、まちを代表するような建築の数多くは同社による施工です。

古くから存在する工法である一方、求められる技術や資材のハードルも高いため、手掛ける会社は少ないことも特徴なのだそう。そうした中で半世紀の歴史と実績を持つ同社は非常に稀有な存在だといいます。

「およそ20年ほどで改修が必要になりますし、新築時に弊社が施工をしている場合は大体、改修時も弊社にご用命を頂ける事がほとんどです。これからのニーズも無くなることはないでしょう」

nihonbousui_05.jpg当初、旭川の人たちには「シャイ」という印象を抱いたそうですが、一度懐に飛び込むと温かく迎え入れてくれる市民性に愛着を覚えているそうです。

持ち前の向上心で1年目から大活躍!

2019年、恒石さんは同社の営業として入社を果たしました。前述の通り、日本防水総業は老舗かつニッチな分野での仕事のため、訪問先は長くから取引のあるゼネコンや、道内各地の比較的大きな建設会社が中心。新規ではなく既存顧客をめぐる「ルート営業」となります。

「先輩と車に乗って道内各地、さまざまな所へ挨拶や、昨今の現場のお話を伺いに出ました。建設業界は専門用語が多くて当初は苦労しましたね。例えば、やり残しのことを『駄目が残った』、機能しなくなったことを『死ぬ』と言ったり。物騒な言葉が多くて、ギョッとしましたよ(笑)」

持ち前の向上心で次々と仕事を覚えていった恒石さん。わずかな時間には用語辞典を開き、現場ではさまざまな先輩や職人に質問を重ね、ここでもわずか3カ月ほどで独り立ちを果たすことになりました。

nihonbousui_06.jpg工事部主任の赤坂さんと。社員の多くが現役の子育て世代ということもあり、家庭優先の働き方が根づいているようです。

「あるまちに新設される道の駅の防水工事を手掛けたのが、最初の大きな仕事でした。また温泉や浴場にも防水は必須ですので、温泉施設や『足湯』の施工も行っています。これまでの人生、意外にもじっくりと道内を巡る機会は少なかったので、それぞれの地域の魅力や特産物など、未知の発見をできることが面白いです。移動に数時間かかることも珍しくありませんが、1件あたりの単価は携帯電話の契約とはケタ違いで、仕事の一つひとつやりがいが大きいと実感しています」

数字への意識は昔と変わらないと恒石さん。入社時から「自分が入ったからには絶対に赤字を出さない」という強い意志を持ち、1年目から億単位の受注を達成したのだそう。さらに新規営業にも活動の場を広げ、大手ゼネコンにも果敢に新たな提案を持ち込んでいます。毎年、過去最高売上の更新という結果を残しているというから「さすが...」と驚くほかありません。

人々の暮らしを長く支えるための、恒石さんの新たな挑戦。

恒石さんは近年、営業として最前線で活躍する一方、社内での働き方の改革にも意欲を見せています。今春からは全社員が完全週休二日制となる予定です。

「常に新しいテクノロジーを扱い、販売手法や働き方も次々と刷新していた前職と違い、建設業界は正直、率直に言って『昭和だな』と思うことが多かったんです。しかし、この先無くなっては困る会社だからこそ、働き方は見直さなきゃいけません。幸い皆が改革に積極的で風通しの良い会社ですし、支社長もはじめから僕に提言を求めていましたので、就業規則を見直してさまざまな提案を行っていきました。週休二日制を皮切りに、この先も次々と最新の働き方を実践していく予定です」

nihonbousui_07.jpg改革が実を結び、近年は若手が次々と入社しています。

防水工という仕事に大きなやりがいを感じているという恒石さん。今年「防水施工管理技術者」の認定資格を取得。さらに今後、1級建築施工管理技士の試験にも挑戦するそうです。

「防水工事って決して地上から見えないし、誰にも知られることのない仕事なんです。でも、一つひとつが確実に人々の暮らしを守っています。『数字』という目立つ結果だけじゃなく、本当の価値があるからこそ、やりがい持ち続けられるのではないでしょうか」

恒石さんが屋上という新天地で見つけた、新たな生き方。恒石さんの未知への挑戦は、これからも続いていきます。

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日本防水総業株式会社 旭川支店恒石優希さん
日本防水総業株式会社 旭川支店
恒石優希さん
住所

北海道旭川市永山北1条10丁目3-23

電話

0166-47-1050

URL

http://nihonbousui-asahikawa.co.jp/

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元大手トップセールスマンが挑む「防水」の世界。日本防水総業

この記事は2025年2月4日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。