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このまちのあの企業、あの製品
厚真町

森林土木で地域を守る(株)山岡建設工業20241007

森林土木で地域を守る(株)山岡建設工業

札幌から約90分、苫小牧からは約45分。まちの公式キャラクターは、森のような緑色のボディにハスカップ・おにぎり・サーフボードをあしらい、優しく微笑む「あつまるくん」。
今回訪れたのは、海と山に抱かれた自然豊かなまち、厚真町です。
この厚真町で長年森林土木に携わる(株)山岡建設工業にお話を伺うため、現場へと向かいました。

山の安全を守る、森林土木

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山の麓まで迎えに来てくれた社員さんとともに、作業中の山の中へ。舗装された道ではなく「これぞ現場!」という雰囲気の山道です。粉塵を巻き上げながら車で20分ほど登ると、きれいに整備されたプレハブが現れましたが、現場はさらにその先にあります。
いわゆる「林業」というと森を適切に管理したり、切り出す、製材する仕事を想像しますが、森林土木は山そのものを守るために必要な工事を行なったり、安全な工事に必要な山道・ダムを作る業務。
平成30年に発生した北海道胆振東部地震で厚真町は大規模な土砂災害に見舞われ、尊い人命を含む多大な被害を受けました。森林土木の治山事業は、こうした土砂災害の復旧や復旧のための道を作る、見えないところで安全な暮らしの土台を支える仕事なのです。

現場女子の視点で現場をサポートする常務取締役

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(株)山岡建設工業 常務取締役の小林めぐみさんは厚真町出身。お父様は(株)山岡建設工業を創立した現社長・山岡光男さんです。
幼いころから現場や重機を遊び場にしたり、作業スタッフと遊んだりして育った小林さんは、いわば現場のサラブレッド。その興味は土木のみに留まらず、建築業へと向かいました。15歳で厚真町を出て建築系の専門学校で学び、札幌の建設会社に就職したそうです。

「私はとにかく現場に出たかったんですが、当時は今よりも男女の仕事の溝が深かった時代で、建築系で女性採用は本当に少なかったんです。専門学校でもクラス60人中で女子は私一人。就職活動では100社以上受けてようやく1~2社が会ってくれる程度。面接でも体が小さいことをいわれてしまい、悔しかったですね。」
人と違うことをやるのが好き、という小林さん。現場作業も機械制御ではなく人間が自分の手で行う作業が好きで、建築物を解体する「はつり解体」の現場などで活躍しました。

5年ほど勤めたころ、お父様が入院したという知らせが入ります。命に関わるものではなかったものの、病床の父から「安定した職に就いて欲しい」と乞われたそう。これをきっかけに、建築業に後ろ髪ひかれつつも厚真に戻ることを決めたのです。

「久しぶりに厚真に戻ってみたら町並みが変わっていて驚きました。飲食店が増えていたりパークゴルフ場ができていたり、道路まで増えていました」

こうして厚真に戻った小林さん、地元でのつながりを増やそうと商工会青年部に入り、そこで現在の旦那さんに出会いました。

会社では経理や事務作業など主に裏方から現場を支える小林さん。
今だけではなく未来も見据え、現場の日報やスケジュールを管理するアプリを導入するなど業務のデータ化も積極的に導入し、より働きやすい職場づくりに尽力しています。

さて、かつて現場作業には「3K」というワードがつきまとっていました。「きつい」「きたない」「きけん」の頭文字を合わせて「3K」。当時は確かにそういった側面があったのかもしれませんが、今はどうなのでしょう?

まずは「きつい」をみてみましょう。
工事に関わる多くの作業が人力だった頃は、たしかにきついことも多かったでしょう。しかし現在は、ドローンや機械化が進み、機械オペレーティングを正確に行うことで力仕事の一部を任せられるようになりました。
スコップ女子の小林さんには少し寂しいかもしれませんが、技術の進歩は目覚ましいものがあります。

次に「きたない」。
現場の多くは山林なので、土埃や泥の汚れは避けようがありません。ここでは簡易トイレの進化に触れましょう。イベント会場でもおなじみの簡易トイレと言えば、あまり使いたいとは思えないもの。ですが、こちらの現場にあるトイレはとても広くキレイで、ニオイもしません。こうした環境を整えるため、気を配っているそうです。

最後に「きけん」。
自然相手の森林土木は危険と隣り合わせ。その危険を軽減してくれるのがICT技術です。土木の現場で多い事故は「転倒」と「落下」だそうですが、ICT技術によりそもそも危険な場所に人間がいかなくても作業ができるようになってきているそう。山岡建設工業でも最新鋭の機器を導入したそうなので、これについては後ほど詳しく...。

森林土木の現場は、山岡建設工業ではこうして「3K」を改善してきました。また働き方も柔軟に対応できるように変化しています。

「今年の4月から完全週休2日制を導入し、曜日は固定せず作業の進捗をみながら、1週間に5日間勤務する就労スタイルを取り入れました。福利厚生も整えていますよ」と小林さん。

有休もとりやすい社風でありながら、現場仕事の途切れがちな冬も除雪の仕事があるので、安定して働くことができます。
また重機をはじめ作業に関わる様々な資格は全額会社が支払ってくれるので、どんどん新しいことに挑戦できるのだそう。

Yamaoka_smartphone175.jpgスマホで使えるシステムを導入、業務に取り入れています

こうした取り組みが認められ「北海道働き方改革推進企業」で4段階の上から2番目にあたるシルバー認定を受けました。
これからの広がりにますます期待がかかりますが、他の業界と同様に人手不足は課題だそうです。

そんななか社長から「こんな社員があと3人欲しい!」といわれる若手のホープ・三浦さんに、実際のお仕事の内容ややりがいについてお話を伺ってみましょう。

若手ホープに聞く!森林土木のやりがいとワークライフバランス

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「朗らか」に「誠実」を混ぜて人間を創造するときっとこうなる。それが三浦さんの第一印象です。

現在32歳の三浦さんは隣町の苫小牧のご出身。現在も苫小牧から通っているそうです。東西に長い苫小牧の中でもご自宅は厚真寄りで、会社からも車で15分程度と案外近いのだとか。山岡建設工業では2番目の若手で、下の年代には20代が1名います。

そんな三浦さん、中学で野球に打ち込み、高校卒業後は今とは別の建設系企業の下請け会社で働いていました。ある時、三浦さんの働く会社に山岡建設工業から中途採用で入ってきた方が転職してきたのだといいます。話を聞いてみると「山岡建設はいい会社だった」というので、興味が湧いたんだとか。

「いつかは元請で仕事してみたいなとは思っていたんです。それで面接に行ってみるとすぐ働けると言っていただけたので、転職することにしました」

こうして20歳の時に山岡建設工業に入社し、「やっぱりいい会社だ」と感じているそう。お話の中で、三浦さんが厚めのカードホルダーを見せてくれました。証明書のようなものが10枚以上入っています。

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「これは全部免許証です。これらの他に車の免許も大型とか、いろいろ持っています。私なんてまだまだ少ないほうです」

これでも少ないとは!取得費用もさぞかしかかったのでは...いえ、小林常務が言っていましたね。山岡建設工業では、免許取得にかかる費用は全額会社が負担してくれるのです。

たくさんの免許証をよく見せていただくと法面作業や高所作業に関する資格など、乗り物以外の資格もたくさんあるそうで、自分でとるとなるとかなりの負担です。
それを会社が負担してくれるのは、スキルアップの面でとてもありがたいと三浦さんは語ります。

入社してすぐの頃は重機の扱いに苦労したそうで、ひたすら乗って動かして扱いに慣れていったといいます。資格を取り経験を積み、現場管理を任されることも多くなってきた今は、人と一緒に仕事を回していくことの難しさとやりがいを感じていると話してくれました。
三浦さんの仕事への姿勢が認められ、公共工事の品質や技術向上に貢献した企業と技術者を表彰する「令和2年度北海道開発局下請企業表彰」で、三浦さんが主導した「勇払東部地区厚幌導水路公園中流工区災害復旧工事」が表彰されました。

山岡建設の魅力はほかにもあるそうです。
「今は新しい機械や新しい技術がどんどん増えていて、そういったものの導入を積極的に進めてくれるのが、現場的には楽しいんです。道内ではまだ導入実績のない技術を、うちが率先して入れることもあるんですよ」

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その一つを見せてもらいました。
バックホウと呼ばれるショベルカーの運転席に、タブレットのようなものが付いています。これの何がどうすごいのでしょうか?

山間部に道や宅地を作るときは、山側に斜面(=法面・のりめん)を作ります。通常はその角度を決める丁張(ちょうはり)という作業を人間が行うのですが、その場所は崩れやすく危険が伴います。

そこでICT施工の出番です。GPSセンサーと地形図データを連動させることで、丁張作業を行わなくても掘るべき角度をバックホウが割り出し、その指示通りに掘ることで正しい掘削作業を行うことができるのだそう。
これまで重機オペレーターと丁張担当者が2人で行っていたことが1人でできるだけでなく、危険な場所に行かなくてもよいのでケガを未然に防ぐことができるのです。

なんと、すごいものです。

「今作っている道もそうですが、私たちの仕事は『奥から作っていく』ので、最初は本当に道もなにも無いんです。そこへ踏み込んで木を切り、抜根し、少しずつ進んでいきます。」

なんと、奥から始めるんですね!でもなぜ?手前から始めたほうがラクそうです。

「入口から作っていくと、せっかく作ったところが汚くなっちゃうんです。掃除するときに後ろに下がりながらやるのと似ていますね」

なるほど、納得です。まるで北海道開拓時代のごとく、文字通り道を切り開くお仕事ですが、三浦さんはそこに楽しさを感じているそう。

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また山岡建設工業では、年間を通した働き方も考えられています。
その一つが冬季の業務です。

北海道では冬場の現場作業ができないので、一旦仕事が無くなる会社も多いそうです。しかし山岡建設工業は除雪の業務を請け負っているため、冬でも働き続けることができるのです。また作業ボリュームの少ない冬季に有給をまとめて使うことで、1カ月以上休むことも可能だそう。

もう一つは雨の日にやる仕事を残すということ。

「これはわざと残しておくんです。私たちの仕事は下請けさんにお願いすることも多く、雨だからと言って休みにしてしまうと、その方たちの仕事が無くなってしまいます。なので例えば伐採した木の片づけだったり、土に触らずにできる作業を雨の日用にわざとためているんです」

基本的に勤務は7:30~17:00で、残業はほとんどないのだそう。
勤務が8時間半と聞くと少し長い印象ですが、もちろんその分のお給料はしっかり支払われます。

「朝は早いですが終わりも早いので、そこは好き好きですね。私は仕事のメリハリがあって気に入っています。残業が本当にないのはすごいと思います」

週休も2日しっかりとれるので、3歳の娘さんがいる三浦さんも家族との時間をばっちり取れているのだそうです。

「この会社は、がんばればがんばっただけお給料に反映してくれるので、もっと良い仕事ができるようにがんばろうと思えます。自分の携わった仕事が、世の中に長く残るのも醍醐味かもしれません」

確かに、山の再生を促す治山事業もそうですね。

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三浦さんの上司で工事部長を務める福士さんは、
「森林再生はまだ全然進んでいないんです。むしろ始まったばっかり。この道もそうですが、再生の基礎作りがこの5年でようやく形になってきたところなので、再生はここからが本番です。森林再生にも北海道庁が示した指針があり、優先順位をつけて山を回復していくことになるはずです。」
と話していました。

最後に三浦さんから、これから入ってくる未来の仲間にヒトコトいただきました。

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「機械を触るのが好きなひとや、新しい技術に触れるのが好きな人、また開拓魂を持った人(笑)は向いている職場だと思います。努力を認めてくれる社風も良いですし、福利厚生も充実しています。あと、木を切った後っていい匂いがするんです。現場は山だけではないですが、山の作業は楽しいですよ。」

震災から6年。植えた木が大きくなるのは数十年~百年後の話だそうですが、自分たちが手掛けた仕事が百年後の厚真の礎になると思うと、ワクワクしてきませんか?

スキルアップしながら最先端技術にも触れられる、山岡建設工業の活躍にご注目を。

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株式会社山岡建設工業
住所

北海道勇払郡厚真町共栄101−6

電話

0145-28-2671

URL

https://yamaoka-k.com/

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森林土木で地域を守る(株)山岡建設工業

この記事は2024年7月15日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。