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このまちのあの企業、あの製品
帯広市

味と想いを伝承する、インデアンのカレー。(株)藤森商会20240811

味と想いを伝承する、インデアンのカレー。(株)藤森商会

帯広市民をはじめ十勝の人たちのソウルフードのひとつである「インデアン」のカレー。十勝の人たちのハートと舌を虜にするインデアンを運営しているのが、創業125年という歴史を誇る「株式会社藤森商会」です。昨年、冷凍カレーの販売もスタートさせ、これがまた地域の人たちにも大好評。変わらぬ味を提供し続けている同社のこれまでの歩みやカレーの話などを伺うほか、現場でその味を支えているスタッフの方にも話を伺いました。

創業は明治時代。帯広の町の発展とともに成長してきた食事の店

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まずは藤森商会という会社について、総務部総務課長の佐藤元基さんにお話を伺いました。

「もともとは明治時代に帯広駅ができたとき、藤森待合所という名前で、駅構内でまんじゅうの販売をしたのがスタートです。利用客が増えるとともに、寿司など献立も増え、藤森食堂となったと聞いています」

帯広駅からすぐのところにあるレストラン「ふじもり」は、食堂からの流れをくむ老舗店として、帯広の発展とともに成長していきました。どこか懐かしさを感じさせる店内と豊富なメニューは、老若男女問わず今も多くの地域の人たちに支持されています。「帯広で2番目においしい店を目指しています」というこだわりを掲げているのは、「1番おいしいのは母親や妻の手料理、家庭の味だと思っているから」なのだそう。

「ふじもりで提供していたカレーの人気がとても高く、3代目のとき、1968(昭和43)年にこのカレーだけを提供するカレーショップをスタートさせたのがインデアンの始まりです」

平成に入り、4代目(現会長)のときに店舗数が増え、現在は十勝エリアに11店舗、釧路に2店舗を構えています。2年前に藤森康容氏が5代目として社長に就任し、昨年10月からは冷凍カレーの販売も7店舗で行うようになりました。

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「おかげさまでこの冷凍カレーが大好評で、先月で20万食を突破しました。地方発送やネット販売は現在行っていないのですが、本州にいる子どもに送るからと購入してくださる方や、お土産で買ってかえりたいという旅行客の方など、たくさんの方にご購入いただいています」

これまでテイクアウトしたカレールーを自宅で冷凍して子どもに送っていたという人も多かったそうで、手間が省けると支持されています。ちなみに、インデアンといえば、鍋を持参してカレールーを購入していく人が多いのも特徴。それだけ帯広市民や十勝の人たちに愛され、支持されている味であるとよく分かります。毎日食べても飽きない親しみやすい味、ソウルフードと呼ばれるのも納得です。

オープンキッチンで素早く調理。こだわりのカレールーは3種類

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次にインデアンのカレーや店舗のことについて伺っていきましょう。インデアンの店舗のほとんどに、オープンキッチン状のカウンター席が中央に設けられており、お客さんたちに見られて調理するのは緊張しそうですが...。

「作っているところを見てもらうことで、待っているお客さまにもワクワクしてもらおうと考えて、オープンキッチンにしています。新人のうちはもちろん緊張するようですが、ベテランになってくると、逆にパフォーマンス的に見せようとするスタッフもいて、皿をクルっと回したり、ルーのかけ方をオーバーにしてみたり、それぞれお客さんに楽しんでいただこうと工夫しています」

以前、ある店舗のスタッフのカツの切り方が速いと動画がアップされ、それが話題になったこともあったそう。

地元の人たち以外の多くは、インデアンのカレールーは1種類と思いがちですが、実際は「ベーシック」「インデアン」「野菜」の3種類のルーがあります。それぞれスパイスの配合から異なり、味も当然違うので、注文する際にはメニューをよく見て注文をしたいところです。地元の人たちは注文も慣れているので、メニューを見ずとも好みのものを注文する人が圧倒的多数。注文の仕方を見ているだけで、通な感じがします。

「そうですね、常連の方たちは注文も慣れていますね。たとえば、カツカレーは通常ベーシックルーで提供していますが、インデアンルーで食べたい方は『インデアンカツ』と注文します。また、注文時に伝えれば、ルーを混ぜることもできますし、メニューにはありませんが、辛さも極辛の10倍、20倍と注文が可能です。あと、これもメニューにないのですが、大盛の大盛という山盛り状態のものもあります」

また、テーブルの上に置いてある3種類の漬物もインデアンならでは。福神漬けはカレーと言えば...の相棒ですが、ほかの2つがほかのカレーショップでは見かけないものです。

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「緑色のが、しその実と大根とキュウリの漬物になります。一般には販売されていない漬物ですが、カレーによく合うと評判です。あともう一つはガリですね。これも珍しいでしょうね」

カレーにガリ?と思うかもしれませんが、これが案外マッチするのです。当時のマネージャーやスタッフがインデアンのカレーに合う漬物を...と試行錯誤して決めたものなのだそう。

帯広市民に身近なインデアン。だからこそ働いているほうも手応えを感じやすい

さて、ここまでいろいろ教えてくださった佐藤さんですが、実は転職してきて1年半ほどなのだそう。

「もともと幕別出身で高校生までは十勝にいたので、インデアンのカレーを食べて育ちました。札幌の大学へ進み、卒業後は東京の人材エージェントの会社に勤務していました」

長男ということもあり、いつかは十勝にUターンしようと考えてはいました。「仕事はおもしろかったのですが、東京は人が多すぎて、自分のやっていることは本当に人の役立っているのかなと思うことも多く...。人が多すぎるがゆえに流れていってしまうというか、実態が分かりにくいというか、手応えや手触りがない感じがあったんですよね」と話します。

十勝に戻ってみると、「東京とは違って自然が多く、のびのびしていて落ち着きます」と笑います。また、「今は藤森商会、インデアンの人事関連を担当していますが、店舗が身近にあるし、いろいろなところでインデアンの話なんかを耳にすると、手触りがあるというか、ここで自分が働いているんだなという手応えややりがいを感じる機会が多いんですよね」と続けます。

「インデアンのカレーはずっと好きでしたけど、転職してみて、藤森商会の会社の雰囲気もとても気に入っているんです。風通しが良くて、みんな明るいんですよね。そして何より、みんなが同じ方向を向いて、インデアンというブランドをしっかり守っていこうという姿勢や誇りが感じられるんです。それが会社の魅力かなと思っています」

働き方改革を実施しながら、ソウルフードとしての味や考え方を継承

fujimori_shachotosatosan_0060.png佐藤さんと藤森康容社長。お二人の笑顔を見ると、社内の雰囲気の良さがうかがえます


これだけ十勝の人たちに支持されていても、藤森商会、インデアンの社員はそこにあぐらをかくことなく、守るべきところは守りながら、お客さんのニーズや時代の流れに応じて少しずつマイナーチェンジをするための努力を続けていると佐藤さんは言います。

「冷凍カレーもそのひとつですね。最近、コロッケのトッピングが増えたのですが、それもお客さまたちに少しでも楽しんでもらいたいという思いから増やしました。また、スタッフの働き方もここ1、2年で大きく変化しています」

ひとつの店舗にいる正社員の数を増やし、営業時間も22時までだったのを21時にしたことで、それぞれが仕事のカバーをしやすくなり、さらに残業も減ったそう。また、GWとお盆のあとには全店舗で3日間の休みを設け、スタッフがゆっくり休めるようにしました。

「GWとお盆はどの店舗も行列ができるほど混雑するんです。スタッフも休憩時間をきちんと取れないような状況で仕事をしているので、まとまった休みを取ってもらい英気を養ってもらおうと、お客さまには迷惑をおかけしますが、3日間お休みとさせていただいています」

現場で働くスタッフの労働環境をきちんと整え、それぞれがやりがいを持って働けるかどうかが重要。それが結果としてインデアンのブランドを守り、お客さまにこれからも愛され、支持されることにつながると考えています。

「インデアンができて50年以上になりますが、初期のころのスタッフが引退をしていく時期に入っています。味や作り方はもちろん、考え方やマインドの部分もしっかり継承していかなければならないと考えています。伝承していかないと、ソウルフードとして成り立ちませんからね。しっかり引き継ぎながら、プラスアルファでお客さまに喜ばれることをやっていかなければならないと思います」

インデアンの伝統を引き継ぎ、一緒に次世代へバトンを渡していってくれるスタッフを待っていると、佐藤さんは話してくれました。

初心を忘れず、丁寧かつスピーディーに。チームワークも大事

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それでは店舗で活躍する社員さんにもお話を伺いましょう。インデアンのMEGAドン・キホーテ西帯広店に勤務する八島将太朗さんに登場してもらいました。

十勝管内の鹿追町出身の八島さん。ずっと十勝管内で暮らし、28歳のときに藤森商会に入社し、MEGAドン・キホーテ西帯広店へ配属されました。現在は主任として、調理や接客を行っています。

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「高校を出てから、食や飲食系の仕事に携わってきました。藤森商会に入る前は、帯広市内の居酒屋で働いていました。結婚して子供が生まれ、少しでも早く帰れる仕事がいいなと思っていたところ、紹介してもらう形で入社しました。インデアンのカレーはずっと食べていましたし、慣れ親しんだ味というのもあり、いいかもなと思いました」

カウンターでの作業について「今はもう平気ですが、最初はやはり緊張しました。パフォーマンスをする先輩もいますが、自分はまだそこまで余裕はありません(笑)。ただ、常にいいものを作って出すことに集中しています」と話します。

「人間は慣れてくると基本をおろそかにしてしまうので、初心を忘れないように心がけています。後輩やお客さまにもきちんとしているところを見てもらわないとならないと思っているので」

ここの店舗に勤務して6年ほどになる八島さん。常連客の方たちから声をかけてもらうことも増えたそう。「自分よりも長くここの店に通ってくださっているお客さまから店の歴史を教えてもらうこともあります」と笑います。

インデアンのスタッフの動きを見ていると、とにかくスピーディー。無駄な動きが一切なく、さらにスタッフの方たちの連携もスムーズです。チームワークの良さが感じられます。日ごろからのコミュニケーションが取れているからこそなせることなのでしょう。

「それぞれが店全体をしっかり見ながら、臨機応変に動いている感じですね。自然にカバーし合えている感じはありますね」

インデアンのカレーが地域の人たちの活力となれるように...

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働き方について伺うと、「入社したときから、働き方改革が進んで、どんどん働きやすくなっていると思います。休みもしっかり取れるようになりましたし、ラストオーダーができたのも働くほうとしてはありがたいです」と話します。また、GWやお盆明けの3日間の休みに関しては、「これもとてもありがたいなと思います。子どもたちと一緒にゆっくり過ごすこともでき、体も休めますし」と続けます。

ちなみに、賄いはやはりカレーなのだそう。「手の空いているスタッフが作るのですが、僕はいろいろなルーとトッピングで食べています。ルーの中で一番好きなのはインデアンルーですが」と笑います。賄いがカレーというのは、カレー好き、インデアン好きな人にとっては最高ですねと言うと、「そうですね、カレーが好きな人はぜひ! スタッフはみんな仲も良くて働きやすいですよ」とニッコリ。

最後に、これからの目標を尋ねると、「個人としては、主任の次の副店長になるのが直近の目標です。そのためにも、もっと早く丁寧に調理ができるようになりたいですね。また、お客さまとの距離も近すぎず遠すぎずのちょうどいい距離感を大事にしたいと思います」と話します。

また、「インデアンのカレーを食べて、『また頑張ろう!』と思ってもらえるとうれしいですね。僕自身、前職で大仕事があるときにインデアンのカレーを食べて、『よし頑張ろう!』と思っていたので、十勝の皆さんにとってインデアンがそういう存在だといいなと思います」と八島さん。それは、社長の「提供する食事で活力あふれる地域の発展に貢献」という考えにも通じるものがあります。こういう思いのもと、インデアンのカレーがこれからも十勝のソウルフードとしてしっかりと根を張っていくのだろうなと感じました。

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株式会社藤森商会/インデアン MEGAドン・キホーテ 西帯広店
株式会社藤森商会/インデアン MEGAドン・キホーテ 西帯広店
住所

店舗所在地:北海道帯広市西21条南4丁目1(MEGAドン・キホーテ店内)

電話

0155-41-5766(インデアン MEGAドン・キホーテ 西帯広店)

URL

http://www.fujimori-kk.co.jp/

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味と想いを伝承する、インデアンのカレー。(株)藤森商会

この記事は2024年6月12日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。