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新ひだか町

日高の森を守る三浦興産。森を育むことが町の産業を支える!20240803

日高の森を守る三浦興産。森を育むことが町の産業を支える!

サラブレッドの馬産地として知られる新ひだか町。日高山脈と太平洋に挟まれるようにして町があり、海と山が人々の暮らしのすぐそばにあります。そのため、農業、漁業が盛んなことも町の特徴です。その農業、漁業を支えているのが、同じ1次産業である林業。豊かな森を携える山から流れ出た川の水は、農作物を育み、馬や家畜を育て、森の栄養を蓄えて海へ流れ込み、魚や昆布も育んでいきます。森を守り、育てる林業があるからこそ、豊かな土壌、豊かな海を育むことができるのです。今回は、新ひだか町で70年近く前から林業に携わっている「株式会社三浦興産」におじゃましました。

創業は昭和29年。造林、素材生産(造材)を行う林業の会社

新ひだか町は、平成18年(2006年)に静内町と三石町が合併して誕生。町の8割以上を森林が占めています。その山と森を守り、森を育んでいるのが三石エリアに拠点を置く三浦興産です。

創業は昭和29年(1954年)。社長の三浦昌安さんは4代目になります。「祖父が、三石で三浦組土建として創業。国有林の造林がスタートだったと聞いています」と三浦社長。木を植える造林、木を伐る素材生産(造材)、そしてそこから派生する土木事業を行っていたそう。

さらに、2代目だった父の代に産業廃棄物の取り扱いや運搬の許可を取得。現在は、解体も行い、自社で産業廃棄物の処理場も構え、再生骨材の販売なども行っています。

miurakousan15.jpgこちらが社長の三浦昌安さんです。

「今も主軸の事業は林業。造林も行いますが、素材生産が多いかもしれませんね」と三浦社長。この素材生産というのは、林野庁発注の立木の伐採事業で、発注者の指定した長さの丸太を生産し、指定された場所に集積することを言います。

国有林の仕事は毎年入札が行われるので、日高の新冠から浦河までの国有林の仕事の入札に毎年参加しています。とはいえ、日高エリアの林業も人手不足、業者不足は否めないのが実情。毎年数件は必ず落札していると言います。ちなみに、浦河町から三石までの範囲で林野庁発注の造林と素材生産を行っている事業者は、三浦興産だけなのだそう。

「今は林業も機械化が進んで、うちもさまざまな重機を保有していますが、日高の山は斜面の勾配が急なところが多く、重機だけに頼れない部分もあり、山に入る職人の技術力や経験も必要になってきます。そういう意味で言うと、うちは日高の山を知り尽くしているベテランのスタッフが多く在籍しているのも特徴。今も若いスタッフが入って、その技術を継承するために頑張ってくれていますが、まだまだ次世代を担う人材の必要性は感じています」

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民有林の仕事や自社の保有林の整備などもあるため、人手が多いに越したことはないそう。そして、長い間このエリアの森を守り、育ててきた事業者として、未来へ森を継承していくため、次の人材を育てていかなければという責務もあると三浦社長。旭川にある道立北の森づくり専門学院(北森カレッジ)のインターン生も受け入れています。

姉たちに支えられながら、若くして4代目に就任

次世代育成の話が出ましたが、三浦社長もまだ30代。4代目として会社を継いだのは弱冠25歳だったと言います。

「自分は5人兄弟の末っ子なんです。上の4人が姉で、自分が長男。そのため、子どものときから周りの人たちに跡継ぎ、跡継ぎと言われて育ちました。それもあって、いつか跡は継ぐんだろうなと思っていましたね」

地元の高校を卒業後、車が好きだったこともあり、札幌の自動車整備の専門学校へ進学します。本当は跡を継ぎたくなかったのかと思いきや、「戻るつもりはありました。整備のことを学んでおけば、うちの重機や車両の整備などもできるなと思って」と笑います。

miurakousan05.jpg社長の隣にいらっしゃるのが、三浦家の長女で、常務の下屋敷久味さんです。

専門学校を卒業すると三浦興産へ入社。山に入り、造材をメインで担当し、仕事を覚え、現場代理人も務めるようになります。

「13年前に父が亡くなり、ずっと仕事を手伝っていた母が3代目として社長に就任したのですが、その母も1年半ほどで亡くなってしまって、慌ただしい中で自分が跡を継ぐことになりました」

そんな三浦社長を支えたが姉たちでした。取材時に同席していた常務の下屋敷久味さんは長女。地元の建設会社に勤めていた際に現場監督の経験もあるそうで、今も現場と事務方をつなぐ役割をはじめ、広報的なことや役所とのやり取りなどあらゆる窓口として活躍しています。ほかにも2人の姉が事務方でサポートに入っています。

山の土場で活躍する林業用の運搬車両や重機の数々

せっかくなので、山の現場も見学させてもらうことに。三石エリアの市街地から車で40分ほど山に入ったところにこの日の現場がありました。険しい山道を車で上がっていくと、枝払いを終えたきれいな丸太が積まれた土場に到着。スタッフの方がグラップルと呼ばれる機械で太い丸太を高く美しく積み上げていく様子は圧巻です。

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さらに上の土場へ案内してもらうと、そこでは丸太が運材車に積まれていました。専属のドライバーが待機している運材車を見ると、いろいろな装飾が施されていました。会社から貸与されたものを自分でカスタマイズしているそうで、会社もOKなのだそう。「うちはその辺はわりと自由なんです。みんながやりたいということをやらせてあげたいなと思っているので。楽しく仕事ができるほうがいいですから」と三浦社長。

miurakousan8.jpgお休みの日にも、仕事のトラックをカスタムしちゃうほどの車好きなんだとか。

しばらくすると、上のほうから、足回りがキャタピラになっていて、不整地でも木の運搬ができる林業用の運搬車両・フォワーダが丸太を積んで下りてきました。黒いこのフォワーダ、下屋敷さんによると「これは珍しいハンドルタイプ。道内にもまだ4台しかないと言われていて、そのうちの1台がうちで保有しているこれです」と教えてくれました。

miurakousan14.jpgこちらがそのフォワーダ。

フォワーダは丸太をおろすと、再び上へ。取材陣もさらに上にある木を伐り出す現場におじゃましました。

そこで稼働していたのは、ハーベスタと呼ばれる重機。「北森カレッジからくる学生さんでもこれに乗りたいという人が結構いるみたいですね」と三浦社長。わざわざこれに乗りたいと思うとは、一体どんな機械か尋ねると、立木の伐採、枝払い、丸太の長さを測って切っていく玉切り、その丸太の集積まで、すべて1台でできるマルチな高性能林業機械なのだそう。「それでも、ハーベスタが入れないところもあるのが日高の山。そういう場所は人の手でチェーンソーを使って伐り出していきます」と続けます。

miurakousan11.jpgそしてこちらがハーベスタ。伐倒から枝払い、玉切りまでなんでもできちゃいます。

高性能林業機械・ハーベスタの操縦を任されている25歳の若者

三浦興産ではハーベスタを2台保有。この日、取材陣が見たのは大きなサイズのハーベスタで、現在これを主に動かしているという髙木杏(きょう)さんに、仕事のことなど少し話を伺いました。

髙木さんは同じ日高エリアの様似町出身の25歳。高校を卒業後すぐに三浦興産に入社したそう。

「祖父が土木の仕事をしていたので子どものころからユンボの運転席に座らせてもらったりしていて、重機などの乗り物や車に興味を持つようになりました。入社して1年くらいは、工場で整備などの仕事をさせてもらいながら重機に関する免許も取らせてもらい、ある程度操作ができるようになってから山に入るようになりました」

miurakousan13.jpgこちらが髙木杏さんです。

ハーベスタの運転席を見せてもらうと、ボタンがたくさん並んでいます。30個ほどあるこのボタンを駆使して、操作を行うそう。ハーベスタに乗って6年ほどという髙木さん、ボタンさばきはお手の物です。取材陣のために玉切りを見せてくれましたが、気持ちがいいほど素早くカットし、積み上げていきます。「自然の中で仕事ができるのは気持ちがいいし、楽しいです。これからもこうやってハーベスタに乗って仕事をしていきたいです」と話します。

現場にいるスタッフの方たちの年齢層は20〜60代と幅広いのが印象的ですが、「みんな気さくで話しやすいので、年齢はあまり気にならないです」と髙木さん。「全体的にのんびりしているというか、大らかな雰囲気。それぞれが自分の作業に黙々と取り組んでいて、顔を合わせると冗談を言い合ったりする居心地の良い環境です」と続けます。新しいスタッフが入ってきても、「自然とみんなが仕事を教えている感じですね」と髙木さん。山の仕事は安全第一、ときにはチームワークも必要とされますが、「普段からコミュニケーションが取れているから、その点も問題なくできているのだと思う」と言います。

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現在、浦河町に住んでいるという髙木さん。日高エリアでの暮らしについて、「日常生活で不便を感じることはないし、都会に比べて制限されるものが少なく、自由が多くて自分としては暮らしやすいと思います。もともと都会に行きたいとは思わなかったので」と話します。それを隣で聞いていた三浦社長は、「都会は遊ぶところはいっぱいあるけど、どこもお金がかかるでしょ。都会はいるだけでお金がすごくかかるけど、こっちにいたらそれほどお金もかからないし、休みは釣りをしたり、好きな車をいじったりできるしね」と笑います。

林業は森を守る仕事。地域に寄り添いながら続けていきたい

再び事務所へ戻り、会社の話を伺うことに。三浦社長が仕事をする上で大切にしていることを尋ねると、「思いやりの心を忘れないことをモットーにしています。思いやりを忘れずに自然環境や生活環境の保全に努めたい」と話します。

また、地域に寄り添った仕事をしていきたいとも話し、「地域に根差した業者として、地域の方から頼まれたことでうちができることはできるだけ引き受けています。土木もできるので、牧場の方から牧柵を設置してほしいと言われれば設置しますし、運搬もやれるので牧草ロールの運搬を頼まれたら、それも運びます。草刈りも頼まれればやりますよ。とはいえ、人が足りないことも多いので自分がやっています」と笑います。

山の現場も解体の現場も、地元の漁師さんや農家さんが手の空いているときにパートで入ってくれることもよくあるそうで、町の人たちと持ちつ持たれつの良好な関係ができ上がっているのも伝わってきます。

miurakousan03.jpg「社員がやりたいことがあるなら、できる限り自由にさせてあげたい」という社長。

6人の子どもたちのパパでもある三浦社長は、「地元の小学校の草刈りもボランティアでさせてもらっています。子どもたちにとって暮らしやすい町であり続けてほしいと思いますから」とニッコリ。

民家の解体を依頼された際も、まだ直して住めそうであれば、依頼主と交渉してそこを買い上げ、直して所有しているそう。「うちだけに限らず、せっかく新ひだか町で働こうと思っても住む場所がないと困るでしょ」と話します。

祖父の代から続く林業に関しては、「木を伐ることを自然破壊のように言う人もいますが、山や森は整備しなければ荒れてしまい、その大切な機能を損なってしまいます。伐ったあとに造林していくのも自分たちの仕事。そうやってきちんと考えて、森を育て、森を守っていることを伝えていきたい」と語ります。地元の山の所有者で手放したいという人がいれば山を買い取ることもあるそうで、「分かっている誰かがきちんと整備しないとね」と続けます。

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「うちは、造林も素材生産もやっているし、ハーベスタなど林業に関する重機もそろっています。木を植えたい人、チェーンソーで木を伐倒したい人、重機を扱いたい人、それぞれやりたいことがあればやりたいことを軸に仕事をしてもらえる環境が整っています。日高は冬も雪が少ないので雪の影響に関係なく仕事ができるのも利点。条件はありますが、必要な免許や資格も会社負担で取得ができるので、少しでも林業に興味があってチャレンジしてみたいという方はぜひ」

豊かな森を整備することで、土壌も海も豊かに育まれ、結果として林業は地域の産業を支えていることに。仕事を通して、生まれ育ったこの町を大切にしていきたい、林業という仕事の大切さを知ってほしいという三浦社長の想いが伝わってきた取材でした。

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株式会社三浦興産
株式会社三浦興産
住所

北海道日高郡新ひだか町三石本桐193-8

電話

0146-34-2288

URL

https://www.miurakousan.com/

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日高の森を守る三浦興産。森を育むことが町の産業を支える!

この記事は2024年7月10日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。