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南富良野町

アウトドア活動を通じて町の魅力を高める!モンベル南富良野店20240408

アウトドア活動を通じて町の魅力を高める!モンベル南富良野店

北海道のほぼ中央に位置する南富良野町。十勝岳、日高山脈など四方を山に囲まれ、かなやま湖があるほか、空知川の源流部・シーソラプチ川も有する自然豊かな町です。人口約2300人は決して多いとは言えませんが、アウトドア総合メーカー・モンベルと包括連携協定を締結したのを機に、2022年春には「モンベル南富良野店」がオープンしました。今回は、アウトドアを通じて町を盛り上げようと活動するモンベル社員のお2人に、仕事のこと、町の魅力や暮らしなどについてお話を伺いました。

大手アウトドアメーカーが、小さな町に店を出す理由とは...

まだまだ雪深い2月下旬の北海道。南富良野の道の駅の駐車場から見渡す山々も真っ白です。道の駅の敷地内に建つ「モンベル南富良野店」は、道内最大級の規模を誇る店舗。木造の建物は入り口前が広い回廊になっていて、手前の柱は天然の石を積み上げたもの。山に囲まれた景色に溶け込んでいます。中に入ると、天井が高く、ゆったり広々。入って右手には、約8mのクライミングピナクル(尖塔)がそびえています。

まず南富良野の町にこれほどの大きなモンベルができるまでのことを伺うため、「南ふらの物産センター」の一角にある「南富良野まちづくり観光協会」を訪ねました。出迎えてくれたのは、モンベルのオープン前から事業に携わっているという南富良野町の企画課まちづくりプロジェクト推進室・観光プロジェクトマネージャーの今井吉伸さんです。実は今井さん、モンベルからの出向社員とのこと。町にアウトドアを根付かせるため、体験型のイベントを企画するなどアウトドアを絡めた観光事業に取り組んでいます。

montbell_nanpu05.jpg南富良野町企画課まちづくりプロジェクト推進室・観光プロジェクトマネージャーの今井吉伸さん

モンベルは、全国140近くの地方自治体や公的機関らとアウトドアを軸にした包括連携協定を結んでいます。南富良野町とも、豊かな自然環境を生かしたアウトドア活動の促進を通じ、地域を活性化しいていこうと2018年に協定を締結しました。

「南富良野は、トマム、富良野、サホロと大きなリゾート地と隣接しているにも関わらず、なかなか人が来ないのが課題でした。地域活性のため企業誘致を行う中、道内でもトップクラスを誇るこの豊かな自然を生かしたいということで、モンベルに相談がありました。それが店舗を構えるきっかけですね」

小売店が店を出す際、人口密集地に出すというのがセオリー。それから考えると、人口約2300人の町に出店するのはあり得ないことですが、アウトドア総合メーカーである同社の場合は事情が少し異なります。

montbell_nanpu03.jpgモンベル南富良野店の隣にある南富良野まちづくり観光協会には、レンタル自転車もズラリと並びます

「ただ店を出してモノを売るだけが目的ではありません。モンベルのショップがたくさんの方たちのアウトドア活動のきっかけになること、地域のアウトドアの拠点として地元の方にも喜ばれることを会社としても大事にしているんです」

そして、今井さんはオープン前の2021年12月に南富良野町へ赴任します。

アウトドアの活動拠点として、自分たちの存在を町の人にも知ってもらう

今井さんは岐阜の高山出身で、自然に囲まれた中で育ったそう。東京の大学を卒業した後、山好きが高じてモンベルに就職。

「南富良野に来るまでは、大阪に13年、東京に27年、ずっと営業部にいました。会社に入ってからも趣味で各地の山を登ってきましたが、北海道はあまり来たことがなくて...。でも、南富良野はアウトドア好きに最高の環境だというのは知っていたので、行くことが決まったときはうれしかったですね」

夏は登山、冬はバックカントリーが楽しみという今井さん。すぐ目の前に山があるのは、アウトドア好きにとって夢のような場所だと話し、「都会にいると、山を登るにしても、滑るにしても、そこへ行くまでに時間がかかるけれど、ここはすぐそこですからね」と笑います。

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今井さんは南富良野に来てから、町民の方たちにもアウトドア活動について理解を深めてもらおうと、地元の小学校、中学校、高校、そして65歳以上の方が学ぶ同町の「千里大学」で、「アウトドアツーリズムとまちづくりについて」というテーマで講演を行いました。

「生まれたときからこの自然が当たり前にある中で暮らしていると、意外と気付かないことも多いのですが、自分たちの暮らす町がどれだけ素晴らしいかが分かると、意識も変わってきます。我々の活動を理解していただき、今ではモンベルができたことを町民の方たちも喜んでくださっていて、こちらとしてもうれしいですね」

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町の人たちにモンベルの存在が浸透していると今井さんが実感したこんなエピソードも...。夏に小学校の前を通った際、半分近くの子がモンベルのTシャツを着ているのを見かけた今井さん。ついうれしくなって、近くにいた子に「モンベルって知ってる?」と声をかけたら、「知ってるよ!」と元気に答えてくれたそう。

世界中のアウトドアファンも注目のエリア。雇用の場が増え、人口増加にも貢献

「南富良野町にはアウトドアガイドの会社が10社もあり、約40名のガイドがいるんです。この小さな町で10社もあるのはとても珍しく、道内で長い歴史を誇る会社もあります。それだけ自然豊かなエリアということなのです」と今井さん。

バックカントリーに関しては、旭川から南富良野にかけて連なる100キロほどの距離は世界でも有数のパウダースノーが楽しめるエリアで、国内だけでなく、欧米の人たちの間でも人気が高まっています。海から離れた内陸部なのでドライなパウダーが体験できると評判です。町内にある1000m級の山々の中でも、タケノコ山と呼ばれる林間コースがイチオシなのだそう。

夏も国内屈指の美しい川と言われるシーソラプチ川でラフティングなどを楽しめるほか、人造湖ですが自然豊かな環境の中にあるかなやま湖でカヌーや釣りも。町でも積極的に保護活動を行っているイトウが生息していることでも知られています。さらに、湖の周りには人気のキャンプ場もあります。また、自然が織りなす絶景スポットを回れるサイクリングルートもあり、さまざまなアウトドアが楽しめます。

素晴らしいアウトドア活動の環境がそろっていて、ガイドする人たちもたくさんいるのであれば、アウトドアに必要な道具やウエアなどを扱う店があってもおかしくはありません。モンベルという拠点ができることで、アウトドア初心者から経験者までたくさんの人がアウトドアを楽しみやすくなります。さらに道の駅の向かい側に、ホテル「フェアフィールド・バイ・マリオット・北海道南富良野」ができたことで、長期滞在をしてアウトドアを満喫する海外客も増えているそうです。

montbell_nanpu9.jpg今井さんと観光協会スタッフのみなさん

「町を訪れ、滞在する人が増えたのはもちろんですが、モンベルとマリオットができたことで町民も5%増えたんですよ」

観光客が増え、町民も増え、まさにアウトドアを通じた地域活性が結果を出しているのが分かります。

アウトドアの観光客はもちろん、地元の人たちにも支持される店舗

再びモンベルの店舗へ戻り、今度は店長を務める鈴木優也さんにお話を伺うことに。札幌出身の鈴木さんは北海道大学在学中、サークル活動でヒグマや海鳥など野生動物の調査を行っていたそう。

「調査のために山ごもりをしたり、離島に何日も滞在したりするなど、フィールドワークが日常でした。アウトドアスポーツをやっていたわけではないのですが、屋外でテントを張って過ごしたり、山歩きをしたり、アウトドアには触れていました」

montbell_nanpu10.jpgモンベル南富良野店、店長の鈴木優也さん

大学に残って研究職に就くことも考えていたそうですが、モンベルのことを知り、「面白そう!」と新卒で入社します。岡山、広島の店舗勤務を経て、苫小牧店へ。南富良野店がオープンするタイミングで店長として赴任しました。

モンベル南富良野店は、札幌の赤れんがテラス店と同じくらいの広さがありますが、天井の高さがある分「体積で言えば、道内で一番大きいかも」と鈴木さん。広々として開放感があり、商品が見やすいのも特徴です。そのためお客さんの滞在時間が長いとも話します。さらに、夏のハイシーズンは都心の店舗以上の売上を記録したことも。

アウトドアの体験をするために町を訪れた方たちが買い物をしてくださるケースが多いですね。最近は外国人観光客の方が増えています。特に冬は欧米の方たちが町に長期滞在し、その間に買い物に来てくれます」

また、町の人たちも多く店に足を運んでくれるそう。町には農業や林業に従事する人も多く、機能性の高いモンベルのアウターやグッズが活躍。「今井さんが夏にモンベルのTシャツを着た子どもたちの話をしていましたが、冬も子どもたちが日常的にモンベルのものを着用してくれています」と鈴木さん。南富良野の冬はマイナス30度を記録することもあり、子どもたちは軽くて暖かい機能性の高い防寒着を着て通学しているそう。「都会だと、山の中で着用するようなものは日常で必要ないと思いますが、この町ではそれが必要なんですよね」と続けます。

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町の人たちにもアウトドアを楽しんでもらえたらと、店でも単独でイベントなどを企画。「クライミングピナクルもそうですが、未経験の方がアウトドアをはじめるきっかけを提供していきたい」と鈴木さん。大きなクライミングピナクルは、土日祝日に利用することが可能だそう。クライミングピナクルを設置しているお店はありますが、店内にあるのは南富良野店を含め、全国で5店舗だけ。冬でも体験ができます。

アウトドア好きにとって最高のフィールド。そこに暮らす贅沢を実感する日々

さて、ここで今井さんと鈴木さんに南富良野町での暮らしについて伺うことに。2人とも口を揃えて「いいところですよ」と言いますが、不便に感じることなどはないのでしょうか。

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「日用品の店が少ないなど不便さもありますが、必要なものはほとんどネットで買えますし、トータルで考えたら、こっちに移ってきて良かったと感じています。4歳の息子がいるのですが、のびのび遊ばせることもできますし。そして、都心部と違って通勤時間がかからない分、自分の時間も増えました」と鈴木さん。今井さんも「そうそう。それは大きい。東京では2時間の通勤時間も、南富良野は車でたった2分」と笑います。

「あとはすぐそばに山や川などアウトドアの遊ぶ場所がたくさんあることですね」と今井さん。春は山菜採り、夏は登山、冬はバックカントリーなど、目の前の自然を遊び尽くすことができるのは贅沢なことと話します。鈴木さんも、「これまでは休みに時間をかけ、自然の中へ遊びに行くのが当たり前でした。でも、南富良野に引っ越してきたら、アウトドアフィールドの中に暮らしている感じ」と話します。そんな環境に憧れて、モンベル社員の中には南富良野店に勤務したいと手を挙げる人も多いそう。

「札幌や苫小牧でも四季を感じることはできましたが、ここで暮らしているとより季節をはっきりと感じます。それぞれの季節がやってくるのが楽しみなんですよね。冬が近づいてくると、滑れる!ってワクワクしますし、今はもうすぐ春がやってくるのが楽しみですし」と鈴木さん。さらに、「店から見える夕日の美しさも素晴らしいんですよ。南富良野に来てから、日の出、日の入りに合わせて生活をしているような感覚があります」とも話します。

実は3月末に東京へ戻ることが決まっている今井さん。「寂しい気もしますが、南富良野で町の人たちと交流し、アウトドアを通じた活性化に従事できたのは良かった」と、ここでの約2年を振り返ります。「自分はいなくなりますが、これからも南富良野を訪れた人たちに、豊かな自然を五感で感じてもらい、リピーターになってもらえるようなイベントや仕掛けをモンベルのショップや道の駅を中心に展開していってくれると思います。スタンプラリーなども検討しているので、ぜひ皆さんに遊びに来てもらいたいですね」と話してくれました。

鈴木さんも「モンベルがあることで、たくさんの方が南富良野に遊びに来るきっかけになったらと思います。今年の春には、道の駅にドッグランや遊具ができ、より施設が充実しますし、ぜひ立ち寄ってほしいですね。また、地元の人たちにももっと気軽に来てもらえる店にしていきたいです」と締めくくってくれました。

豊かな自然の宝庫である南富良野町。アウトドア活動を通じ、これからますます町が盛り上がっていくのが楽しみです。

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モンベル南富良野店
モンベル南富良野店
住所

北海道空知郡南富良野町字幾寅687-1 道の駅「南ふらの」内

電話

0167-56-7126

URL

https://www.montbell.jp/


アウトドア活動を通じて町の魅力を高める!モンベル南富良野店

この記事は2024年2月27日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。