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帯広市

旨い豊西牛・帯広牛で十勝を元気に!トヨニシファーム20230706

旨い豊西牛・帯広牛で十勝を元気に!トヨニシファーム

白黒まだらのホルスタインの牛といえば、乳牛のイメージが強いかもしれません。
肉牛としては脂が少ない赤身で「国産牛」や「道産牛」として販売されるのが一般的ですが、自社牧場で育てたホルスタイン牛肉のおいしさを消費者に知ってもらいたいと、立ち上がった牧場があります。

帯広市で30年以上肉牛牧場を営み、健康で肉質の良い牛づくりに力を注いできたトヨニシファーム。4代目の小倉修二社長と弟で専務の小倉広樹さんは、赤身だけでなく脂の質にこだわって育てたホルスタイン肉を「豊西牛」としてブランド化しました。

現在は、軟らかくてあっさりとした旨味の赤身肉「豊西牛」、程よいサシの入ったホルスタインと和牛の交雑種「帯広牛」と2つのブランドを手掛け、取引先は全国で250以上に。さらにトヨニシファームで開発中の黒毛和牛は、2022年の十勝和牛枝肉奨励会で最優秀賞を受賞しています。

循環型農業で5,000頭以上の肉牛を飼育するメガファーム

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トヨニシファームの牧場を訪ねると、広大な畑作地帯に、連続して並ぶ白い建物。どこまでが敷地なのかわからないくらいのスケールです。これほどの規模の牧場が帯広市内にあるということに驚きます。

昭和の終わりごろ、20頭の牛から始めた肉牛牧場が現在約5,300頭もの牛を飼育する大型牧場となりました。子牛の育成・肥育を一貫して行い、成長過程によって畜舎や飼料を分けるなど管理を徹底。食肉加工工場も所有し、飼育から加工までを一貫して行うことで、高品質の牛肉や加工製品を生産しています。

専務取締役の小倉さんによると、

「うちの牧場ではホルスタイン牛、交雑牛、和牛の3種類を飼育しています。隣の畑ではデントコーンや小麦、にんにくを栽培していて、デントコーンや小麦を収穫した後の麦わらは牛の飼料として利用し、牛の排泄物は畑の肥料にすることで、無駄のない循環型の農業を行っています」

実は小倉さん、新卒の際には別の食肉販売会社に就職したそう。そこで営業として活躍し、10年ほど経った頃、実家を継いだお兄さんから連絡がありました。
「次の時代に向けて力を貸してほしい」と頼まれたのです。
そこで小倉さんは会社を退社し、トヨニシファームに入社することを決めました。

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小倉さんは営業時代の経験やスキルを活かして、トヨニシファームでも新商品を開発・販売していきます。最初に開発したのは牛のたい肥を使って栽培、熟成発酵させた健康食品の「黒にんにく」。そして自社の牛肉をブランドとして確立するため尽力します。その道のりをたどってみましょう。

赤身肉のおいしさを伝えるためのブランド「豊西牛」

北海道は肉牛飼育数が全国トップ。そんななかでトヨニシファームでは早くから安全でよりおいしいお肉を消費者に届けるための努力を行ってきました。

一般的な肉牛の肥育牧場では、生後9ヵ月ほどに育ったホルスタインのオス牛を仕入れて飼育、出荷します。トヨニシファームでは、最初から管理ができるように15年前から地元の農場で生まれたばかりの子牛を買い入れて育成、肥育する「全量一貫肥育」を行ってきました。飼料には特に気を使っており、牧草や麦わら、自家栽培で発酵させたデントコーン、米ぬかなどを成長段階に合わせて独自にブレンド。1頭1頭をしっかりと観察し、愛情をかけながら世話をしている様子は、まるで人間の子育てを見ているようです。

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しかし、こんなに手間ひまをかけて育てたホルスタイン牛のお肉でも、ひとたび出荷すればほかのお肉とまぜられて「国内産」「北海道産」としてノーブランドで売られるのが普通でした。大手食肉販売会社で営業担当者として10年間、取引現場のニーズを肌で感じてきた小倉さんはこう語ります。

「私がトヨニシファームに入社した2010年には、すでに全国で『生産者がはっきりと分かる、安心・安全のお肉を食べたい』という消費者の傾向がありました。しかし、当時の北海道では生産者が分かるブランド牛がまだ少なかったんですよね。それに、一般的なイメージでは、やはり『肉牛』といえばサシ(脂肪)がたっぷりと入った和牛がおいしいというイメージがあって、赤身肉がメインのホルスタイン牛はずっと劣るという認識でした」

自分たちは、うちで育てた牛を実際に食べてみて本当においしいと感じている。それなのに、ホルスタインというだけで、あまりおいしくない肉とされるのはなぜだろう...。実際の味と食肉市場での評価のギャップにジレンマを感じていたことに加えて、BSEのような社会問題が出るたびに、ノーブランド肉は価格相場が下がってしまうのも悩みの種だったといいます。
安定した経営のためには、牛を卸すだけでなく、生産者が直接販売をする部門をつくり肉をブランド化して消費者の信頼を得ることが大切だと小倉さんは考えました。

そこへ追い風となる時代の変化が訪れます。消費者のヘルシー志向や味に対する好みが変わり、赤身肉に対する関心が向上してきたのです。また、牛肉を乾燥熟成させることで、旨みと柔らかさを引き出す「ドライエイジング」がブームになりました。

「当時、ドライエイジングを行っている人に『ドライエイジングにいちばん適した肉はなんですか』と聞いたら『ホルスタインの去勢牛だ』と言われたんですよ」と、うれしそうに話す小倉さん。

それは、自分たちが丹精を込めて育ててきた、ホルスタイン牛への評価が逆転した瞬間でした。

「いままで和牛より価値が劣るとされていたホルスタインの赤身肉に対して『こっちのほうがいい』と言われたらうれしいですよね。私たちが常々感じていた赤身のおいしさが、うちでつくったホルスタイン牛にはある。そこで、赤身肉の良さを前面に出すために、ブランド名にはファームの名前と地名から取って『豊西牛』と名付けました」

まずは地元の十勝で、飲食・小売店でおいしさをアピール

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ブランド名をつけて売り出しても、全国にはたくさんのブランド牛が存在します。販路を広げることは並大抵のことではありません。小倉さんの戦略は、広告宣伝にお金をかけることではなく、まずは十勝の飲食店やスーパー、百貨店などを巻き込んで、地元の人たちに「豊西牛」のおいしさを知ってもらうことでした。その評判をいずれは全国に広めたい、という作戦です。

さらに販売する上で、食肉業界の常識とされていたことを変える必要がありました。

「十勝で育てた牛でも、屠畜(とちく)したお肉というのは全部本州に行ってしまって、地元では食べられなかったんですよ」と小倉さん。

地元でつくられたものが、そこに住んでいる人たちの口に入らないって、どういうことなのでしょう?

「牛は基本的に一頭買いですからね、価格は60、70万円するし、お肉の量が多くて部位もさまざまだから、地元の飲食店の方が買ったとしても使い切れないんですよ」

そこで小倉さんは、地元の飲食店でも買いやすい販売方法を始めます。

「豊西牛を使いたいというお店の人たちとやり取りを重ねながら、『この部位はこのお店に、この部位はこういうふうに使って、この部位は他に売ろう』と調整することで、なんとかロスが出ないように売りさばいていきました」

このようにして、飲食店やスーパーなどで積極的に使ってもらえるように働きかけた結果、豊西牛のおいしさが、十勝の人たちに知られるようになります。回転ずしの人気チェーン店では、期間限定のローストビーフ握りが好評を得て、フェアなどでたびたび使われるようになりました。道内外の物産展やイベントにも積極的に出て、中は軟らかく外はカリッと仕上げた自社開発の「豊西・カルビ串」を販売したところ大人気に。小倉さんが焼きながら接客をするときもあり、お客さんの生の声をヒアリングしていきました。

3年後には加工場を新設して、食肉加工から調理品製造までを一貫して行える体制を整えました。オンラインストアでは、急速冷凍で旨みを逃さないステーキや焼肉用のお肉、ローストビーフにハンバーグなどのラインナップを充実させていきました。お値段もお手ごろとあって、リピーターも増えていきます。

豊西牛の魅力について小倉さんは

「赤身と脂のバランスが良くて、食べやすいお肉なんですよ。もちろん霜降りのお肉もおいしいけれど、多くは食べられないですよね。豊西牛は食べ飽きることもない、普段使いのできる親しみのある存在としてのお肉になってきたと思います」。

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赤身の部分はもちろん、脂のおいしさも追究して改良を重ねてきたお肉だからこそ、自信を持って勧められる。トヨニシファームの豊西牛に対する自信を感じます。

名前にふさわしい品質を、覚悟を持って名付けた「帯広牛」

2021年には「もう少しサシの入ったお肉が食べたい」というリクエストにこたえて、黒毛和種とホルスタイン牛をかけ合わせた交雑種を開発、「帯広牛 BLENDED BEEF」としてブランド化しました。程よくサシの入ったジューシーな帯広牛は、地元だけでなく全国でも好評。飲食店では豊西牛と帯広牛の食べ比べメニューも登場しました。

市の名前でもある「帯広」をブランド名に使う上では、それにふさわしいお肉をつくるという責任感を強く感じるようになったと小倉さんはいいます。

「覚悟は要りましたね。それでも、ブランド肉に土地の名前をつけることで、「帯広」という地名を日本中に知ってもらい、知名度をアップする良い機会にもなると思うんですよ」

帯広市で30年間根付いてきた牧場として、トヨニシファームはまず地元を大切にすること、地域に貢献することを考えてきました。

「東京で売ることを目指すなら、東京だけに向けて販促を行えばいいわけですよね。でも、それは違うと思っています。むしろ、地元で調理して食べてもらって『おいしいね』と評価をいただくことで、それがブランディングになり、評判が広がって東京の人から『ぜひ使わせてほしい』と言われることを目指していました。『食べたかったら帯広においで』と言えるぐらいの感じが良いのかなと思っています」

ブランド化で家族や友人に認められた仕事への誇り

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自社牛肉をブランド化したことは、トヨニシファームで働くスタッフの自信にもつながります。和牛繁殖課課長の松島菊朝さんが、入社からこれまでの体験を語ってくれました。


福岡県出身、サラリーマン家庭で育った松島さんは、子どものころから関心を持っていた農業系の大学への進学を希望していました。「どうせ農業を学ぶなら日本でもいちばんの十勝地方へ!」と北海道へ渡り、帯広畜産大学に入学。卒業後は、学生時代にアルバイトをしていたトヨニシファームへそのまま就職したのでした。

「雪はちょっと大変だけれど、夏は福岡のように暑くなくて涼しいし、冬の寒さも上着を調整すればいいので問題ありません」

と、帯広での生活を語る松島さん。入社の決め手となった理由は、

「バイト中によく焼肉をご馳走になって、そのお肉がとてもおいしかったから!自分もこのおいしい牛肉をつくる側になって、福岡の家族や知り合いに送って食べてもらいたいと思いました」

そんな期待を持ってトヨニシファームに入った松島さんでしたが、入社したときは、まだ育てた牛はすべて食肉業者さんに卸していた時代。直売も行っておらず、本州の人達の口に入る機会がなかったのです。

「周囲からは『大学まで出ているのに、なんでわざわざ牧場に入ったの?』と言われました。その答えとして、自分で育てた牛肉を送って食べてもらいたかった。そうすれば、なぜ自分がトヨニシファームに入ったか、そして、いま仕事でやっていることを形として見せることができたのにと、すごく悔しい思いをしましたね」

それから7年たって小倉さんが入社、牛肉のブランド化や直販をはじめるという話を聞いて、松島さんの胸は躍ります。

「ようやく自分の夢がかなうと思いました!」と笑顔を見せる松島さん。小倉さんも笑いながらうなずきます。

念願かなって、トヨニシファームの名前を冠した「豊西牛」を地元に送った松島さん。喜びの声が次々と返ってきます。

「それまでと反応がまったく違いましたね!うちの知り合いや、福岡の友人や家族も『豊西牛』というブランドを知って、『おいしかったよ』とか『あれから、お店で豊西牛を見たから買ったよ』と感想をくれました。うちの姉はお中元やお歳暮によく利用してくれるようになったんですが、やはり評判が良いようで、先日は東京に住む方から『都内のどこで豊西牛が食べられるの?』と聞かれたぐらいです」

元々おいしいと自身を持っていた肉が「豊西牛」として認知され、さらに和牛とホルスタインを交配した「帯広牛」を加えることで味のバリエーションも増加。そのブランドを担うスタッフの人たちが誇りを持つようになる。それは、トヨニシファームで働く人たちの定着率の高さにも表れています。

4年後の和牛オリンピックに向けて、最強の和牛づくりに挑戦!

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トヨニシファームが次に狙っているのは、2027年に十勝で行われる全国和牛能力共進会。通称「和牛のオリンピック」と呼ばれる、全国規模の和牛品評会です。繁殖業務を担当している松島さんに、オリジナルの和牛開発について教えてもらいました。

「和牛は、競走馬のように血統の掛け合わせが重要になってくるんです。体が大きくなるとか、脂肪率が高くなるとか、脂肪の質が良いとか、食べたときの舌触りが良いとか、それこそいろんな長所を持った血統の牛がいるんですね。そこで、うちが理想とする状態を社長と話しながら、血統を組み合わせて繁殖を行っています。実際に試食してみて、『やりたかったことが反映されているね』『ここはもう少しやっていこう』と確認しながら、理想の和牛に近づけていくんです。和牛は霜降り部分が多いので、血統の掛け合わせだけでなく、脂肪の質にこだわったエサのやり方も研究しています」

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10年前から和牛開発を行ってきたトヨニシファーム。2019年と2022年には出品した黒毛和牛が十勝和牛枝肉共励会の最優秀賞を受賞しました。日本各地の強豪ブランド牛が揃う和牛オリンピックへの参加は緊張感もありますが、それだけにやりがいもあるといいます。マグロで言えば「赤身、中トロ、大トロ」のように、牛肉もバリエーションが増えることで消費者の好みにこたえたい。和牛オリンピックに参加することで技術を磨き、全国に通用する十勝発信の牛肉を提供していきたいと話す小倉さんと松島さん。牛肉にかける気概と、地元である帯広・十勝への愛着を感じました。

有限会社トヨニシファーム
有限会社トヨニシファーム
住所

北海道帯広市豊西町西4線9-3(生産事業部)

電話

0155-59-2004(9:00〜17:00)

URL

https://toyonishifarm.co.jp/


旨い豊西牛・帯広牛で十勝を元気に!トヨニシファーム

この記事は2023年5月24日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。