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北広島市

林業の現場を支える、林業機械のプロ (株)澄川工作所20230327

林業の現場を支える、林業機械のプロ (株)澄川工作所

くらしごとではこれまで、たくさんの林業の現場を取材で訪れてきました。
そこでいつも目を惹くのは、大活躍する林業機械たち。伐り倒した木を運搬するフォワーダ、巨大な木材を手のように掴んだり積み上げたりするグラップル、木を伐り倒し、枝を切り払い、幹を切断して丸太にするまでを一貫して行えるハーベスタなど・・・。林業ならではの複雑な作業も器用に行えてしまう林業機械は、とっても大迫力でかっこいいのです。
その一方で、林業機械はとてもつくりが複雑でメンテナンスも難しいもの。
その製造からメンテナンスまでをトータルで請け負い、林業の現場を陰で支えている会社が、北広島市にある株式会社澄川工作所です。

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困った時もなんとかしてくれる、林業機械のなんでも屋さん。

澄川工作所は昭和41年の創業。
創業当時は林業で使うワイヤーを販売している会社でした。林業機械がまだあまりメジャーではなかった当時は、山の中で伐り倒した木材をワイヤーで引っ張って集めていたのです。
時代が変わり高性能な林業機械が発達してくると、ワイヤーの販売は建築土木資材部門へと移行し、今は林業機械の製造と販売がメイン事業となっています。

林業の現場には、山の中での木の伐採や丸太の生産など特殊な作業がたくさんあります。林業ならではの複雑な作業に対応させるために、林業機械は建築現場などで使われる重機を改造して作られています。

「林業機械は、お客様の要望に応じて重機本体とアタッチメント(重機先端に取り付ける装置)をドッキングし、細かいオプションを組み合わせて製造します。ハーベスタのように、伐倒する・切断する・枝を刈り払う・掴むなどの複数の機能を有する高性能林業機械は、つくりがとても複雑で特殊な改造が必要になるんです」

そうお話ししてくれたのは、代表取締役の齋藤聖悟さん。

sumikawa_k_17.JPGこちらが代表取締役の齋藤聖悟さんです。

澄川工作所の大きな特徴は、「林業の機械屋」であること。林業ならではの重機を、顧客の要望にこまやかに対応して製造する。このように、林業機械に特化しているのは、北海道では澄川工作所だけなのだそう。
さらに澄川工作所では、製造・販売だけでなく、その後の林業機械のメンテナンスまでも行います。

「たとえば重機本体とアタッチメントのメーカーが異なる場合、それぞれのメーカーさんは自社の部分しか見ることができないので、機械が故障したとしても本体とアタッチメントのどちらに原因があるのか分からない。その点、うちは林業機械の専門家として、メーカーに関係なく本体もアタッチメントも総合的に見ることができます。林業機械の面倒をトータルで見ることができるのが、うちの一番の強みです」

山の中で林業機械が故障すると、林業の現場全体の作業が止まり、事業者にとっては工期が遅れてしまうといういち大事になります。
そんな時に山の中まで駆けつけて、特殊な仕様の林業機械にもすばやく柔軟に対応できるのは、澄川工作所だけ。

「林業機械は仕様が同じということがないので、とにかく現場で臨機応変に処置をして、機械を再び動かしてあげることが私たちのミッションです。そのために想定される道具も一通り用意して、想定外のことにも工夫してその場で対応する。それをやってのけることで、『澄川工作所に頼めば何とかしてもらえる』という信頼関係をお客さまと築いているんです」

澄川工作所は、まさに「林業機械のなんでも屋さん」という存在なのです。

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未経験でも、知識と経験を積んで林業機械のプロを目指す。

「林業機械のなんでも屋さん」である澄川工作所は、山の中で初めて見る機械や事例にも臨機応変に対応することが求められます。工具も部品もマニュアルも揃っている一般的な整備工場とは、ひと味違う難しさのある現場です。

今回は、そんな現場で働く社員さんにもお話をうかがいます。
お話ししていただいたのは、永友公貴さん。永友さんは入社5年目の25歳で、澄川工作所の19名の社員の中でも最年少です。
恵庭市の出身で、恵庭北高校を卒業した永友さんは建築の基礎工事を行う会社に就職。その後結婚して転職を考えているときに、澄川工作所に出会いました。

sumikawa_k_5.JPGこちらが永友公貴さんです。

「前の会社はとても忙しくて、なかなか自分の時間が取れなかったんです。結婚して、家庭の時間をもっととれる会社に転職しようとしていた時、父の知り合いが澄川工作所を紹介してくれて転職を決めました。車が好きだったので、ここで働けば自分で車をいじれるようなスキルもつくからいいかなと思って」

とはいえ、前職では機械に触ったこともなく、林業の世界も全く知らなかったという永友さん。入社したての頃は初めて見る世界に驚いたと言います。

「林業の機械の会社だとは知っていましたが、林業については全く何も知らなくて。仕事の現場は山の中がメインなのですが、片道2〜3時間かけて山の奥まで入っていくのは最初は衝撃でしたし、こんな風に林業に特化した機械があるなんてかっこいいなと思いました。同時に、『この機械を自分が見るのか〜』とも感じましたけど(笑)」

全くの未経験の状態から入社した永友さんは、どのように仕事を覚えていったのでしょうか?

「基本的には先輩についていって学んでいき、少しずつやらせてもらう仕事を増やしていく感じです。最初は工具のサイズすら何も分からなかったので、そういう最低限の知識は自分で必死に覚えましたね。先輩たちについていっても、工具すら分からなかったら何もできないですから」

sumikawa_k_10.JPG分からないことは先輩たちになんでも聞ける環境と話します。

入社から1年経つ頃には、簡単な作業の現場から1人で行くようにもなりました。
そこで感じるのは、やはり現場の状況に即対応しなければならない難しさだそうです。

「現場に行くと、初めて見る仕様の機械の時もあるし、事前に依頼されていた内容以外の仕事が生じたりする時もあります。最初の頃はもうドキドキでしたね。今でも、どうしても分からない時は工場長に電話して聞いて、どうにか現場で機械を動かせるように頑張ります。電波が届かない現場の時は緊張感が増しますね(苦笑)」

林業の現場の人たちは、一刻も早く林業機械が動くようになるのを待っています。
「林業機械のなんでも屋」としてその期待に応えるためにも、「経験値を積んで引き出しの数をたくさん増やしていくしかないです。なので、分からないことや不思議に思ったことはどんどん聞いて、なるべくたくさんのことを吸収したいと思っています」と永友さん。

sumikawa_k_9.JPG山の中で活躍する林業機械にもたくさんの種類があります。

マニュアル通りにはいかない現場の大変さはありますが、その一方で林業機械を直すことができた時の喜びはひとしおだと言います。

「機械が直った時やお客様の要望に応えられた時はとてもやりがいを感じますし、次へのモチベーションにもなります。自分が培った経験が活かせたと思うとうれしいですね」

山の現場は遠くて移動が大変な時も多いそうですが、帰り道にその土地ならではのお土産を買って帰ることも楽しみのひとつだと教えてくれました。
永友さんの今後の目標は、「ハーベスタのような複雑な高性能林業機械も、少しずつ自分でも対応できるようになること」だそう。

「ハーベスタを扱える人は社内でも限られているので、自分が全ての機械を扱えるようになれば、その人たちの仕事も楽になりますから。僕自身も全くの未経験からのスタートで当然大変なことも多いですけど、一般的な整備工場とも違う環境で特殊な技術が身につけられるので、機械をいじるのが好きな人には楽しい仕事なんじゃないかなと思います」

sumikawa_k_21.JPGインタビューにも撮影にも爽やかな笑顔で応えてくれる永友さんです!

経験を活かした新しい試み。「林業×IT」

澄川工作所は林業機械のプロですが、その仕事内容は林業機械だけにとどまりません。
たとえば、北の森づくり専門学院の教務システム(職員がつかうコンピューターシステム)を手掛けたり、北海道地域情報セキュリティ連絡会(HAISL)と情報セキュリティについて若手エンジニア向けに講師をしたり・・・林業とは直接関係しない、コンピューターシステム関連の事業も行なっています。

澄川工作所でこのようなシステム関連の仕事が少しずつ広がっている理由は、齋藤社長が元々はIT関連の仕事をしていたことが大きいようです。
ここからは、齋藤社長のお話を伺っていきましょう。

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齋藤社長は現在46歳。恵庭市の出身で恵庭北高校を卒業後、進学のために関西の立命館大学へ。大学では機械系の学部へ進学し、新卒で大阪のIT企業に就職しました。その会社を4年で退職したあとは、なんと青年海外協力隊としてフィリピンへ行き、大学のコンピューターシステムのアドバイザーとして活躍していたのだとか。
帰国して大阪で数年働いた後、父親が経営していた澄川工作所の後を継ぐため37歳の時に地元に帰ってきました。
2019年に2代目社長に就任した齋藤社長ですが、北海道に帰ってくるまでは林業機械には全く馴染みがなかったのだそう。

「父親が経営しているからとはいえ、家と会社は離れていたので小さい頃から林業機械を眺めていたわけではなくて、本格的に林業機械に関わったのは、澄川工作所に戻ってきてからです。もともと会社を継ぐ気は全くなかったのですが、後継者がいないという話があったので『仕方ないな』くらいの感覚で帰ってきました」

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前述の経歴のとおり長らくIT業界に携わってきた齋藤社長は、林業の業界でIT化が進んでいないことに驚いたと言います。
そこで2015年、齋藤社長は仲間と共に『林業ハッカソン(※)』というものづくりイベントを主催。林業関係者とIT技術者を集め、林業の課題をITの視点からどのように解決できるかを話し、「林業×IT」のアイデアを出し合う機会をつくりました。

「ITの世界にずっといた僕が林業の世界に入ってきた時、あまりにもIT化・システム化が遅れていて驚いたと同時に、『林業×IT』で色々と面白いことができるんじゃないかと思ったんです」

(※)ハッカソンとは、ハック(Hack)とマラソン(Marathon)を掛け合わせて造られた造語で、ITエンジニアやデザイナーなどが集まってチームを作り、特定のテーマに対してそれぞれが意見やアイデアを出し合うイベント。現場で困っていることを実際にヒアリングし、IT技術を駆使してどう問題を解決できるかなどをチーム毎に考え、実際にプロトタイプを制作し、発表までを行うというものです。

sumikawa_k_20.JPG高性能林業機械であるグラップルをVR体験できるソフトをゲーム会社と共同開発したそうです!

このようなIT業界での経験を活かした活動に加え、「林業のなんでも屋さん」ならではの自社オリジナル商品を地元福祉施設で製造してもらうという「工福連携」の取組みも行なっています。

「山の中を走る林業機械のキャタピラが滑らないように、キャタピラ用の滑り止めを自社商品として販売しています。これは商工会のつながりで、北広島の福祉施設に製造をお願いしているんです」

他にも、北広島市の観光について検討する観光協会の委員会に参加したり、情報セキュリティ監査の資格を活かして自治体の監査を請け負うなど、林業の業界だけにとらわれない活動を多くしている齋藤社長。

「僕がいたIT業界は外のコミュニティとのつながりが強い世界でした。でも林業業界は外とのつながりがほとんど無い世界で、それが不思議だなと思っていました。林業ハッカソンで色々な分野の人を集めたのも、そういう自分の土壌が影響しているのかもしれません」

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林業機械だけにはこだわらない。目指すのは社員が安心して働ける会社。

齋藤社長のお話を聞いていると、林業とは異なる業種にいたからこその視野の広さや枠に捉われない軽やかさを感じます。そこには、会社をもっと働きやすく、より良い場所にしたいという社長の思いもあります。

「会社の軸足は3本くらいあると安定するかなと思っています。林業機械部門と資材販売部門、これからはシステム部門も本格化させていく。林業機械にこだわるのではなく、いろんなことにトライして幅を広げることで、事業としての売上げを上げ、従業員に高い給料を払えるようになる。そうして澄川工作所で働ける優秀な人材を育てていきたいんです」

「林業機械のなんでも屋」という澄川工作所ならではの強みは、従業員の優れた技術と対応力があってこそ。たとえ未経験から入社したとしても、従業員をしっかり育成し、安心して働いてもらうことが重要だと齋藤社長は言います。

sumikawa_k_12.JPG社員のみなさんの笑顔を見ていると風通しの良さを感じます!

「会社としてはこれからもっと成長して、規模を大きくしていきたいです。我々はお客様の『澄川工作所に頼めばなんとかしてくれる』という信頼に対してきっちり応えていきますが、それで従業員に負担をかけることは違います。従業員にも休暇は休暇で楽しんでもらい、ゆとりをもって仕事をしてもらえる会社にしていきたいんです」

お話を聞かせていただいた従業員の永友さんも、「家族との時間をもちたい」という理由で澄川工作所に転職してきた1人。
「前の会社は日曜日しか休みがなかったのですが、今は隔週土曜と日曜・祝日は必ず休みなので、家族との時間や趣味の時間をしっかり取れるようになりました。入社当時やりたいなと思っていたとおり、自分の車を趣味であるアウトドア仕様に自分で改造したりもできたんですよ」と笑顔で話してくれていましたが、その背景には、齋藤社長の「従業員にも快適に働いて人生を充実させてほしい」という思いがありました。
永友さんは、「社長が社員のことを考えてくれている姿勢は、自分のモチベーションにもなるので。自分も先輩方の負担を減らせるように、技術面でも成長したい」とも話してくれました。

「林業機械のなんでも屋」という北海道で唯一の立場を確立しつつ、異分野への挑戦も止まらない澄川工作所。
今後もどのように進化していくのかがとっても楽しみです。

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株式会社澄川工作所
株式会社澄川工作所
住所

北海道北広島市大曲工業団地1丁目3-6

電話

011-377-8680

URL

https://sumikawa-works.co.jp/


林業の現場を支える、林業機械のプロ (株)澄川工作所

この記事は2023年1月27日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。