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このまちのあの企業、あの製品
函館市

父や先輩の背中を追って挑む、海洋土木という仕事。(株)菅原組20230216

父や先輩の背中を追って挑む、海洋土木という仕事。(株)菅原組

道南の松前町で土木建設業の会社としてスタートした「菅原組」。創業から60年以上の歴史ある会社です。現在は本社を函館に置いて、海洋土木を中心に事業を展開しています。業界内では「海洋土木の菅原組」として知られ、確かな技術力で道外からのオファーも多数。また、海に携わる仕事をしている企業として、海を守り、海洋資源(昆布)を育てていく事業にも取り組んでいます。

養殖事業部についての記事はこちら

今回はそんな同社の核である海洋土木事業に携わる社員の方に会社のこと、仕事のことについて伺いました。

年齢を重ねても活躍できる仕事を。営業マンからの転職

今回、インタビューに応じてくれたのは工藤興起さん。入社から2年半の若手です。ハキハキと元気の良い受け応えから20代かと思いきや、「よく間違えられるんですが、実はもう34歳の転職組なんです」と笑います。

通信系の営業をしていたという工藤さん。営業の仕事は好きでしたが、残業が多く、休日返上で仕事をするハードワークだったそう。このままの働き方を続けて、年齢を重ねていくことに不安を感じていました。

sugawaragumikouuwan18.JPGこちらが工藤興起さん
「歳を取ったときに同じような働き方はつらいなと思ったんです。父親にその話をしたら、菅原組は将来的なことも含めていい会社だし、年配の人たちもたくさん活躍しているから、転職を考えてみたら?と。父は菅原組で技術者として働いていて、僕自身も子どもの頃から菅原組は身近な存在でした。また、歳を取っても活躍できる場所があるというのは魅力だなと感じました」

菅原組は変化を恐れず、常にチャレンジを続けている会社。海洋土木の事業で名を馳せているにも関わらず、そこにあぐらをかくことなく、これからのことを見据えた新しい海洋土木事業の在り方を探り続けています。冒頭で触れた昆布事業もそうですが、自分たちの持っている資産や経験をどう生かし、社会に貢献していくかを模索。今後増えていくと考えられる洋上風力発電などに関しても積極的に情報収集を行い、いち早く対応ができるようにと動いているそう。つまりこういった姿勢は、社員の能力を埋もれさせないよう活躍の場を広げるための努力とも言えます。

何も分からない中、できることが増えていく喜びを実感

転職を決めた工藤さんは作業船の甲板員(こうはんいん)として働き始めます。海洋土木を行う菅原組には、自社で所有する作業用船舶が4隻あり、工藤さんは2017年に新しく造られた「第十八すがわら号」に乗船しています。

sugawaragumikouuwan31.jpgその大きさに圧倒される、「第十八すがわら号」

「まったくの異業種からの転職だったこともあり、見るもの、聞くもの、初めてのものばかり。最初は機械や工具の名前を言われても分からないし、それを何に使うのかもさっぱり分からなかったのですが、先輩たちのそばで実際の仕事を見て、その場で教えてもらって、自分も作業をさせてもらいながら少しずつ仕事を覚えていくという感じです」

現場によって作業内容も異なり、いつも同じというわけではありません。その都度、新しいことを習得していきます。工藤さんは、「どんな仕事もそうだと思うのですが、できることが増えていくのはすごくうれしい」と楽しそうに話します。

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仕事場は、管内で一番大きな作業船「第十八すがわら号」

海洋土木、港湾土木の仕事は、港を使いやすく整備すること。主に消波ブロックの設置、海底の土砂を取り除いて船舶の通り道を造るしゅんせつ工事などを行っています。ときに、座礁船や沈没船の引き上げといったサルベージの仕事もあるそうです。道内外から依頼がくるので、函館周辺以外の現場もあります。工事内容によっては数カ月現場に張りつきになることもあるそうです。

「僕が行った中で一番遠い現場は気仙沼、一番長かった現場は青森の3カ月でした。長期で現場に入るときは船で暮らすといった感じです。船の中にはそれぞれ自分の部屋があり、プライベートも確保されています。食事も付いていて、想像していた以上に快適です。ゴールデンウィークなど長期の休みのときは函館に帰ってこられるので、船での生活も苦にはなりません」

sugawaragumikouuwan17.JPGまるで普通のアパートのような広々居住スペース

sugawaragumikouuwan16.JPG個室も充分な広さ

「第十八すがわら号」は、管内で一番大きい作業船。最大400tの吊能力がある全旋回のクレーンを有する多目的なハイブリッドタイプの重機船です。一番大きな消波ブロックは1ブロック100t(軽自動車約100台分!)あり、それを設置する作業ができるのは、管内ではこの「第十八すがわら号」だけなのだそう。この船を造ったきっかけは、いずれ消波ブロックは大型化していくだろうという社長の考えからでした。実際、この数年で消波ブロックのサイズは大きくなり、「第十八すがわら号」は大活躍しています。

プロ集団の中で、高い志を持って仕事に取り組む

現在は、船団長以下6人の優れたスタッフが「第十八すがわら号」で作業を行っています。管内随一の機能や性能を誇るこの船を扱うプロフェッショナル集団です。

sugawaragumikouuwan10.JPGクレーン操作は、熟練の担当者が

「僕の仕事は、クレーン回りのものがメイン。クレーンで資材を吊り上げる際、どうしても人の手が必要で、クレーンの下でワイヤーを巻くなどの仕事をしています。冬の作業は寒くて大変でしょうと言われるのですが、僕的には夏の暑さのほうがキツイです。冬は動いていたらだんだん暖かくなってくるのですが、夏は海の上なので日差しの照り返しもあって、ものすごく暑いんです(苦笑)」

船では高いところでの作業もあるそう。実は高いところが苦手だったという工藤さん、仕事をしているうちに気が付くと高所にも慣れていたと笑います。

また、船で作業するにあたって船舶免許などの資格が必要となるのですが、これらは入社してからすべて取得しました。資格取得のサポートも会社のほうで行ってくれたそうです。

「実はまだ取りたいと考えている資格があります。受験するのに経験年数が足りないのですが、2級土木の施工管理技士の資格を取るための勉強を今から始めています。この資格を取ることで、現場全体が見渡せるようになるかなと思っています」

sugawaragumikouuwan4.JPG写真で見える以上に、けっこう高い場所ですが、工藤さんは平気

やりがいと誇りを感じながら、先輩たちから学ぶ日々

安全に仕事を行うため、チームワークも重要となる船の作業。先輩たちとしっかりコミュニケーションを取りながら、日々の作業に励んでいます。

「先輩たちはオンとオフの切り替えがとても上手。オフのときはふざけあったりしていますが、仕事のスイッチが入ると真剣モードに。当たり前のことではあるのですが、その集中力が本当にすごいと思って見ています。土木の現場は危険なこともあり、僕自身も何度か危うく...という経験をしましたが、一度もケガをしたことはありません。それは、経験値の高い先輩たちがケガをするような事故が起きる前に、素早く察知して危険回避を促してくれたからなんです。僕も早く先輩たちのようになりたいと思っています」

sugawaragumikouuwan26.JPG怒られているのでは、、、、ありません!

全幅の信頼を置き、尊敬している先輩たちから学ぶことはまだまだあるという工藤さん。そんな先輩たちと一緒に、「第十八すがわら号」で仕事ができることも誇りに感じているようです。今は先輩たちを見習いながら、どんどん経験を積み、できることを増やしていきたいと話します。

「規模が大きく、設備も整ったこの船に乗せてもらい、精鋭部隊の先輩たちと一緒に仕事をさせてもらえるのはとてもありがたいこと。そばに優秀な人たちがいると、とても勉強になりますからね。また、仕事のスピードや完成度の高さから、各現場で『菅原組に頼んで良かった』と声をかけてもらえるのも本当にうれしいです」

優れた仕事をすることで高い評価を得ている「第十八すがわら号」。その一員として仕事をすることが何よりも誇らしいという熱い気持ちが、言葉の端々から伝わってきます。

甲板員の経験値を上げながら、得意の「しゃべり」も生かす

気候変動などで災害が増えている昨今、消波ブロックのサイズは大きくなり、堤防も高くなっています。災害対策としての港湾土木の仕事は増えており、大きな消波ブロックの設置が可能な工藤さんたちの「第十八すがわら号」は引く手あまた。海に携わる人たち、海の近くで暮らす人たちを守るための土木工事は重要な仕事です。

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「本来、『すがわら第十八号』は8人のスタッフがいればベスト。今は人手不足で6人で頑張っています。ほかの作業船も同様に人手が欲しい状況です。興味のある方がいたら、ぜひ甲板員の仲間になってもらいたいですね。僕のように異業種からの転職者も多く、皆それぞれ活躍しています」

取材時に同席していた常務の菅原峻さんや先輩の菅原健太朗さんも転職組。常務は林業から、菅原健太朗さんは音楽と料理の世界からの転身だそう。「未経験からでも工藤くんのように活躍しているスタッフがたくさんいるので、少しでも興味がある方は大歓迎です」と常務。

工藤さんは転職してすぐの頃、船で暮らすことに少し不安もあったそうですが、前述したようにプライベートも確保され、生活するための環境はすべて整っているので、すぐに不安は解消されたと話します。また、基本的に土日は休み。天候や仕事の進み具合によって仕事をしなければならないこともあるそうですが、しっかり休息は取れます。

sugawaragumikouuwan13.JPG左から、甲板員の鈴木さん、船長の畑山さん、工藤さん、工務課長の菅原健太朗さん、常務の菅原峻さん

「どんな仕事を頼まれてもすべてうまくできると思うくらい、『すがわら第十八号』はチームワークがよく、先輩たち一人ひとりの能力が高く、設備も整っています。仕事をはじめて2年半、この素晴らしい環境で、もっと甲板員として経験を積んでいきたいです。また、人前でしゃべることが得意だった営業マン経験を会社の仕事で生かせる場面が作れたらとも思っています」

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これからの目標や想いを最後にそう語ってくれた工藤さん。人前で話すことが得意という工藤さんは、インターンシップの学生たちが来た際の船内説明などをすでに担当しているそう。胸を張って仕事について語る姿はきっとイキイキしていることでしょう。甲板員としての経験値を上げつつ、得意も生かせる環境でやりがいを持って仕事に取り組む姿はとても充実して見えました。

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株式会社 菅原組 甲板員 工藤興起さん
株式会社 菅原組 甲板員 工藤興起さん
住所

函館市浅野町4番16号

電話

0138-44-3710

URL

https://www.sugawaragumi.co.jp/


父や先輩の背中を追って挑む、海洋土木という仕事。(株)菅原組

この記事は2022年12月16日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。