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インフラから建築まで安平町の「まちづくり」を担う(株)森本組20230120

インフラから建築まで安平町の「まちづくり」を担う(株)森本組

集合住宅に学校、スポーツ施設、スキー場と「地図に残る仕事」があちこちに。創業1974年、安平町にある株式会社森本組は、公共施設の建築や設備工事、道路や水道のインフラ工事、メンテナンスなど町民の生活に欠かせない事業を行っている土木・建設会社です。

社長の及川定行さんは、森本組の土木部長だった約25年前、先代社長が突然亡くなったため代表取締役に就任。

「土木部門」「設備部門」は順調でしたが、当時は受注が少なかった「建築部門」で働く大工さんの仕事を守ろうと、営業活動に奔走します。夜と昼との区別もないほどに動き回り、眠れない日々が続くほどの苦労を重ねて建築の仕事も入ってくるようになりました。現在は、土地探しから建物、設備や配管までトータルに手掛ける建設会社として「何かあれば森本組に」と頼られる存在です。

morimotogumi2.JPG笑顔がとっても素敵な社長です。

及川社長の長男で「子どものころは家で父親の姿を見ることがなかった」という竣介さんも、愛知県の大学を卒業後すぐに森本組の後継ぎとして入社。未経験の現場に放り込まれては、そのたびに苦労をしながら多岐にわたる仕事を覚えていきました。入社4年たった現在でも「自分はまだまだ」という竣介さん、一人前になったあかつきには、若手だからこそ見える会社の課題を解決していきたいと語ります。

それでは早速、株式会社森本組のストーリーをみていきましょう。

天性のリーダーシップと土地探しの能力を持つ及川社長

株式会社森本組は、主に「建築部門」「土木部門」「設備部門」の3つを大きな事業の柱としています。昔から土木、水道などの設備工事で多くの実績があり、3代目の現及川社長になってからは建築部門の成長がめざましく、集合住宅、中学校、スポーツセンター、道の駅「あびらD51ステーション」など、町内の主要な建物は森本組が手がけています。

morimotogumi10.JPGこの施設も森本組が手がけました。

及川社長は日高管内の出身で高校卒業後は東京に進学。その後も東京で働いていましたが結婚を機に北海道へとJターン、道内にある土木会社に入社しました。東京時代から人を束ねる仕事を得意としてきた及川社長、道内では大規模農地を造成する工事の監督として、その手腕を発揮します。
「山を削って畑にする仕事でね、大型のブルドーザーが8台も入るような現場だった。そこで1人、監督をやらされていたのさ」
たった1人だと苦労が多かったのでは?と尋ねると、「ゆるくはなかったけれど、自分の頭ひとつで動かせる仕事だからね。何もないところにモノをつくる。それには自分の力、裁量が最大限に試される。この仕事の楽しいところだよ」そう語ってくれました。

その手腕は、森本組に転職してからも存分に生かされます。長年の経験から建設用地となる土地探しはお手の物。特に多く建ててきたという集合住宅については、こう話します。
「まず、地図でなんとなく目星をつけてから現地へ出掛けていくんだ。横に長い建物が入る面積が十分にあるかどうか、それを判断する。うちは土木もやっているから、ならしやすい土地かどうか、そういったところも全部見る。これまでに培った自分の『目』を使って、土地を探し出すんだよ」

昨年に森本組が建てた、企業の養鶏農場の用地も及川社長が見つけたものでした。
「養鶏場の計画では4万平方メートルというけれど、敷地に道路やのり面(斜面)をつくったりするから、実質7万平方メートルは必要だと分かる」
土地の形状や地盤も考えながら、その場で建物を含む完成図を頭の中に思い浮かべて提案できるのは、社長の何よりもの強みです。そして、土地の造成から施設の竣工、メンテナンスまですべてを請け負える森本組は、安平町にとっても心強い地場会社なのです。

人材は実力重視のベテラン揃い、苫小牧から通う社員も

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森本組は、確かな腕を持つ社員と提携業者を持つことでも信頼を得ています。社員は12名で、ほとんどが長年勤務のベテラン揃い。
及川社長によれば、業務に心血を注ぐ社員のために会社の待遇や福利厚生は良くしたいと考え、社員には車を貸与しているとか(現在はプリウス)。
「苫小牧市や千歳市、由仁町から通っている社員もいるね。苫小牧から通ったらガソリン代が月5万とか7万とかになってしまうでしょ。だから、現場回りだけでなく家の往復も含めて、ガソリン代も負担しています」

その車で、個人的な買い物や用事に行ってもいいのですか?と尋ねると「もちろん大丈夫、でも『毎週、休みの日は網走へドライブします』って人がいたらダメだけどね!」と陽気な笑顔でジョークが返ってきました。

「仕事をきちんとやっている人ならOK」というスタンスで、その働きぶりには待遇面でもこたえるという、実力主義の会社なのだと社長は笑います。事務の女性スタッフも「昔の書類を出すように言われたら、すぐに出せるような機敏さや正確さが求められますが、子どもが熱を出した時などは柔軟に休みが取れるのでとても助かります」と話してくれました。

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長男として後継ぎを決意、入社したタイミングの「幸運」

冬は追分地区の除雪を一手に引き受けており、所有する除雪車は8台。雪が降るこの町では欠かせない冬の業務です。

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加えて及川社長は、追分地区のハイヤー事業やデマンドバス事業、町営スキー場の運営、パークゴルフ場の委託業務なども請け負っています。「収支がプラマイゼロに近い事業ばかりだけど、町から頼まれるので、地域のためと思ってやっています」

このように、地域から頼りにされている及川社長ですが、昨年は大変なことがありました。

「実は、脳梗塞をやっちゃってね」

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2022年7月に突然倒れて運ばれたのだと言います。
「あれは、息子の私にとっても入社以来の大事件でした」と話すのは森本組の社員であり、長男の及川竣介さん。
社長も「あのときは自分でも 『このまま死ぬのかな』と思ったけれど...。ちょっと倒れるのが早かったかな?」そう言って隣の竣介さんをちらりと覗きます。

子ども時代は「家で父親の姿をほとんど見ることがなかった」と話す竣介さんですが、中学3年生の時に後を継ぐことを決意したそうです。
「親からそう言われてきましたし、卒業後の進路で技術者を養成する苫小牧工業高専を選んだ以上は、自分の道が決まった感じでした」

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その後、推薦で入った愛知県の豊橋技術科学大学で学んでいたときは、別会社に就職することも考えたそうですが、15歳で決めた「初心」を忘れずに、卒業後はすぐに帰郷して森本組に入社し安平町へと戻ってきました。そして倒れたときに社長の近くに奥様と竣介さんがいたことが幸いし、大事に至らず済んだのです。及川社長にとっては、何よりも心強いことだったに違いありません。ちなみに、弟さんも安平町で土を採掘・販売するグループ会社に勤めているそうです。

現場に放り込まれ、恥をかいて、汗をかいてスキルを習得

入社して約4年になる竣介さんに、仕事にも慣れてきたのでは?とお聞きすると、「会社の業務は想像以上に幅が広く、大まかな仕事がようやく分かってきたところです。一人前になるまでは、まだまだ」との答えが。
この数年で特に大変だったのは、養鶏農場の大規模工事で測量を担当したことだとか。札幌ドームがすっぽりと入るほどの広さで、「少しでも計測を間違えたら大変なことになる」と、非常に緊張したそうです。

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いずれは経営を担う身であるだけに、社長や上司から事細かく指導を受けてきたのかと思いきや、「あまり教えてもらってはいないですね」と竣介さん。入社当初も「ほとんど放り出された状態で」施工現場の現場監督を任され、かなり困ったのだと目尻を下げて話してくれました。
「監督は作業指示をする立場なのですが、大学で学んだ知識はあっても、実際にどうすればいいのか分からなくて...」

けれども、作業を進めないわけにはいきません。そこで竣介さんは、本来は指示をするべき作業員の人たちに「これは、どうやるんですか」と逐一聞きながら工事を進めていったといいます。
「みなさん長年のベテランばかりで、やり方もよく知っていますし、聞いて見て覚えていきました」
そして自分で調べられることは調べて、分からないことは恥をかなぐり捨てても、現場で教えを乞う。そうやって、竣介さんは監督としてのスキルを身につけていきました。

会社の多岐にわたる業務のなかで必要とされる資格や免許も、片っ端から独学で取得していきました。
「建設・設備・土木と、ひと通りは取りました。ハイヤーの経営もしているので、タクシー運行管理者の資格も取りましたね」と竣介さん。
父親である及川社長に負けず劣らず、かなりの努力家とお見受けしました。

会社のために、まちのために。親子二代で持つ地域貢献の精神

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「子どものころの父親は、家であまり話したことがなかったので、どんな仕事をしているのかよく分かっていませんでした」と竣介さん。
「入社してから『町内のあれもこれも、全部うちの会社がやっているんだ』と驚きましたし、いまでは安平町に根差した、地域貢献をしている会社だと実感しています」と噛みしめるように話してくれました。

入社してからは、社長のゴルフや夜飲みに同行して、親子で話すことがとても多くなったのだとか。「子どものころからは信じられないほどです。もっとも、話題は仕事のことばかりですけどね」
社長を通じていろいろな人とも顔見知りになり、安平町への愛着もいっそう増しているとか。

「まだまだ一人前でもなく、毎日が精一杯の状態ですが...」と、前置きしながら、竣介さんはこの会社が抱えている課題について話してくれました。

「若い人や中間層がほぼいないので、年代バランスを取るための人材の確保に危機感を持っています」

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及川社長は即戦力になる人材を求める一方で、竣介さんは未経験者であっても積極的に採用をして、人材を育てていくこともいずれは必要なのでは、と考えていると話してくれました。それは、20代初めで入社した経験が根っこにあると言います。
「どこに行ってもかなり年上の人が多いので、質問がしづらいんですよね。自分より3、4歳年上の人だったらもっと聞きやすかったかも...。といった思いがありました」

しかし、まだ自分が口を出す段階ではないともいいます。
「まずは、社長の経営、やり方をすべて学んで、それをうまく引き継いでいきたい。その上で自分のプランも生かしていけたらと思っています」
まずは自分が一人前になることから。力強くそう答えてくれました。

父親である社長を見ていて「何よりも仕事を楽しみながらやっている、それはすごく強いことだと思います」という竣介さん。
「私はまだ仕事を楽しむ余裕はありませんし、正直なところ会社を継ぐプレッシャーも感じています」とも。

「土木・建設業というのはあまり人気がある業種ではないし、同じ仕事をするならみんな札幌や東京方面に行ってしまうんですよね。だからこそ、安平町というまちをもり立てていきたい」と話す竣介さん。
「一度はまちを離れた私がいま分かる、安平町にある魅力を発信していきたいという気持ちがありますし、まちづくりのお手伝いにも協力できたらと思っています」
地域おこし協力隊のメンバーとも面識があるという竣介さん、及川社長と同じように安平町のまちづくりを真剣に考え、担っていく気概を感じさせてくれました。

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(株)森本組
住所

北海道勇払郡安平町追分花園1丁目15

電話

0145-25-2206

URL

https://www.kensetumap.com/company/50772/


インフラから建築まで安平町の「まちづくり」を担う(株)森本組

この記事は2022年12月6日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。