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札幌市

北海道発!キャラクターグッズが生まれる場所。工房アルティスタ20220606

北海道発!キャラクターグッズが生まれる場所。工房アルティスタ

テレビ父さん、ジンギスカンのジンくん、ヒジカタ君など、キュートで個性的な北海道のキャラクターたち。全国にファンを持つキャラクターグッズを日々生みだし、販売している工房が札幌にあります。どのようにキャラクターグッズがつくられているのか、どんな思いがこめられているのか。可愛いキャラクターがあふれかえる工房へ伺い、聞いてみました!

ポストカード展で感じた、発掘して売る喜び

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合同会社 工房アルティスタの代表社員・永谷久也さんに、アルティスタができるまでのお話を聞きました。永谷さんは大学進学をきっかけに、ふるさとの函館から札幌へ。初めて住んだアパートの大家さんが書店も経営していたので、その店でアルバイトとして働き始めたのだそう。


「大学卒業後もそのまま書店に就職して、長く勤めました。最終的には店長をしていましたが、仕入れた本を同じ値段で売る仕事に飽き足らなくなって...そんなある時、店でデザイナーさんのポストカード展を企画・実施したところかなり売れたんです。自分が発掘してきた作家さんのカードが売れたということがとても嬉しかったですね」

永谷さんはこれを仕事にしたい!と、書店を退職することにしました。2002年、35歳の時でした。

営業先の声から生まれた「テレビ父さん」

こうして「ものづくり」のお仕事をスタートさせた永谷さん。まずはイラストレーターさんの絵を自分でTシャツやポストカードなどの商品にして、お土産屋さんに自ら持ち込み営業をするところから始めたといいます。


「ある日、観光名所であるさっぽろテレビ塔へ営業に行くと『ウチのテレビ塔が描いてあるものなら置いてもいいよ』と言われたんです。そこでイラストレーターと相談してできたのが『テレビ父さん』。テレビ塔には既に公式キャラクターがいたので、テレビ父さんは非公式キャラクターとしてグッズ製作・販売を始めました。当時は、ちょうどゆるキャラが出始めた頃。テレビ父さんも人気になり、いつのまにか売上の8割をテレビ父さんが占めるようになっていました。まさかそんなに売れるとは思っていませんでしたね」

それから20年、テレビ父さんは札幌テレビ塔の公式Webにも登場するなど、「非公認キャラクター」としての地盤をガッチリ固めています。ちなみに、当時テレビ塔に勤めていた方も、いまはアルティスタに入り仲間として活躍しているのだそう。

artista_terevitosan.jpgかわいい靴下。テレビ父さんは今年で20年、ベテランの風格です

クリスマスカードコレクションは作家さんとの出会いの場

テレビ父さんと同じ年に始まり、いまも続くのが「クリスマスカードコレクション」。毎年、冬に開催されるポストカード販売のイベントです。

artista_cricolle.jpg北海道の作家さんたちが手がけたクリスマスカードがずらりと並びます

「道内の作家さんからクリスマスをテーマにしたイラストを募り、それをポストカードにして売るイベントとして始めました。2003年の冬からは大通公園で行われる『ミュンヘンクリスマス市』で販売をスタート。毎年200〜300人の作家さんから応募があり、たくさんの作家さんと出会えるんですよ。そこで知り合った作家の『まうのすけ』さんが描いた『ヒジカタ君』は第2号の商品になりました」

アルティスタから作家さんへの声掛けはもちろん、逆に作家さんからキャラクターが持ち込まれることも。人気・知名度ともに高い「ジンギスカンのジンくん」は、北海道出身のイラストレーター「はしあさこ」さんからの持ち込みから商品化されたのだそうです。

1点から作れる工房で、作家さんの世界をカタチにする

こうして北海道の作家さんたちとの繋がりを築き、彼らが生み出すキャラクターを、アルティスタは自社の工房でグッズに変えていきます。

「プリンター印刷でできるTシャツやポストカードなど『外注せずに自分たちで作れる商品』を作っています。作家さんの世界観を実体化して、どんな商品にするか。それをワイワイと相談している時が一番盛り上がりますね。こんな商品がいいなと思ったら工房ですぐに作ってみます。1つの商品の生産数はだいたい50〜100個程度。1,000を超える数は作りませんね。そうして作った商品が売れるかどうかはお客さんに判断してもらえばいいと思っています」

artista_Tprint.jpgTシャツにイラストをプリント。作家さんのつむぐ世界や思いが形になっていく瞬間です

artista_canbadge.jpgジンくんの缶バッジを製作中!

作家さんたちの世界観を大切にして、それに合った商品を少しずつ作るスタイルは、売れるものを大量生産するキャラクタービジネスとは一線を画しています。2015年からは「購買部」として自社での店舗販売をスタート。裏の工房で作った商品がすぐに表の購買部に並ぶ、というスピード感に驚きます。

キャラクターと共に「全国ツアー」へ!

「ジンギスカンのジンくん」は、SNSから人気に火が付き、アルティスタを代表するキャラクターとなりました。それにつれ、ほかの多くのキャラクターや作家さんのファンも増えていきます。
元々、アルティスタはお土産品の製作からスタートしたということもあり、根底には「北海道に来て、手に取って買って欲しい」という思いがありましたが、観光客は季節により増減します。そこで、永谷さんはただ待つのではなく北海道の外へ出て行く決意をします。

「ジンくんが自ら動いて、全国のロフトさんの店舗に行く『ロフトツアー』を始めました。僕がずっとバンドをやっていたので、作った曲をひっさげて全国ツアーに出るように、商品を作ってキャラクターと全国をめぐるツアーに出ようと考えたんです」

このアクティブさが人気に拍車を掛け、ジンくんが登場すると会場は人でごった返すほどに。全国のファンが北海道まで会いに来てくれるようになりました。4月29日、ジンくんの「誕生日会」は多くのファンが祝い、盛り上がります。

そのほかのキャラクターたちも北海道の内外へ出かけ、イベントなどで活躍します。そうしてキャラクターとスタッフが全国を飛び回る最中の2018年9月、北海道胆振東部地震が起こりました。

「地震による大規模停電で物流が止まり、商品を出荷できない状態に。それまではグッズを実際に手に取って買ってもらいたいと通販は行っていませんでしたが、この事態に
対処するため『電脳購買部』を立ち上げ、Web販売を始めることにしました」

さらに2020年からのコロナ禍で、観光もイベントも止まってしまいます。

「作家さんもいるので、生産を止めるわけにはいかない。ひたすらグッズをつくり続けました。そして、なにかしらやっているということをSNSやライブ配信などで発信し続けていきました。やめないことが大切だと思うんです」

キャラクターを外に連れ出し、発信しつづけるのが仕事

発信をしつづけることが大切、という永谷さん。そこで、アルティスタの広報を担当している「ガラさん」にもお話を聞かせていただきました。ジンくんなどキャラクターがイベントへ出る時のアテンドを担当しており、ライブ配信にも登場して日々発信しつづけています。

artista_garasan2.jpgキャラクターたちと一緒に、イベントや動画で活躍するガラさん
ガラさんは札幌出身。一度、北海道外へ出たけれど、後に戻ってきた「Uターン組」です。

「関東でキャラクター関係や接客のお仕事をしていました。ジンくんのことが好きだったので、札幌へ戻ってきた際にアルバイト先としてアルティスタを選んだんです。レジ打ちでもするつもりでしたが、なぜかイベントの舞台に出て何百人もの前で話すことになって...」

青天の霹靂で任されたお仕事とはいえ、明るくハキハキと話すガラさんはまさに広報にピッタリ。彼女を含めアルティスタのメンバーは、ものづくりが好きな人が多いと言います。

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「作家さんとのやりとりなど、一緒にものを作って行くワクワク感を楽しめますね。作家さんが描いたイラストから『なにを作ったらいいと思う?』とお客さんに聞いて商品化することもあります。商品の製造もここで行っているので、販売部で品切れがあったら、ちょっと待ってて!と工房で作り、できたてをお客さんに出すこともありますよ。
アルティスタは北海道に来て、見て、買ってもらうというのが元々の目標でした。でも自分が日本全国のイベントに出向いていくことで、『次は北海道に行って買うね!』と言ってもらえるんですよね。ただのキャラクターグッズではなく、作家さんの思いを形にしたものなので、お客さんにも伝わるといいですね」

キャラクターとともに全国を巡る日々は、コロナ禍で突然ストップしてしまいましたが、アルティスタはSNSやライブ配信をしつづけています。そうした努力もあって、ファンとの関係はより密度を増しているように見えます。

「ジンくんジャンボジェット」が、大空を飛ぶ日を夢見て

「僕やアルティスタのスタッフたちも、キャラクターのアニメやマンガに登場することので、皆さんに親しみを持ってもらえるのかもしれません」と永谷さん。

確かに、スタッフさんたちもキャラクターと同じようにファンから愛され、親しまれている様子が伝わってきます。

ガラさん、永谷さんに今後の目標をと尋ねると...

「皆さんが北海道に来てくれるようにキャラクターを外に連れ出すのが私の仕事なので、早くキャラクターを連れていろんなところへ行きたいですね」とガラさん。

「最近、デパートの物産店にも呼ばれるようになってきました。早く全国にキャラクターを連れて行き、皆さんにキャラクターを知ってもらいたい。そしてぜひ北海道へ会いに来て欲しいと思います。いつかは、ジンくんが大きくプリントされた『ジンくんジャンボジェット』が空を飛んだらいいな〜というのが夢ですね」と永谷さん。

札幌で生まれた工房が、全国に向けて北海道産のキャラクターを発信し続けて行く理由は、「北海道に来てもらいたい」という思いからでした。小さな工房から大きな空へ、ジンくんジャンボが飛びたつ姿、ぜひ見てみたいですね。

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合同会社工房アルティスタ
合同会社工房アルティスタ
住所

北海道札幌市中央区南2条東2丁目16番地 堀尾ビル1階

電話

011-232-5523

URL

https://kobo-artista.com/


北海道発!キャラクターグッズが生まれる場所。工房アルティスタ

この記事は2022年4月1日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。