札幌のお隣江別市にある、一般家庭の水まわりから、江別市の上下水道の設備工事を担う株式会社龍田工務店にお邪魔しました。 社長室に通していただくとDJ機材に、大量のレコード...ギターに...ガンプラ?
江別で不定期で開催される、子どもから大人まで気軽に楽しめるピースフルでノンジャンルなDJパーティ「Brick Party」の仕掛け人であり、江別人による江別のための駄話ラジオ「BRICK RADIO(ブリックレディオ)」を誕生させた代表取締役 龍田昌樹(たつたまさき)さん。 本日はそんな色んなことを手がけている龍田さんに、江別の話、建設業界の未来のお話しをお聞きました!
「遊びも本気!楽しいことがあるから、仕事もがんばれる」という龍田さん。DJパーティにネットラジオなど、江別のまちを遊び場にして、江別を盛り上げる天才だと思いました。
龍田工務店は「江別の水道屋です」
龍田工務店は、龍田社長の祖父にあたる龍田稔氏が、1958年に水道工事店として開業しました。戦後、汲み取り式便所から水洗トイレにしていく仕事を、リアカーに道具を積んで始めたのだそうです。その後、江別市より配水本管工事を受注し、農道の配管工事や江別市内の水道化を行ってきました。
初代社長の稔氏が「将来的には住宅を造りたい」と「龍田工務店」と名付けたそうですが、家を建てたことはなく、一般家庭の水道工事や水回りの修理は行いますが公共事業が中心です。
現在では、上・下水道に関わる水道設備の施工と維持管理をし、浸水から街を守り、河川の水環境を守るのが龍田工務店の主な仕事です。
「下水には、2種類あって雨水と汚水があるのを知ってる?」と龍田さん。
雨水は、雨や雪解け水など自然現象の水なので、そのまま河川へ流せますが、家庭のトイレ・台所・風呂などから出る生活排水である汚水は、下水処理場で処理し、キレイな水にしなくては河川の水質汚濁の原因になってしまいます。
大雨の日には、雨水が大量に流れ込み汚水が浄化されにくくなってしまうのを防ぐ必要があり、絶対に欠かせない仕事なのです。
龍田工務店の「龍」は、水の神様の「龍神」ですものね!
私たち市民が知らない間に、ずっと江別の水や川を守ってくれていたんですね!! 蛇口をひねれば、当たり前にキレイな水が使える便利さは、龍田さんの会社が提供してくれていたことを改めて知りました。
「余暇を充実させる」龍田社長のワークライフバランス
私たちが毎日を生きるために必要不可欠な「水」。
そのライフラインとなる水道設備関係の仕事は1年の中で繁忙期と閑散期があるそうです。昔は、労働日数が多い月は給料が増え、労働日数が少ない月は給料が減る日給月給制が当たり前。
しかし、龍田さんが会社を継ぎ社長になってから、月給制・週休二日制を取り入れ、働き方改革をしたそうです。龍田工務店の社員は現在23名。 全員を正社員雇用しています。半分以上の社員が、龍田さんが社長になる前から働いてくれている60代以上のベテランの職人さん。高齢化で皆さんの体力や健康のことが心配だったからこその取り組みでした。
休みもしっかり取れ、給与も安定させ、身体に負担がかからないように配慮しました。忙しい時期に土日の出勤があった場合は、代休を取ってもらいます。有給制度もあったのですが、誰も取得していなかったので、有給も取りやすいようにしました。
素敵な笑顔が光る女性スタッフ
「政府が働き方改革と言う前に改革したんだよ、自分も休みたいしね」
2日間の休みがあれば身体が休まるだけでなく、余暇の時間も作れます。 龍田さんは、特に若い従業員に「仕事にやりがいを求めるのも良いとは思うけど、やりたいことのために仕事をすればいい」と伝えるのだそうです。車が欲しい、彼女にプレゼントしてモテたい、家族を守りたい、自分の欲望をモチベーションに仕事をしてお金を稼いで、余暇に好きなことをすればいいと考えているというのです。
龍田さんの一声で快く集合してくれたみなさんと!
経営者なら「従業員には、会社の仕事を一生懸命してほしい」って言いそうですが...
「自分も色々やってるのに、他人にダメとは言えないよね(笑)」と龍田さんは笑います。
そう、龍田さん自身も、音楽、DJ、マラソンに冬キャンプと多趣味です。 特に龍田さんのアイデアで2020年4月から始めたネットラジオ「BRICK RADIO」の配信は毎週水曜日に休むことなく続け100回の配信を行いました。
龍田さんは、仕事以外の活動にもたくさんの時間を使っています。
「江別に暮らす人たちが、地域に根差して生活して水を使ってくれるから、我々は仕事ができると思っていて、地域密着で何ができるかを考えている」と、龍田さんは地域活動にも積極的です。
表情が豊かな社長。お話を聞いていると、自然と引き込まれていきます。
生涯の目標は「明るい豊かな社会の実現」
BRICK RADIOは、「コロナ禍のこんな時だからこそ、元気出して楽しくやろうよ!」と江別の情報や出来事を題材に、約30分の番組を週に1回配信するネットラジオ。 「江別で頑張ってる人の様子を伝えたい」と、毎週のようにゲストを迎えて配信してきました。
龍田さんは、昔からラジオを聞くのが大好きで、いつか自分でもやってみたいと思っていたそうです。そこで、コロナで落ち込んでいる今こそ!と、ボランティア活動としてBRICK RADIOをやり始めました。
聴いてくれた方からラジオの感想をもらったり、ゲスト出演いただいた方から「ラジオを聴いてお店に足を運んでくれた人がいた」など、反響があったという話を聞いて、情報発信が少しは地域の役に立ったのかな?と実感できるそうです。
両端パーソナリティに挟まれて立っているのが、ラジオのゲスト!
「お金がないなりにも、やれることはある」と、龍田さんはBRICK RADIOだけでなく、地域社会の中でボランティアとしてPTA役員を受けたり、保護司の活動もされています。 ボランティアや地域活動は、なかなか進んでやれることでもありません。その「地域のために」という貢献の気持ちは、どこから生まれてくるのでしょうか?
「江別が生まれ育ったまちということもあるけど、江別青年会議所での経験が大きいかな」と龍田さんは言います。
青年会議所(JC)とは、20歳から40歳までの志の高い青年経済人によって『奉仕』『修練』『友情』という三信条のもと、『明るい豊かな社会』の実現を目指す青年団体です。
「明るい豊かな社会ってなんだろう?誰にとっても良いまちって何だ?って、ずっと考えてるけど答えは出ないんだよね」
そんな葛藤を抱えつつ、JCの活動の一環として2011年、当時のB級グルメブームを取り入れた食のイベント「エベワングランプリ」を企画します。江別市内の飲食店や農業青年部の皆さん、JCの垣根を超え江別全体を巻き込んで開催され、2日間で約4万6千人を集め大成功を収めました。
その後、龍田さんは北海道道央圏の青年会議所の理事も担い、北海道の各地に「地元のために」と活動している方々がいることを知り刺激を受けます。「生涯、地域と密着して生きていきたい」と思い、龍田さんにとって「明るい豊かな社会」は一生を通じて実現させたい目標となりました。
「40歳を迎えて、青年会議所を卒業したら、一緒に何かできる仲間がなくなったと思ったんだけど...」
エベワングランプリの時に協力してくれた飲食店や農家さん、もちろんJCで活動した皆さんとは、今でも協力し合える仲間となりました。そして「ラジオがやりたいと言ったら、一緒にやってくれる仲間もできた。歳を取れば、またその年齢で楽しいと思うことができるはずだから、それをずっとやり続けたい」とニッコリ。
ラジオメンバーとパシャリ。
面白いことをやってくれる人がいないなら自分たちでやればいい。自分ができないことは、やれる人がやってくれればいい。小さなことでも、いろんな人が色々やれば、どんどん豊かになっていく「明るい豊かな江別」は、龍田さんと一緒にみんなでつくれるかもしれない!とワクワクしてきました。
同じ釜の飯を食う仲間を大切にする
「さて、お弁当を食べながら話の続きをしよう」と、この日は取材陣にもお弁当を用意してくれていました。 龍田工務店では、福利厚生の一環として、月に2回地元飲食店にテイクアウトのお弁当を注文し、従業員みんなで食べるということをしているのだそうです。
BrickRadio vol.56にゲストインしてくれた「あんかけ焼きそばとラーメンの店 中華屋 らん」のテイクアウト弁当
龍田さんは、他にもフレンチレストランbistro EDONA(ビストロ エドナ)を経営しています。コロナの影響で、飲食店は営業が本当に厳しい状況であることが身に染みてわかるため、「江別の飲食店を少しでも食べて応援したい」と思ったことと、会社の飲み会をできなくなったことも、月に2回の弁当注文を始めた理由だそうです。
と〜っても美味しそうなおかずがたくさん詰まっています!
「従業員とは、同じ釜の飯を食うことを大事にしているんだよね。若い人たちが飲み会に参加したがらないと聞くけど、うちの会社は参加率ほぼ100%で盛り上がるんだよ」 コロナで、この2年間は中止となっていますが、毎年3月には従業員の家族も参加する社員旅行が恒例でした。
旅行の楽しみの一つは「ビンゴ大会」。
子ども達や奥さんが喜びそうな景品を用意して、大いに盛り上がってもらうそうです。そして、従業員の表彰式を行い、お父さんの仕事ぶりを家族の前で讃えます。
「普段は見ることのできない働く父親の一面を家族に見せることで、家族に感謝されて、社員もやる気が出るみたい」
そして「家族との時間を大切にして欲しい」と毎年12月24日のクリスマスイブには、家族でホームパーティを楽しめるようにとオードブルとシャンパンとケーキを用意し、会社から持ち帰らせます。
また、1年に従業員一人当たり100kgの米を地元農家から買い付け、それを4回に分けて支給し、お米も家に持ち帰らせるのだとか。「お米はお母さんがスーパーで買って運ぶのは重くて大変だし、給料は振込の時代となり、お父さんが稼いでる実感って、子どもにとったら分かりにくいでしょ」。
お父さんの存在価値を、オードブルや米で見える化させるというアイデアは、とっても素敵です!家族も「お父さん、ありがとう!!」って、言いやすくなりますよね。
龍田さんのお父さまが社長を務めていた時代は、ご自宅が会社だったそうです。龍田さんは物心ついた頃から、従業員が家にいて働いている様子を見て育ちました。まさに従業員とは家族ぐるみの関係性でした。その経験が、お父さんの働く姿を家族に見せてあげたいという取り組みにつながっているのかもしれません。 お話を聞いていると、従業員もその家族も龍田さんにとって大切な存在なのだということが伝わってきます。「社長として一番大切にしていることは?」の質問にも「従業員たちへの責任感」と即答でした。
転換期を迎えたこれからの建設業界
「建設業界に限らず、どこの業界も今はDX化に向かう転換期なんだと思う」ディーエックスですか?
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは「IT技術の浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」という考え方。 龍田さんは、仕事をもっと楽にして、働きやすくするために機械化を進めていきたいと考えているそうです。
例えば、現場の作業が終わった後に報告書の作成が必要です。報告書作成は、今は作業が終わらないと取り掛かれません。それが現場から携帯電話一つでできるようにIT化されたらスムーズですよね。IT技術は日々進歩しているので、そうした未来はもうすぐそこにありそうです。
学生時代からインターネットやパソコンのある生活環境の中で育ってきたデジタルネイティブと言われる若い世代の人たちは、当たり前のように携帯も扱います。
それに比べ、60代のベテランたちは積み重ねてきた経験と肌感覚で「人だからできる」職人の仕事をします。
龍田さんは、こうした現状を世代が混在する良い時期だと捉えていて、現場の感覚をデジタルに置き換えていくことに新しい事業の可能性を感じているそうです。
「社員がイキイキ働けるなら、現場作業だけじゃなくその人材に合わせた仕事を用意して、挑戦できる環境をつくってあげたい」と、できる人、やりたい人が、やれることをやればいいと言う考え方が一貫して、仕事にも活かされています。
龍田さんのお話を聞いていると、仕事、組織、企業、地域、文化をつくっているのは、「人」なんだという根本的なことを思い出させてくれます。人を見て、人を第一優先に考えている会社なのだと思いました。
これから、50代、60代、70代、80代と年を重ねておじいちゃんになった龍田さんが、どんなことに夢中になって、何をして江別で遊んでいるのか? しわくちゃな笑顔でたくさんの仲間に囲まれている龍田さん様子が目に浮かび、これから先の江別の未来がますます楽しみになりました。関連動画
- 株式会社龍田工務店
- 住所
北海道江別市高砂町3番地の2
- 電話
011-382-2894
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