HOME>このまちのあの企業、あの製品>大きい企業ではなく、強い企業に!トルク精密工業株式会社

このまちのあの企業、あの製品
赤平市

大きい企業ではなく、強い企業に!トルク精密工業株式会社20220404

この記事は2022年4月4日に公開した情報です。

大きい企業ではなく、強い企業に!トルク精密工業株式会社

札幌と旭川のちょうど中間地点、札幌から約100キロの場所にある北海道赤平市はかつて炭鉱で栄えたまちです。炭鉱がなくなってからは過疎が進み、現在は人口が9,000人ほどのまちですが「ものづくりのまち」として今も多くの元気な企業が軒を連ねます。
その中のひとつがトルク精密工業株式会社。静岡にあるトルク工業株式会社のプレス加工拠点として生まれた企業で、大手のメーカーや企業と違って企業名が全国的に有名かと言うとそうではありません。しかし、今では赤平市内に2つの拠点を置き、日本の多くの企業を支えている高い技術がここにはありました。

赤平市にプレス工場として誕生

今回お話を伺ったのはトルク精密工業で開発部長としてお勤めの髙橋信幸さん。大学を卒業してトルク精密工業に入社し、取材時点で43年もお勤めになっているベテラン社員さんです。会社が設立してから3年後に入社という、会社と共に歩んできた髙橋さんにトルク精密工業の強みや魅力をお伺いしました。

torc-p_5.JPG取締役 開発部長の髙橋信幸さん

トルク精密工業が設立したのは1974(昭和49)年のこと。全国的に炭鉱がどんどんなくなっていく中、赤平市では産炭地振興の一環として企業誘致が行われていました。その中でトルク精密工業も赤平市に拠点を構え、設立時には同様に赤平市に工場を構える、旅行鞄メーカーと電気機器メーカーの部品の製造を行っていました。しかし、時代が進むにつれて、電気機器の工場が赤平から撤退。バッグの部品の製造拠点は、人件費の安いトルク精密工業とバッグメーカーが共同で設立した中国の工場に移行するなど、情勢が変わっていきました。そこで次に足を進めたのが車載部品と医療用品です。

自動化された最新マシンで生み出される製品たち

トルク精密工業で製造している車載部品は、国内のほとんどの自動車メーカーで使われています。車の好きな方なら思わず身を乗り出してしまうような有名車種から、日ごろ目にする車種までその種類は様々。ミッション部品や吸気圧部品、プッシュボタンキーなど重要な部品を数多く作り、特に最近では電気自動車の部品製造も増えているのだとか。

torc-p_14.JPG

そんな有名メーカーに関する仕事を多く請け負う秘密のひとつは、インサート成形です。金属をプレス加工し、成形した樹脂に埋め込む加工は、熱をかけた際の変動が違う複数の素材を掛け合わせるため、多くの企業ではあまり取り扱いません。しかし、どちらも高い技術を持っていたトルク精密工業は、そこにこそ需要があると見込んだのです。
メーカーの拠点が多くある本州では、部品製造をする企業はそのメーカーに特化した加工工場となりがちですが、北海道ではそういった専門的な加工を行う企業は多くありません。こういった特徴のある北海道に拠点を置いているからこそ、様々なメーカーの部品を製造できているという強みもあるのです。

torc-p_10.JPG

一方医療用品で主に製造しているのは輸血バッグの口の部分にあたるポートや、各種ウイルス性感染症の検査キットです。
元々トルク精密工業では体外検査に関わる製品の加工は行っていたため、ノウハウは蓄積されていました。医療に関わる製品のため製造工程で異物や菌などが入らないための管理は厳しく、徹底したクリーンな環境での製造が求められます。トルク精密工業では企業を成長させていく上で、このノウハウを活かして、体内検査に関する製品製造にも乗り出したのです。現在、医療用品の製造は全工程が自動化され、製造されている部屋に人が立ち入るのは検査の際のみとなっているほど徹底されています。

torc-p_4.JPG昨今、急激に需要が増加したPCR検査キットも手掛けています

このような自動化は医療用品のみならず、車載部品の製造も自動化が進んでいます。例えばATスイッチの製造では10もの工程を自動化し、さらに成形したプラスチックの冷却を別の場所で行うことで製造にかかる時間が大幅に短縮されました。
こういった効率化や製造工程の管理は最新の機械の力だけで叶ってきたのかというとそうではありません。もちろんそこには企業として培ってきたノウハウと人材の力が大きく関係していました。

torc-p_12.JPGロボットが全自動で、自動車の部品を次々と作っています

生産システムを支える高い技術の従業員

トルク精密工業には現在プレス機が39台、射出成形機が44台あり、その機器はメーカーの販売している機械をそのまま使用しているわけではなく、独自に改良した機器が使用されています。その理由は、純正品には不要な機能がついている場合があり、その部分を省くことでコストを抑えて機器を導入でき、そして機能が増えることで同様に増えてしまうトラブルも抑えることができるからです。このような工夫がでてくる背景には、トルク精密工業のとっている人材育成や社内環境向上のシステムがありました。

トルク精密工業では2003年に「一貫した製品・サービスを提供し、顧客満足を向上させるためのマネジメントシステム規格」であるISO9001を取得。続いて2005年にはHES(北海道環境マネ-ジメントシステムスタンダード)ステップ2の認証を取得。2008年には中小企業に向けたTPM(全員参加の生産保全)であるC-TPM活動を導入するなど、積極的に環境や品質、プロセスの向上に努めてきました。これらは導入時にはコンサルタントなどの力を借りていますが、運用自体は自社で行っているというのですから驚きです。

torc-p_3.JPG地域未来牽引企業とは、国が活用しているビッグデータや自治体などの推薦を受けた、地域経済牽引事業の担い手となりうる中核企業として選定された企業です

こうした努力と同時に技能士の取得も推奨し、社員50名のうち19名もの方が特級または一級を取得し、その他の社員さんもほとんどが二級を取得しています。
こうした取り組みがあって、製品の改良へのアイディアも技術者さんの中から生まれることもあります。とある自動車メーカーの部品を製造している際には、不具合の元となる「バリ」をどうやったら抑えられるかを、製造に関わる技術者さんが知恵を出し合い、管理職の方々もその声を活かして製品の改良に繋げていったそうです。製品を作って納品して終わりではなく、その先に改善点はないか?と常に納品の向こう側を考えることで技術力の向上やメーカーさんとの信頼関係に繋がっているようです。

torc-p_7.JPG

メーカーさんと二人三脚で試行錯誤を

この製造する過程から改良をしていけるというのもトルク精密工業の強みなのですが、これはトルク精密工業だからこそできることでもあります。一般的な部品の製造工場ではメーカーさんから図面を貰いその通りに部品を製造しますが、トルク精密工業では違います。企画の段階からメーカーさんと話し合い、図面の設計、試作と一緒に創り上げていくのですが、こういった方法で製造をされている企業は道内にはほとんどありません。今回お話を伺った髙橋さんも思い出深いエピソードを教えてくれました。

torc-p_13.JPG

「私は設計がしたくてこの会社に入社しました。新人の頃は製造なども担当し、程なくして念願の開発の部門で勤めることになったのですが、印象に残っている仕事と言えば試薬キットの開発ですね。それまで流通していた試薬キットは試液を混ぜるのにひと手間必要だったのですが、それをワンアクションで出来るようにするというものでした。何度試作してもそのギミックの部分が上手くいかず、メーカーさんの部長さんに泊りがけで来ていただいて、2人で1週間くらいほとんど寝ないで試作を繰り返し、その結果、今使用されている形が出来上がりました。大変でしたが、今でも活躍している製品を生み出せたのは本当に感慨深いですね」

torc-p_15.JPGこうした製品には、たくさんの方の想いが込められています

こうした苦労と「良い製品を作りたい」という情熱でトルク精密工業では、多くのメーカーにとって重要な部品が生み出されていますが、この誰もが知っている有名企業の一部に関わっていること、そして5~6年先に世に出る新製品に関われていることも、この仕事の魅力なのだとも教えてくれました。

トルク精密工業の社名に入る「トルク」とは「力×長さ」で求められる力の単位のことです。従業員の方々の力を会社というテコでさらに大きなものにしていきたいという願いが込められているそうです。髙橋さんは最後にこんなこともおっしゃっていました。

「弊社は大きな会社ではなく、基礎を持った強い会社を目指しています。従業員の向上と共に安定した会社運営をし、様々な外的要因はありますが、ぶれずに少しでも右肩上がりに進んで行けるよう努めていきたいと思っています」

トルク精密工業株式会社
トルク精密工業株式会社
住所

北海道赤平市茂尻旭町1丁目5番地

電話

0125-32-5222

URL

http://torc-p.co.jp/index.htm


大きい企業ではなく、強い企業に!トルク精密工業株式会社

この記事は2021年10月5日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。