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このまちのあの企業、あの製品
厚真町

誰もが本音で働ける場所づくり。北海道厚真福祉会20210716

誰もが本音で働ける場所づくり。北海道厚真福祉会

今回のくらしごと舞台は北海道厚真町。このまちの福祉を支える「社会福祉法人 北海道厚真福祉会」にお邪魔しました。(以下、厚真福祉会)。くらしごとで何度か厚真町を訪れて感じるのは、人口約4,500人ほどに対し、福祉施設が多く存在しており「福祉に手厚いまち」そんなイメージを抱きます。

今回取材させていただいたのはこちらの法人で働く3名。厚真福祉会は「障がい者支援施設」「特別養護老人ホーム」「デイサービスセンター」「居宅介護支援事業」を運営しているのですが、それぞれの事業所で働くみなさんにお話をお聞きしました。

まずはみなさんに、軽く自己紹介をしていただきましょう。

「厚真町で働きたい」「誰かの役に立つ仕事がしたい」

「私は法人の総務課で主に事務仕事をしています」と話すのは、橋場直人さん。大学卒業後すぐこの法人の職員となった、生粋の厚真福祉会の方です。主に施設に関わる事務関係から、人事として面接するなど幅広い業務を担当します。

atsumafukushikai2.JPGとても物腰柔らかい橋場さん。求職者も安心して面接を受けられそうです(笑)

続いて、特別養護老人ホーム豊厚園で生活相談員として働かれている中島巧さん。中島さんは生まれも育ちも厚真町。お話を聞けば聞くほど、厚真愛に溢れている方でした。

「僕は、平成18年からこの法人の職員となりました。それまでは厚真町内のバス会社で働いていました。これも、大好きな厚真町で働きたいからって思いで就職したんですが、業務的に観光系の仕事も多く、出張で厚真町内にいないことが思いの外あり、もっとこのまちで働ける仕事はないものかと思っていた時に、ここのデイサービスの求人を見つけました。僕はバスの送迎もできるし、ピッタリな求人だと思ったんです」

atsumafukushikai3.JPGさわやかな笑顔が印象的な中島さん

続いては、居宅介護支援事業所で働く武田裕人さん。武田さんもまた、福祉畑とは全く無縁の世界にいた方です。

「僕は登別出身で、地元の企業になどに就職後、この法人に平成18年に来ました。『世の中の役に立つ仕事がしたい』という思いから、仕事を探していました」

そして武田さんが行き着いた先は「福祉」だったのです。
武田さんにとって厚真町はそれまで縁もゆかりもない場所でしたが、たまたま求人が出ていたのと、地元登別からも比較的近いその立地の良さにこの地で働く選択をしたそうです。

atsumafukushikai4.JPG優しい雰囲気溢れる武田さん

忘れもしない。2018年9月6日3時7分

atsumafukushikai14.JPG2021年6月の厚真町の空。おだやかな景色です。


さて、厚真町といえばまだ記憶にも新しい2018年に起きた胆振東部地震。地震の当時、夜勤をしていたという武田さんから、その時のお話を詳しく教えていただきました。

「ちょうど地震が起きた3:07、この時は仮眠室で休憩中だったんです」

今でも昨日のことのように思い出せる様子で、ゆっくりと、言葉を紡ぐようにその日のことを話してくださいました。

「地震が発生してすぐに飛び起きました。あの時は正直、死を覚悟しましたね...。すぐ停電にもなって、とにかくまずは利用者のみなさんの安否確認、そして火災が起きないように気をつけました。仮眠室を出てみると、廊下から居室から、すべてのものが倒れていました。倒れていないものはなかったんじゃないかと思うくらいです」

atsumafukshikai15.JPGこちらが震災当時の写真

死を覚悟した...昨日までの現実が崩壊しているその状況を目の当たりにした武田さん。そんな武田さん含めその時施設にいたスタッフ総動員で迅速に利用者さんのサポートにあたります。当時、地震によりボイラーの配管も破損していたそうで、爆発の危険性がある...そんな緊迫した状況でした。

しかし、そんな状況であっても、比較的スムーズに協力し合って動けていたと言います。
「避難訓練が活きているのを感じましたね」と当時のことを振り返る武田さん。
そのおかげか、30分ほどで全員避難完了。全員が無事だったこと、そして、スムーズに全員を避難させられたことは、非常に大きなことだったと思います。

atsumafukushikai22.JPG大きな自動販売機も倒れています。

中島さんは当時自宅にてお休み中だったそうですが、地震が起きた時のことを「まるでジェットコースターに乗っているかのようだった」と話します。同じ町内にある実家に子どもたちを預け、すぐさま勤務先へ急行。到着してみると、スプリンクラーが破損して、天井から水が溢れている状態でした。

中島さんも、武田さんの施設と同様、利用者さんをまちの避難所へ送ります。

「その後、道内の何軒もの事業所が、利用者さんの受け入れを担ってくれたんです。近隣含め、遠いところだと十勝方面の事業者さんまで協力してくれました」と中島さん。

利用者さんにとって避難所生活は、難しい方もいることでしょう。しかし、他の市町村にある同じ福祉事業所のみなさんが、すぐさま厚真町まで車を走らせ、利用者さんのお迎えに来てくれたといいます。こうして地震後すぐ、利用者さんは全員他のまちの事業所へと移ることができました。

北海道中を震撼させたあの日の地震。誰もが大変な状況にあった中、みんなが手を取り合い、助け合った瞬間だったのではないでしょうか。

その後、厚真町内に仮設住宅ができました。これが全国的にも珍しい大型の仮設住宅で、利用者さんは全員同じ場所に戻って生活することができるようになり、スタッフも動きやすかったと言います。

atsumafukushikai16.JPGこちらがその大型の仮設住宅です。

こうして少しずつ復旧が進み、壊れてしまった施設も原型復旧というかたちで新しい建物が復活しました。

地震からの復興。
実はまちとしても、この施設の体制としても、まだまだ完全復興ができているとは言えないそうです。

atsumafukushikai12.JPG原型復旧した館内。

「地震前はスタッフとの面談も行っていたけれど、正直まだ復旧の途中でもあり、なかなかできていないのが心苦しいんです」と橋場さん。他にも、それまで3年未満の職員を集めて懇親会なども行っていたそうですが、世界的に新型コロナウイルスが蔓延し、出来ない状況が続いています。利用者さんも家族との面会は禁止など、思うように動けない日々ですが、それでもオンライン面会や玄関先でのガラス越し面会は続け、少しでも前へ進もうとしています。

atsumafukushikai23.jpgこちらが原型復旧し、新しく生まれ変わった外観です。

まだまだ復興の途中、と話す橋場さんでしたが「地震がきっかけで、より一致団結した」と言葉を継ぎます。それに対し、中島さんと武田さんも力強く頷いていたのが印象的でした。

あれだけの大きな震災。特に厚真町の被害は大きく、多くの人の心に刻まれてしまった恐怖でもありますが、それをバネにし、法人全体が、まち全体が一致団結したという印象を、多くの人が抱いているようです。

田舎暮らしでも、趣味を我慢せずに楽しめる!

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そんな厚真町での暮らしについてお三方に聞いてみました。

「最初このまちに来た時は、もうどうしようかと思いましたよ(笑)」と第一声橋場さん。橋場さんは大学卒業後、23歳の時にこの厚真町に来た日のことを鮮明に覚えているようです。

「町営住宅はボロボロの長屋だし、当時は水洗トレイがなかったんですよ(笑)」なんて昔を思い出して笑います。それでも厚真町で生活することを続けられたのは、まわりの人たちのおかげ。

「家はボロボロだけど、職場に行けばみんな気にかけてかまってくれる人たちばかり。恵まれた環境にいるなと思いましたね」

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生まれも育ちも厚真町の中島さんは、厚真の魅力をこう語ります。
「自然が多いし、食べ物も美味しい。まあ、一番の魅力は人なんですかね。あと、厚真は子どもが育てやすいです」
2児の父である中島さんは、実際に子育てを通して、その育てやすさを感じていたそうです。

そんな中島さんに、厚真から出ようと思ったことはないんですか?と聞いてみました。
すると「ないですね」と即答!

実は正確には厚真から出たことがないわけではないそうで...

「札幌でフラフラしていたり、ワーキングホリデーでオーストラリアに行ってフラフラしていたり・・・(笑)」ととにかく当時のことを「フラフラしていた」と笑う中島さん。
それでもやっぱり厚真が好き。だからこのまちで生きていきたい、そう心に強く決めているそうです。そこには揺るがない決心と、強い愛があるように見えました。

atsumafukushikai6.JPGお仕事中の中島さん。

「特にこのまちはサーフィンのメッカです。休みの日はもちろん、仕事前もサーフィンに行くことがあります。朝日を海で拝んで、そして出勤するんです(笑)」・・・なんて気持ちの良い出勤前なのでしょうか!

「冬は寒い時でマイナス20度くらいまで気温が下がりますが、それでも海に入りますよ。むしろ海の方があったかいですからね!」なんてニコニコ笑顔です。

astumafukushikai17.JPGこちらは実際に厚真の海でサーフィンをする中島さんです。かっこいい!

このまちにはサーフィンの少年団もあるとのことです。
「子どもたちは習得が早いですからね、2年も経てばすぐ抜かされました(笑)」

今や厚真町はサーフィンが盛んなスポットとして有名。サーフィン目的で厚真町に移住する方も増えてきているそうです。出勤前にサーフィンがしたい、そうして趣味と仕事と暮らしを、このまちで謳歌したい人たちが集まってくるのだろうなぁと、厚真町の海を眺めてしまいます。

厚真町は確かに都会に比べたら「田舎」です。しかし、だからと言ってこのまちで趣味を我慢しなくてはいけないという環境ではないのです。

・・・サーフィンだけではありませんよ?

武田さんは、趣味であるサッカーをやりたいと思っていたところ、後輩がチームを作ってくれたそうです。

ないなら作ることができる。人も集まる。
それが、厚真町の魅力のひとつなのかもしれません。

「一人で移住してきても大丈夫。サーフィンを教えてくれる人も、サッカーや野球もスポーツ好きがいるから趣味も活かせますよ」と笑い合う3人です。さらには、「厚真って楽園ですよね」なんて言葉も飛び交い、それが嘘偽りない本心なのだろうなぁと皆さんの雰囲気から感じました。

働きやすい環境を作っていかねばならない

astumafukushikai18.JPG実際に働くスタッフさんの様子です。


未経験からスタートし、今ではこの法人の中核を担う武田さん。一緒に働くスタッフのことも、いつも気にかけています。

「やっぱり、働いている職員が楽しまないと利用者さんも楽しめない。だから、楽しく仕事ができる環境をつくっていきたい」と話します。
20〜30代のスタッフも多く、若いスタッフが多いからこそ、楽しみを作っていかなくてはいけないという思いを抱えているそう。

そのため、スタッフが自分の意見を言えるような状態を目指し、定期的にアンケートを取るなどしているそうです。
「このアンケートは、不満でもいいし、『こんなことをやってみたい』という企画案でもいい。とにかくスタッフが胸の内にあるものを吐き出せるようなアンケートを目指しています」
こうして、自分の思いを吐き出す場所を作り出すことによって、自分自身も心から楽しみ笑顔で働けるような環境づくりを進めています。

そんな武田さんが思う、この仕事のやりがいとは?

atsumafukushikai7.JPGスタッフ思いの武田さんです。

「僕は現在ケアマネの事業所で仕事をさせてもらっているし、これまで主任や相談員なども経験させてもらいました。現場仕事だけではなく、法人の業務も任せてもらったり、法人内で勉強会も開かせてもらったり、色々なことに挑戦させてくれています。これまで他の業種に就いていましたけど、今はもうこの『福祉』の道しかない、と心に決めています」。そう力強く話す武田さん。その決意の硬さが、言葉の端々から伝わってくるようでした。

続けて中島さんはこう話します。
「この仕事は、利用者さんの生活をどう支えていくか、その人の人生にかかわることだと思います。だからこそ、頼ってくれる利用者さんがいたり、自分の顔をわざわざ見に来てくれたりすると、嬉しくなりますね」

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誰かの人生にかかわる仕事。それはきっと、簡単なことではありません。しかし厚真町には、こうしてみんなが楽しんで働けるようにと環境整備を始め、気にかけてくれる人たちがたくさんいます。

「まずはうちの施設を見に来ていただきたいですね。その目で見て、ここで働く良さを感じ取ってほしい。とりあえず厚真に来て、美味しいもの食べればいいんですよ(笑)厚真の美味しいジンギスカン食べましょう!」と皆さん盛り上がってます!

atsumafukushikai24.JPG利用者さんと一緒に景色を楽しむお写真

また、最後に橋場さんは法人のこれからについてこう話してくれました。

「震災からもう一度立ち上がり、施設を復旧できたのも、国や道、厚真町、そして全国の多くの市町村が支援してくれたおかげ。たくさん支えられてきたからこそ、恩返しがしたい。そのために私たちが、このまちで頑張って続けているってところを見せなきゃと思っています」

お年寄りが自分の育ったまち、生きてきたまちで安心して生活できるように。今日も厚真福祉会のスタッフのみなさんは、誰もが安心して暮らせるよう、そして働いている自分たちが無理なく心から笑って楽しめるよう頑張っています。

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社会福祉法人北海道厚真福祉会
社会福祉法人北海道厚真福祉会
住所

北海道勇払郡厚真町字本郷36番地の11

電話

0145-27-3111

URL

http://www.atsuma.or.jp/


誰もが本音で働ける場所づくり。北海道厚真福祉会

この記事は2021年6月9日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。