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三笠市

四季を感じて働く!林業女子が語る仕事の良さ。堀川林業(株)20200424

この記事は2020年4月24日に公開した情報です。

四季を感じて働く!林業女子が語る仕事の良さ。堀川林業(株)

雪解け時期も過ぎて、道端には春の訪れを告げるふきのとうが芽を出し始めた4月。
北海道札幌市から北東に車を走らせて約1時間。
目指す先は三笠市です。

豊かな森と湖に恵まれ、エゾミカサリュウやアンモナイトなど多くの化石が発掘されているまちです。

そんな三笠市にある堀川林業株式会社には『林業女子がいる!』と聞きつけて取材にやってきました。

たくさんの材木運搬車が出入りし、丸太がズラリと並ぶ景色は圧巻です。
グラップルと呼ばれる木材をつかむ重機でトラックから次々と会社の敷地に並べられていきます。

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そんな光景を横目に進むとログハウス調で建てられた建物が。

それでは早速お話しを聞いていきましょう。

一度は別の就職を考えたけれど、でもやっぱり林業!

可愛らしい笑顔で挨拶をしてくれたのが堀川林業株式会社で働く兼丸真穂(かねまるみお)さん23歳。
20歳の時にこの会社に就職し、現在林業歴4年目です。

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真穂さんは北海道浦河町出身で、競走馬の生産地で育ちました。すぐ近くに自然があることが当たり前の幼少期、小学校の時に学校のレクリエーションで『ツリーイング』と呼ばれる木のぼりを体験し、木と触れあう事に興味を覚えこの経験が真穂さんを林業へと結びつけました。

高校進学の時には既に林業への就職を考えていたという真穂さん。
「このツリーイングの技術を職に活かすのは林業だよって教えてもらったので、森林科のある学校を探しました」
そして制服と偏差値を照らし合わせ、北海道岩見沢農業高等学校森林科学科へと進学を決めたのです。

3年間の高校生活で林業を学び、実際にチェーンソーや刈り払い機を使い実習なども体験したと言います。
「ただ、仕事に就くとなると体力的に大丈夫なのか心配で、卒業後は就職せずに、東京の環境教育などを学べる専門学校に進学しました」

東京で2年間、環境教育について学び、いざ就職を考えたときになかなか希望と合致するような会社を見つけられずにいたところ、この堀川林業(株)から声をかけてもらったと言います。

「東京に一度出てみて、『北海道で働きたい!』と強く思いました。三笠市なら、高校時代を過ごした岩見沢市の隣なので安心ですし、実は高校生のときにNPO三笠森水遊学舎でイベントに参加したりお手伝いしていたのですが、そのNPOの代表と堀川林業の社長が一緒で、全く知らない会社ではなかったですし、このNPOで行っている環境教育の部分も共感した部分だったのでこの会社で働くことにしました」

そして同じタイミングで他にも女性が一人入社し、堀川林業は一気に女子2名が働く林業会社になったのです。

「女子が入社したことによって特に何か準備したことは無いのですが、でも働く人の要望は聞くようにしています」と話してくれたのは堀川林業(株)の専務である髙篠孝介さんです。

「弊社では作業員として働くのか、ウチでは親方と呼んでいるのですが、作業の監督や管理をする職員として働くのかを最初に選んでもらっているのですが、兼丸さんは後者の監督・管理する親方になることを選びました。もう一人の女性は森林作業員として活躍しています」

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また、髙篠さんはこうも続けます。
「最初に、どんな作業をしたいのかも聞きますね。チェーンソーを使って木を伐倒し丸太にする造材作業をしたいのか、植栽(苗を植える)や下刈り(植えた苗の成長を邪魔する雑草を刈る作業)などの造林作業に興味があるのか、あと重機に乗りたいのか、うちは製材工場もあるのでそちらの作業に興味があるのか、など。なるべく最初の意見は聞いてあげるようにしています」と髙篠さん。

「逆に言うと、専門特化してその部門を極めていっていただくので、林業の仕事をまるっと造林も造材、そして製材も経験する、というわけではありませんね」と付け加えます。

ですが、真穂さんは親方を希望していたものの、やはり林業現場の実際の作業も知っておかなければ!ということで最初の1年目は造林・造材両方の部門を経験したと言います。

「学校でも苗の植え付けやチェーンソーや刈り払い機などを使った実習があって、習ったことももちろん活かせるんですが、実際に経験するとやっぱり本格的で、知らない世界が社会にはあるんだなと実感しました」と真穂さんは目を輝かせます。

「それに、チェーンソーや刈り払い機など、学校にあるのは古いものだったので、実際に会社で使うチェーンソーを持つと軽くって軽くって!(笑)
最初に思っていた不安(体力的に大丈夫だろうか)は全然大丈夫でした!」と笑顔で話します。

horikawaringyou24.JPGチェーンソーを触ったこと無い方は、この写真危ないんじゃ?!と思うかも。でも大丈夫。エンジンかかっていませんから。

林業女子ならではの困りごと?

どんな質問でも真剣にそして笑顔で答えてくれる真穂さん。
周りは男性の先輩だらけで困ったことや不安だったことはありませんか?という質問には「高校の時もクラスに女子一人だけだったので全然平気でした」と屈託無く笑います。

「でも一つだけ・・・ちょっと困ったことはありましたね」と林業女子ならではの困りごとを話してくれました。
「実は作業服が男性用のものがほとんどなので、ピッタリ合う服や靴がないんです」

林業ではチェンソー防護用のチャップスと呼ばれる作業服を身に着けなければなりませんが、その足の長さが合わなかったり、腰回りのサイズが合わなかったりと苦労があったと言います。
靴もピンスパイクと呼ばれるスパイク付きの安全足袋が必要ですが、足のサイズがなかなかなかったそうです。

horikawaringyou12.JPG現場に向かうとき。山の中には目立つ作業服で

「色々なメーカーが出しているものを会社の先輩たちも一緒に探してくれたりして・・・女性用のものがもっと増えたらいいなぁと思います」と林業女子ならではの気持ちを教えてくれました。

真穂さんの今のお仕事

1年目は実際に作業員の業務を経験しながら、2年目からは『高所伐採』と呼ばれる伐採にかかわり、作業の監督をしながら下作業を行いました。
高所伐採はロープワークを駆使しながら、木を伐倒せずに上から伐採していく、というとても特殊な技術です。
重機が入れない場所で伐倒が困難なケースや、近くに電線や住宅があり伐倒出来ないケースで行われます。

この配属は、ツリーイングから林業に憧れて入社した真穂さんのことを知っている上司の配慮だったのだとか。
間近で高所伐採の技術を学びながら、真穂さんは親方としての業務も覚えていきました。
3年目には社内では電発班と呼ばれるチームに所属し、芦別ダムの管理を行っています。

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ダムの管理?林業と関わりないのでは?っと思う方もいるかも知れません。

「実はダムの水を吸うところにゴミが溜まるのですが、そこに木や草が詰まらないように除去する作業を行います。そこで取れた草木を資源活用出来る物は乾燥させて丸太にしたり、チップにしたり。そういったことで木を活用することも仕事として請け負っています」

現在は4年目。同じくダムの管理を請け負ったり、桂沢発電所の管理なども行っています。
今後はどんな業務をやってみたいですか?という質問に
「せっかく緑の雇用で大特(大型特殊免許)を取ったので、重機に乗って作業できたら良いなぁ〜と思っています」と笑顔で答えてくれました。

環境教育に興味があり専門学校にまで進んだ真穂さんは、林業で働きながらも環境に関わる仕事をしていると感じていると言います。
「この仕事をして森を作っている時点で、間伐をしている時点で環境保全に関わっているなって思います。何よりも林業で働いている、と言うと『木を伐ってるんだね』と友達にも言われますが、林業って木を伐るだけじゃないんだよ〜!と声を大にして言いたいですね。森のために木を伐る。木を育てるために草も刈るし、畑や農家さんを守るための防風林の管理もします。土地に根ざした仕事をしているって思いますね」と仕事への想いを語ります。

「昔は3K(キツい・汚い・危険)って言われてたみたいですけど、そんな時代じゃないよっ変わってるんだよって伝えていきたいです」

もちろん林業に危険はつきもの。安易に軽い気持ちで出来る仕事ではありません。
でも真穂さんのように幼い頃の経験や自然への想いで林業を志している若者達が少なからずいるようです。

堀川林業には岩見沢農業高等学校の森林科学科を卒業した先輩たちも多く働いてます。
そこも就職先を決めた際の安心感にも繋がったと真穂さんが笑って教えてくれました。

horikawaringyou10.JPGわからないことは先輩が教えてくれます

「そして、三笠市は札幌にもアクセスしやすくってあちこち出かけています。あと、三笠市の人はみんな優しいです。特に役場の人たちも親切丁寧に転居で提出しなければならない書類など教えてくださって、いいまちだなぁと本当に感じました。そして、なにより静かで生活しやすいですよ」とニッコリ。

地元三笠市を支える企業として、林業を営む堀川林業さん。会社の成り立ちも気になるところです。
次は専務取締役髙篠孝介さんにも詳しく会社のお話しを聞いていきましょう。

当初の事業所はダムの底

「弊社は、創業1940年前後で私の曾祖父である堀川三平が、今はダムの底で桂沢湖に沈んでしまった場所で事業を開始したのがスタートだと聞いています」

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物腰柔らかく出迎えてくださった髙篠孝介さんはもちろん三笠市出身。
北海道大学の水産学部を卒業後、本州の東海地方でアルミニウムのダイカストと呼ばれる特殊な鋳造品を作成し、車のエンジンなどを作成する会社でサラリーマンをしていました。

働き初めてほどなくして、サラリーマンが性に合っていないと実感し、地元へ帰って実家を継ごうかと考えたと言います。

「弟が2人いて、長男なのですが、みんな三笠を離れていました。実家からは戻ってこいとはまだ言われていなかったのですが、小さい時に林業の現場に連れて行ってもらっていたり、親の林業の背中をみていたので、なんとなく地元に帰ろうかと考えたんです」と当時を振り返ります。

髙篠さんが戻って来たのは2011年。その一年前は長野県にある上伊那森林組合で1年間作業員として伐採作業等を行っていたと言います。

「戻って来てから、うちの会社の社風というか、雰囲気というか、社員同士の仲がいいなぁと感じましたね。空気感がいい。それは先代や今の社長が築きあげてきた社風なんだなぁと、一度外を知ったからこそ感じた一面でした」

horikawaringyou9.JPG作業員のベテラン社員さんたち。偶然にも取材日は年に数回の事務所作業の日で写真を撮ることが出来ました!

林業のことは1年ほど経験があったものの、他の社員に比べればまだまだ経験の浅かった髙篠さん。優秀な社員に助けられてなんとかここまでやれたと笑顔で話します。

「私たちが良かれと思って取り入れた制度や物なども、実は現場では不要だったりすることもあると思うんです。だから、私が戻ってきてからは従業員との個人面談を行って、出来るだけ可能な限りは意見を吸い上げています。昨年は事務所にエアコンを導入しましたよ。あと洗車機やエンジン式のコンプレッサーなどを導入したり、最新式の薪割り機も導入しました」

もう一つ、髙篠さんは優秀な社員の他にも、自信をもって伝えたいことを話してくれました。

「弊社は従業員数が46名前後の事業規模ですが、製材工場も持っていて、希望の事業者やお客様に希望する製材加工した商品を納品できます。この事業規模で製材まで行える会社はあまりないと思いますね」

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国有林をメインに林業の業務を行い、NPO法人などを興しして環境教育なども行い三笠市に根ざしている堀川林業株式会社。
これからも自然いっぱいのこの土地で営みを続けます。

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「林業って四季を感じながら働ける!これって森の中で働いているので当たり前のように思いますが、改めて本当に林業の良いところだなぁって」と真穂さんが満面の笑みで語ります。

自然の豊かさを感じながら、環境保全にも関わることの出来る林業。
女性でも働ける!ということを体現する真穂さんに力強さと逞しさを感じます。
これからも先輩たちの背中を追いかけながら、そしてこれからはまだ見ぬ後輩に頼れる背中を見せられるように、今日も真穂さんは現場へと元気に歩み出します。

(2020.07.03追記、真穂さんは6月末をもってご結婚のため退職されたそうです。おめでとうございます♪素敵な働き方をされていた証と企業情報として、このまま情報は残させていただきます。堀川林業さんには真穂さん以外にも女性スタッフが2020年7月現在2名、さらにもう一人入社する予定だそうです!)

堀川林業株式会社
堀川林業株式会社
住所

北海道三笠市幾春別栗丘町13

電話

01267-6-8051


四季を感じて働く!林業女子が語る仕事の良さ。堀川林業(株)

この記事は2020年4月14日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。