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このまちのあの企業、あの製品
羽幌町

ホテルは大きな家族。はぼろ温泉サンセットプラザ20190426

この記事は2019年4月26日に公開した情報です。

ホテルは大きな家族。はぼろ温泉サンセットプラザ

北海道の北西部に位置する留萌管内。日本海に面した多くのまちの中のひとつに羽幌町はあります。人口6,900人ほどの町です。

羽幌町で有名な「はぼろ甘エビまつり」は多くの人の訪れる人気のお祭りなので、「エビのまち」というイメージが強いかもしれませんが、かつては大きな炭鉱で栄え、農産物や羊、そして天売島・焼尻島という離島があるまちでもあります。

羽幌町を含めた日本海に面したまちの多くは「オロロンライン」という道路で繋がっています。小樽から始まり稚内まで続く海沿いを走る道で、ドライブやツーリングなどに人気です。その中間地点にある留萌市に、2019年度中に深川市から延びる高規格道路「深川留萌道」が全線開通することとなりました。

今回はその深川留萌道とオロロンラインを利用した旅行の中心とも言える施設「はぼろ温泉サンセットプラザ」にお邪魔しました。

地元から支配人へ

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サンセットプラザについて教えてくださったのは、支配人の高木 俊和さんです。サンセットプラザは1994年のオープン当初、町の第三セクターとして始まりました。高木さんは高校を卒業してすぐこのサンセットプラザに勤め始めます。

高木さんは羽幌町の隣の初山別村の稲作農家のご家庭に生まれました。しかし高木さんは高校生の頃にはドラマで見たホテルマンに憧れ、宿泊施設で働きたい!と思うようになっていました。そんな時に偶然にも羽幌町で近隣市町村にはない規模の近代的な施設がオープンすると聞いて「願ってもないチャンス!」と思ったそうです。

「高校を卒業後、8月に入社して12月にホテルがオープンするスケジュールだったのですが、オープンまでの間は札幌のホテルに研修に行かせていただき、たったの4か月でオープンを迎えました。もちろん、ホテルに関する専門知識などを高校までに学んだこともなく、初めて接客や宿泊業に携わったのですが、当時18歳の自分にはとっては大変な経験でした。だけど同期入社には何人も同級生もいましたし、地域に貢献できる仕事!それが心の支えになりましたね。地元のお母さんパートの方々や社員のみんなとも非常に一体感があって、家族のような感じでした。『自分たちが何とかしなくちゃ!』という気持ちが強かったような気がします。オープンしてからもがむしゃらな日々が続きましたけど、お客様に喜んで帰ってもらうということが何よりのモチベーションになりました」

高校卒業して新卒入社。最近は、すぐに辞めてしまうという子たちも多いなかで、地域に残る選択をして、大変でも続けていくことで見えてくるものを高木さんは身をもって学んだようでした。

順調だった運営。ところが。

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「この辺りだとかなり規模の大きなホテルなのに、開業後はものすごく順調で、『地方ホテルのお手本』のようになっていきました。今から20年も前のことになりますけどね」と高木さん。

ところが...。

順調な運営はそう長く続きませんでした。多くの地方都市がそうであるように、人口減少の問題や地域の高齢化、宴会や結婚式・披露宴を行う文化の変化、競合の乱立による顧客の奪い合いなど、外的要因が急速に変化していきました。第三セクターという形での経営が徐々に陰をおとすようになり、時代にフィットしなくなってきたのもまた、他の地方都市の施設と同じ道を辿ることとなりました。

しかし、羽幌町は「サンセットプラザをやめる」という選択はしません。その背景を高木さんはこう語ります。「観光として利用する方にはあまり知られていないと思いますが、サンセットプラザはただの温泉宿泊施設ではありません。利益率や空室損失を、運営を考える上で大切にする大都会のグローバルチェーンホテルやシティホテル、ビジネスホテルと違って、『町民たちの憩いの場となり、地域の活性化を目指すこと』が、そもそも開業した大きな目的のひとつだったからです」

この施設は町民が多く働き、そして町民のための、町民にとって必要な施設となっていたのです。町は「どうやったらこの施設を続けて行けるのか」を考えた結果、運営のプロの手に委ねようという結論を出しました。こうして運営を指定管理へと移行させることになり、そこに手を挙げたのが株式会社アンビックスという企業。2004年の出来事でした。

アンビックスが運営するサンセットプラザへ

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アンビックスは、メジャーなところでいくと、小樽朝里クラッセホテル・札幌クラッセホテルや、森のゆ ホテル花神楽、VIVA美唄 ピパの湯 ゆ~りん館など、道内でいくつもの温泉宿泊施設を運営する北海道の会社で、その基本方針は、そのまちの人たちを雇用して、そのまちの人々と運営していくことだそうです。高木さんも運営がアンビックスになったタイミングで第三セクターからアンビックスの社員となり、サンセットプラザで勤務を続けることになりました。

「今だから正直にお話ししますと、ちょっとだけ寂しさとか悔しさを感じた部分はありました。ですが運営が移行するまで、開業から10年勤務し、フロントや宴会サービスなどのほぼ全てのセクションを受け持った経験もして、全体が見えるようになってからは、いい意味での外からの風を入れて行くことや、新しいチャレンジに向かう時がきたんだというのも感じてきていましたので、納得の上でアンビックスの社員になりました」

saunset-14.jpg客室の一例の洋室。とてもキレイです。

新しい時代に合わせた改善をするために、経営や運営元が変更になるということは、大抵「これまでを捨てる」ことや「叩き直す」「コストカット」というイメージがあるもの。もちろんその考え方は必要な要素ではあります。ところがお話しを聞くと、アンビックスという会社はどうやら最初からそんな考えよりも、地域を助けていきたいという想いが前面にでている企業のようです。

「うちの会社って、なんだか北海道のものすごく田舎まちの施設とかの指定管理が増えているんですよね(笑)」と、笑う高木さんでしたが、そこにも「地域を元気にしていきたい」という想いが隠れている気がします。

運営母体が変わってからも、高木さんの「お客さんに喜んで帰ってもらう」という仕事は変わりません。そうして日々を積み重ねて行き、2015年に高木さんはサンセットプラザの支配人となりました。


人も温泉もポカポカのホテル

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それでは立ち上げから今に至るまでサンセットプラザと共に歩んできた高木さん。高木さんが考えるこちらのホテルの魅力ってなんでしょうか?という問いの第一声はこうでした。

「一番の魅力は、人のあたたかみのあるホテルという点ですね」

人のあたたかみのある、というと温泉旅館や民宿をどうしても思い浮かべてしまいます。しかしサンセットプラザは非常に大きな宿泊施設で、一見「家族的」とはかけ離れて見えます。実際、留萌管内では随一の規模の温泉宿泊施設だと言われています。
しかしお話を聞くうちに、まず従業員のみなさんが、まるで大きな家族のようなんだという印象を強く受けます。そしてさらに、温泉や休憩に立ち寄る地元のお客さんや常連さんと従業員さんがまるで親戚のようにフレンドリーに接している雰囲気を目の当たりにし、その言葉に納得しました。

「田舎町の人って、本当はとっても地元愛にあふれているんです。できれば地元で働きたい、そう思っている人も多いんですよね。でもなかなか働く場所も少ない...。アンビックスはそういった地元の人たちの雇用の場を維持していくという役割もあるんです」

サンセットプラザでは高校を卒業した地元の方、また大学へ進学して地元を離れたけれど地元にもどって就職したいと考えている方の雇用を大切にしています。一方で田舎暮らしに憧れる移住者の方の雇用の受け皿になることもできるのではと教えてくれました。

「サンセットプラザの一番忙しい時期は7月〜8月の夏のシーズンです。甘エビをはじめとした羽幌町の海の幸を食べにくる人がとっても多いのですが、そのほかにも天売・焼尻島の自然を楽しみに来た方や、オロロンラインの景色を楽しみに来た方の拠点となっています。」

羽幌町では公共交通機関はバスがありますが、やはり基本は車での移動がメインとなります。そのため多くのお客さんはドライブを楽しみ、その途中で温泉や食事を楽しんで行かれる方が多いそうです。また、最近では道外からの個人旅行の方も増えているのだそうです。

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さらにサンセットプラザにはこんな魅力もあります。

「うちの温泉は強塩泉で、そのため保温効果が非常に高いのが特徴です。冷えた体が芯から温まるので、仕事終わりの地元の漁師さん達にもよく利用していただいています。そして何と言ってもホテルの名前にもなっている通り、天気の良い日は日本海に沈む夕日がとっても美しく見えます。そんな夕日を贅沢に全客室から見ることができることもこのサンセットプラザならではですね。」

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その他にもサンセットプラザは道の駅でもあり、エントランスでは羽幌町の情報発信と特産品の販売を行う売店もありお土産を買うのにもピッタリです。
さらにレストランに足を運ぶと、サンセットプラザに来れば羽幌の美味しいものを全て味わうことができるくらい、ふんだんに地元の食材を使ったメニューが用意されています。

また、サンセットプラザができた当初からの目的である「市民の憩いの場」としての役割も果たしています。町内で学生たちが集まれる場が少ないためサンセットプラザは学生や若者がアイスを食べに来たり、ゲームをしたりという若者の集う場にもなっています。
一方で自治会の集会や会議などが行われる地域の人が集う場としての機能も同時に果たし、まさにまちに無くてはならない存在です。

そんな魅力を備えた施設だからこそ、旅行の方にも地元の方にも愛されているのだと感じることができました。

フロントの看板娘、高橋さん

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現在サンセットプラザでは社員・パートさんなどを合わせて50名ほどの従業員が働いています。その中から入社6年目となる高橋 真秀(まほ)さんにもお話を伺いました。

高橋さんは宿泊フロント課の主任。主任ですが、なんと1996年生まれの23歳です。とっても元気で笑顔が素敵な高橋さんは、初めて会った人でも緊張させない優しい雰囲気を持っています。そんな高橋さんがサンセットプラザで働くようになった理由はまさに「地元で働きたかったから」でした。

「私は羽幌出身で、高校も羽幌高校に進学しました。そのころからずっと接客業がやりたい、ホテルで働きたいって思っていたんです。私の同級生は進学や就職で東京や札幌に出ていく人が多かったんですけど、私は別に都会に行きたいと思っていなくて、地元で好きな仕事ができるならその方がいい!って思ってたんですよね」

高橋さんの同級生で、高校を卒業して進学した人は今、就職してさまざまな地域にいるそうですが、話を聞くと戻りたいと思っている人や、実際に地元にUターンしてきた人もでてきているのだそうです。

「私は入社当初は宴会の仕事から始まりました。羽幌町って甘エビが有名なんですけど、実はホタテとかタコとかヒラメもホッケも美味しんです。それから異動してフロント業務に移ってもう4年ほどになります。立ち仕事なんですけど、座ってじっとデスクワークをしているよりも、立って動いている方が自分に合っているんだなって思います」

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そんなフロントの「顔」でもある高橋さんが思うこの仕事の魅力をうかがいました。

「リピーターの方に覚えてもらっていた時ですかね。『高橋さんいますか?』ってフロントでわざわざ私を呼んでくれた時は、本当に嬉しいです。サンセットプラザはリピーターの方が来てくださるのって何か月後とかじゃなくて数年という時間があくことも多いのですが、それでも私にわざわざ声をかけてくれるっていうのは『この仕事やっててよかった!』って思う瞬間です。これからも、もっとサンセットプラザの知名度を上げて、お客様を増やしていけたらいいなって思っています。そして『また来たよ〜』って言ってもらえるように頑張りたいです。今の私は外国語が苦手なので、これからは英語の勉強もして、外国からのお客さんにも同じようにくつろいで行ってもらえるようにしたいですね」

はぼろ温泉サンセットプラザは次のステップへ

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高速道路である道央道の深川ICからそのまま深川留萌道に入り、オロロンラインまですぐに行けるようになることで、これからますます羽幌町を訪れる人も増えるのでは、と言われています。そんな中、サンセットプラザでも「留萌から稚内間のドライブ・観光の中継点や宿泊拠点としてさらに利用してもらえたら」と期待が高まっています。

支配人の高木さんも次のように話してくれました。

「私たちのホテルや道の駅にちょっと立ち寄って、休憩して、羽幌町についてもっと知ってもらえると嬉しいですね。それでスタッフと交流して『またあの人に会いたいな』って思ってもらえるようなあたたかさを大事にしていけたらと思います」

そんな高木さんにはこれからのサンセットプラザについてもうかがいました。

「今までの人のあたたかみのあるホテルはそのままに、また新しいモデルへとシフトチェンジしていく段階に突入していることは感じています。実際、温泉の利用者の8割に当たる町民の人口はどんどん減っています。これからは町民のみなさんのためにも、この場を守るために、宿泊にもっと力を入れていく形になるのではないでしょうか」

さらにサンセットプラザではわくわくするような取り組みが始まっていました。

「この留萌エリアはもっと市町村同士で交流する必要があると感じてきました。お客さんにこのエリアに足を運んでもらうこと、地域それぞれをアピールすることは合同でやることで効果を発揮できると思っています。ですので今回の深川留萌道ができることによって、留萌エリアの市町村が連携してイベントを行うことは大きな一歩ですよね」

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さらに高木さんは続けます。「留萌市に『沿岸バス株式会社』というバス会社があるのですが、その会社で留萌の「萌」にかけて「萌えっ子キャラクター」というキャラクターで会社のPRを10年ほど行ってきました。これに合わせて、北るもい漁業協同組合でもイメージキャラクターを作った経緯もあるんです。そこでサンセットプラザでもイメージキャラクターを製作して沿岸バスさんに相談し、「オロロンむすめ」として先日から活用を始めたところです。こういった取り組みをスピード感を持って取り組めることは民間ならではの強みですし、こういった1つの取り組みを広域で行っていく『輪』が広がっていくことが、これからのキーになっていくかもしれませんね。そうそう、この萌えキャラ、ウチの常務が書いてるんですよ!私が言うのもなんですけど、すごいですよね(笑)」

はぼろ温泉サンセットプラザ
オロロンむすめについてのご紹介はコチラ

サンセットプラザは町民のみなさんを大切にする想いやあたたかいおもてなしに加えて、どんどん新しいことに取り組んでいくという勢いも感じさせてくれました。

美味しい海の幸といったイメージが強かった羽幌町ですが、多くの魅力があり、人のあたたかみが何よりの魅力となることを再発見させてくれたサンセットプラザ。ただ美味しかった、キレイだっただけでなく、「出会えて良かった」と思えるスタッフがいる場所。いろんなスタッフの方々にも話しかけて見て下さい。きっとそれがご縁の始まり。都会ではありませんが、また来たくなる留萌エリアの家のような拠点として、サンセットプラザを利用してみてはいかがでしょうか?

はぼろ温泉 サンセットプラザ (株)アンビックス
はぼろ温泉 サンセットプラザ (株)アンビックス
住所

北海道苫前郡羽幌町北3条1丁目29番地

電話

0164-62-3800

URL

http://sunset-plaza.com/

サンセットプラザは「道の駅 ほっと♥はぼろ」でもあり、裏手に駐車場とトイレも備えています。 


ホテルは大きな家族。はぼろ温泉サンセットプラザ

この記事は2019年3月19日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。