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標津町

「自分のスタイルに合わせて」田舎まちにそっと寄り添う標津病院20181101

この記事は2018年11月1日に公開した情報です。

「自分のスタイルに合わせて」田舎まちにそっと寄り添う標津病院

突然ですが皆さん想像してみてください。太陽に照らされキラキラ光る水面が眩しい、そんな海が一望できる小さなまちを。人口も少なくなってきてしまったそのまちは、決して都会と言うには程遠い、漁業が盛んな田舎まち。

そこにはどんな病院が存在していると思いますか?病院、というより診療所と言った方が良いのでしょうか。お医者さんがひとりで切り盛りしていて、町民たちが必要とするかかりつけ医として日々、体調のことから日常のことまで談笑しながらコミュニケーションを取っている...そんなイメージが浮かんだという方もいるかと思います。

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今回の舞台はそんな海が見える人口5,000人程の田舎まち、標津町。田舎...だけれども、医療が整ったまちなのです。

「町民のために」とそばに寄り添うかかりつけ医としてこのまちを支える唯一の医療機関、標津町国民健康保険標津病院にお邪魔しました。

小さなまちの小さな病院が、人と人とを繋いでいく

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院内に足を踏み入れると、そこには深みのある木の温もり溢れる空間が広がっていました。平成6年に新築・移転されたキレイな院内を案内してくれたのは、事務長の村山勝幸さんです。

「ここは人との触れ合いを大事にしながら、機械的にならず、それぞれの患者さんの想いを受け止めて対応したい...そんな想いのある病院なんです」。

shibetsu_hospital2.jpgこちらが案内してくださった村山さん

隣の中標津町に行けばもっと大きな病院がある中、標津病院が地元民から愛され続けているその理由は一体何なのでしょうか。村山さんは「当たり前のことだけど...」と言葉を継ぎます。

「簡単に診察だけで終わらせず、患者さんの生活環境なども見ながら治療をしています。田舎まちだからこそだと思いますが、地域の中に溶け込んで、時には一緒にお酒を飲んだり、医者と患者だけではなく、人と人との関係を築いていっているんです」。

地域に密着しているからこそ、町民との関係がしっかり築かれ「あそこの病院の先生良いよ!」と口コミが広まっていくそう。良い話も悪い話もすぐにまわるのはある意味、田舎の悪さでもあり良さでもあります。

shiebetsu_hospital4.jpg広々とした2階建ての標津病院

さらに、この病院が移転した背景のひとつでもありますが、この横には特別養護老人ホームと保健福祉センターがあり、医療と福祉のバランスがとられる仕組みに。
「特養にうちの先生方が回診に行ったり、保健センターには予防接種をしに行ったり、3カ所で連携しているんです」。
医療機関がぎゅっと一カ所に集まって、ここに行けば大丈夫というコンパクトなスタイル。これが町民たちへの安心にも繋がっているようです。

田舎まちだけど、ドクターの腕に自信あり

ここの病院の自慢のひとつが、医師のスキルが高いこと。

福岡の久留米大学と連携しており、内科3人、外科1名の先生が福岡からこの標津病院へ派遣されています。久留米大学からの医師の派遣は平成元年からスタートし、どこの病院も医者不足と騒がれている中、安定して医師を確保できているのが大きな魅力。

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「うちは決まった曜日で夜間診療もしています。酪農家とか、日中病院に来れないですからね。学校や会社を休まないで診察に来れるようにということで始めたんですが、実はこれは医師たちから出たアイデアなんですよ」とニコリ。

決して「ただ標津町の病院に配属されたから」という意思でここにいるのではなく、標津町民のためにと「この病院を良くしていきたい」そんな想いを抱えてここのドクターたちは真っ正面から町民たちとも向き合ってくれています。

医療の道を目指す人たちの想いや目的は様々だからこそ...

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もちろんこれだけ医師が揃っていても標津病院での「出来ること、出来ないこと」があるのも現実です。

「先端医療が学びたいという人は、うちじゃない方がいいと思います」とハッキリとおっしゃった村山さん。

医療の道に進もうと決めた時に目指していたところはどこなのか...最先端の医療に触れたい?ゆったりとした時間の中で医療に携わりたい?そう、目指す道やその想いは人それぞれです。
「実際に先端医療を学びたいと札幌や東京に出ていった人が、時を経てうちの病院に来ることもあります。ここはゆっくり働きたいって思う人にはぴったりの環境だと思いますよ」。

隣の中標津町には、ここよりもさらに大きな病院が2つあり、さらにその隣の別海町にも病院があります。「町民も上手に病院を選択して利用して欲しい。そして、働く側も自分が何を目指すのかをもって、働く環境を選んで欲しい」と村山さんは話します。どこの病院も、待遇自体はそこまで変わらない。それならば、自分が働きたいと考える、自分のスタイルに合った病院で働くということ。この標津病院では「田舎で、町民のかかりつけ医として、ゆったり仕事ができる」というのがキーワードかもしれません。

患者さんはもちろんのことですが、働く人がいなければ病院は成り立ちません。

shibetsu_hospital8.jpgスタッフの皆さん、少しだけ集合していただきました!

実はこの病院は標津町が経営していることもあり、標津病院で正職員として働く=公務員になるという仕組み。しかし、「公務員になれるから」という理由で応募してくる方は少ないそう。それよりも、ここでの環境の良さを理由に働きたいと言ってくれる人が多いと言います。ただ、公務員だからこその制度の充実があるのも安心材料のひとつであることは間違いありません。

それもあってか働き始めると長い人が多く、勤続10年超えの方が多数。子育て世代のパートの方々も、子どもの手がかからなくなってきたタイミングで正職員として改めて採用されるなど、雇用の面でも手厚いサポートがあります。何より「保育園もすぐ近くにあるので安心!」とパートの方々からの声が多いとのこと。

「旦那さんの転勤の関係で」「北海道という土地に憧れて」と、道外から標津町へ移住したスタッフもいます。そういった移住者に向けては、村山さんたちスタッフのみなさんが事前に部屋を探しておくのだとか。「実際に来て部屋を探すのではなく、なかなか来れない間に見つけておいてあげたいなと思って」そんなサポートがあるのも標津病院の良さのひとつです。

田舎まち「標津町」の良さとは

海もあれば山もある標津町。キレイに整備されたキャンプ場もあり、そのシーズンともなるとキャンパーたちによってびっしり埋め尽くされます。海釣りを楽しむ人も多く、釣り好きにはもってこいの場所かもしれません。


shibetsu_hospital13.jpg海釣りを楽しむ人たち

さらには標津町を拠点とすれば、世界遺産の知床はもちろんのこと道東をまわることが出来る楽しみ方もあります。車でゆっくり走っても30分で中標津の空港に着くという利点も大きいようです。

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「我々も久留米大学との関係で福岡に行くのですが、朝9時30分の飛行機に乗ったら、13時40分には福岡に着くんです。新千歳で乗り継ぎしますが、この待ち時間を入れてもですよ!」

確かにパッとまちを見るだけでは「何もない田舎まち」と思ってしまうかもしれません。でも実は住みやすさが光るまち。

shibetsu_hospital11.jpg漁業も酪農も盛んなまち。みんなカメラ目線でキメてくれました

買い物もできるし、土地も広い。なんと言っても移住者には土地代無料なんて制度もあるくらい。医療も決して劣っていないこのまちは、きっと住んでみたら分かる魅力がぎっしり詰まっているのです。

「漁師や会社員、酪農家など様々な業種の方がいますが人は本当に悪くないと思いますよ、うちのまちの人たちって」そう優しい笑顔を見せてくれた村山さん。

最後に村山さんは、この病院のこれからについてこう話しました。
「かかりつけ医となるお医者さんと出会って、色んな問題を解決していけるような環境をつくっていくことが病院のあるべき姿だと思います。ここは田舎という環境だし、最先端医療を望んでいるというまちでもありません。ただ、患者さんに優しく、それぞれの町民が思う『こうあって欲しい』そんな気持ちに添えるような病院であり続けたい。治療は決して劣っていない自信がありますから」そう素敵な笑顔で話してくださった村山さんでした。

標津町国民健康保険標津病院
標津町国民健康保険標津病院
住所

北海道標津郡標津町北1条西5丁目6番1-1

電話

0153-82-2111


「自分のスタイルに合わせて」田舎まちにそっと寄り添う標津病院

この記事は2018年10月10日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。