いきなりですが、みなさまへ質問です。
の・ぼ・り・べ・つ、といえば?
これに迷わず答えられたあなたはズバリ道民ですね。
道民ならば誰もが聞いたあのフレーズ。
道民ならば誰しも一度は頭から離れなくて困ったあのフレーズです。
登別は北海道の胆振地方、温泉で有名ではありますが、先程の問題の答えは「温泉」ではなく「クマ牧場」。
道民的にはKUMABOKUJO!でしょうか。
このクマ牧場を経営しているのは加森観光グループの登別温泉ケーブル株式会社です。
加森観光グループは、他にもルスツリゾートやサホロリゾートなどの大型スキー場やホテル、ゴルフ場、遊園地などを運営しており、北海道の観光を支えている企業のうちのひとつです。
観光業ということもあり、道外移住者や外国籍の方もたくさん働いています。
事業の全貌を伺うために、札幌の本社を訪ねてきました。
会社の興りは薬屋さん?
加森観光(株)の本社は札幌の中心部。札幌駅の近くに構えています。
住所だけみると札幌市のマチナカ、中心部。勝手な想像で高層ビルの中かと思って訪問すると、なんとも味のあるビルで素敵な佇まい。
出迎えてくれたのは総務部総務課長の佐藤さん。
すかさずビルのお話しを聞いてみると「レトロなビルが好きなマニアの方たちから、ビルの中を撮影しても良いですか?って連絡が来ることもあるんですよ」と。
映画の撮影でも使われそうな雰囲気のあるビル。そんなビルの中にありました。
ルスツリゾートの遊園地やスキー場、サホロリゾートのスキー場やベアマウンテン、登別のクマ牧場やマリンパークニクスなど、様々な展開で道内あちらこちらの観光を支えている加森観光グループですが、なにから始まったのでしょうか。
「現会長・加森公人のお父さんが札幌で薬の卸売会社を経営していたと聞いています。その後、登別でロープウェイを設置する計画が持ち上がった時に参加したのが観光業としての始まりでした」。
最初はロープウェイの終点は展望台だけだったそうですが、その後クマ牧場が作られることになり、そして運営の中心になるように。
かくして、戦後の北海道の復興・開発に従事していく中で、登別の観光に携わることが今のリゾート観光業の礎となってなっています。
登別の事業に携わりつつも「登別の土地は国立公園なので国有地、会社の財産は、ロープウェイの鉄塔とクマだけで、担保にもならない。会社の将来のために何かしなければならない」として次の事業を始めたのは札幌でのビル経営。
札幌の中心部を歩いていると「加森ビル」という看板を掲げたビルが随所にあります。さきほども紹介した本社ビルはもともと労働金庫のビルだったそうで、なんと地下には大きな金庫があるそうです。
札幌でのビル経営を行いながら、現会長の加森公人さんの頭のキャンバスにはもう一つのビジョンが描かれていました。
それが、スキー場経営。登別のロープウェイで培ったノウハウを活かしてスキー場経営へと乗り出したのです。
スキー場経営は会長の悲願。そして大好きだった遊園地を北海道に。
昭和56年。留寿都村で本州の親会社の倒産で不安定な経営をしていた大和ルスツスキー場の経営を引き継いでもらえないかと、当時の留寿都村長から依頼がありました。
「ロープウェイ管理のノウハウを活かすことのできるスキー場経営は会長の悲願でした」と語る佐藤さん。
留寿都村の人たちや近隣市町村からも働きに来ていた人も多数いたため、スキー場存続は村にとっても働く人たちにとても重要事項だったことでしょう。
こうしてスキー場の名前をルスツ高原スキー場と改め、加森観光株式会社を設立し、今の基盤をつくる第一歩を踏み出しました。
現在のルスツリゾートは遊園地もあり、ゴルフ場もあり、なんとスキー場は3つの山からなる37コース、総延長42kmで、その規模はニセコに匹敵します。
北海道において最大規模を誇るスノーリゾートとして世界的にも有名なことはみなさんもご存じのはず。
ですがはじめはウエスト側のスキー場とホテル(現:ハイランドロッジ)からのスタート。
今では当たり前にある遊園地も最初はありませんでした。スキー場の横になぜ遊園地を併設することになったのでしょうか。
「会長が遊園地が大好きだったんです。」と笑う佐藤さん。
「アメリカなどの遊園地をプライベートで見に行くほどの遊園地好きだったようです。ただ単純に遊びに行くのではなく、どう運営しているのか、どんな乗り物が人気なのか、など色々分析していたみたいですよ。そして、北海道にない遊園地をひらくのが夢だったそうです」。
スキー場を経営していると夏場の収入源の確保に頭を悩ませることもあり、遊園地構想は会長の次なる悲願だったのでしょう。
そんな中、東京の谷津遊園を閉園するという新聞記事を見つけた加森会長は、これだ、とひらめきました。
新しく遊園地のアトラクションを購入するには莫大な費用がかかります。また北海道では冬の遊園地の営業ができませんので、本州と同様の費用はかけられません。しかし、中古での購入であれば費用を抑えられます。
その記事を見た時から加森会長は谷津遊園のジェットコースターを購入するために奔走しました。
「同じ事を考えている企業さんは他にもたくさんあったと聞いています。でも会長は諦めなかった。北海道に遊園地をつくりたい。子供たちの笑顔を北海道にも、という想いで直談判に行ったそうです」。
会長の想いと行動力に心うたれたのか、谷津遊園を経営していた京成電鉄さんは譲り先を加森観光に決めたのでした。
こうして中古のジェットコースター等のアトラクションを手に入れ、ルスツに遊園地、という夢が叶えられたのです。
ルスツリゾートとサホロリゾート。
ここでひとつ佐藤さんが面白いことを教えてくれました。
「ルスツリゾートホテルは全長800mと細長い建物で、上から見ると日本列島のような形になっています。九州の部分から北海道の部分に向かって、計画的に経営の状況によって徐々に建設が進められたもので、堅実な経営がルスツリゾートホテルの形となって表れています。」
もう一つ登別・ルスツと並んで加森観光グループの中で有名なのがサホロリゾートです。
ここはもともと本州の大手が開発した施設でしたが、18年ほど前に加森観光が受け継ぐことに。
なんだかここまで聞くと、色々なことに手を出して、すぐ買い取って・すぐ売ってをしている会社なようにも受け取れてしまいますが
「新しいリゾートや事業をはじめたり、受け継ぐ時にはしっかりとリスクを想定し、長期的に運営をして収益を上げるための算段をして、慎重に進めます」と語気を強める佐藤さん。さらに言葉を続けます。
「うちは北海道の会社です。だから、東京の会社のように北海道から撤退することはできません。そして、リゾートで働く皆さんの生活も支えているので無理な判断もしません。北海道に根付く会社だからこそ地域に貢献できる。北海道企業の役割としてやれることはやろう!という風土の会社なんです」。
熱いまなざしで語ってくださる佐藤さんですが、聞くと入社は13年ほど前だそう。
千葉県出身で、もともとは東京で海運関係のお仕事をしていたのだとか。
加森観光の歴史から比べると入社歴は浅く思えますが、すらすらと会社のこれまでについて出てきます。
「総務部にいるので、それこそ会長や古くからいる社員と話す機会もあり、また聞こえてくるんです。それを覚えました」とニコリ。
「そして会社を担ってきた人たちのなかにはアルバイトからスタートした人も多いんですよ」と教えてくれました。
アルバイトから社員へ。そして部長などの管理職になった人たちにはたくさんいるそうです。過去にはなんと役員になった方も。
現場を知っている人が上層部にいることで、現場の意見を大事に運営していることが顧客の満足にも繋がっているようです。
また、現場からの積極的なアクションにも期待しているのだとか。
「ルスツにはマイクパフォーマンスでテレビ番組にも出て有名になった男性スタッフがいるんですが、彼のパフォーマンスも会社が強要したわけではなく『お客さんのために!』と彼が独自に始めたんです。お客様を楽しませることをスタッフみんなで考えています」。
現場を経験してから異動して札幌の本社で企画を考えたりしているスタッフもいるそう。
スタッフの皆さんは、全てはお客様に楽しんでもらうため、という一心で活躍されています。
各リゾートで色々な企画が目白押しです
これからの加森観光
登別・ルスツ・サホロ、札幌。そして今では道外にも多数施設を抱える加森観光(株)グループ。
最初は登別のクマ牧場からスタートしたとは思えないほどの大グループです。
今の北海道にはなくてはならない観光施設として、そして地域の雇用を担っています。
佐藤さんから面白いお話しをもう一つ聞かせて貰いました。
「今、会長の実家はビール工場になっているんですよ」と笑います。
すすきの生まれの地ビールを会長の住んでいた実家だった場所で作っているんだとか。
その名も『薄野地麦酒(ススキノジビール)』。
観光業だけでなく、地ビールの製造まで手がけているなんて、これからの加森観光(株)の広がりにも注目です。
「今後も今やっていることだけじゃなく、他の事にチャレンジしたい!という意欲のあるスタッフと出会っていきたいですね。そしてここでは自分のやりたいことができる環境にあると思います。もっともっと加森観光(株)が楽しい会社になるように今後も北海道を知らない道外移住者の方たちや外国の方たちとも一緒に働いて行きたいと思っています」。
与えられた仕事をこなすだけじゃなく、あなたのやりたい『あんなこと』『こんなこと』を叶えられるかも。
会社の歴史を紐解くと、現場を大事にしている会社の風土が見えてきたのでした。
- 加森観光株式会社 (ルスツリゾート・サホロリゾートなど)
- 住所
札幌市中央区北4条西4丁目1 加森ビル3
- 電話
011-222-3088