酪農家というと、生き物を相手にする仕事の代名詞。1年のうち1日たりとも給餌や搾乳の作業をストップすることができません。とりわけ家族で酪農を営む小規模な牧場の場合は、自らが休むために代わりを務めてくれる人材を探すのにも一苦労です。そこで生まれたのが酪農ヘルパー。酪農家のお休みを作るために、代わりに牛のお世話をする仕事です。地域ごとに酪農ヘルパーを派遣する組織がある中で、今回は有限責任事業組合帯広畜産センター(以下、帯広畜産センター)を訪ねました。
本州から人を呼び込む取り組みにも注力中!
帯広畜産センターのスタートは1991年。当時は酪農ヘルパーを派遣する組合「帯広デーリィーサービス」として誕生しました。
「生乳検査事業(生乳の菌数や体細胞数の検査など)や乳牛検定事業(乳成分などのデータ測定・収集)を手掛ける『帯広畜産指導センター』と統合したのが2007年のこと。同時に名称を現在のものに変更しました。当組合は帯広市川西農業協同組合と帯広大正農業協同組合より業務委託を受け、現在は全72戸の組合員さん(酪農家)が加入中です」
乳牛検定に使われる検査キット。
こう教えてくれたのが主任の工藤祐輝さん。酪農ヘルパーの派遣や生乳検査を行う組織は各地にありますが、事業内容や考え方はそれぞれ異なると言葉を継ぎます。帯広畜産センターがここ5年ほどで最も力を入れているのが酪農ヘルパーの増員と働き方の向上です。
「地元の人材が豊富とはいえない状況なので、これからは外からいかに人を呼び込むかが重要。酪農ヘルパーの仕事は特に本州では知られていない一方、動物と関わりたい、北海道に住んでみたいという潜在的なニーズは高いはずです。なので、最近では関東や関西の学校でも企業説明会を開いています」
酪農家が酪農ヘルパーを育て、大切にしてくれる環境。
帯広畜産センターは待遇や労働環境の整備にもぬかりはありません。給与は他の職種と比べても決して遜色のない額に設定し、夏期手当や年末年始手当、期末手当も受け取れます。しかも、2万3000円と格安の社宅に加え、年に2回の被服費や車両保険の助成、重機免許の半額助成といった福利厚生も至れり尽くせりです。
「じゃないと人が来てくれないでしょう(笑)。ちなみに、帯広は中規模の酪農家さんが多い地帯で、一戸あたりの牛の平均頭数は50頭前後です。大規模な牧場が大半を占める地域に比べて飼育管理の負担は少ないと思います」
組合員の中でも8戸の方々は役員となり、普段の作業に加えて酪農ヘルパーを育てる役割を担ってくれています。新人さんを研修するのはもちろん、例えば業務外の作業にあたる倉庫整理をさせたとしたら、その組合員を角が立たないよう諌めてくれるというのです。
「とはいえ、ウチの地域では、酪農家の皆さんは酪農ヘルパーを大切にしてくれる方ばかり。お互いになくてはならないウインウインの関係ですから、ご飯を食べに連れて行ってもらったというスタッフも多いんですよ」
酪農ヘルパーの田島さんとツーショット。
牛が好きというライトな層にもオススメ。
現在、帯広畜産センターの酪農ヘルパーは6名。最年長でも25才と若い方が多く活躍しており、人材育成や労働環境の向上に力を入れたことで以前に比べて定着率が高まっています。
「月に8回のお休みは確保し、慶弔の際にはシフトを上手く交代しています。ただ、現状では酪農家さんの農休のご要望をお断りするケースもありますし、スタッフの働きやすさをさらに進めるためにもあと少し人手が欲しいところ。酪農ヘルパーは、これからどんどんニーズも働き方も進化していく分野だと考えています」
北海道で酪農に携わり、新規就農を目指したいという若者も多いはず。そのために酪農ヘルパーを選ぶのはオススメの働き方だと工藤さんはいいます。実際の牧場で知識や技術を積む経験は、新規就農の際の研修期間短縮につながるケースもあるそうです。事実、帯広畜産センターで働いたスタッフの中には、新規就農を果たした人もいます。
「まずは酪農ヘルパーとしてライトに働き、新規就農への道のりを歩むという選択肢も知ってほしいですね。さらにいえば、酪農家さんの牧場に就職するまではいかずとも、牛が好きだから働きたいという方にもピッタリ。朝の作業は大体5時からと少し早いですが、8時〜9時頃まで約3〜4時間作業を行い、その後夕方15時ごろまでは自由時間です。夕方の作業も約3〜4時間行い、19時ごろには終わります。体力的にも長く続けられる仕事ではないでしょうか」
酪農ヘルパーの仕事が気になるという方は見学もOKで交通費も助成してくれます。北海道で酪農に携わりたいという夢をお持ちなら、帯広畜産センターを訪ねてみてはいかがでしょうか。
- 有限責任事業組合帯広畜産センター
- 住所
北海道帯広市川西町基線57番地3
- 電話
0155-59-2974
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