
東豊フーズ株式会社が生まれたのは平成16年。大手食品卸売企業の奥村食品工業株式会社から、水産加工品製造の子会社として立ち上がりました。同社は仕入れルートの開拓に力を入れ、今やタラバガニやたらこを確保できる量が道内でも指折り。しかも質の良い素材を厳選した上で、タラバガニの脚をキレイに成形したり、たらこの化粧箱をつくったり、ブランド力を高める取り組みにも余念はありません。スーパーや量販店での売れ行きは好調というのも実にうなずけます。
和気あいあいと働ける、「顔が見える」関係づくり。
まず、インタビューのマイクを向けたのは、専務取締役の奥村直樹さん。東豊フーズを立ち上げた当初は、販路の開拓やブランディングを一人で担っていたそうです。
「事業が軌道に乗るまでは仕事量が安定せず、パートさんに午前中で帰っていただく日もあったほどです。けれど、創業から15年近くが経った今はおかげ様で多くの方に商品を選んでいただけるようになり、長く安定して働ける職場に成長したと自負しています」
奥村さんは、パートさんやアルバイトスタッフこそ、おいしさをつくってくれる中心的な存在という考え方。皆さんとスムーズに連携がとれるよう、休憩時間にお菓子を差し入れしたり、世間話で盛り上がったり、「顔が見える関係」づくりを心掛けています。
「和気あいあいと働ける風土が根づいたからでしょうか、60代のベテランパートさんから私が叱られることも(笑)。とにかく20代〜70代までのスタッフたちの笑顔が絶えない職場ですね」
おいしさづくりの現場を、徹底的に衛生管理!
東豊フーズ株式会社は、ドーンと豪快なタラバガニのシュリンク(鮮度を維持できるフィルムパックの手法)や丁寧に仕込んだたらこのおいしさに定評があります。他にもタコやホタテの加工品を手掛けたり、学校給食センターや自衛隊に魚の切り身を提供したり。その製造現場を見学させてもらいました。
カニやたらこ、魚の切り身など、商品ごとに製造現場が分かれている工場内。まずは全体を見学したところ、あまり目立たない一角に「オゾン水」「ジア塩素水」と表記されたパイプを発見しました。聞き覚えがあるような、ないような...。「オゾン水は除菌や脱臭、ジア塩素水はノロウイルス対策に効果があるといわれています。当社は蛇口をひねるだけで、どちらの水も出るように工夫しているんですよ」。徹底した衛生管理について教えてくれたのは工場長の奥村史郎さんです。
「当社の親会社にあたるのは、大手食品卸売企業の奥村食品工業株式会社。僕の名字から予想がつくかもしれませんが、経営者の親族の一人なんです。とはいえ、前職は飲食店のホールスタッフやフェリーのサービス係など、食品製造とは全く畑違いの仕事。当社の立ち上げ時期にいとこでもある専務から一緒に働こうと誘いを受けて入社することを決めました」
見栄えの良さが、ブランドイメージに。
奥村さんは食品製造業に関してはまったくの未経験でした。けれど、そもそも質の高い原料を仕入れているため、商品づくりに関してはそれほど手を掛けずともおいしさが十分に引き出せるといいます。
「例えば主力商品のタラバガニのシュリンクは、曲がっている脚を伸ばしたり、均一な大きさになるように組み合わせたり、キレイに成形する作業がメイン。ただ、『見栄えの良さ』も商品のブランド力を高める大切な要素ですから、これが一番大事な仕事だともいえますね」
とはいえ、たらこづくりは、原料に含まれる水分を見極めて塩や調味液の漬け込み時間を調整しなければならないとか。その感覚を身に付けるまでには1年くらい掛かります。
「当社では、切り身の製造が最も職人技の必要な仕事。身を痛めない包丁さばきはもちろん、大きさや重さを均等に切り分けていく技術は和食の板前さながらです。ちなみに僕は得意ではありません(笑)」
東豊フーズの名を全国へ!
工場長の主な仕事は、製造工程や人の管理。お客様のオーダーに合わせ、出荷日から逆算して作業の組み立てや人員配置を考えています。スタッフが協力して生み出した商品が、スーパーやお土産屋さんに並んでいる姿を見ると、やはりうれしいと表情を緩めます。
「当社は大手とは違って人数も少ないので、一つの作業に専念するのではなく、忙しい持ち場をみんなで手伝うスタイル。だからこそ、『全員でつくった』という達成感も大きいんだと思います」
最近、奥村さんは専務のサポート役として営業活動や仕入れにも力を入れているところ。市場で魚介の鮮度を見る目を養ったり、量販店に商談に行ったり、会社全体を動かすことにつながる仕事にも取り組んでいます。
「そこで思うのは自社ブランドをもっと強く打ち出したいということ。今後は、東豊フーズの名を全国に広めていくための方策を考えていきたいですね」
- 東豊フーズ株式会社
- 住所
北海道札幌市北区新川西2条1丁目1番5号
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