
どんどん進化を遂げて行く農家
札幌から車で1時間ほど走ると農村地帯が目立ってきます。綺麗に整備された畑は、車を停めてじっくり見てみたくなるほどの美しさ。ここは空の玄関口、新千歳空港がある千歳市。都心から少し離れるだけで、美しい景色が広がって見えるのが北海道の良いところの1つかもしれません。
平日の夕方だというのに、駐車場には車がたくさん。人が吸い込まれるように入っていくこのお店は「花茶(かちゃ)」というアイスクリーム屋さん。
また、ファームレストランも併設しています。
花茶が出来たのは平成8年のこと。2017年で11年目を迎えました。
「ここはもともと農作物のみを栽培していたんです」と話してくれたのは、この場所が実家でもある代表の小栗龍夫さん。
代表、小栗さんです
「麦やビート、小豆といった作物をメインに栽培していました。その後、うちの母がいちご狩りも始めてみたんです」
するとこれが好評。訪れた方が休憩できるようにベンチは置いていましたが、せっかく車を走らせこの農村地まで来てくれたのだから、もっとゆっくりしていってほしい、農村浴を楽しんで欲しいと、「いちご」を使った何かを提供したいという想いからアイスクリームの販売をスタートさせたのです。
花茶の扉を開けると広がる風景。色んな種類のアイスがあって悩みます
アイスクリームもこれまた好調。次は、デザートだけではなく旬の野菜を使った料理も食べてもらいたいと、ファームレストランが増設されたいう歴史です。
この日人気だったアップルパイの味は、夕方には売り切れとなっていました
訪れた方が満足できるように
レストラン一番の目玉は「ピザ」。イタリアからピザ釜を持ってきており、本格的なピザを味わうことが出来ます。
もちろん、釜だけではありません。小栗さん自身がイタリアで3カ月ほどピザの修行に出たというのです。修行の日々は小栗さんにとって「楽しい」時間であり、だからこそ日本に帰る時の別れが悲しかったのも事実。
アイスクリーム販売の横を抜けると、ピザ釜がお出迎え
ピザ釜には「KACHA」と花茶の文字が刻まれています
一方、花茶で小栗さんの帰りを今か今かと待ちわびていた常連の方々。地元の方を始め、札幌や道外、多くの観光客の方が花茶にピザがやって来るのをとても楽しみにしてくださっていたそうです。
「まだピザ釜を店に入れている段階、本当に煙突を入れている時に早速ピザを注文してきた人もいました。まだ早いよって(笑)」と小栗さんは笑います。
また、ここのレストランの良さは景観の良さにもあるでしょう。大きな窓から見渡せるのは、広々とした農地。広大な大地に夕日が落ちていく姿を見ることが出来ます。さらに、窓際にある大きな木々は桜の木。春になると一斉に綺麗なピンク色に染まるそうです。
北海道の良さ、農の良さを伝えるために
そんな花茶では、東京や大阪から来た修学旅行生の宿泊体験の受け入れを実施。普段なかなか土を触ったことがない子どもたちに農作物の収穫のお手伝いをしてもらいます。一仕事終えたあとは、一緒にごはんも食べます。「みんな帰る時『楽しかった!』と言うより『美味しかった!』と言って帰ってくれるんです」と、小栗さんのお母様はニコリ。
小栗さんのお母様
生徒たちは北海道の食材の美味しさ、畑で採れた新鮮な野菜のうまみを知り、畑での力仕事以外にも素敵な経験が出来たようです。
これをきっかけに、ご両親を連れてまた遊びに来てくれる子もいれば、北海道の魅力に取り付かれ、北海道の高校に進学してきた子もいるのだとか。
花茶店内からの景色です
他にも、新規就農を目指す方々をインターンシップ生として受け入れることもあれば、農業高校へ行って生徒たちに講演することも。
小栗さんのお母様は先日、倶知安農業高校で農業の良さ、そして夢を持つことについてお話をしてきたそうです。
「農業は、ただ食べ物を生産するだけではないということ、また、夢や目標を持つことは努力しないと得られないということを伝えたくて。努力の向こう側に夢があるんです。私自身も、目標があったから一歩ずつ前に進んで頑張って来れました。まだまだ若い生徒たちにも、農業に進む子もいれば、そうでない子もいる。でも、それぞれが『なりたい自分』をしっかり持ってもらえたら良いなって思っています」。
生徒たちは、小栗さんの話を真剣に、目を見て聞いてくれていたそうで、その時のみんなの真剣な瞳が忘れられないと言います。
そして、生徒たちには内緒で持っていた花茶のカップアイス。手渡すと生徒たちの表情がさらに綻び、一口食べると「素材の味がする!」と、さすが農業高校生ならではの発言が飛び交い、生徒たちの将来が楽しみと話してくださいました。
生徒たちに大人気だったカップのアイス
これからも花茶は進化し続ける
こうして多くの人と繋がっていく花茶。お母様は言いました。「私がつくったこの場所、今では息子たちがその想いを繋げて行ってくれています。これからも、彼らの個性を花茶で出して行って欲しいです」と。
一方、小栗さんも今後の花茶についてこう話してくださいました。
「季節ごとのお花をもっと訪れた方に見せていきたい。そして、季節の美味しいものを食べていってくれたら嬉しい。ここで存分に農村浴を楽しみに来て欲しいです」
一度訪れたら、きっとまた来たくなる。花茶はこれからも多くの人に愛され、そして新たなファンを増やし続けていくのではないでしょうか。
花茶の看板ネコ?運が良ければ出会えるかも・・・