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佃煮、煮豆、お漬物に惣菜。決してきらびやかではないけれど、日本の食卓には欠かせない大切な食品たち...そんなささやかなおいしさを、明治時代からつくり続けている食品会社が、札幌の中心部からほど近い中央区の一角にあります。名前は竹山食品工業。創業125年を超える歴史と伝統を誇る老舗メーカーです。 現在の製造商品数は100アイテムを超え、約8割が道内に、残りは道外にも流通し、「安心のおいしさ」「三食に欠かせない伝統食」として高い評価と支持を得ています。また近年のライフスタイルやニーズの多様化も見据え、小袋商品や大型から小型パックまでの用途別商品もラインナップ。さらにお歳暮やお中元時期には、山の幸や海の幸をアソートしたご贈答用セットも人気を集めています。
伝統の製法や味わいに、現代のエッセンスを。
インタビューをお願いした村尾貴昭さんは、この道10年以上の中堅製造スタッフ。前職は土木関係のオシゴトだったとか。
「実はアルバイトをしようと求人誌を見ていたら、『力仕事です』という一文が目に留まったんです。それがウチの会社。体力を活かす仕事がしたかったので、すぐに応募しました。異業種への転職? 全然気になりませんでしたよ(笑)」
このマチナカの工場では豆やワカサギ、昆布、小魚の佃煮やお惣菜を製造しています。昔ながらの惣菜づくりということもあり、伝統の製法や味わいを引き継ぎつつ、現代のエッセンスを少しずつ加えているそうです。
「基本の製造方法は昔と同じ。機械も導入されていますが、やはり手作業に頼る部分は多いですね。さっきまで豆を炊いていたんですけど、最良の状態で切り上げるのは今でも難しいし、味の決め手となるタレの仕込みも毎回毎回、細かく味見します。こういう経験を重ねて、自分の精度を高めていくしかないんですよ」
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「おいしい!」のコトバに、思わずニヤリ!
伝統のある会社に働いていると、窮屈に感じることはないの?そう聞くと、入社前は不安もあったそうですが、実際は伸び伸び働けると笑顔を見せます。 「職場は気さくな人ばかりだし、社長や工場長もとても話しやすいですよ。あと、新しい仕事もどんどん任せてくれるし。だからでしょうね、あっという間に10年過ぎちゃいました(笑)」 さまざまな店や会社からオーダーを頂くのも村尾さんの喜び。けれど、ハガキや手紙などでお客さんから「うまい」という声をもらったり、スーパーなどで自分が炊いた佃煮を手に取る人を見たりするのもうれしいものだといいます。 「あと自分の子が佃煮をおいしそうに食べてる姿を目の当たりにする...そんな瞬間がやっぱりうれしい。思わずニヤついてしまうし、よし明日からも頑張ろうって気持ちになります」
老舗企業の「守るもの」と「変えていくもの」と。
ここ最近は新商品づくりにも参加させてもらってるとか。村尾さんも素材や味付けを試行錯誤しています。 「ただこういうジャンルの食品は、矢継ぎ早に新製品を出してもなかなか受入れてもらえません。一時カレーテイストの佃煮をつくったんですけど、やっぱり定着しなかったですから(笑)」