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江別市

地元で育った小麦を粉にして全国へ。江別製粉20170130

この記事は2017年1月30日に公開した情報です。

地元で育った小麦を粉にして全国へ。江別製粉

幻の小麦と呼ばれた「ハルユタカ」

1948年5月27日設立。江別市に拠点を構え、まもなく70年を迎える製粉会社「江別製粉株式会社」。


「江別製粉=ハルユタカ(小麦の種類)」とピンと来る方もいるのではないでしょうか。それもそのはず、江別製粉は30年以上も前から、当時業界で見向きもされなかった国産(北海道産)小麦に着目し、その価値を高めるために小麦粉の二次加工などを研究したり、小麦をテーマにしたイベントを開催したりなどの活動をおこなってきたユニークな会社なのです。

きっかけとなった小麦がハルユタカ。江別製粉が北海道産小麦100%の商品開発に取り組み始めた頃からの、大切な「相棒」です。

ebetsuseifun06.jpg色々な商品を江別から発信しています

「ハルユタカ」が一躍有名になったワケとは

今から30年前、日本で栽培される小麦はうどんに向く品種ばかりで、製パンに適するものはありませんでした。


したがって、日本でパンを作るには、カナダやアメリカの小麦を輸入して製粉したものを使うのが当たり前。そんな時代に登場したのがハルユタカです。研究機関はラーメン用の小麦としてデビューさせましたが、江別製粉では、当時家庭用の製パン機(ホームベーカリー)が発売されたことなどもあり、パン用小麦粉として売り出すことにしました。

これが、食の安心安全に関心を持つ消費者を中心に大ブレイク。国産100%でおいしいパンが焼ける初めての小麦として、ハルユタカの名が全国に知られることになったのです。

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ところが、このハルユタカは栽培が非常に難しく、生産量も減る一方。人気はあるのに手に入らないことから、ついには幻の小麦とまで言われてしまうほどに。

そんな時「このまま幻にしてはならない」と立ち上がったのが、地元江別の農家さんや農業改良普及員の皆さんでした。試行錯誤の結果、春に種をまく「春まき小麦のハルユタカ」を、雪が積もる前に前倒しで種をまく「初冬まき」という離れ業を編み出し、風前の灯となっていたハルユタカを救ってくれたのです。

さらに、市内の製麺会社も地元の小麦を使って美味しいラーメンを作りたいと動き出し、ハルユタカを核にした地産地消が大きな盛り上がりを見せました。江別製粉は、こうした「農」や「食」の現場に積極的に関わり、両者をつなぐ役割を果たしてきたのです。

ebetsuseifun09.jpgこれがハルユタカを救った「初冬まき」という方法。雪が積もる前に急いで種をまきます。

4代目の社長は語る「この会社で働くには、食いしん坊なことも必要です」

ebetsuseifun05.jpg現社長の安孫子(あびこ)俊之さん

製粉工場と聞くと、「工場内は粉が舞っていて、小麦粉がぎっしり詰まった重い商品を担いで運んで・・・」取材陣は当初そんな想像をしていました。

しかし、そんな予想を打ち破る答えが社長から返ってきたのです。

「最新設備を取り入れているので、力仕事はほとんど機械がやってくれます。工場にいるスタッフの仕事は、モニターをチェックしたり、機械を調整したり。粉は機械装置の中を通って移動する仕組みになっているので、意外にクリーンな環境なんですよ」・・・なんだか意表を突かれました。

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「私たちは、小麦粉を製粉している会社ですが、その先に『みんなが口にする食べ物になる』ということを忘れてはいけません。こうして食品を取り扱うからこそ、食に興味のある人の方がきっと楽しく働けると思います。パンやラーメンの食べ歩きが好きとか・・・。だからうちで働くには、食いしん坊な方大歓迎(笑)」。

2016年12月現在、61名の社員が在籍。原料となる良質な小麦を調達するために産地や生産者さんのところへ足しげく訪れる畑のプロ、小麦の状態を見極めて最適な挽き方になるように機械を調整する工場のプロ、品種の特性を生かしたパンや菓子などを提案する加工のプロ、出荷先のお客様の課題解決や新しい価値づくりをサポートしていく営業のプロ・・・。同じ会社にいながら、様々なポジションで活躍している社員がいます。

ebetsuseifun03.jpg社員の方々に商品を持っていただいて撮影した1枚

ここで1つ取材陣も驚いたことがありました。

小麦粉の出荷先として取引しているお客様の半数が道外となった今でも、他の土地に営業所は持たずにここ、江別のみだというのです。道内はもちろん、道外の出荷先であるパン屋さんやレストランにも、営業スタッフが月に2〜3回出張しているとのことでした。

道外に営業所は作らないのですか?と聞くと、社長はこう言いました。

「そこが鍵なんです。朝イチから道外に飛ぶ。その時きっと営業スタッフはこんなことをお客様に伝えることが出来るでしょう。『いやぁ〜今日ついに気温がマイナスまで下がりましたよ〜』なんて。つまり、北海道の空気をリアリティを持って伝えることが出来るわけです。お客様は作り手のことがきっと気になると思います。だからこそ、北海道から直接会いに行くから伝えられることがたくさんある、それがうちの強みです」。

地場産小麦で名産品や名物料理をつくって、地元を盛り上げたい

他にもまだまだ地元への想いとしてこだわっていることがあります。それは、江別製粉が独自に開発した「F-ship」という名の小型製粉プラントです。

製粉業界は、大量生産が主戦場。江別製粉では、この大量生産を支えるメイン工場の他に、原料小麦1トンから製粉可能な小さなプラントをつくりました。手間もコストもかかるのに、なぜわざわざ少量の生産方法を取り入れたのか、疑問をぶつけてみました。

「少量生産は確かに効率が悪い。でも、取り組む大きな理由は、一言で言うと『地域とともに生きたいから』。きっかけは農家さんの『自分の栽培した小麦を食べてみたい』や、小麦を使う職人さんの『町内の小麦で特産品を作りたい』といった声を聞いたこと。このF-shipのおかげで、北海道各地で個性あふれる商品や料理が開発され、ご当地グルメなんかも生まれたり。そうやって、地域に還元していくことを続けて行きたいのです」。

小麦畑のすぐ近く、江別にのみ拠点を置き、地元に密着している会社だからこその秘められた想いがひしひしと伝わってきました。

今後も江別から全国各地へ「おいしい」を届けるのが私たちの役目です

製粉会社は小麦を育てる農家さんと、小麦粉を使って製品や料理をつくる出荷先のお客様との間に立つポジションです。そのため、製品や料理を口にする一般の消費者には「江別製粉がつくった小麦粉を食べている」という認識を持たれることはほとんどありませんよね?と聞くと、社長は首を横に振って答えました。

「商品ポップなどで『このパンは北海道、江別の小麦粉を使っています』と消費者にアピールしてくれるパン屋さんなんかも多いんですよ。でも、そもそも私たちの役目は、農家さんの育てた小麦を粉にしてきちんとお客様の元へ届けること。ですから、それを使った製品や料理を食べて『おいしい』と言ってくれるだけで十分嬉しいんです」。

さらに言葉を続けます。
「パスタやパンのパッケージに江別製粉の名前が入ることはなくても、裏方には裏方の仕事があると誇りを持って仕事をしています。ここ江別から、全国の人たちに『おいしい』と言っていただける小麦粉を届けること、そしてその『おいしい』の声を小麦農家さんにフィードバックすることが私たちの最大のミッションです」と想いを語ってくれました。

今回の取材で改めて分かったことが1つあります。それは、江別にはすごい企業がたくさんあるということ。江別に拠点を構えながらも、全国的に知られている食品会社も多いのです。

社長は言いました。「江別には自慢できる食材や企業がたくさんある。みんなで力を合わせて、もっと江別を盛り上げたい」と。北海道の空気を存分に吸って育った小麦粉を、ぜひこれからも全国の皆さんに届けていって欲しいですね。

ebetsuseifun07.jpg可愛らしい、なんだか心が温まるネーミング

江別製粉株式会社
江別製粉株式会社
住所

北海道江別市緑町東3丁目91番地

電話

011-383-2311

URL

http://haruyutaka.com


地元で育った小麦を粉にして全国へ。江別製粉

この記事は2016年12月14日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。