
末永く愛用されるこだわりの革製品を
赤平市幌岡町、その丘の中腹に建つかわいらしい建物がいたがきの社屋。ドアを開けると、ショルダーやカバン、手帳、財布などが並ぶショールームとカフェが。うーん、おしゃれ!
「ようこそ。いたがきは、タンニンのなめし革を使った革製品を作る工房です」バッグを手にしてお話ししてくれたのは、製造部の川崎雅子さん。ところでなめし革とは?タンニンって?
「動物の皮は放っておくと腐ったり、硬くなったりしてしまいます。そうならないように加工する技術のことを『なめし』といいます。なめしには化学薬品を使う方法もありますが、うちは植物の樹皮から抽出するタンニンを含んだ溶液で2カ月ほどじっくりなめした革だけを使っています」
タンニンのなめし革は、収縮が少なく丈夫で、使うほど深い色合いに変化していくのが特徴なのだとか。そういえば、革のバッグやカバンは新品より使い込んだもののほうが、見た目も気持ちにもしっくりなじむような...。
「ですよね(笑)!いたがきの製品を買い求めるお客様も、末永く愛用していきたいから、とおっしゃる方がほとんど。長く大切に使われることが、うちの製品の良さであり誇りでもあるんです」
新卒さんからベテランまでチームワークを原動力に
川崎さん(写真中央)は今年で入社10年目。前職は新潟県で看護師さんをしていたとか。
「若いころから革製品...特に革のカバンが大好きで、いつか自分でも作ってみたいと思っていました。そんな折、東京の百貨店でうちの会社の会長に出会って『働かせてください』と直談判したんです。運命の出会いですね(笑)」
初めて訪れた赤平。自然が豊かで人もやさしくステキな店もあちこちに。「とても住みやすいまちだと思いました。ただ冬の雪にはビックリしましたけれど(笑)」
いたがきの製品作りは、原料の革を用途に応じたさまざまなカタチに切り出す『裁断(さいだん)』と、その素材を縫ったり貼ったりしながら製品を作り上げる『縫製(ほうせい)』で構成されています。
「例えばひとことで縫製といっても、糊づけ、貼り合わせ、ミシン縫い、手縫い、検品などたくさんの工程があります。スタッフは最初は比較的カンタンな『コバ仕上げ(断面への色つけ)』などからスタートし、経験を積んで縫いなどの技術を磨いていきます」
なるほど、工場を見渡すと新卒の若者から70歳を超えるベテランまでさまざまな年代の方が。みなさんの丁寧な仕事ぶりとチームワークが、機能美にあふれたいたがきの製品を作り出しているのですね。
こんなに愛される製品を手がけることができる幸せ
では川崎さん、この仕事のやりがいって何ですか?
「やっぱりお客様の声でしょうね。うちは販売店も自社運営なので、お客様の声が届きやすいんです」
『使いやすい』『一生もの』『革の風合いが好き』など、寄せられる声は作り手の心に響くものばかり。中には『カバンはいたがきのでなきゃ』と遠路はるばる足を運んでくれる人や、十数年間愛用しているバッグの修理を依頼するお客様もいるとか。
「そんな声に励まされたり、逆に気が引き締まったり。いずれにしてもこんなに愛される製品作りに携われて幸せです」
いつか自分オリジナルのバッグを作るのが川崎さんの夢。
「まだまだ先のことですけれどね(笑)。でもそんな夢を描けるのも、スタッフを大切にしてくれるこの工房だからこそと感じています」
もの作りの心と根気が大切なシゴト
製造部 丸山実樹代さん
「当社は、皮革製品工房として、企画から製造、販売まですべて自社内で取り組んでいます。その主軸となるのが製造部。ここには現在18歳から70歳まで、約40 名のスタッフが在籍し、バッグや財布など200 種類を超える製品作りに取り組んでいます。この仕事に必要な資格はありません。未経験でも手先が器用じゃなくても大丈夫。大切なのは、「いい製品を作りたい」という気持ちと途中で投げ出さない「根気」ですね。以前は女性が多い職場でしたが、最近は男性も入社するように。またここで経験を積み、同じ赤平で独立した人もいます。アットホームな職場も魅力ですよ。」