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もうひとつのトピックス
札幌市

魚がいる未来を選びたい『2048プロジェクト』レポ 【中編】20221228

魚がいる未来を選びたい『2048プロジェクト』レポ 【中編】

※※前編はこちら※※

前編は、漁師さんたちに登壇して頂き、漁師目線での課題のとらえ方や、取り組んでいることなどを話して頂きました。
中編では、『流通』に関わる方たちから目線のお話を聞いていきたいと思います!

プログラム2  流通関係者目線から 語る

本間....「みなさんは、異業種から水産業界に飛び込んだ人たちなので、まずは、飛び込んだきっかけや、入ってみての印象を聞きたいです。漁師部門は比較的クリーンなお話だったから、どちらかというと闇的な!(笑)お話が聞きたいですね」

布施....「戻って来たとき、ほんとに浦島太郎みたいな感じだった!2018年に、ガラケーと、手書き伝票と、FAXが三種の神器!PCは注文専用。これはどうやって仕事してるんだろうって驚いた。で、やってる仕事は毎日市場に行って、こんな魚あるよってお客さんに電話して、出荷して、終わるルーティン。正直、面白い仕事ではないなと思った」

小西....「僕も、最初思ったのは、え、こんなこともやってないの?ってことだった。
ものすごく良い魚を提供してお客さんも喜んでるんだけど。東京から来た僕は良い魚ありすぎてびっくり。
父に聞いても、うまいのは当たり前だ、の一点張り(笑)。どう良いのか?どれだけ良いのか?そういうことを伝えてない。まわりもみんなそう。それが日常だから。
これは伝えなきゃいかんな、と。だから魚のブランディングなど、お客さんに(価値を)伝えることを始めました。
あと、母がFAX送信300件を4日間かけてやったりしてるのを目の当たりにして、水産に限らず、今の便利なツールを使いこなせる世代が跡継ぎに入ったりしたら、すごいシナジー効果があるだろうなーと思う。函館でも、後継者がいなくて、儲かってるのに閉業する企業とかいっぱいあるから」

2048purojekuto17.JPG左から大坪さん、小西さん、布施さん、流通業界代表の3名

大坪....「僕は流通業界、ニトリ出身なんですが、制作から小売まで一貫してやる、いわゆるサプライチェーンマネージメントを経験し、衣と住はできてるのに、食は??って思ったのがきっかけです。実家が海のまちなのもあります。ニトリで学んだことを、食の分野でどういかせるかな?って考え、24歳で独立しました。
最初はお金も無なかったけど。でも、食、水産の分野で、一気通貫すれば、点と点を繋げて一本の線にできるなと夢見て飲食業から始めました。水産業は飲食業、飲食業は水産業の一環だと思ってます。だからひとつひとつつなげていこう!と思ったのが19年前ですね」

さとみーる....「チャットで、事業を継いだとき大変だったことは?という質問があがっているのですが、皆さんの大変だった事は?」

布施....「父親ですね。毎日同じ事をするのが使命だと思ってる。正直2年くらい、毎日けんかしてました。なぜ新しいことをやらないのかと。
すると他の経営者の方から、ちゃんと父親と向き合ってるか?、と指摘されました。
時間をとってコミュニケーションをとるようにすると、わかってきたんです。
父には父の、魚が獲れるときは獲れるときの苦労があったと。とにかく前浜にあがる魚を全国に出荷しなくてはならない、という使命感で、水産業界を支えて来た。だから資源がなくなってきた今、何をしていいかわからないんだと。そのとき初めて本人の口から聞きました。
ちなみに父は70歳だけど、苦労して水産業を盛り上げて来た人たちが、どうしても、今の変化に対応できなくなっている現実があります。それを見て、じゃ、新しいことを誰がやるんだ?って思ったら、自分がやろうと、その時はじめて覚悟ができたかな」

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小西....「ちょうど先週、僕もおやじと大げんかしました。けど、そこで腹わって話せた。おやじは、チャレンジすることにすごくリスクを感じてました。創業者として、最初は魚も売れなくて、食うや食わずですごく苦労したらいしから、その苦労を息子にさせたくない、って部分もあるんだろけど。自分は、そういうおやじの意思は大切にしつつも、何がうまくいくかもわかんないんだから、思ったことはやっていこう、常にチャレンジしようと思う。ただし、その辺はちゃんとコミュニケーションをとりながらやらないと、先週のように大げんかになってしまうかもね!」

大坪....「僕のおやじは、バスの運転手なので、その辺の二代目の苦労は経験してないんだけど。
で、異業種から来て思うのは、なんでこんなに水産業って遅れてるんだろう、ということ。特に北海道において、水産業は絶対伸ばさないとならない業界じゃないですか。でも非常に縦割りなんです。一気通貫する中で、僕は、養殖をやりたいんですよ、でもできないんですよ!
例えば、不動産業界のようにイノベーションを起こして、新しい価値を生み出すってことが、なかなか水産業界はできない。
小売・飲食から(水産業界に)入ってここまで来たけど、最後の部分まで到達できないんです。権利の問題とかいろいろあって。
かけ算かけ算でやらないと、新しい価値は生まれないのに!こういうことを未来のこどもたちに残していいのかな。
ちなみに、シハチ鮮魚店のシハチは48からとりました。2048問題を10年前から考えてたので。
この問題は、新しい事業領域にまで僕らが踏み込めるまでやって、ファーストペンギンにならないといけないな、と思って、今日登壇しています」

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さとみーる....「2048の話を聞いたときに、本間さんが言ってたのが、僕、漁師の知り合いいないんですよ、ってことでした。
え、漁師さんから魚を買う仲買なのに?って聞いたら、いや、僕、絶対、漁師さんから嫌われてます、と。
同じ水産業なのに、そこにはすごく溝があるんだなって、その時知りました。それが、今回は、違う立場のみんながちゃんとつながって、大坪さんがおしゃっていたように、サプライチェーン上にみんなが乗ってきて、意見を言い合える、という状況です。
その上で、仲卸さんから見ての、漁師さんに、もっとこうしてほしい、こうしてくれたらもっと協力するのに、みたいなとこを聞かせてください。このパートでは、闇を聞けるってことだったので(笑)。
ここがつながったら2048もっと加速するじゃん、てところを是非お聞かせ下さい!」

布施....「仲買は安く買いたい。でも漁業者は高く売りたい。そこはどうしても相反する。
実は、僕も漁師の知り合い居なかったんです。で、漁師の知り合い増やそうと、はせたく(長谷川)さんのフィッシャーマンジャパンで、色んな漁師さんに引き合わせてもらったりしました。それと、YouTubeで情報発信も始めました。ちなみに、皆さん『仲買人たいち』の登録を是非!(笑)。
で、漁師さんの船に実際に乗ってみました。すっごい大変なんですよね。それを知ったり発信したりすることも、僕ら仲買人の仕事の一部だと思うようになりました。正直、こんな大変だと思わなかったんです!それを安く買うというのは違うし、良い物は正当に評価して、ちゃんと価値をつける、というのがほんとに大事なんだな、と。そういう意味では、産地の市場で、魚を見たときに、良い物、悪いもの、それを正当に評価する、ということを仕組みにしたいんだけど。それが難しい!
どろどろしている部分があって、なかなか合理的なカタチで競争が行われない。だから良い物に値段が付かない、それを仲卸の立場で変えていきたい」

本間....「函館はどう?」

2048purojekuto14.JPG発起人であり司会の本間さん(右)とファシリテーターのさとみーる(左)

小西....「こんなことがありました。 僕は神経締めした魚にはタグつけて売ってるので、自分もそれをやりたいので神経締め教えて下さいってある漁師の子がやって来ました。で、血抜けが悪いね、とか、ちゃんと冷やし込みした?とかいろいろ教えながらやって、彼もがんばって。
彼は家族3人で定置網やってるから、本当は網を一発であげた方が効率的なのに、一緒に乗ってるお父さんにも頼んで、神経締めするために、わざわざ、10匹あげてしめては、また10匹あげてって、普通の3倍も4倍も時間と手間かけて、魚を市場に出してる。で、僕はそれを買って飲食店のお客さんに、その手間と美味しさを伝える、すると、じゃ、それちょうだいってなる。
実際、野締めしたものより全然美味しいから、お客さんは、あれ良かったね!また彼のホッケちょうだいってなる。すると、僕は市場で彼の魚を買わなきゃならないから、他の仲買より値段を高くつける、そうこうすると、そのホッケ、何かあるんじゃないかと、他の仲買が僕よりさらに高い値段をつける、そうやってせり上がっていって、結局僕が買えない、ということもあった (笑)。
でもそれはすごい良いことで。価値が認められて自然と価格があがる!そういう事例をどんどん増やしたいんです。

本間....「それ、一番良いブランディングですよね。自然に競争が起きてどんどん価格があがっていく。正当に評価されて価値があがっていく」

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大坪....「自分が思うのは、漁師さん→仲卸さん→小売・飲食という、今の仕組みを変える必要は無くて、その距離をもっともっと近づければいいんだと思う。例えば、空港に並ぶスープカレー。1200円のものもあれば、1180円のものもある。その違いは?
要するに、良いブランドを持ってる飲食店とどうタイアップして、商品をつくていくか、だと思う。
良いブランドなら、良い売価がついてどんどん売れる。だから、漁師さんと飲食業、つまり、海とテーブルをもっともっと近づけて良いブランドにすればいい。それぞれの距離がもっともっと近くなるためにどうするか、飲食業の団体として今考えている最中です。
漁師さんともっともっと近づいて行きたい!」

本間....「なかなか普段、漁師さんと出会うことないですよね。自分も、実際に漁師さんの船に乗って、現場を見るまでこんなに大変だって知らなかった。それまでは、正直、自分の扱うものがたまたま魚であって、肉でも野菜でも、一緒だった。でも漁師さんの現場を見て、良いものにはきちんと価値を付けて、買っていかないとな、と思った。それが無いと、漁師さんとの溝が深くなってしまうし、そういう歩みよりみたいなのが、今日のような交流を通してできればいいと思う」

長谷川....「さっきの『飲食業は水産業』って言葉、ぐっと来るよね、とくに漁師側からは」

大坪....「10年前に未利用魚の、羅臼のドスイカを使って商品開発したことがありました。何が起きるかというと、儲かるんですよ!お客さんに啓蒙できる。これは誰が獲って、どんな食べ方したら美味しくて、こんなお酒に合うんですよ!って。でも原価は10%なんですよ。そりゃ儲かる。だからどんどんやる。商売としても理にかなってるから。結局、水産業だと思って飲食業をやれば、こうなる。どんどん、深めていきたい」

さとみーる....「それではそろそろ次のプログラム、全員でのトークタイムへと移りましょう!」

【後編に続く】


魚がいる未来を選びたい『2048プロジェクト』レポ 【中編】

この記事は2022年11月5日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。