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まちおこしレポート
岩内町

故郷の画家を慕う町民の想い、木田金次郎美術館。20170612

故郷の画家を慕う町民の想い、木田金次郎美術館。

「町立民営」という珍しい運営体制

積丹半島の付け根に位置する後志管内岩内町。漁業、農業を主な産業とし、日本でのアスパラガス栽培の発祥の地として知ってる人も多いかもしれません。ご当地キャラで人気の『たら丸』くんも、この町のマスコットです。
そんな岩内町出身の著名人であり、有島武郎の小説「生れ出づる悩み」のモデルで知られているのが画家の木田金次郎。その作品を展示する木田金次郎美術館は全国的にも珍しい『町立民営』の美術館なのです。

iwanai_kidakinjiro_2.jpg旧国鉄の終着駅だった岩内駅の跡地に建設された美術館。円形の中庭は蒸気機関車を回転させるためのターンテーブル(転車台)をモチーフにしている。

地域に受け継がれている木田のDNA

「この美術館は、故郷の画家である木田を慕う町の人々が声で設立されたものなんです」。そう教えてくれたのは、同館の学芸員である岡部卓さん。
「あまり知られていないんですが、岩内町には絵を見たり、描くことが好きという人が本当にたくさんいます。岩内高校美術部はこれまで何度も高文連全国大会に作品を出している常連校ですし、OB・OGも各地で活躍しています。
岩内町で絵を盛んにした立役者の一人が、まさに木田金次郎。当時、木田は町内の多くの若者に絵の手ほどきをし、その教え子たちもまた町の人々に熱心に絵の指導をしました。こうして岩内に美術に親しむ人が増えていったという歴史的な背景があるんです」

iwanai_kidakinjiro_3.jpg岡部さんは札幌出身ですが、今から20年ほど前に学芸員として採用され、岩内町に移住。

町の人々が中心となって所在調査を実施

町では木田金次郎没後20年の節目を機に美術館設立の機運が高まり、昭和60年代から作品の所在調査が実施されました。木田の作品は、昭和29年に町の8割を焼き尽くした大火でその多くが焼失してしまい、人から人へ全国に散った作品も、どこにあるかがわからないままでした。そこで町民主導の調査によって、約90点の所在が判明。寄贈や貸与を受けて町に作品が集まり、平成6年に町立の木田金次郎美術館が設立されることになりました。

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漁師気質が美術館設立を後押し!?

「岩内の人々の漁師気質も影響しているんだと思うんです」と岡部さん。
「漁師自体は減っているんですが、人々は基本的に漁師気質。少々荒っぽいところはありますが、皆で何かをやろう!という時にはワッと盛り上がるのが岩内の人たちです。夏のお祭りの盛り上がりもスゴイですから(笑)。町の人が美術館設立に力を尽くしたのも、きっとこうした気質が影響しているはず。町の誇りである木田金次郎を皆でアピールしよう!...そんな熱い思いが形になって美術館設立の機運が高まったんです」
町が設立した美術館の運営は、開館後、岩内美術振興協会(現在はNPO法人)に委ねられ、地域の人々の手に支えられてきました。

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町の人々が楽しめる美術館を

「この美術館は、全国でも先駆的な取り組みを行ってきたんですよ」と話してくれたのは館長を務める瀧澤進さん。

iwanai_kidakinjiro_6.jpg実は、瀧澤館長は町内で40年以上続く老舗バーのマスターでもあるそう!

「ここでは開館当時から展示室で音楽コンサートをやっているんですが、その頃は全国どこの美術館でも、そんなことはやっていませんでした。今では美術館で音楽をやると聞いても珍しく無いですけどね。夜に美術館を開館して、絵を見た後でみんなで食事をしたり、お酒を飲む「ナイトオープン」という企画もうちが最初じゃないかな。町の人たちが運営している美術館だからこそ、自分たちが楽しめる催しを企画してきたんです」

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作品に秘められたドラマが魅力

ところで岡部さん。木田作品の魅力はどんなところにあるのでしょう?
「描いた年齢に応じてさまざまに作風が変化している点が木田の絵の魅力ですね。風景や花、果物などの自然をテーマにした作品が多いですが、それぞれに惚れ込むような良さがあります。また、木田金次郎は自らの絵を画商に売ることはしなかったので、作品は木田本人から個人的に相手に贈られていきました。だからこそ、そこにもさまざまなドラマがあるんです。一つの作品がどのような時代に描かれ、どのような人々の手を経てここに展示されているのか。そうした背景に思いを馳せるのも木田作品を見る面白さなんです」

あの「とと姉ちゃん」も木田作品を所蔵!

作品の所在調査は今もなお継続されていて、時折意外なところから木田の絵が発見されることがあるのだそう。
「昨年の冬には秋田県在住の医師の方から5点の作品を寄贈いただきました。その方のお父さんが北大の医学部に在学中に木田と親交があり、絵を譲り受けたのだそうです。その中には大火前に描かれたものも含まれていて、新聞で取り上げられてニュースとなりました」

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NHKの朝ドラ「とと姉ちゃん」のモデルになった大橋鎮子さんも木田の作品「牡丹」を所蔵

地元の人々とともに歩む美術館

美術館では年に3回の企画展を中心に、ワークショップや美術館講座、絵画教室などを開催。絵画教室は子どもからご年配まで80名が参加する人気企画なのだそう。
「この小さな町の美術教室に、それだけ多くの人が参加するという事だけを見ても、いかに岩内町で絵が盛んなのかが分かってもらえると思います」
絵画教室に参加した生徒の作品展はもちろん、町内にある中学校美術部の作品展、岩内高校美術部の卒業記念展、OBOGの作品展も毎年開催されています。

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生まれ育った岩内の自然をありありと描き、今なお岩内の人々に大きな影響を残す木田金次郎。ぜひその作品の魅力を直接体験してみてください。

木田金次郎美術館
住所

北海道岩内郡岩内町万代51-3

電話

0135-63-2221

URL

http://www.kidakinjiro.com/

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故郷の画家を慕う町民の想い、木田金次郎美術館。

この記事は2017年3月24日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。