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このまちのあの企業、あの製品
安平町

介護の仕事で、自分も成長できる。追分あけぼの会20240311

介護の仕事で、自分も成長できる。追分あけぼの会

高齢になっても、長く住んできた地元で暮らせるのはうれしいこと。安平町の「社会福祉法人 追分あけぼの会」は、追分地区・早来地区にそれぞれ施設を設けています。入居者同士がご近所さんだったり、昔の職場仲間だったりすることも珍しくないそう。提携している医療機関も、まちの人たちがいつもお世話になっているお医者さん。顔なじみのなかで暮らせることはお年寄りにとっての大きな安心感につながっています。

追分地区には要介護度の低い人や、なるべく在宅で暮らしたいという人が利用できる、通いのデイサービスや短期宿泊のショートステイ、訪問介護の事業所があり、それらを柔軟に組み合わせてフレキシブルに利用できる「華たば(はなたば)」もあります。早い段階からこれらの介護サービスを利用することで、今後に予想される状態やその変化に適したサービスを教えてもらい、将来の見通しをつけることができるのも、本人や家族にとっては大きなメリットです。

施設では、マニュアル通りではなく、スタッフが利用者さんのひとりひとりの状態に合わせたケアを工夫しているのも追分あけぼの会の特長です。例えば、グループホームで水を飲まなくなった入居者さんがいれば、お茶やジュース、ゼリーなどを試してみるのもそのひとつ。水分補給のために口に入れるのは、必ずしも水である必要はないのです。このようなちょっとした変化や情報は、小さなことでも常にスタッフ全員で共有して適切なケアができるようにしているといいます。

追分あけぼの会では、新卒で就職した人、異業種からの転職、子育てに合わせてパートタイムから正社員になった人まで、さまざまなスタッフさんが働いています。20代で入社6年目の逢見光さん、ネパールから外国人技能実習生として働いているグルン・ブリスタさん、50代で介護業界に飛び込んだ竹林章雄さんの3名のスタッフさんに、この仕事に就くまで、また日々のやりがいについて聞いてみました。

お年寄りが大好き、仕事でコミュニケーション能力もUP!

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最初にお話を伺ったのは、「特別養護老人ホーム 追分陽光苑」で副主任を務める逢見 光(おうみ・ひかる)さん、26歳。まずは、プロフィールを教えてもらいました。逢見さんは室蘭市生まれ、中学生のときからソフトテニスに打ち込み、高校時代は全国大会にも出場した実力の持ち主です。

優しい笑顔に、頼もしさも感じさせる逢見さん。就職もスムーズに決まったのでは?と思いきや、当時はどこに進めばいいか分からず、迷いがあったそうです。そこで、母親に相談したところ「介護の学校に通ってみたらいいんじゃない?」とのアドバイスが。

「小さいころから母親が働いていたので、僕は祖父の家で過ごすことが多かったんですよね。自分はおじいちゃんっ子で、祖父のお手伝いをするのが好きでした。小学生のときも『お年寄りのお手伝いをしたい』と話していたのを母が覚えていて、それを聞いて介護の世界に行こうと決めたんです」

高校卒業後は、室蘭に戻って介護系の専門学校で学び、追分あけぼの会に就職。特養ホームの追分陽光苑で働くことになりました。日ごろの心構えについて、「自分はおじいちゃんにとても優しくしてもらったので、その恩返しのつもりで利用者さんに接しています」と話します。

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介護の仕事は大変ではありませんか?と尋ねると、

「周りからはよくそう言われますが、僕は楽しいですね!」と笑顔が返ってきました。利用者さんとのエピソードをお聞きしていると「笑っても怒ってもかわいらしいおばあちゃん」など、逢見さんがお年寄りに対して持っている愛情を感じさせます。

「確かに、誰かが食事を取らなくなったとか、毎日いろいろな変化があります。でも、そこをどのように工夫してクリアしていくか、考えたり試したりしながら対応していくことが僕は楽しいんですよね。おしゃべりにしてもそうです。利用者さんが同じ話を繰り返していたら、ちょっと脱線させてあげると、その方も違う話題の『引き出し』が開いて、楽しそうに別のお話を聞かせてくれたりする。そんなふうにして、お年寄りが笑顔を見せてくれると、うん、僕も幸せな気持ちになりますね」

お年寄りとのコミュニケーション、そして笑顔に日々のやりがいを感じている逢見さん。実は、この職場に来るまで、自分から話すことは少し苦手だったといいます。

「4人きょうだいの末っ子で育ったせいかもしれません。あまりしゃべらなくても、みんなが分かってくれたんですよね。でも、この職場では話すことが必要なので、自分が変わった気がします。利用者さんと楽しく会話するコツをつかんで、コミュニケーションスキルも上がりました」

家では3歳の息子さんと赤ちゃんの2人のパパでもある逢見さん。言葉が出る前の乳児期の子でも、その表情を見て、これはイヤ、これが好きといったことが分かるといいます。介護や支援では言葉だけでないコミュニケーションが大切といいますが、逢見さんはすでにそれを体得されているよう。休みの日には、赤ちゃんのお世話で大変な奥さんのために、よく息子さんとお出掛けをしているそうです。

逢見さんは、この施設で働き続けてこられた理由に、スタッフの人間関係の良さも挙げてくれました。

「とても仲が良いんですよ。それに、みんなが『教える側』であり、『教えられる側』でもあるんですよね。勉強会でもお互いに学び合っています」と逢見さん。

いまは副主任として、スタッフ同士がコミュニケーションを取りやすく、なるべくストレスのない環境づくりに気を配っているそうです。今後の目標を尋ねると、

「利用者さんが過ごしやすく、より良い生活を送っていただける場であるように、これからも心掛けていきたいと思います」と話してくれました。

ずっと介護の仕事を続けていきたい

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次は「グループホーム ふるさとおいわけ」で働くネパール人の技能実習生、グルン・ブリスタさんです。昨年の秋にこちらへ来たというグルンさん。

「最初の2週間は大変でしたけれど、スタッフの人たちがとても良く教えてくれたので、いまは慣れました」と、すっかり施設スタッフの一員としてなじんでいます。

いつも笑顔で接するグルンさんは、利用者さんたちからもかわいがられているそうです。

「お年寄りの人たちは優しくしてくれるし、介助の後に『ありがとう』と言ってもらえるのがうれしいです」とグルンさん。

介護の仕事を選んだ理由は、ネパールでの家で祖父のケアをしていた経験を、日本でも生かしていきたいと思ったからだそう。グループホームの上司の方によれば、グルンさんは謙虚で礼儀正しく、いつも熱心に学ぼうとする意欲を持っているとのこと。教わったことを次々と習得して、最近は夜勤も担当するようになったといいます。

「夜勤に入る前は少し不安だったけれど、やってみたら『私はできるんだ』と思いました」と、いっそうの自信もついてきました。

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日本が好きなグルンさんは、東京や福岡への留学経験もあるそうです。そのときはディズニーリゾートやスカイツリーへ遊びに行ったり、近郊への旅行を楽しんだりしたとか。北海道に来たのは今回が初めてだそうで、

「めっちゃ寒いです!でも、アパートの部屋からここまでは歩いて10分だけだから、大丈夫です」と元気な答えが。

スタッフさんたちには、安平町や道内のお出掛けスポットを教えてもらっているそうで、もうひとりのネパール人技能実習生と一緒に、札幌へドライブに連れて行ってもらったこともあるそうです。

「この前もドライブで食事に行って、カレーライスを食べました。おいしかったですよ」と、オフの時間も楽しんでいます。

「将来は介護福祉士の資格を取りたいけれど、ちょっとレベルが高いかもしれませんね...、それでも、私はこの仕事が好きですから、ずっと続けていきたいと思っています」と、高齢者ケアの業務に手ごたえを感じているのが伝わってきました。

50代で料理人から介護の仕事に飛び込む!

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「サテライト型特別養護老人ホーム 早来陽光苑」で働く竹林章雄さんは、50代半ばでこちらに転職して2年になります。それまでは、ホテルのコックや居酒屋経営、滞在型マンションの食事担当など、主に料理の業界で腕を振るってきました。転職のきっかけは、病気で入院していた父親が退院することになり、家での介助が必要になったこと。母親も高齢のため、竹林さんが施設で働きながら、勤務後は両親の家に行ってサポートをする生活を送っています。

「親の介助の仕方がまったく分からなくて、それを覚えようとこちらに転職したんですよ」という竹林さん。ある程度のキャリアを重ねてから、まったく別の業界に転職することは勇気が要るものです。しかし、今後の両親のケアが自分にかかっているからと、竹林さんは新しい世界に飛び込んでいったのだそう。

そこで行われていたケアを見て、竹林さんは驚いたといいます。

「いやもう、働いているみなさんには尊敬のまなざしですよ!いまなら当たり前ですけれど、スタッフは排せつの介助もするんですよね。最初は、自分にはとてもできないと思いました」

しかし、生来の負けず嫌いでお年寄りの食事から入浴、そして排せつ介助などのケアを行っていきます。

「いまでは、利用者さんだって排せつ後は気持ち悪いですから、早くおむつを替えてあげたいという気持ちですね。言葉が話せなくなった方でも『あー、あー』と声を上げていれば、何かを訴えているんだなと分かるんですよ。そこですぐに、まずは排せつしていないかをチェックして、そうでなければ様子を見て、調子が悪そうだったらすぐ看護師さんを呼びます」と竹林さん。

そのように気持ちが変化していった理由を尋ねると、

「両親だって、いつかそうなるという思いですね。いまは父親を支えながらトイレに連れていけば、自分で排せつを済ませてくれますが、そのうち必要になってくる。それに、私だって将来は老いていくわけですから、やはり気持ち悪いのはイヤじゃないですか」と答えてくれました。

人情家の竹林さんは、利用者のお年寄りたちから「お兄ちゃん」「クロちゃん」と親しく呼ばれるのがうれしいといいます。「私も『なした~?(どうした?)』って返したりしますよね。なぜ、クロちゃんかといえば...、最初に施設へ行ったとき、黒い服を着ていたせいかも」と笑います。

いまの生活は、フルタイムの勤務を終えると苫小牧市にある実家に直行、両親のトイレや入浴の移動などを手伝いながら、夕食と翌日の朝食をつくり、夜遅くに千歳市の家に帰って寝るという日々を送っています。

「まず何を食べたいかを聞いて、好きなカレイやキンキの煮付けを食べたいといえば、料理に手間がかかるので4、 5時間ぐらい実家にいるときもありますね。親の調子が悪いときには泊まることもあります」

両親に恩返しをしたいのだ、と竹林さんは話します。薬局を営んでいた実家の後を継ぐつもりで専門学校に入ったものの、大手チェーン店の台頭で見切りをつけて、調理の世界に方向転換した竹林さん。「いろいろと迷惑を掛けた分だけ、ここで恩返しをしてあげたいと思っています」

追分あけぼの会の職場では、例えば父親の通院の付き添いなど、実家の介護と両立できるように勤務日や時間の融通をつけてもらえるのがありがたいと竹林さんは語ります。

「利用者さんたちが、この施設に入って良かったと、自分の『第二の家』だと思えるようにしていきたいですよね。そのためにも、私はお年寄りたちに積極的に声を掛けてアットホームな雰囲気を持つようにしています」

お話をお聞きしたスタッフのみなさん、利用者のお年寄りを大切に思っている方ばかりでした。そして共通しているのは、介護という仕事を通して、自分も成長していると話してくれたこと。まちにとってはなくてはならない、高齢者ケアという仕事に対する自信も感じられました。

社会福祉法人 追分あけぼの会/特別養護老人ホーム 追分陽光苑
社会福祉法人 追分あけぼの会/特別養護老人ホーム 追分陽光苑
住所

北海道勇払郡安平町追分青葉1丁目102(追分陽光苑)

電話

0145-25-2233(追分陽光苑)

URL

http://oiwake-akebono.net/


介護の仕事で、自分も成長できる。追分あけぼの会

この記事は2024年1月19日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。