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まちおこしレポート
愛別町

作家が肩を寄せ合う廃校のアトリエ。20170313

作家が肩を寄せ合う廃校のアトリエ。

愛山地区の元小学校を活用した取り組み。

キュッ、キュッ、キュッ。氷点下10度を大きく下回る寒さだからでしょうか、雪を踏みしめると足元から愛らしい音が聞こえてきます。今回訪れたのは「きのこの里」として知られる愛別町の愛山地区。多くの地方と同様に過疎や高齢化の課題を抱え、平成22年には地域の子どもたちが通う愛山小学校が閉校してしまいました。けれど、何やら今はその廃校がものづくり作家の共同アトリエとして活用されているのだとか。ここは「愛山ものづくりビレッジ」。代表の三浦伸一さんにお話をうかがいました。

大きな機械も導入できる、学校の広さと強度。

「愛山ものづくりビレッジ(以下、ビレッジ)」の扉を開くと、昔懐かしい感覚がよみがえってきました。子どもサイズの下駄箱や多目的ホールに置かれた平均台、校歌が納められた額など、小学校時代の名残が実にノスタルジックです。
「今日は特別に寒いですからね。さあ、暖房のついている『教室』へどうぞ」。2階から温かい笑顔をひょっこりのぞかせ、手招きしてくれたのが三浦さん。ビレッジの発案者であり、南米発祥の打楽器カホンを手がける工房「デコラ43」を運営しています。ここで生み出されるカホンは、プロのパーカッショニストも愛用するほどのクオリティです。

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「もともと旭川に工房を構えていましたが、ありがたいことに年々注文が増えてきて手狭になってきました。5年ほど前、どこか広い場所に移ろうと考えていた矢先。愛別の木工職人から、町内に廃校となった小学校があると教えてもらったんです」
カホンづくりには、グラインダーや塗料の換気装置など大きな機械類が必要。木造の建物では床が沈んでしまう危険もありますが、鉄筋コンクリートで強固に建てられた学校なら心配は無用です。教室を工房として使えば広さも十分。愛山小学校をアトリエにしよう、三浦さんはビレッジの構想を思い描くようになりました。

aibetsu_atelier_3.jpg三浦さんの工房には大きな機械がいっぱい

北海道の新しい文化拠点を目指して。

三浦さんが愛別町にビレッジの計画を提案したのは平成24年。複数のものづくり作家が共同アトリエとして小学校を活用するというプロジェクトについて熱弁を振るいました。
「プレゼンテーションで重きを置いたポイントは移住。空き教室を作家のアトリエとして貸し出すことで愛別町への移住者を増やし、少しでもまちに貢献したいと伝えました。ですから、ビレッジに入居する条件は住民票を愛別町に移すことなんです」

愛別町にゆかりがほとんどない「ヨソ者」だからこそ、地域の人々が受け入れてくれやすい仕組みを大切にしたのでしょう。三浦さんはビレッジの計画に許可がおりるまでの間も、ワークショップやイベントを通して地域住民との親交を温め、同じまちに住む仲間として認めてもらおうと努力しました。
「ビレッジが本格的にスタートしたのは平成25年。当初は僕の他に、木工作家、革職人、ポロシリケートガラス作家が入居しました。アトリエの光熱費は作家で分担し(月に1万円程度と格安!)、住むところにはすぐそばの元教員住宅を貸しています。ちなみに、教室の家賃はタダなんですよ」

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目指すは愛山地区のビレッジを「北海道の新しい文化拠点」として、地域活性化にも役立てていくこと。ビレッジでは年に1回「愛山ものづくりフェス」を開き、入居作家によるものづくり教室や作品の販売ブースを展開するほか、愛別の農家が野菜を直売したり、お客様にそば打ちを体験してもらったり、まちの一大イベントに成長しつつあります。

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入居作家の定着がこれからの課題。

ビレッジの立ち上げから約4年。ここまでのお話では、取り組みは順調に進んでいるように聞こえます。ところが、空き教室に入居する作家は増えたのか尋ねたところ、三浦さんの表情が曇りました。それこそが、今抱える大きな課題だというのです。
「自分の場合は、カホンの販路や卸し先となる楽器店とのつながりを築いた上でビレッジに移ってきました。けれど、まだ売り出し中の若手作家が入居すると、創作活動に加えて販売先の確保にも力を入れ、なおかつ生活のためにはアルバイトもしなければならず...。僕も精一杯アドバイスを送りますが、結局はものづくりに割く時間が減ってしまって、定着に至らないケースも多いんです」

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こういった苦い経験から、最近はビレッジの見学者に工作機械や代表作、売り先を持っているのか尋ねるようにしているのだとか。例えば会社勤めを辞めてまでものづくりにチャレンジし、上手くいかないというミスマッチを事前に防ぐのも三浦さんの優しさです。
「この場所はものづくりに向き合う環境としては最適。窓の外には見渡す限りの田園風景が広がり、静かで心が落ち着きます。時には鹿がダーッと走っている光景を目にすることもあるくらい(笑)。田舎は田舎ですが、ネット環境は整っていますから材料の調達もバッチリ。販路はあるけれど工房の家賃が高くて狭い...そんな悩みを抱える首都圏や都会の作家ならものづくりにもっと打ち込めると思います」

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現在、ビレッジに入居している作家は4名。新しくこの元小学校に「入学」し、一緒に地域を盛り上げてくれる仲間を待ち望んでいます。

愛山ものづくりビレッジ
愛山ものづくりビレッジ
住所

北海道上川郡愛別町字愛山325-1

URL

http://decora43.com/izan01.html


作家が肩を寄せ合う廃校のアトリエ。

この記事は2017年1月23日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。