金さんの旅人という生き方
2016年5月、新十津川町地域おこし協力隊として着任した金奨一朗(こん しょういちろう)さん。
金さんが来る約1年前から同町で地域おこし協力隊をされていた高野さんは「なんかおっきい子きたなぁ...と思った(笑)」と当時の印象を話してくれました。
しかしなんと金さん、大変失礼ながらのんびりして見える外見とは裏腹に、とってもフットワークが軽く行動力がある、町おこしに熱意ある若者だったのです!
新十津川町地域おこし協力隊の事務所にて。パソコンに向かうのが金さん。金さんと一緒に話している男性が高野さんです。
金さんの生き方はまさに旅人。札幌出身で千葉の大学に進学し、その後は就職をするものの「何か違う!」とすぐに退職。それからはなんと日本全国を転々と旅をして回っていたのだとか。
しかも旅先は金さん曰く「何もないところ」。何があるのかわからない場所へ行き、その何もないところを楽しむ。何もない中に自分が何を見るのかを決める。そんな旅のスタイルが好きなんだそうです。その中で田舎と都会の人をどうやって繋げていくことができるのだろうか?と自然と思うようになったそうです。
新十津川町に来た「たまたま」という運命
金さんが次にどこに行こうかな〜と思っていた時に見つけたのが、新十津川町の地域おこし協力隊です。
東京ではたびたびこの「町おこしの仕事に従事しながら定住を目指す」という制度である地域おこし協力隊を目指す人向けに、募集市町村が集まってPRを行うイベントが催されており、このイベントに足を運んだことがきっかけでした。
行先もどこでも良かった、そして仕事もあったのでついでに良かった。
そんな「たまたま」見つけた新十津川町だったのですが、その他にも募集内容に自由度があったことや、やることが限定されてなかったことも決め手の一つだったそうです。金さんは「地域おこし協力隊」という仕事なら自分が全国を旅してきた経験が生きるのではないかと思い、採用もとんとん拍子に進んだことで新十津川町に移住を決めました。
実際に着任してからの印象も「できることがたくさんある!」だったそう。仕事が限定されていない自由なスタイルだったためまずは情報収集を始めました。当時のことを同僚の高野さんは「目を離すとどこかに出掛けていて居なくなっていた」と話すほどあちこちに飛び回っていたようです。
駅を中心に動き出した
1日1本しか電車が来ない駅として一部のファンからは有名となった新十津川駅。
その駅を訪れるお客さんをおもてなししたいと立ち上がった「勝手に新十津川駅を守る会」。
そんな会と地域おこし協力隊の関わりは金さんが着任した時にはすでに始まっていました。そのため金さんも自然と活動に参加しはじめ、イベントの手伝いや清掃をしながら情報発信を行っていました。
これについて「勝手に新十津川駅を守る会」会長の三浦光喜さんは「金さんが来てからは駅に来てくれるお客さんが増えたよね!」と話してくださいました。
勝手に守る会の三浦さん。
金さん作。これをもとに旗をつくるのだとか。
しかし、新十津川駅の来客が増える一方で大変だったことももちろん多かったそうです。
町民の方の間では賛否の分かれる活動のため、あまり理解をされないこともありました。それでも、イベントの時にはおまんじゅうや復刻版の入場券の販売を行うなど、小さな駅に集まってくださったたくさんのお客さんのために奮闘されたそうです。
様々な苦労やトラブルがありながらも、こうして新十津川駅が注目を集めることで人が来てくれるという結果に繋がっているよね、と三浦さんは語っていました。
終着駅の向こう側は?
金さんが新十津川町に着任して1年、取材をさせてもらった時はすでにすっかり新十津川町に馴染んで見えた金さん。今後のことについて伺いました。
「今は廃線間際の駅ということですごく鉄道ファンの間でも盛り上がっていて、1日1本しかない電車を見るために多くの人が新十津川町を訪れてくれています。だけど、この駅はそれだけじゃなくてその先を考えるべきだと思うんです」。
と、言うと...?金さんは言葉を続けます。
「駅を目当てに来てくれる人が多くいるのはとってもありがたく、重要なことだと思っています。しかしもしかしたらこの駅もいつかは廃線になってしまうかもしれない。また、駅を目当てに来た人は駅を見ると帰ってしまう。これではやっぱりいけないと思うんです」。
現状はやっぱり車社会の北海道。駅からバス停は遠く駅から市街地や観光地、飲食店までも交通機関がないのが現状。車を持たない人にとっては電車を降りてからの「二次交通」がないことが問題だと金さんは考えています。この二次交通の問題を解決することが今後の活動のキーになってくるのではないでしょうか。
またご自身の今後についてうかがうと「定住はまだ決めてません」とあっさり。
そして地域おこし協力隊という仕事自体、定住しなくても構わないのではと思っているそうです。もしかしたら金さんは今後も全国に旅立ち、旅人を続けるのかもしれません。
しかしそんな旅人が訪れる町、新十津川町で旅人自らが「旅人に選んでもらえる町づくり」をしているというのですからこんなに心強いことはありません。きっとこれからも新十津川町は駅を中心に多くの旅人たちが集まる町になることでしょう。
新十津川町協力隊にとって大切な場所にて1枚
- 新十津川町地域おこし協力隊 金奨一朗さん
- 住所
北海道樺戸郡新十津川町字中央302番地2