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千歳市

関西出身の旅人が北海道で農場を拓く20170703

関西出身の旅人が北海道で農場を拓く

消去法で出会った「農業」という道

今回のくらしごとの舞台は北海道千歳市。北海道最大の玄関口、新千歳空港があるまちでも知られています。6月の晴れた日にこのまちを車で走っていると、きらきら輝く一面の田んぼが目に入ってきました。そんなのどかな道の途中で見えてきた「ふぁ〜む あしだ」という看板。そう、今回の取材先はこちらの農場。株式会社あしだファームです。

ここで収穫できる農産物は、大根としいたけ。収穫物はスーパーに卸しているのはもちろん、ハンバーグレストランとして知られるびっくりドンキーの全道店舗のサラダもここで採れたものを使っているのです。
取材陣がお邪魔すると「社長、社長〜!」と笑顔で呼びかけるスタッフの先に、ここのファームの社長、蘆田裕介さんがいらっしゃいました。

蘆田さんの出身は兵庫県。その後大阪の大学に進学し、大学3年生の時に1年休学をして海外へ遊びに行ったり、それこそ北海道へ遊びに行きそのまま住み込みのアルバイトをした経験もあるそうです。蘆田さんの旅のスタイルは、バイクにテントを背負わせながら各地をまわるというもの。まさに旅人です。

休学を経て復帰し、大学4年生で就職活動を目の前にした時、バブル崩壊という厳しい現実が待っていました。ネームバリューで大手の会社を見ても、内定にはほど遠い現実。「どうしようか。自分のやりたいことはなんだろうか。」と改めて自分の気持ちと向き合い、消去法で蘆田さんの中に残った答えが「農業」だったと言います。そうと決まれば、早速行動に移すのが蘆田さん。
「当時、自分の中で『農業』と言えば北海道や長野というイメージがあって、まずはその土地でどうしたら農家になれるのかという情報収集を始めました。」
そして情報を集めていく中で、新規就農や農業研修(※)などの制度が北海道がどこよりも進んでいるのでは?と感じた蘆田さんは、北海道の農業担い手センターという窓口を通し、北海道へ農業研修生として移住することになりました。

※農業研修・・・基本的に北海道で就農するためには、研修生として2~3年程度の農業経験を積むことが義務付けられています。(各自治体によってルールは異なります)
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「あの時の決断をした自分に何か言えるとしたら、『なぜもっと南の方に目を向けなかったんだ!』ってことですね(笑)。休学している時に北海道は訪れていましたが、いざ関西からこっちに移住してみると、やっぱり寒くて(笑)。」そんな冗談を交えながら、蘆田さんは笑いました。

そして、農業研修生として恵庭の農場に身を置いていた蘆田さんは研修を終える2001年に、たまたまタイミング良く、恵庭市のお隣千歳市に土地が空いていると連絡が入りそこに拠点を置くこととなりました。その場所こそ、現在のあしだファームの土地なのです。
研修時代の農場では色々な農作物を栽培していましたが、その中でも蘆田さんは大根を担当。その経験を活かし、新たな自分の農場でも大根を栽培しようと、動き出しました。

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昔から農家の家で育ったわけでもなく、全くの未経験で20代前半からスタートした初めての農業。ついに自分の農場を持つとなると、当初は辛いことや大変なことももちろんあったのでは?と、尋ねると蘆田さんは首を横にふりました。
「最初の3年は正直すごく楽しかったんです。自分の農場だからこそ、自分のやりたいことが出来るというのが凄く良かった。また、うちのように畑で育てているような北海道の農家は冬は雪が積もりお休みですからね。その間はスキーに行ったりゴロゴロしたりプライベートも充実して、楽しかったんです。楽しかったんですが・・・」と蘆田さんは続けます。

あしだファームは法人へと進化を遂げる

「4年目くらいから、冬のこの自由な時間が嫌になってきて。従業員も、1年中働きたいだろうなぁと思い、その後4年程の準備時間を経て、大根の他に、1年中収穫できるしいたけの菌床栽培を始めました。」

このしいたけ栽培を始めたこともあり、あしだファームのハウスはどんどん増築されていきます。こうして1年中働けるようになったあしだファーム。スタッフが今後もっと働きやすいようにと2014年には法人化をし、「株式会社あしだファーム」として生まれ変わったのです。

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最近ここでパートとして働き始めた20代の女性は「勤務時間や日数についても融通が利くし、働きやすいです。」と話してくださいました。照れくさそうに「社長、取材出演手当よろしくね!」と投げかけ蘆田さんと笑い合う場面も。なんだか家族のようで、みんな楽しそう。蘆田さんと仲むつまじく笑い合う姿が印象的でした。

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取材中、畑の方で1台のトラクターが動いていました。運転していたのは、なんと女性スタッフ。このトラクターは、自動車運転免許だけで、畑の中だけであれば運転できるのだそう。畑の外に出て、公道を走る際には大型特殊の免許が必要となるのですが、こちらの女性スタッフは少し離れた畑にも自分自身の運転で行けるようにと自らの意思で大型特殊の免許を取得。
「興味あるならやってみる?と、スタッフのやりたいことは挑戦させたいと思っています。」と蘆田さんは言いました。

農業をやりたいと考える人たちへ

『新規就農』というワードが身近になりつつある現在。実際農家になった蘆田さんだからこそ農家になりたいと考える人々に何か伝えるとしたら何を伝えますか?と聞いてみると、 「誰しも自分の限界を最初に決めてしまいがち。言葉にはしないけど、自分の心の中で勝手に決めてしまっている人が多いです。農業は、やればやるだけ道は拓けるものだよ、と伝えたいですね。」と話す芦田さんは、今後もこのファームをどんどん大きくしていきたいと語ります。

では、農業のやりがいとは?と聞くと、「農家の人間ならその質問に対して100%同じことを言うと思うけど」と言いながら「やっぱり自分たちがつくったものを食べた人が『美味しい』って言ってくれる瞬間ですよね。」と話してくださいました。

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もうひとつ、気になる質問を。正直辞めたいと思ったことはありますか?
「ありますよ(笑)。」と素直に笑う蘆田さん。2014年に法人格を取得し、『会社』として生まれ変わり、その代表を務めるからこそのプレッシャーが当時はあったと言います。しかし、今は自分を頼ってくれるスタッフたちが心の支えになってくれているのだとか。

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受け入れてくれた地域、支えてくれたまわりの人々

蘆田さんがこの地に足を踏み入れた時は、新規就農ブームの序盤の出来事。まだまだ新参者を白い目で見てくる人もいないことはなかったようですが、いざこの千歳という地に身を置いたとき「何をやってもいいよ。でも、地域のイベントには顔を出しなよ。」と言って、地域の輪の中に入れてくれたそうです。


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家族経営の農家を継いでいるところが多い中の新規就農の参入。蘆田さんを当時から今も尚支えてくれているのは、同時期に新規就農を夢見て動き出した同期のような、同士のような、心強い仲間。彼らは蘆田さんにとって良い刺激であり、「自分も頑張ろう」と思える大切な存在だそうです。これからも自分の限界を決めずに突き進んでいきたいと蘆田さんは今日も、長年共に過ごしているスタッフたちと一緒に人々に『美味しい』を届けます。

株式会社あしだファーム
株式会社あしだファーム
住所

北海道千歳市釜加229-1

電話

0123-25-8908


関西出身の旅人が北海道で農場を拓く

この記事は2017年6月20日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。