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愛別の暮らしを愛でる世界的なカホン作家。20170313

愛別の暮らしを愛でる世界的なカホン作家。

一台で多彩な音を生み出す打楽器、カホン。

カホンという打楽器をご存知?南米で太鼓の演奏が禁止されていた植民地時代。どうにか打楽器の音色を楽しもうと木箱を叩き始めたのがルーツといわれています。形はいろいろありますが、日本では箱状の「ペルータイプ」が一般的。打面の中央を叩くとバスドラムのように低く、端のほうは鋭いサウンドが鳴るなど多彩な音が飛び出すユニークさが持ち味です。このカホンを手づくりしている作家がいると聞き、愛別町を訪ねました。

誰でもつくれるという自由度の高さに引き込まれて。

愛別町のマチナカから車で10分少々。カホン工房「デコラ43」は、さまざまなものづくり作家の共同アトリエ「愛山ものづくりビレッジ」に入居しています。代表のカホン作家は三浦伸一さん。ご出身は旭川。もともと音楽業界と縁があったワケではなく、地元の学校を卒業してからは東京で印刷関係の仕事に就いていました。
「東京ではシルクスクリーン(印刷技術の一つ)を使って、ステレオパネルに印刷するような仕事をしていました」。シルクスクリーンは版画でも用いられる技術で、材料を選ばずに印刷できる特殊印刷です。その手法を身につけ、5年ほどで旭川にUターンしたそうです。

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「東京からすぐに戻ってきた理由?何だか日々が慌ただしく過ぎていくし、人ごみも苦手だったし...。自分にとっては長くいる場所じゃないなって(笑)」。三浦さんから飛び出す言葉は飾り気はないけれど正直。朴訥という印象がしっくりくる人柄です。
旭川に帰ってきてからは看板関係の会社で働き、技術を生かして看板製作や内装といった仕事に携わりながら、版下やデザインを主に受け持っていました。転機を迎えたのは平成14年。会社から独立し、新たな事業に乗り出そうというタイミングでカホンとの出会いを果たしたのです。
「きっかけは友人とのささいな雑談。ライブ会場でカホンという面白い楽器を見たと耳にし、インターネットで調べてみたんです。動画を見てみると叩く部分によって音色が変わり、形も大きさもさまざま。主な素材も気軽に入手できる合板だったことから、『なんて自由な楽器なんだろう。自分もつくってみたい』と心が引き込まれていきました」

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8弦のカホンという今までにないスタイル。

三浦さんは看板や広告のデザインに取り組むかたわら、カホンづくりにチャレンジ。構造は比較的シンプルな反面、合板の厚さや塗装をほんの少し変えるだけでもまったく違う音が鳴るという奥深い世界にのめり込んでいきました。
「カホンは完成させるまで音を確かめる術がありません。例えば合板の厚さを9mm、12mm、15mmと変え、3台の音の違いを比べたこともあります。当初から僕が目指していたのはプロが使いたいと思えるカホン。差別化を図るために何百台もの試作品を手がけましたし、もちろん今でも良い音を目指して試行錯誤を繰り返しています」

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時には満足のいくカホンにたどり着くことができず、袋小路に迷い込んでしまったことも。そんな時、ふと着目したのがカホン内部に張られている弦。太くすると大きな音が出るものの耳障りになり、細いものだと消え入りそうになってしまう仕組みです。
「当時はカホンに4本の弦を張るのがセオリーでしたが、細い弦でも数を増やせば大きくて良い音が出るんじゃないかと発想を変えました。タブーを破るような気持ちで細い弦を8本張ったカホンをつくってみたところ...すべての弦が反応し、『タララララ』と細かく気持ちのいい音が鳴ったんです。『コレだ!』って身震いしましたね」

三浦さんは8弦のカホンを研究し、構造を新たにつくり直した上で音の出方を追求。指の使い方によって多彩なサウンドを鳴らせ、叩く場所によって細かく音の高低を変えられる「デコラ43」のスタイルを完成させました。そのウワサはアーティストの口コミを呼び、今や日本はもちろん、世界のパーカッショニストからもラブコールが届いています。

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美しく「何もない」環境が集中力の源。

「デコラ43」の名が知れ渡ったことで、三浦さんのもとには多くの注文が舞い込むように。旭川市内に構えていた事務所兼工房では手狭になったことから、広い場所でカホンづくりに打ち込みたいと思うようになりました。
「そんな時、たまたま愛別町の木工作家から廃校になった愛山小学校の活用方法を模索していると聞きました。だったら、いろんなものづくり作家が共同アトリエとして使い、少しでも移住者を増やせないかというアイデアを形にしたのが『愛山ものづくりビレッジ』です。今は僕を含めて4名の作家が入居しています」

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愛別町愛山地区に暮らし始めて約4年。三浦さんはこのまちの何もなく静かな環境が、カホンづくりに集中できる大きな理由だと微笑みます。夏は工房からまだ青々とした稲穂が揺れる美しい風景が眺められ、冬には一面が銀世界に変わり空気が凛と張りつめる感覚もお気に入りです。
「夏場の虫退治とか、冬の水道管凍結とか、田舎暮らしの大変さはもちろんあります。だけど、都会の旭川やカホンの材料を仕入れるために東川に行くにも車で1時間圏内。ほかの必要な材料はネットで取り寄せられます。地域の方との心温まる交流もあり、工房の場所をを愛別に移して本当に良かったと思っています」

関連動画

有限会社アトリエブラ「デコラ43」
有限会社アトリエブラ「デコラ43」
住所

北海道上川郡愛別町字愛山325-1 愛山ものづくりビレッジ2F

URL

http://decora43.com/

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愛別の暮らしを愛でる世界的なカホン作家。

この記事は2017年1月23日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。