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このまちのあの企業、あの製品
新十津川町

海のない町のクジラ (株)新十津川総合振興公社20170731

海のない町のクジラ (株)新十津川総合振興公社

今から130年近く前の出来事ですが、明治22年8月、奈良県にある吉野郡十津川郷一帯を襲った豪雨により、死者168人、流失・全半壊家屋610戸にものぼる甚大な災害が起きてきてしまいます。家や田畑を失ったみなさんが、その地を離れ、北海道へ移住してこられ、開墾したことで歴史が始まった町。それが北海道新十津川町のスタートです。和歌山県と三重県の両県に隣接する十津川村は、日本一の広さを持った村として現存し、「母村」として、今でも新十津川町との親交があるそうです。

古くから移住してこられたみなさんの頑張りもあり、水に恵まれ気候豊かな新十津川町は「ゆめぴりか」「ななつぼし」といったお米や、メロン、ミニトマト、しいたけ、玉ねぎといった農業が産業の中心の町として成長。また、その素晴らしい農産品を活用した地元の加工食品が多くつくられているのも特徴のひとつです。

そんな地元食材の活用や、観光産業の活性化を担うために誕生したのが(株)新十津川総合振興公社。こちらの社員である野本 虎寿さんと木村 陸さんにお話を伺いました。

野本さんは元々、新十津川町役場 産業振興課におり、6年前ほどに同社に転籍のカタチで異動してきたそうです。「新十津川総合振興公社の歴史は以外と古く、今から20年以上もの前の平成3年になります。歴史が古い分、現在では多くの分野に業務は渡っており、サンヒルズ・サライという自然が豊かな場所にある宿泊施設を町から指定管理を受けて運営する宿泊事業、地元の食材を使って製品をつくる農林産物加工センターを運営する加工事業、そして販売事業として新十津川物産館とレストランの運営を担っており、最近ではふるさと納税に関わる業務も行っている会社です。民間企業ではありますが、町役場と観光協会とも連携しつつ、地元のみなさんとの関わりが強い組織となっています。」


なぜクジラが建物に?

st1.JPG新十津川物産館の前で、野本さん(左)と木村さん(右)

今回の取材で伺ったのは、野本さんと木村さんが席を置く「物産館」─そこには「食路楽館(くじらかん)」の名称と共に、大きなクジラが建物に冠されています。海に近くないのに、なぜクジラ?と、主要道路沿いでもあるので、車で通り過ぎる方には疑問に思われた方も多いことでしょう。そこについても野本さんに質問してみました。「今から30年以上も前のことらしいのですが、新十津川町でクジラの化石が発見されたんです。なんでも500万年以上もの前の化石だそうで、シントツカワクジラと命名されたことから、物産館はこのクジラをモチーフに使っているのが由来です。その起源を知らない方にとってはハテナがいっぱいの名前と建物でしょうね笑。」

このシントツカワクジラの化石を、現在のクジラと比較した際に、一番類似しているのがコククジラという種であることが判明。多くの資料からコククジラの骨格標本レプリカが作成され、物産館に入ると、すぐには気がつきにくいのですが、それが天井から吊されて展示されています。その大きさ、なんと10メートル。他にも貴重な化石そのものも展示されていますので、それらを見るためだけにでも立ち寄ってみるのもいいかもしれません。誰でも気軽に立ち寄れる施設ですので、入館料ももちろんかかりません。

地元にあるものを積極発信

20170518_0577.JPG物産館1Fの様子。数多くの商品が並んでいます。

また、その物産館には、多くの特産品が販売されています。こちらも先ほどご説明のあった農林産物加工センターでつくられたものの他、多くの地元の特産品などが並べられています。野本さんが説明をしてくださいます。「新十津川には頑張っている農家さんがたくさんいらっしゃいます。新十津川だけじゃなく、周辺の市町村農家さんも同様です。ただ、それを加工して、販売までも担って地域活性化をしてもらうにはあまりにも大変なのが現状。そこで私たちがその大変な部分をフォローさせていただき、地産品を製造し販売することで、地元の活性化や農家さんの支援につながれば...というのが運営する想いのひとつです。」そうお話いただきながら見せていただいたものは、トマトジュースやトマトのジャム。そして驚いたのは「トマトチョコ」。こちらは新十津川産のミニトマトを使用したチョコレートで、地域限定商品として販売しているそうです。また、地元メロンを使ったメロンゼリーの製品化にも取り組むなど、地元で使えるものはなんでもチャレンジしていく気持ちが感じられます。

20170518_0535.JPG地元で獲れたもの、ゆかりのあるものを製品に。

新十津川に来たことを感じられるお食事処

20170518_0604.JPGレトロ感のある店内は、懐かしさと温かさを感じます。

レストランについても考え方は同様なようです。レストランについては木村さんから。「物産館2階にある『レストラン くじら』でも、地元の食材をなるべく多く使うようにしているんです。新十津川を代表するお米はもちろん、とれたての美味しいアスパラを使ったアスパラ天丼や、地元たまねぎをふんだんに使ったコクのあるカレー、地元の酒蔵である金滴酒造さんの味を感じてもらえる金滴酒粕ラーメン、奈良県十津川村の郷土料理でもある『めはりずし』なども取り揃えています。」お話を聞いているだけで食べたくなってくるのですが、実際にレストランを見学させていただくと、ニコニコと笑顔で働く主婦の方が。昭和の香りも感じる「老舗定食屋風」の落ち着いたレストランですが、それがまた地元感があっていい雰囲気。価格も安くて、地元の方が外食するのにも利用されているようです。なんとも温かい空間がそこにはありました。

ここまでの施設であると、「道の駅」としても認定されて良さそうな気がしますが、駐車場の広さや様々な設備の規定などもあり、そこに名前を連ねることは現在では至らないそうです。それでも年間利用者は1万人を超え、町への経済効果や、地元の人が集う「頼れる場所」としての存在は大きいものでしょう。

新十津川町の良さとこれから

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最後に新十津川の良さや、こらからについてうかがってみました。

木村さん「僕も役場から転籍してきたのですが、まず、個人的に観光や物販、地域に貢献できる仕事が楽しいと思って毎日働いています。業務が多岐に渡るので、大変なことももちろんあります。でも、利用されるお客様や地元のみなさんから『ありがとう』ってこんなに言われる仕事だと思ってなかったので、すごくヤリガイがあります。そして自然がいっぱいで、人々が本当に優しい町です。町の移住・定住政策としても、家を建てる助成に200万円の支援があることや、子育て支援も強い。ワンコインで受けられるガン健診などなど、この町独自の制度がたくさんあります。近隣の都市部の滝川・札幌・旭川への交通の便もいいですから、多くの方に新十津川の町を知ってもらえたら嬉しいですね。」

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野本さん「最近では待っているだけではなく、積極的に外にでていく活動にも力を入れています。北海道物産展などもそうですが、ふるさと納税の返礼品の魅力をさらに磨いて北海道外の人にも町を知ってもらう仕掛けを強化したり、2年前には観光協会と一緒になって、『とつかわ こめぞー』という観光PRキャラクターを使った展開も始めています。ここの物産館ではレストランや事務員さんも含めても8人しかいませんので、どこまでやれるかはわかりませんが、少しでも地域の元気につながるように運営していけたらと思っています。」

最近は、仕事を手伝ってくれるパートさんの採用も難しくなっているそうです。移住されてきた方や、こんな温かいみなさんと地域貢献につながるお仕事をしたい方は問い合わせてもいいかもしれません。

物産館にある「クジラ」の謎は解けましたが、なぜ新十津川で化石?の謎は解けません。しかし、約500万年前に眠ったクジラは、この地に人が住み、こんなに町の人々に活用されるとは思わなかったことでしょう。町に関わるものに、無駄な資源はない─そんな昔からの郷土愛が歴史をつくっている町。それが新十津川町の特徴のひとつかもしれません。

株式会社 新十津川総合振興公社
株式会社 新十津川総合振興公社
住所

北海道樺戸郡新十津川町中央5番地1 新十津川物産館内

電話

0125-76-3141

URL

http://www.shintotsukawa.com

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海のない町のクジラ (株)新十津川総合振興公社

この記事は2017年5月18日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。