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このまちのあの企業、あの製品
恵庭市

アップデートされた警備を。トラスト・セキュリティ株式会社20250902

アップデートされた警備を。トラスト・セキュリティ株式会社

恵庭市にある警備会社「トラスト・セキュリティ株式会社」の創業者であり、代表取締役の木村武志さん。2005年に創業された同社は、今年20年目を迎えます。

「スタッフが安心して長く働けるように」と、創業当初から今も木村さんは社内環境を整えるためにさまざまなことに挑戦しています。その挑戦や、木村さんの経歴、スタッフへの想い。トラスト・セキュリティのこれからを木村さんに伺いました。

札幌で生まれ育ち、社会福祉を学んだ大学時代

札幌市南区真駒内で生まれた木村さんは、地下鉄の開通や札幌オリンピックなど、街が大きく変わっていく時代の中で幼少期を過ごしました。オリンピックが開催された際は、地元の小学生から希望者を募った「風船スケーター」の一人として開会式に出場したといいます。

「小学1年生の頃から、冬になると学校の校庭に作られたリンクでスケートをしていたんです。それで、風船スケーターにも応募してみようかなと。姉も一緒に出場したんです。4年生からは少年団に入ってサッカーもやっていました」

trust_02.jpgこちらが、トラスト・セキュリティ株式会社 代表取締役の木村武志さん。

高校3年の夏になると、周囲は受験モードに入ります。木村さんも、両親からのすすめで大学への進学をめざすことに。理系が苦手だった木村さんは、得意だった国語や英語を生かし、文系の私立大学への進路を選びました。

「大学は、特に行きたい学部がなかったので社会福祉学部を選びました。経済や経営にはあまり関心がなかったんです」

当時の社会福祉学科は、老人福祉や障がい者福祉など、いくつかの領域に分かれていたそうです。いったんは将来を見越して老人福祉を志そうかと考えたものの、木村さんが最終的に選んだのはケースワーカーのゼミでした。

trust_03.jpg社会福祉を学んだ学生時代から、警備会社を創業するまでの木村さんの軌跡。その笑顔の裏には、様々な経験を経て培われた「人を大切にする」という確固たる信念があります。

「ケースワーカーといっても、当時校内暴力が深刻化していたことを背景に注目されていた、学校カウンセリングの領域です。ただ、実際にその道をめざすことはありませんでした。というより、特に将来の目標も決まっていなかったんです」

大学時代は小学校から続けていたサッカーからも離れ、いわゆる充実したキャンパスライフは満喫してこなかったと話す木村さん。それでも、アルバイトで貯めたお金で道具をそろえ、毎年のように幼なじみとスキーに出かけるのが楽しみだったと語ります。そして、4年間の学生生活を終え、大学を卒業。木村さんの、社会人としての長いキャリアがスタートしました。

「信頼」される会社をめざし、恵庭にトラスト・セキュリティを創設

大学の社会福祉学科を卒業した木村さんは、まったく異なる業界へと飛び込むことになります。最初に就いた仕事は、医薬品の営業職でした。配属されたのは、東京に本社を持つ会社の札幌支店。営業職ではあったものの、薬の成分や効果の違いなどについて説明する場面も多かったといいます。

「亀の子みたいな分子図を見て勉強するんです。でも、もともと理系が苦手ですから、製品の違いを聞かれてもうまく説明できなくて。だんだん、こんなことやっていていいのだろうかと考えるようになりました」

木村さんが自分の仕事に疑問を抱くようになったのは、理系分野が苦手なだけではありませんでした。当時の業務は、朝礼に始まり、社用車での営業、夕方には支店に戻って報告書を作成するというルーティン。成績が悪ければ、夜遅くまで居残って仕事をしなければなりませんでした。

trust_04.jpg医薬品の営業から一転、警備の仕事に面白さを見出した木村さん。苦手な分野も努力で乗り越え、自ら会社を立ち上げた情熱が、この真剣な眼差しから伝わってきます。

そんな代わり映えのしない毎日にも嫌気をさした木村さんは、2年半ほど勤めた職場を退職し、札幌にあるビルメンテナンス系の会社に転職します。

「転職先の会社には、清掃や設備管理、人材派遣、警備など複数の事業部がありました。入社当初は、運送会社の夜間仕分けの現場に入っていたんです。ところが、しばらくすると本社に戻って警備の仕事を手伝ってほしいと言われました」

当時も、とにかく人手不足の時代。警備員の送り迎えから電話対応、現場手配と、毎日違う業務をこなすことが...だけど意外にも「おもしろかった」と木村さんは振り返ります。先輩たちとの関係も良好で、昼食を一緒に食べに行ったり、仕事帰りには居酒屋で語り合ったり。そんな充実した日々を2年ほど過ごした後、木村さんは恵庭の事務所へ異動となります。

trust_05.jpg社員が安心して働けるように福利厚生を整えるなど、時代の変化に対応し続けるトラスト・セキュリティ株式会社。その中心にある木村さんの想いが詰まったオフィスです。

「恵庭では、警備部門の責任者を任されました。営業から人員配置、書類作成、場合によっては現場で警備員の仕事をすることもありました」

その後は千歳の協力会社へ出向。約10年間、現場と事務の両方を担う責任ある立場で働き続けました。そんなある日、木村さんの心境に変化が訪れます。

「組織の一員として働くのは、もうそろそろいいかなと思うようになったんです。自分で会社を起こしてみようかと。初期投資も大きくない業界なので、もしかしたらやれるかもしれないと思いました」

trust_06.jpg会社の成長は、社員の成長とともにあると考える木村さん。スタッフと向き合い、対話を重ねることで、働きがいのある職場を作り上げています。

起業を決意する最後のひと押しとなったのは、恵庭での取引先の社長のひと言。

「起業しようかどうか迷っていると話すと、『やればいいじゃない、立ち上げたら使うよ!』と言ってくれたんです。当時、恵庭には地場の警備会社がなかったので、今思えば良いタイミングだったと思います」

警備業には、「警備員指導教育責任者」という資格が必要です。すでに資格を取得していた木村さんは、公安委員会への認可申請から法人登記、事務手続きに至るまですべてを一人で行い、2005年に「トラスト・セキュリティ」を設立しました。社名の「トラスト(Trust)」は、英語で「信頼」という意味を持つ言葉。お客様・地域・社会から信頼される会社でありたいという想いが込められています。

警備業務に加え、地域を見守る活動にも尽力

会社を立ち上げた木村さんは、恵庭の地で一歩ずつ事業を広げていきました。最初のスタッフは、元同僚でした。

「偶然、街で再会したんです。仕事をしていないという話だったので、アルバイトの事務員として手伝ってもらいました」

trust_07.jpg創業当初から「信頼」を大切にしてきた木村さん。社員との円滑なコミュニケーションを重視し、一人ひとりの声に耳を傾ける姿勢が、長年働くスタッフが多い秘訣です。

それから、少しずつ人が集まり、2年目にはスタッフの数が2桁に。定年後の再就職先として選ぶ人も少なくなかったといいます。地域柄、自衛隊を退職し、第二の人生として警備の仕事に取り組む人も多かったそうです。廃業してしまった札幌の警備会社から、数名のスタッフを引き取ったこともありました。

「やっぱり横のつながりが強い業界ですから、スタッフのことを頼まれたらむげに断れないですよね。うちだって、大きなイベントで人が足りないときには、他の警備会社に応援をお願いしていますしね」

人との縁を大切にしてきた木村さんのもとには、勤務歴の長いスタッフも多くいます。中には、創業翌年から勤めているベテランも。

trust_08.jpg勤続20年のベテランスタッフに感謝のスーツをプレゼントするなど、スタッフ一人ひとりを大切にする木村さん。この温かい配慮が、現場の安心感とモチベーションにつながっています。

「彼には、勤続10年、15年のときに何もしてあげられなかったから、せめて20年の節目には、とちょっと早いですが、先日スーツを仕立ててプレゼントしました。ちょうどお子さんの卒業式の時期だったのでね。今後、同じように勤続20年を迎えるスタッフには、旅行券か何かを贈ろうかなと考えています」

創業から20年。現在トラスト・セキュリティでは、交通誘導や列車見張り、イベント警備といった、警備業法上の「2号業務」を中心に事業を展開しています。札幌からの依頼もありますが、やはり現場は恵庭と千歳が多いそう。

そして、木村さんがもう1つ力を注いでいるのが、地域の安全を見守る活動です。

trust_09.jpg「おはよう、ありがとう、失礼します、すみません」の頭文字をとった「オアシス隊」のベスト。この活動は、地域とのコミュニケーションを大切にする木村さんの想いから生まれました。

「2011年に恵庭市の恵央町から現在の戸磯に事務所を移転し、その翌年の入学シーズンに合わせて始めたのがきっかけです。最初は、交通安全運動週間のときだけにやっていたんですよ」

やがて、自社の警備員の送り出しを終えた朝の空き時間を活用し、学校付近の通学路に毎日立つようになった木村さん。その後、「おはよう・ありがとう・失礼します・すみません」の頭文字をとった「オアシス運動」にならって「オアシス隊」と名付け、オリジナルのベストを着用して活動を続けています。

「保護者や卒業生から、感謝の手紙やメッセージをもらうこともありました。やっぱりうれしいですよね。これからもボランティアとして、この活動は続けていくつもりです。ただ、一人でやっているので、1校区の1カ所しか立てないのが歯がゆくて...自社の警備員はその時間帯にはもう仕事をしているし。せっかく『隊』と名乗っているので、もっと仲間を増やしたいですよね」

trust_11.jpgボランティア活動が新聞記事として取り上げられるほど、地域に深く根ざした活動を続けるトラスト・セキュリティ。事故から子どもたちを守りたいという木村さんの強い想いが伝わってきます。

健康経営を土台に、若手にも選ばれる警備会社へ

トラスト・セキュリティは、2018年に株式会社へと組織変更を行いました。理由を尋ねると、木村さんは「なんとなく」と笑いながらも、「株式会社にしたほうが、お客様からの信用を得やすいと思ったからです」と話してくれました。

現在、同社に在籍する警備スタッフは、恵庭と千歳出身がほぼ半数ずつを占めています。平均年齢は比較的高く、50~60代が中心。40代から働き始め、70代になってからも現役で活躍している人がいる一方で、20~30代の若年層のスタッフが少ないという現状もあります。木村さんに、警備の仕事のやりがいについて聞いてみると、かつて現場に立っていた経験から、こう語ってくれました。

trust_10.jpg交通誘導の「自分の合図一つで車が止まってくれる」という信頼にやりがいを感じていた木村さん。その経験が、スタッフの働きがいを大切にする経営者としての姿勢に繋がっています。

「たとえば、交通誘導では、大きな車も自分の合図1つで止まってくれる。その信頼がうれしかったですね。警備員には警察官と違い、法的な強制力はありません。それでも、ドライバーが自分の指示を尊重してくれる。それだけで、自分の存在が意味あるものに思えるんです」

一方で、経営者としての視点での課題点もあるといいます。現在、スタッフの数は事務員を含めて5人。その中で仕事が属人的になっており、このままでは将来的に誰かが抜けたときに、業務が止まるような状態になりかねません。そうした中で、なんとかみんなで情報を共有し、カバーできないか模索しているところだそうです。

そして、採用に関しても木村さんにはこんな想いが...

trust_12.jpg時代の変化と共に「働きやすさ」を求める声が増えている中で、固定給制度や有給休暇の取得を推進する木村さん。スタッフが安心して働ける未来を真剣に考えています。

「時代の変化と共に企業に求める条件も変わってきていますよね。最近の傾向は『給料より自分の時間が大切』。休みや残業などを重視する傾向が強くなってきているように感じます。この変化が悪いこととは思いませんし、できるだけ働きやすいように、自社も整えていきたいと考えているんです」

そうしたニーズに応えるため、木村さんは早くから福利厚生を整えることに注力してきました。時給や日給制が多い警備業界において、固定給制や社会保険を導入し、2022年には「健康経営優良法人」認定も取得。SDGsへの取り組みにも積極的です。

「警備業界は、冬になると仕事が少なくなることもあるんです。でも、うちは初めて入ってきた人でも固定給で働けるから、収入が安定しやすい。体調が悪ければ休んでもいいし、有給を使えば給料が減ることもありません」

trust_13.jpg警備業界では珍しい固定給制や社会保険、有給休暇制度を導入。スタッフの生活の安定と健康を第一に考える「健康経営優良法人」としての取り組みが、この画面からもうかがえます。

これからも、スタッフが安心して働ける職場にしたい

木村さんが今後取り組んでみたいと考えているのは、警備業務への先進技術の活用です。

「たとえば、長期休暇中に施設の巡回を依頼されたときに、ドローンを使って現地の映像を送信できたら便利ですよね。最近では、屋内の施設警備にロボットが導入されている例もあります。そうした新しい技術を取り入れることで、他社との差別化につなげたいと考えています」

trust_14.jpgドローンを使った巡回など、最新技術を積極的に取り入れ、警備業の新たな可能性を切り拓く木村さん。常に「アップデート」を続ける姿勢が、トラスト・セキュリティの強みです。

「働く人もクライアントもウィンウィンになれるなら」と変化を恐れない木村さんの姿勢に、トラスト・セキュリティが20年続く理由があるように感じます。

そんな木村さんに、警備員の心得を伺うと...

「昔は、あやふやな気持ちで就く人が多く、警備員は『警備員にでもなるか』『警備員にしかなれない』なんて言われていた時代もありました。でも、今は違います。それでは長く続きません。忍耐強さや、人に対する配慮が求められる仕事です。たとえば、交通誘導で車や通行人が協力してくれたら、きちんと会釈ができるとか。お年寄りの方が通るときには『足元に気をつけてください』などと声をかけられる心遣いはとても大切ですよね」

trust_16.jpg警備員に求められるのは、忍耐強さや人に対する配慮。木村さんは「ドライバーが協力してくれたら会釈をする」といった心遣いの大切さを説きます。

これからも会社の本社は、恵庭に置き続けたいと話す木村さん。木村さんにとって、恵庭とはどのようなところに魅力を感じるのでしょうか。

「自然も多いけれど、ほどよく都会で、土地も広い。和気あいあいとした人の雰囲気も、恵庭の良さですね」

そして、最後にこんな想いも語ってくれました。

trust_15.jpg「すべてを叶えることは難しいが、スタッフと相談しながら良い職場を作りたい」。木村さんのこの言葉に、スタッフを大切にする一貫した姿勢が凝縮されています。

「これからもスタッフが安心して働ける職場であり続けるために、努力していきたいですね。警備資格がない人の入社希望があれば、取得のサポートはしていきますし、シフトや有給休暇に関しても、できるだけ希望に添えるようにしています。すべてを叶えることは難しいですが、スタッフと話し合いや相談をしながら、良い職場を作っていきたいです」

現場を支えるスタッフのために、少しでも働きやすい環境をつくろうと奮闘してきた木村さん。お話を通じて、「人を大切にする」という一貫した姿勢が伝わってきました。「次」を見据えて挑戦を続ける姿に、変わりゆく時代の中で警備業の新たな可能性を感じます。これからも恵庭に根ざし、地域の安全と安心を守っていってほしいです。

トラスト・セキュリティ株式会社
住所

北海道恵庭市戸磯619-2

電話

0123-32-2200

URL

https://www.trustsecurity.jp/

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アップデートされた警備を。トラスト・セキュリティ株式会社

この記事は2025年7月25日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。