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学校と学生の取り組み
岩見沢市

林業を学び、林業を目指す。そして、描く自分の道を。20221011

林業を学び、林業を目指す。そして、描く自分の道を。

言わずと知れた日本一の農業地帯である北海道。その北海道には、仕事として農業に関わる方がもちろん多くいる訳ですが、同じように農業の道を志す子どもたちもたくさんいます。そうしたこともあり、47都道府県の中で、農業に関する学科が設置されている高等学校の数は1番です。
こうした学校の中には「○○農業高等学校」と「農業」というワードが含まれることが多いのですが、実は「林業科」などの名称で、林業・木材産業に特化した学科もあるのをご存じでしょうか?

北海道の中でも豪雪エリアとして知られる岩見沢市に、道立の「北海道岩見沢農業高等学校(以下、岩見沢農業高校)」があります。この岩見沢農業高校にある「森林科学科」が本日の主役。森林科学科の生徒と、その生徒たちに寄り添って指導される先生にお話を伺ってきました。

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見学実習で訪れたのは新十津川町

取材当日、編集部が向かったのは、岩見沢市と同じ空知エリアにある新十津川町。この日、森林科学科の1年生の生徒たちが、学校を飛び出し、新十津川町で見学実習を行うということで、同行させていただきました。1年生は総勢34名。取材させていただいたのは7月で、まだ入学して約3カ月という初々しい高校生たちです。

この日、生徒が最初に訪れたのは、新十津川町役場で、2021年に完成した新庁舎には、町産木材もふんだんに使用されており、木の温もりにつつまれた真新しい庁舎を見学しました。

gannou_2.JPG新十津川町役場の新庁舎

この新庁舎は、内装材に道産木材を多く使用していることから、北海道が管理する「HOKKAIDO WOOD BUILDING」に空知総合振興局管内で初登録された建築物でもあります。

役場職員の方々の丁寧な説明を、メモを取りながら聞いている生徒たちの姿が印象的でした。

いざ森の中へ!カラマツの人工林を見てみよう

つづいては、カラマツの人工林の見学ということで、生徒たちが向かったのは、新十津川町にある「HAJ新十津川の森 ほある」です。偶然ではありますが、実はこの森は、この「くらしごと」を運営する株式会社北海道アルバイト情報社が所有する社有林なんです。

この森の、樹齢が若いエリア、ある程度成長したエリア、成熟したエリアとを周回し、それぞれのカラマツの状態や見分け方、木々を成長させるための過程などの説明を受けました。この日は、太陽が燦々と照りつける大晴天。その暑さの中でも、生徒たちは元気一杯です。

gannou_6.JPGHAJ新十津川の森 ほある

岩見沢農業高校は、月形町に約184haの演習林を所有しています。1年生の生徒たちは取材時には、まだ1度しか訪れたことがないとのことでしたが、今後は演習林を活用した実習が月1回程度のペースで実施されるそうです。

野外での実習、さらに森林の中での活動となると、やはり生徒たちのテンションは一段階アップするようです(笑)

木材がどのように使われていくのか

森林資源の有効活用として新十津川町が取り組む木質バイオマスエネルギーについて学ぶため、この日、見学実習の最後に訪れたのは、チップの生産を行う株式会社幸稜の生産現場と、実際にチップを活用する新十津川町熱供給センターです。

まずはじめに、チップの生産現場では、施設の土場に並べられた大量の丸太から、実際にチップ加工されるまでの工程を見学しました。タイヤショベル、グラップル、加工用機械など、生産過程の迫力に生徒たちからも声があがります。

gannou_13.JPG株式会社幸稜の生産現場

このようにして生産されたチップは、新十津川町が運営する新十津川町熱供給センターに運ばれ、ここで木質バイオマスボイラーシステムにより燃焼させて熱源を生み出します。その熱は、近隣のスポーツセンターや温水プールといった公共施設や、民間施設である新十津川温泉ホテルグリーンパークしんとつかわに供給されます。

エネルギーの地産地消による、CO2の削減や地域内経済の活性化を目指しているこの木質バイオマスエネルギーの流れを、実際に目で見ることで、新十津川町の森の木々が活用されるまでの様子を学ぶことができました。こうして、見学実習の全ての行程が終了しました。

生徒たちに聞いてみました!

見学の合間を縫って、生徒たちにもお話を聞くことができましたので、生徒たちの声もお届けしたいと思います。
どうして、林業に興味を持ち、そして「森林科学科」を選択したのか。気になるところです!

まず、はじめに話を伺ったのは、髙橋謙介くん。

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「親戚が森林管理局に務めており、その人に憧れて興味を持ったことが最初のきっかけです。話を聞いているうちに、将来は自分も森林に関わる仕事がしたいと思うようになり、進路を決めました。演習林を活用した実習や、資格取得もできるため、これからの学校生活が楽しみです!」

「目標は森林官になること」と、高校進学と共に、明確な将来像を描く髙橋くんです。

次は、川森竣稀くん。

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「小さい頃から積み木で遊ぶのが好きだったり、山や森を見るのが好きでした。自然に関わり学ぶことができる高校、学科に進学したいなと考えていて、岩見沢農業高校を選択しました。将来の進路は、就職と進学の両方で、自分のやりたいことをこれから見つけたいと思っています」

「勉強をしっかり頑張りたい!」と、始まったばかりの高校生活に意気込む川森くんです。

次は、今回のインタビューの中での紅一点、関渚咲さん。

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「木はすごい身近なところでたくさん使われていて、それがどのような過程を経て私たちの元に届けられるのか、気になったことが、林業に興味を持ったきっかけです。森林のこと、木のことを学びたいと思って、岩見沢農業高校への進学を決めました。将来は林業か自衛隊か、どちらかで働きたいと思っています!」

バドミントン部で活動し、体力には自信があるという心強い関さんです。

最後は、水戸信繁くん。

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「小さい頃からひいおばあちゃんの家に行くと、近くの山が季節毎にいろんな姿に変わることことに興味がありました。兄も同じ学校に進学していて、色々な話を聞く中で、『自分もやってみたい』と思うようになりました。将来は、林業関連の公務員や民間企業で、自分がやりがいを持てる仕事をしたいと思っています」

「資格の取得も頑張りたい!」と意欲満々の水戸くんです。

身近な経験から、林業や木材産業に興味を持った生徒たち。まだまだ、今はスタートラインに立ったばかりですが、これから学年を重ねるにつれて、チェーンソーや重機の操作など、資格の取得を含めて、専門的に林業を学んでいき、技術と心の成長の先に、自身の将来像を描いていくことでしょう。

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生徒を見守る先生、そして生徒の未来

令和3年度に岩見沢農業高校森林科学科を卒業した生徒は38名。そのうち林業関連の民間企業または公務員として就職したのは21名、林業以外の業界への就職は7名、進学は10名となっています。
高校生が進路を決める際、インターンシップ、企業説明会、企業見学などのキャリア支援が学校毎にありますが、最終的な選択理由で最も耳にするのは「進路指導の先生からのアドバイス」が決め手になることが多いです。3年間生徒に寄り添い、成長を見てきた先生だからこそ、伝えてあげられることが、生徒にとっても非常に重要なアドバイスとなるのです。
岩見沢農業高校森林科学科で進路指導を担当する持田和寿先生はこのように言います。

gannou_21.JPG林業・木材産業、そして生徒たちに熱く向き合う持田和寿先生です

「私は、とにかく林業はかっこいいと思ってるんです。広大な自然の中、その自然と共存する産業。そして、伐木・造材作業の圧倒的な迫力。林業の壮大なスケールは魅力が満載だと思っています」

森林科学科の教育テーマは「地球環境を創造する森林・林業のスペシャリストを育成すること」です。そのために、森林の育成や保全、木材生産、そして森林の調査方法や管理方法、経営計画、さらには、林産物の加工、利用から販売に至るまで、林業の川上から川下までの基礎・基本を教育します。

「高校生活3年間で自分のやりたいことを見つけること。また、その見つけた道を実現するための、勉強や諸活動に限らない、人間力を高める努力がとても大事だと思っています。そのために、私たち教員は、林業や木材産業の魅力ややりがいを丁寧に生徒たちに伝えることを最も大切にしています。そして、卒業した後の進路がしっかりと自身とマッチするのかどうか見極めることのサポートを行っています」

担い手不足や従業員の高齢化といった問題が深刻な林業業界ですが、このように高校生が林業の道を志し、それをサポートする学校と先生がいる岩見沢農業高校の森林科学科。ここから旅立つ生徒たちの未来とともに、林業の明るい未来が見えるような気がしました。

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北海道岩見沢農業高等学校 森林科学科
住所

北海道岩見沢市並木町1番地5

電話

0126-22-0130

URL

http://www.iwamizawanougyou.hokkaido-c.ed.jp/


林業を学び、林業を目指す。そして、描く自分の道を。

この記事は2022年7月6日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。