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学校と学生の取り組み
壮瞥町

壮瞥高校の学びから広がる、生徒たちの夢。20171218

壮瞥高校の学びから広がる、生徒たちの夢。

道内の農業高校でも珍しい果樹栽培の授業。

昭和新山や洞爺湖といった自然の宝物を抱える壮瞥町。このまちは、温和な気候と火山灰性の土壌を生かした農業が基幹産業の一つです。そんな地域の「農」を支える人材を育むために、昭和23年に開校したのが「北海道壮瞥高等学校(以下、壮瞥高校)」。胆振管内唯一の農業高校としてメロンやトマトなどの野菜やシクラメンをはじめとする草花の栽培技術を学べるほか、道内の高校では珍しくりんごなどの果樹も育てています。
さらに、生徒たちは自らが手がけた農産物をジュースやパンに加工したり、校内のアンテナショップ「壮高ショップめぐみ」で販売したり、さまざまな課題解決学習「専攻班活動」にも取り組んでいます。今回は3年生の授業にお邪魔して、キラキラ輝く表情を浮かべる若者たちにインタビューしました。

仲間と手を携えて作業した経験は将来に役立つ!

昭和新山をバックに、真っ赤なりんごやこれから色づきを迎える果実が実る姿はとっても壮観。この日の授業は、自分の名前がくり抜かれたシールを「ふじ」に貼る作業だと先生から生徒の皆さんに説明がありました。一体何のために行うのでしょうか?

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「このシールが貼ってある部分には日光が当たらないですよね?だから、赤くならずに自分の名前が文字のように白く残ります。11月くらいに収穫した後はしばらく保管して、卒業記念に名前入りのりんごをもらえるんです」

元気な笑顔で教えてくれたのは女子生徒の菊地さん。一人で写真に写るのはどうしても恥ずかしい...ということなので、下の写真のどなたかが彼女です。菊地さんは、中学生のころに生け花を習っていて、その延長として野菜や果樹にふれられる壮瞥高校に興味を持ったそう。一人で黙々と作業することの多かった生け花に比べ、クラスメイトとコミュニケーションを取りながら農作物と向き合うのは楽しいと笑います。

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「私は一般的な高校では生徒会にあたる『学校農業クラブ』の会長。ウチの学校には三大大会というものがあり、それぞれの準備が主な活動内容です。一つは農業を通して感じたことをプレゼンする『意見発表大会』、二つ目は農の知識や技術を競い合う『技術競技大会』、三つ目は専攻班のプロジェクト結果を発表する『実績発表大会』。各イベントはかなり盛り上がるんですよ」

なるほど、学校農業クラブの会長ということもあって、しっかりとした語り口調なのですね。やっぱり将来の夢は農業に携わることなんでしょうか?

「私はキラキラしたキレイなものが好きなので、美容関係の仕事に就きたいと思っています。地元の伊達のエステサロンで働くか、別の道を進むか...まだ迷い中なんです」

どんな職業を選ぼうとも、壮瞥高校で仲間と手を携えながら農作業を進めた経験は役立つはず。そういって、菊地さんはまたりんごに視線を向けます。その真剣な眼差しは高校生ながらも実にたくましく映りました。

アーク溶接の講習をきっかけに、夢が決まった男子生徒。

自分の名前のシールを手に、どのりんごに貼ろうかと周囲を見回していたのは白瀨伊織さん。作業の様子を眺めていると、「昨日の台風でせっかく育てたりんごがかなり落ちちゃって...ショックです」と声をかけてくれました。壮瞥高校に進んだ理由はズバリ自然が好きだからと、とってもシンプルです。

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「祖父が家庭菜園でりんごを育てているんです。僕が壮瞥高校に進んで果樹栽培の授業も受けていることを知ると、剪定(せんてい)の仕方や摘花についてたびたび聞かれるようになりました(笑)。春にりんごの花が咲いたら、一つにだけ栄養を集中させるためにほかは摘むんだよとアドバイスを送ったおかげでしょうか、今期はけっこう実がなっています」

農業実習では近所の果樹園に通い、葉摘みの体験をさせてもらったのだとか。スーパーで何気なく見かけるりんごも、農家の皆さんが苦労に苦労を重ねた結晶なのだと知ると感慨深いとつぶやきます。

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「実は今、スーパーでアルバイトをしているんです。青果担当の方と学校でどんな作物を育てているのかという話題で盛り上がることもありますし、りんごの栽培方法を尋ねられるなど、授業内容が会話のきっかけにもなっています」

壮瞥高校は農業にまつわる実習や資格試験にチャレンジできるほか、幅広い業種のインターンシップに参加したり、ガス溶接技能講習・アーク溶接特別安全衛生教育の講習を受けたり、職業高校ならではの取り組みも充実しています。

「僕はアーク溶接の講習が楽しかったので、鉄工について学べる室蘭高等技術専門学院に進もうと思っています。ウチの学校は担任の先生とも距離が近いので『溶接の仕事なら続けられそう』と相談したところ、親身になって背中を押してくれました」

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壮瞥高校で学んだことや身につけた資格を糧に次のステップへ。白瀨さんの言葉の端々からは、将来の夢に向かって胸を弾ませていることが伝わってきました。

自分たちで手がけたお菓子を販売し、接客の楽しさを実感。

生徒インタビューのラストを飾るのは佐藤美優華さん。聞けば、小中学生のころは学校にほとんど通っておらず、いわゆる不登校だったのだとか。中学3年生の進路選択の時、担任の先生から「高校は卒業したほうが良い」と壮瞥高校をすすめられたといいます。実は佐藤さんの地元は隣町の伊達市。バスで約20分かけてまで、この学校になら「通える」理由はどこにあるのでしょうか。

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「昔は同じ学校に話や趣味の合う子があまりいなかったんです...。でも、壮瞥高校には私と同じような境遇のクラスメイトもいますし、近隣のいろんな地域から個性豊かなメンバーが集まっています。だからでしょうか、最初のうちは会話するにもドキドキしていましたが、コミュニケーションを重ねるたびに仲が深まっていきました。あと、先生が接しやすくてイイ感じ(笑)」

佐藤さんは数学や国語といった座学よりも、外で土にふれ、野菜や果樹と向き合う授業がお気に入り。適性温度やベストな育て方を考えることも楽しいといいますが、壮瞥高校での経験から、生産者とはまた違った道を歩みたくなったそうです。

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「私はお菓子づくりが好きなので、専攻班活動として『加工班』を選びました。メンバーで試作を重ねながら、壮瞥のゆめちから(小麦)を使ったマフィンや食パンを校内のアンテナショップで販売しています。時には道の駅やイベント会場で商品を売ることもあり、自分が手がけたものを買ってくださる人がいるという喜びから、接客や販売の仕事に就こうと思いました」

将来的に食品衛生責任者の資格が取得できれば、お菓子づくりの道も視野に入れたいと語る佐藤さん。イキイキとした表情を見ていると、かつては学校にあまり通っていなかったとまるで思えません。

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「本校には、佐藤さんのようにかつて困りごとを抱えていた生徒も少なくないんです。正直なところをいえば、地元の農家さんの後継ぎが通うというよりは、室蘭や伊達など近隣の子がほとんど。なので、農業技術を教え込むというよりも、野菜や果樹を育てる授業を通して、食を大切にする心や仲間と協力する力を磨いてほしいんです」

熱い口調で語ってくれたのは実習部長や生徒指導も兼任する教諭の伊藤大輔さん。壮瞥高校の教師陣は生徒と一緒に活動することで一人ひとりのアクションを促し、成長につなげるのがモットーだと言葉を継ぎました。

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「近所の果樹園では果樹の倒木や老化に伴って不要な枝が大量に出てきます。生徒たちにその課題を伝えると、果樹専攻班としてりんごの枝を活用しようというプロジェクトが立ち上がりました。僕らが着目したのは炭。生徒たちと一緒にドラム缶を加工して炭窯をつくり、りんごの枝を何回か焼いてみたところ、日持ちの良い上質な炭が出来上がったんです。まだまだ大量生産できるわけではありませんが、こうした地元農業に役立つ取り組みを広げるのも本校の役割です」

壮瞥高校で過ごした3年間の経験が、農業という仕事を選んでも、そうではない未来を歩もうとも、ここの果樹園のりんごに負けないくらい立派に実りますように。

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北海道壮瞥高等学校
北海道壮瞥高等学校
住所

北海道有珠郡壮瞥町字滝之町235-13

電話

0142-66-2456

URL

http://www.sobetsu.jp/soukou/


壮瞥高校の学びから広がる、生徒たちの夢。

この記事は2017年9月20日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。