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寿都町

ローカルPRから広域連携まで!寿都なでしこ七変化の巻20230713

ローカルPRから広域連携まで!寿都なでしこ七変化の巻

札幌から車で約2時間半。余市から岩内に抜けると見渡す限りの大海原が広がります。
今回くらしごとチームが訪れたのは、北海道の西海岸に位置する寿都町。かつてはニシン漁の中心地として江差町と並び栄華を極めた港町です。
そんな寿都町に、多数の肩書とともに地元をPRしているフォトグラファーがいるという噂を聞きつけたので、早速会いに行ってきました!

寿都町ってどこ&どんなところ?

みなさんは「寿都町」と聞いて何を思い出しますか?
北海道はなんといってもべらぼうに広いので、「・・・どこだっけ?」という方もいることでしょう。
と!いうことで、会いに行く前にまずは寿都町についておさらい!

寿都町は北海道の西海岸、国道229号線沿いにあるシーサイドシティ。北は岩内町、南は島牧村、東を黒松内町に囲まれた、自然豊かな場所です。
主な基幹産業は、目の前の大海原を舞台に古くから続く漁業で、年間を通して様々な海産物で賑わい、まちを支える背骨になっています。

suttu_nisimurasan23.jpg青がまぶしい寿都の海岸 ※西村さんのTwitterより

数ある海産物の中でも、特に春はおいしい味覚が目白押し!なんだかわかりますか??
焼いて良し、蒸して良し、生で食べても良しな「海のミルク」といえば...?そう、牡蠣ですね!
寿都町では「寿かき」という名前でブランディングをし、全国的に人気を博しています。味はもちろん、その大きな特徴は流通期間。北海道で一般的に牡蠣といえば真牡蠣のことを指す場合が多く、その旬といえば多くの方は冬をイメージするのではないでしょうか?
しかし、同じ真牡蠣でありながら「寿かき」の旬は春~夏!なぜなのか!それこそが寿都町が目指したブランド戦略です。
まちの中心部を流れる朱太川には、春になると大量の雪解け水が流れ込みます。この雪解け水に豊富に含まれる山のミネラルは、プランクトンの大好物。ミネラルをたくさん食べて、たくさん増えたプランクトンこそが寿かきの栄養源なのです。
夏の産卵期に向け、たっぷりと栄養をたくわえ大きく肥えた牡蠣はまさに絶品。臭みがないさっぱりとした味わいもなるほど夏向きな印象です。
産卵期を終えた牡蠣はまた栄養を蓄え始めますが、夏以降は禁漁と決めて次の春を待つというわけです。

今年はもう一つの名物・しらすの不漁が続いており心配ですが、取材時(5月中旬)は切身まで美しいサクラマスも旬を迎えていました。こんなときこそ現地を訪れグルメや観光を通じて応援しましょう!
※漁の状況により商品がない場合もあります。要事前確認。

思い立ったらすぐやる精神!多彩すぎる活動分野をチェック

suttu_nisimurasan3.jpgこちらが今日の主役、西村なぎささん

さて、我々が到着したのは、寿都漁港の目の前に立つ「道の駅みなとま~れ寿都」。
ここで今日お会いするのは、西村なぎささん。物静かでふんわりとした雰囲気とまっすぐな瞳が印象的です。
事前情報では「歯科助手からカメラマンになったしり女」らしいのですが、むむ、これは実際に聞いてみないとわかりそうにありません!(しり女...?)
早速インタビューしてみましょう。

まずは、西村さんの現在の活動分野を明らかにしましょう。
・寿都カメラ 代表
・しりべし女子会 理事
・寿都写真倶楽部 代表
・寿都観光物産協会 理事
・寿都町社会教育委員
・寿都 風の小町 メンバー
・twitter寿都生活 運営
など、ふむふむ、写真やPR分野での肩書が多いですね!
さらに
・アロマテラピー検定1級
・色彩検定2・3級
・カラーコーディネーター検定3級
・フォトマスター検定 3級
・城郭検定 3級
・写真整理上級アドバイザー
・リフレクソロジスト
の資格も取得され、多方面でアクティブな活動を行なっています。

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う・・・
か、活躍しすぎている!!
全部聞いて見たいところですが、断腸の思いで上から3つの活動分野に絞ってご紹介しましょう(笑)。

将来に大きな影響を与えたのはカメラだった

さて、今でこそカメラを仕事に、そしてライフワークとして活躍している西村さんですが、きっかけは何だったのでしょうか?

寿都生まれ、寿都育ちの西村さん。高校を卒業するまでは漫画家を目指し勉強をしていたそうですが、高校卒業してすぐに運転免許を取得すると、内に秘められていた旅行魂が開花。漫画を描く時間がないくらい旅をしていました。旅のお供は当時主流だった使い捨てカメラだったそうです。旅をしながら写真を撮り続け、徐々にカメラにのめりこみ、コンパクトフィルムカメラを購入。次第に高画質を求めはじめ、20歳の時に初めて一眼レフを手にしました。

カメラを片手に様々な場所を訪れたという西村さん。
「でも温泉とか道の駅行くくらいなんですけど」と言いながら、何と道の駅スタンプラリーを2度制覇しているガチ勢です。
さぞかし旅先の風景をたくさん撮ってきたのかと思いきや、景色よりも人を撮るのが好きだったそうで、それは今も変わらないのだとか。
町内で歯科助手として働きながら、友人の結婚式や旅行を通じて自然と写真の技術が高まっていった黎明期を経て、時代は転換期を迎えます。

suttu_nisimurasan8.jpg壽都神社の映えスポット

写真を展示しないかと持ちかけられたのは、20代後半の頃。道の駅みなとま~れ寿都の完成に合わせ、漁師さんの表情をテーマに写真展を開催しました。
その頃には西村さんの写真の技術は町民にも広く認知されており、道の駅での展示をきっかけに他のテーマでも写真展を開くようになっていったそうです。
「最初は知り合いにモデルになってもらって撮ったりしてました。『美少女図鑑』ってあるじゃないですか。あれの真似をしたくて、女性を撮っていたら『男子もやってよ』となって、『働く男子写真展』もやりました」
子どもを被写体にした「寿都の宝展」など、町民の生き生きとした表情を切り取った写真展は広がりをみせていたある日。
「町民はあんまり道の駅に行かないよね、と言われて『はっ』としました」
ならば!ということで、町民が集まる温泉「寿都温泉ゆべつのゆ」の広い壁を使った写真展が始まりました。
どの展示もテーマを決めてから撮影を始めるそうで、テーマの決め方は「ピンときたらやってみる」のだそう。
「お父さんと娘を被写体にして、全部お父さんがジャンプしてる写真集を見て、面白かったんです。じゃあお母さんでやってみようと思ってテーマにしてみたり、空飛ぶサラリーマンの写真集に気持ちをくすぐられたり。私はカメラについて専門的に学んできたわけではないので、誰かの作品を参考にすることはとても多いんです」
いいなと思ったものを素直に学んで自分でやってみる。吸収の早い人の特徴ですね!

suttu_nisimurasan19.JPG母子をテーマに、寿都写真倶楽部の皆さんが撮った作品。見た人全てを笑顔にしてしまうステキな写真が並びます

様々な顔を持つ西村さん

【寿都カメラ 代表 西村なぎささん】
西村さんという個性を構成する多くの柱のなかでも、最も本質的な姿が「寿都カメラ代表」としての彼女です。
寿都カメラは、家電やカメラ機材の販売、葬儀などの集合写真撮影を長年行なってきた「寿都カメラ商会」が閉店することになり、その建物を引き継ぐ形で2014年5月にオープンしました。
現在は西村さんが店舗兼スタジオを拠点に、記念撮影や出張撮影など要望に応じて撮影を一手に引き受けています。
「プロとして活動したこともなかったし、勉強したことも無かったので、始めるよりもむしろ看板を出してからが大変でした(笑)。ストロボの練習も、引き継ぐまでに練習できたのはたった1回で、今考えるとよくやってこれたなと思います。改めて写真について必死で勉強したり、出入りしているカメラ機材の業者さんに使い方を教えてもらったり、最初の1年は本当に大変でした」

もうすぐ10周年を迎える寿都カメラ。「どうやって今まで生きてこれたのかよくわからない」という西村さんですが、その実力と人柄を周りが必要としたからに他なりません。

suttu_nisimurasan2.jpg西村さんの手がけた写真で構成された観光リーフの数々

【しりべし女子会 理事 西村なぎささん】
西村さんの活動は寿都町内だけにとどまらず、後志管内の広域連携にも関わっています。それが「しり女」。いいネーミングですね。
後志で積極的に活動する女性たちで構成されるしり女に加入したのは、神恵内在住の会長とニセコ在住の副会長に誘われたのがきっかけで、お互いに「新聞で見たことがある存在」だったそうです。
しり女の条件は、①後志在住の女性であること ②後志に3年以上住んでいること ③まちのPRを顔出しで行えることの3つ。
なるほど西村さんは完璧に当てはまります。
情報交換や団体のSNSでの情報発信など、ガチガチではなくゆるいルールで連携を深めており、不定期で「わかば」と呼ばれるしり女候補生の募集も行っているそうです。ちなみに、「わかば」は、1年間のPR活動を経て晴れてしり女として羽ばたくそうなので、我こそは!と思う後志在住者は立候補してみては?

【寿都写真倶楽部 代表 西村なぎささん】
寿都写真俱楽部は「同好会とかクラブのような感じ」という、20名前後の写真好きで構成される会費制の団体。会員は30代~40代の子育て世代の女性が多いためか、子どもや家族など「人」をモチーフにした写真が多いそう。しかし中にはネイチャーフォトを専門に撮る人もいたりとメンバーの個性も豊かです。町内の写真展には寿都写真倶楽部の作品も多数出品されているので、見かけたらぜひ観賞を。

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・・・
そして忘れちゃいけないことがもう一つ。
西村さんは2人の息子さんを持つお母さんでもあるということ。
長男はこの春から社会人として働き始めており、次男は現在高校生。二人ともに小樽にいるので、兄弟で一緒に暮らしているのだそう。
遠いからこそ余計に気になるのが親心というもの。そこで、学校に関わりたいという思いから、寿都にいながら小樽の高校のPTA副会長を勤めています。さらに聞いていくと、参観日に学校に行ってみたら、当の息子は風邪をひいて休んでいた!など、寿都-小樽間往復約4時間をものともしないエピソードが次々に飛び出します。
なんというバイタリティ!

地元民だからわかる寿都の魅力をクリエイティブにPR

「人物ポートレートを自然な雰囲気で撮るのが好き」という西村さん。これまでにも寿都町の様々な場所で素敵な写真を撮影してきました。
「季節を旅する」と題された小冊子は、西村さんと倶知安在住のデザイナー・奥山かおりさんが制作しているビジュアルブック。町内のスポットが魅せる四季折々の表情を西村さんが切り取り、奥山さんが色彩豊かな誌面デザインに落とし込んだ、16Pとは思えない見ごたえの1冊です。

suttu_nisimurasan21.jpgビジュアルブックと、寿都カメラのリーフレット

このような冊子をきっかけに、寿都町の魅力を多くの人に発信できる可能性を、西村さんは感じています。
熱心なくらしごと読者の皆さんならば、すでに寿都の魅力を知りたくなっちゃっていることでしょう。西村さんが撮影場所としてよく使うおすすめスポットを教えてもらいました!

【弁慶岬】
寿都市街地から海岸沿いを函館方面へ約5km。北に向かって突き出したトンガリ部分が「弁慶岬」。その名が示す通り、ここ寿都町にも源義経と弁慶の伝説が残っています。
「奥州を逃れた義経・弁慶一行は蝦夷地に渡り、この地に滞在した。弁慶は、毎日この岬の先端に立って同志の到着を待っていたが、再会することはできませんでした。そんな弁慶の姿を見ていたアイヌの人たちはいつしかこの岬のことを「弁慶岬」と呼ぶようになったと言われています」※寿都町公式HPより
友達が来たら連れていきたい場所として西村さんが選ぶのも、ここ弁慶岬だそう。
「良く夕日を撮りに行っています。寿都は大きな湾になっているので、実は道の駅のあるこのあたりは、夕日が見えないんです」
意外!でも地図を見ると一目瞭然。確かにまちの西側をガードするように弁慶岬が伸びています。
今では美しい海絶景を眺められるスポットとして、観光客も多く訪れている弁慶岬。義経の忠臣・武蔵坊弁慶は、今も銅像となって同士を待ち続けています。

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【壽都神社】
壽都神社は寛永4年(1627年)の弁天丸座礁事故に端を発し、まもなく創祀400年という後志随一の長い歴史を持つ、寿都町民の心の拠り所となっている神社です。
取材時は例年よりも桜の開花が早く、5月中旬にはすでに葉桜になっていましたが、本殿に向かう境内にはよく手入れされた桜並木が。毎年春になると薄紅色の桜の花が訪れる人の心を癒やしています。
町外から訪れた人は神社の色にも驚くはず。なんと、社殿全体がきれいな桜色なのです。

西村さんによれば「子供の頃からこの色を見てきたので、全然違和感がなかった」とのこと。まさに地元あるあるですね!室蘭出身のライター佐藤は、中学校まで室蘭の「やきとり」が豚肉であることに全く疑問を持たずに大きくなりました!
・・・話を神社に戻し、実は壽都神社にはもうひとつ見どころが。本殿の右手にある社務所で販売しているおみくじをご覧ください。
はい、かきです。よく見るとしらすもいます。その名もご当地おみくじ「万福招来かきしらす」!かきは本物の寿かきから型取りしているそうで、裏面には6匹のしらすによる「寿」のフォーメーションと、向かい合う2匹のしらすが。計「八」匹のしらすが運気を「末広がり」に導いてくれることでしょう。ただでさえ楽しいコンセプトの「かきしらす」を、さらにBBQ風に陳列しちゃう寿都神社の遊び心にも脱帽です。

suttu_nisimurasan13.jpg撮る側から撮られる側になり、照れまくる西村さん

【寿都浜中野営場】
「だし風」と呼ばれる風を知っていますか?「やませ」という呼び方の方が聞きなじみがあるかもしれません。
寿都町は全国でも有数な「風のまち」。ときに船の運航を脅かす三角波を生む原因にもなるというこの「だし風」を資源として活用し、全国の自治体で初めて風力発電の運用を始めたのも寿都町なのだそう。町内では11基の風車が「だし風」の力を電気エネルギーに変換し、まちの発展を支えています。
そんな風車ですが、なかなか間近で見ることは少ないのでは?
まちの中央部、大きな入り江になっている場所にある「浜中野営場」は、岩場の印象が強い国道229号線のシーサイドラインでは珍しく、砂浜に面したキャンプ場です。夏場になると多くの来場客がアウトドアを楽しんでいます。
実は風車があるのはこの浜中野営場の周辺。晴れた日には空の青と海の蒼に、白い砂浜と高くそびえる風車が一度に見られる、寿都町有数の映えスポットに!

suttu_nisimurasan22.jpg浜中野営場と風車。※西村さんのTwitterより

西村さんのこれからの目標

「写真展も団体活動も、やりたいと思ったらやらないと気持ち悪くなってしまうし、やらなかったことを後悔したくない」
その思いで長年活動を続けてきた今、仕事と趣味の境界線はとても曖昧で、それは「ありがたいこと」だと西村さんは言います。

四季×朝昼晩、刻一刻と姿を変える地元の魅力を切り取ってきた西村さんは今、写真撮影を楽しむために寿都へ遊びに来てもらいたいと考えています。
「地域のPRに携わるようになって、寿都は自分が思っている以上に知られていないんだなと思ったんです。だからこそ、色んな人に寿都の良さをもっともっと知ってほしいと思うようになりました。特に、『海の幸のおいしさ』と『自然の色の美しさ』はどこに行っても自信をもっておすすめできます」
道の駅のフードコーナーで食べられる料理のクオリティは道内屈指なのだとか。道内の道の駅を2周した西村さんの言葉にはものすごい説得力が...。
ちなみにこの話を、道の駅の2階にある寿都観光物産協会事務局長の渡部拓也さんにしてみたところ、「西村さんにそう言われると嬉しいですね!」と笑顔で答えてくれました◎。
寿都を訪れる際は「寿都ホッケめし」や「にしんそば」など、特産品を活かしたメニューで腹ごしらえをして、絶景スポットをめぐり写真を撮る!これが正解ですね!

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また、今後は寿都だけでなくより大きなPRも目標に入れているそうです。
「寿都で作ったビジュアルブックの後志版を作ってみたいなと思っているんです。考えてみると、すごく近くにあるのに後志を撮ったことがあまり多くないことに気づいて、もっと関わっていけたら、と考えるようになりました」
取材の帰りに「※ゆべつのゆ」に立ち寄って写真展を眺めていると、なんと支配人の小林祐一さんが出てきてくれました。
西村さんの写真展について聞いてみると、
「やっぱり(写真が)あるとお客さんがよく見ていきますよ。地元出身でまちのアピールを頑張っていることも知っているから、陰ながら応援しています」とのこと。
さらに「せっかく来てくれたから」とお土産にソフトクリームまで頂いちゃったのですが、一口食べてびっくり。これなんて味?ハーブのような爽やかさでうまい!
思わず引き返して聞いてみると、なんと「バジルソフト」だそう。
むむー、図らずもまた一つ寿都の魅力を知ってしまいました。
※寿都郡寿都町字湯別町下湯別462/営業時間:10:30~21:00(定休日:第一月曜日)

この夏はみなさんも、西村さんの愛する寿都のポテンシャルを実感しに、出かけてみませんか!

寿都カメラ 代表 西村なぎささん
寿都カメラ 代表 西村なぎささん
住所

寿都カメラ/寿都郡寿都町字新栄町51-1

電話

0136-62-3950

URL

https://twitter.com/suttsulife/

営業時間:10:00~18:00

定休日:不定休

メール suttsucamera@amail..plala.or.jp


ローカルPRから広域連携まで!寿都なでしこ七変化の巻

この記事は2023年5月17日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。