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まちおこしレポート
積丹町

森づくりを通して、企業が連携して地域を支える。JTの森 積丹20220810

森づくりを通して、企業が連携して地域を支える。JTの森 積丹

「積丹ブルー」と呼ばれる綺麗な海の色、豊かな自然で知られる積丹半島。観光などさまざまな活動が進められているこの地域に、たばこや食品、医薬品などでおなじみの日本たばこ産業株式会社(JT)が保全を進めている森があります。
「JTの森」と名付けられた広大な森での活動は、2010年から継続されています。なぜここにJTが関わっているのか、現在担当を務める中城辰太郎さんに話を聞きました。

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地域の森づくりを支える活動「JTの森」北海道は積丹町に

「日ごろ私たちの事業で製造するたばこや食品、医薬品の原料は、自然由来の植物が中心です。その恩恵に感謝し、今後も自然環境を大切にしていくために、『JTの森』の活動が始まりました」と中城さん。その活動内容は、森を一定の期間借り受け、それまで行き届いていなかった手入れを一定の期間支援し、地元の人の思いに応えながら保全活動を行うというもの。現在は全国9カ所にJTの森があります。

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JT北海道支社 戦略/渉外チーム 課長の中城辰太郎さん

「北海道でも『JTの森』の活動をしよう」という声が上がり、当時の担当者が北海道森林活用課に相談したところ、「ほっかいどう企業の森林づくり事業」があるという話を聞きました。この事業は、人手不足などで手入れが行き届かない森林に対し、環境保全や社会貢献に関心がある企業をマッチングし、森林整備に関する協定を結ぶというもの。まさに、「JTの森」にぴったりの事業でした。北海道からのマッチングにより、選定されたのが積丹町です。積丹町では海と森の生態系のつながりを重視し、綺麗な海を守りたいという思いを松井秀紀町長をはじめ町民の方が持っていたこと、それと海が見える景色が決め手になったと、前の担当者から聞いています」

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森と海と川の生態系を守るため、取り組んだ10年間

「JTの森 積丹」のコンセプトは、「海を育む水源の森に」。半島を囲む海と、美国川、積丹川、余別川に恵まれる積丹町では、森の豊かさを取り戻し、川や海の生態系を守る森づくりを目指して活動が進められることになりました。対象となる森の面積は350haと、「ほっかいどう企業の森林づくり事業」の中でも群を抜いて広大な森です。当初は2011年から2021年の10年間の予定でしたが、その後継続が決定され、第2期として2021年から5年間にわたり活動が進められることになりました。

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第1期に取り組まれた内容の一つが、森林整備です。これは環境調査、間伐、造林、下草刈りなど森林を育てるために必要な作業を森林組合などが行うのに対し、JTが資金面でバックアップをしました。
そして、もう一つが「森づくりの日」と名付けたイベントで、年2回を基本に計17回にわたり開催しました。これは社員や家族、積丹町民に参加してもらい、北海道や森林関係団体の協力を得ながら、森林保全の作業を体験したり、動植物を観察したり、木で工作をするなど、森に触れ合って学ぶ内容で、10年間でのべ2,600人が参加しました。

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子どもから大人まで、たくさんの人が繋がり、そして森を育んできました

これからの5年は、森づくりを通した地域振興へ

1期目の活動が終盤に差し掛かり、これまでの活動の成果が評価されると同時に、さらに続けたいというJTと積丹町双方の思いから、第2期が2021年にスタートすることに。その計画段階から携わっているのが現在の担当者、中城さんです。

「積丹町の担当の方と密に話し合いを進める中で、『海を育む水源の森に』というコンセプトは変えず、森林整備と森づくりの日には引き続き取り組んでいくことになりました。時流としては、持続可能な開発を進めるSDGs、企業が社会と共有の価値を作り出すCSVに取り組むことが求められてきています。そこで、積丹の地域に新たな価値を生み出す取組みとして、『森林利活用による地域振興』に取り組もうと考えました」

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SDGsのピンバッチは、「JTの森」由来の間伐材で製作されました

森づくりを通して、町に観光やビジネスで来る関係人口を増やせないかという試みが始まることになりました。「森づくりの日」も、これまで社員や家族、積丹町民だった参加者を、地域貢献に関心がある企業や大学へと広げ、それらの企業と一緒に支えることで、町の活性化につなげようと計画していました。

「これまでも多くの方に参加していただきましたが、より広く森づくりの楽しさを知っていただくきっかけになると考えました。ところが、第2期開始当初はコロナ禍により大人数でのイベント開催には慎重にならざるを得ませんでした」

そこで初年度は、代わりに中城さんら担当者が森へ行って動画を撮影し、関心のある人に見てもらうプロモーション活動に切り替えました。それがHBCのSDGs企画と連動して15秒のテレビCMとしても放映されました。

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北海道支社でも「JTの森 積丹」の間伐材の有効利用がされています

他の企業や団体、大学を巻き込んだ活動の第一歩

2022年5月、ようやく行動制限が解除された中、感染症対策を徹底の上で、企業の人を招いて行う「森づくりの日」が実現しました。参加者は、JTグループ企業、町関係者、そして呼びかけた企業の関係者含め67名。

冒頭に、松井町長が「JTさんや交流のある企業の皆様がこのように積丹町にお越しいただいたことを歓迎いたします。北海道の荒れた森林を企業の社会貢献として保全する『ほっかいどう企業の森林づくり事業』としては、面積や関わる人員が群を抜いているということで、副知事からも激励をいただきました。限られた時間ではありますが、積丹町の森と海、川などから自然の大切さを感じていただく時間にしていただければと思います」と挨拶しました。

この日は、広大な森を歩き回りながら、森林施業の体験、自然を感じるネイチャーゲーム、野鳥観察と植物観察、「森・川・海のつながりのお話」など、丸一日かけて森を感じ、積丹の森についても学ぶことができる密度の濃い内容となりました。

また、地域振興の新たな取組みとして、森の間伐材を活用し、地元の新名産との連携も行っています。積丹町の地場産品であるクラフトジンの限定商品「積丹ジン UMI」の特別な木箱を「JTの森 積丹」の間伐材を利用して作り、売上の一部が積丹町内で植える木の苗木に使われるというものです。
その他、積丹町の小中学校で行われる環境教育にも第1期で行ってきた生態調査の結果を生かして協力し、授業に組み込んだり楽しんで学べるカルタを製作するなどの取組みにも広がっています。

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株式会社積丹スピリットが製造する「積丹ジン UMI」用に特別に製作した木箱です

北海道が元気でないと、私たちの事業も成立しない

JTがこのように社会貢献に積極的に取り組むには理由があります。

「JTグループの経営理念は『4Sモデル』の追求です。これは、『お客様を中心として、株主、従業員、社会の4者に対する責任を高い次元でバランスよく果たし、4者の満足を高めていく』という考え方です。私たちは、喫煙する人もしない人も、どちらも快適に過ごせる社会づくりに取り組んでいます。そのベースは地域、私たちにとっては北海道が元気であることです。北海道が元気でないと私たちの事業も成立しませんから、地域貢献には会社でも力を入れています」

「JTの森」プロジェクトにも、中城さん一人だった担当者が、2021年の第2期開始から北海道支社の営業担当社員などが加わり5名に増員されました。メンバーはたばこ営業のほか、分煙コンサルティング活動や他の社会貢献事業など様々な活動に取り組んでいます。

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プロジェクトチームのみなさんです

中城さんは新卒でJTに入社し、札幌や道北でたばこ販売の営業をしていました。その中で、たばこに対する様々な意見を肌で感じ、「企業として社会にとって意義のある活動をしていることを伝え、『JTっていい会社だよね』と言われるようにならなければ」と使命感を持つようになったといいます。
そのため、「JTの森」の担当も、重責を感じつつもやりがいを持って取り組んでいます。

「社内でもこれまで森づくりの日に参加してくれた人など、自然の恵みを知り感謝の気持ちが持てる人が少しずつ増えていると思います。回り道ですが、地道に認知度を上げていく活動が大切ですよね」

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「JTの森」での活動を通して、地域の方々はもちろん、お取引先の企業様との関係強化にも繋がっているそうです

社内では、SDGsの学習会にも取り組んでいるといいます。「その中でも目標17のパートナーシップが大切だと感じています。『JTの森 積丹』で積丹町や他の企業と連携して行っている活動は、まさにこのパートナーシップです。このつながりを継続していくことが大切だと思っています」と中城さん。
積丹町の担当者とは、常に電話やメールでやり取りしており、2カ月に一度は現地にも足を運び、密な関係性を作っています。企業や大学、団体との連携も第2期の取組みを機に広がっています。現地への移動で協力を依頼したバス会社も強く関心を示し、森づくりの日のイベントが実現するより前に、その企業が「ほっかいどう企業の森林づくり事業」の協定を結ぶ当事者となるなど、広がりと同時に深まりも見せています。

森林保全に継続的に真摯に取り組み、その10年を評価し枠組みを超えた地域振興へと舵を切った「JTの森 積丹」の活動。積丹の青い海を見るたびに、それを守るのにJTが貢献していることを知る人が今後は増えていきそうです。

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JTの森 積丹
住所

北海道積丹郡積丹町

電話

011-643-1122

URL

https://www.jti.co.jp/sustainability/community_investment/forest/syakotan/index.html

日本たばこ産業株式会社(JT)北海道支社
(札幌市中央区北3条西15-1-8 JT札幌ビル)


森づくりを通して、企業が連携して地域を支える。JTの森 積丹

この記事は2022年5月12日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。