HOME>まちおこしレポート>節目を迎えるその時。千歳市と若者たちが繋ぐ想い。

まちおこしレポート
千歳市

節目を迎えるその時。千歳市と若者たちが繋ぐ想い。20181115

この記事は2018年11月15日に公開した情報です。

節目を迎えるその時。千歳市と若者たちが繋ぐ想い。

その時期になるとニュースでも大きく取り上げられる「成人式」。北海道の玄関口、新千歳空港があることで有名な千歳市の成人式は、ここ最近少し変わってきていると耳にしました。

それはなんと、その日の主役である新成人たちがゼロから企画運営するというのです。この取り組みは平成26年からスタートしました。もちろんそれまでは全部千歳市の教育委員会を中心に運営していたのですが、すでに他の都道府県では新成人が企画運営しているところがある...ということで、千歳市もスタートに踏み切ったそうです。

そもそも成人式の主役である新成人が自分たちの成人式をつくりあげるとは一体どういうことなのでしょうか。くらしごと取材陣は今年の運営メンバーと、そして去年のOBに少しお話を聞くことができました。

平成最後の成人式を担う実行委員メンバー

「たまたま見ていた地元の情報誌に面白そうな募集が出ているのを発見したんです」と話してくれたのは、今年の新成人の長谷川桃花(はせがわ ももか)さん。長谷川さんの目に留まったのは、成人式をつくる新成人を募集しますという広告でした。


chitose_hatachi4.jpg笑顔がとっても可愛らしい長谷川さんです

その募集を目にした時「成人式って自分たちでつくれるんだ」と感動したと言いますが、それを見つけたタイミングは長谷川さんのひとつ上の代の募集。「その時は、もし来年自分たちの成人式の番が来た時にも募集が出ていたら応募しよう、そう考えていたんです」

そして迎えた次の年、自分たちの代の募集を目にした長谷川さんは中学校時代からの友人である西峰宙希(にしみね ひろき)くんを誘い、二人で実行委員への参加を決めました。

chitose_hatachi5.jpg誘われた当の本人西峰くんは「単純に面白そうだなと思って」とその時の心境を語ります。

こうして2019年度の新成人、実行委員として集まったメンバーは全員で7名。8月に初めて顔合わせがあり、そこから少しずつ本格的にスタート。くらしごとの取材で訪れた時期は10月の中盤。成人式本番まで残すところあと3カ月です。

本番を迎えるまでに準備をしなければいけないことはたくさん。式が始まる際に流すオープニングムービーの作成、中学校時代の担任の先生方からのビデオメッセージの作成、新成人へ送る案内ハガキの作成など「みんなが楽しめるように」とアイデアを出し合い現在絶賛準備中。当日には司会進行や新成人による誓いの言葉なども予定しているとのこと。

ちょうど取材をした時は、オープニングムービーの作成に煮詰まっているところだったようで...
「オープニングムービーで流す内容が決まらなくて、この前の打ち合わせの時は19時から22時くらいまでかかりました。決まらないと準備も出来ないし...。タイムスリップするっていうストーリー性のあるものにしようというアイデアが出たんですが、細かいところまでは決まらなくて宿題になりました(笑)」と長谷川さん。

chitose_hatachi6.jpg真剣に話し合う姿からは、成人式への熱い想いが伝わってきます

さらにはそれぞれが学校やアルバイトがある中で7人が集まるというのは非常に大変な様子。
「LINEとかで話すこともあるけど、やっぱり顔を見て直接話し合う方がやりやすいなって」と長谷川さん。

今までこういった実行委員などの経験はなかったという西峰くんは「学校祭とかのイベントはクラスの人に任せっきりだったけど、あの時リーダーを担っていた人たちはきっと大変だったんだなって思いました(笑)全員の意見を盛り込む、もしくは意見が割れた時にどちらかの意見に寄り添わなきゃいけないとか、そういうことをこの活動を通して学びました」

chitose_hatachi7.jpgこれは案内ハガキの図案。デザインは長谷川さんが手掛けたそう。

もともと「実行委員をやってみたい!」そんな想いでメンバーに入った長谷川さんも経験してみての想いを語ります。

「成人式に対する見方がなんだか変わりました。これまでは市長の話をビシッと聞いて、中学校時代の友達に会って終わりって思っていたけど、今は違います」

西峰くんが言葉を継ぎます。
「成人式を自分たちが企画運営するにあたり、参加する新成人のみんなが楽しんで欲しいって思っています。成人式ってかたっくるしいイメージがあるじゃないですか。どちらかと言えば式が終わったあとの同窓会が気持ち的にはメインになってしまうけど、それを少しでも変えられたらいいなって思います。少しでも柔らかい成人式になったらいいな...」

chitose_hatachi8.jpgそんな想いも込めてつくった今年の成人式のスローガンは『平成を越える"しんか"〜Build a Generation〜』。『しんか』をひらがなにしているのは、「進化」であり「深化」でもあるという意味も込めて。想いが詰まった成人式で「お待ちしてま〜す!」という二人のショット

たまたま長谷川さんに誘われて始まった実行委員の活動。けれど、確実に西峰くんの中で心境の変化があったようで...
「地域のイベントとかに若い世代の人たちももっと積極的に参加していったら、都会や田舎関係なく自分のまちを好きになることができるんじゃないかなって思います。なにも参加しないより、自分から入っていくってのもいいかも」と地域に対する新しい想いを聞かせてくれました。


...最後に、二十歳の節目を迎える二人にとって「大人」って?そんな難しい質問をぶつけてみました。

西峰くん「大学生だからって甘えちゃってる部分もあるけど社会的責任が出るんだなっていうことを、実行する側になってより一層思いました」

長谷川さん「誰かの見本となれるような人になりたいなって、そう思います」

目指すは去年を超えること

続いては、去年の実行委員OBの連川諒(つれかわ りょう)くんと、今年の新成人小松沙也子(こまつ さやこ)さんの先輩後輩コンビ。


chitose_hatachi9.jpg連川くんはOBとして、今年の実行委員メンバーをサポートする役割を担い、今年の会議にも参加しています。「千歳市の教育委員会に知り合いがいて声をかけてもらったのがきっかけなんです。そういう機会がたまたまあったのでやってみようかなと思いました」

chitose_hatachi10.jpg「地元の広報誌に実行委員の募集が出ている記事を母に渡されたこと、そして卒業した中学校の教頭先生からも『これ、小松さんに向いてるんじゃないかな』って電話が入り、引き受けることにしました」もともと中学校では生徒会長を経験していたという小松さん。こういった実行委員関連は得意分野なのかもしれません。

開口一番「去年の成人式は本当に凄すぎでした!」と話す小松さん。
何がどうすごかったの?と聞いてみると、そのひとつにオープニングムービーが挙がりました。

今年も作ろうとしているそのムービーは、実は去年から新たに手掛け始めたもの。去年は実行委員メンバーが無音のムービーを撮影・作成し、当日はそのムービーにオーケストラの方々の生演奏が加わりムービーが本完成。新成人たちからは「すごかった!」「よかったよ!」なんて声が多くあがったそうです。

chitose_hatachi11.jpg「生演奏の迫力はすごかったです」と実行委員側だった連川くんも当時を振り返ります。

昨年はムービーを始め、案内ハガキをイチからデザインしたりと例年とは違うことをカタチにしていった結果、新成人研究会という団体が主催する「成人式大賞」でアイデア賞を受賞しました。

それを知った小松さんは、
「去年には負けたくないって気持ちはあります!オリジナリティあるものを去年つくっているからこそ、私たちのモチベーションにも繋がっています」と話します。

でも実は、連川くんいわくそのムービーは『完成されたもの』ではないそうで...
「実はそのムービー内で実行委員のメンバー全員での撮影シーンもあったんですが、日程が合わず結局全員での撮影はできなかったんです...だからこそ、今年はそれ以上に良いものをつくってもらいたいという気持ちです」
それを横で聞いていた小松さんは「頑張らなくちゃって思いますね」とはにかみます。

chitose_hatachi12.jpgOBOGが会議にも参加してくれることに関して「経験者がいるのといないのでは全然違います。分からないことは解決してくれるし、『このままのペースじゃ間に合わないよ!』とか、そういう言葉をもらえるのは嬉しいです」と小松さん。

そんな経験者の連川くん、式当日は司会も担当したのだとか。

「緊張していたけど始まるにつれて慣れてきて、原稿もゆっくり!ゆっくり!って意識して読みました(笑)昔はこういうことをやるキャラじゃなかったから、みんなびっくりしていましたね」と笑います。
さらに言葉を続けます。
「自分たちで頑張って、ゼロからつくってきた成人式。早く当日になってほしい、早くみんなに見せたいってずっと楽しみでした」とニコリ。

chitose_hatachi17.JPGこれが連川くんの司会姿です

そんな昨年の話を隣で聞いていた小松さんに、自分たちの式はどうなって欲しいか聞いてみると...
「一番は、実行委員が『これに参加して良かった』って思える式にすることが一番だと思っています。友達にも『良かったよ』って言葉を一言でももらえたらそれで良いです!」
2019年度、新成人のみなさん...小松さんを見掛けたらそっと声をかけてあげてくださいね。

そして二人とも、こういった実行委員はこれからも続けていってほしいとその想いを話してくれました。

「自分たちで企画運営することは簡単なことじゃないけど、やったからこその達成感だったり、自分のこれからの力にも繋がっていくことだと思うので。そしてこれは、教育委員会の支え無しでは絶対無理だと思っているので、そこは感謝の気持ちを持ちながらやっていくことが必要なんじゃないかなって思っています」と連川くん。

chitose_hatachi13.jpgここがみんなが集まる千歳市の教育委員会

小松さんも今回この実行委員に参加してみて新たな発見が。
「7人もいるので色んな意見が出るんですよね。自分はそんなこと思いつかなかったってこととか、ハッと気付かされることが多いです。もっと人生を豊かにして、色んなアイデアが出るようにしていきたいなーって、そう思いますね」

千歳市の未来を繋ぐ後輩たちへのメッセージ

連川くん「やってみないと分からないこともあるし、面白いって思うのも人それぞれだと思うけど、自分の挑戦する気持ちの新たな一歩としてのきっかけとなることを掴むのは大事。例えばこの実行委員についても、僕は今まで野球ばかりで、全くこういうのに縁が無かったんです。だからこれは、僕にとってはじめての挑戦。しかも最終的にアイデア賞を受賞して、自分たちが携わっていく中で、歴史をつくった!っていうわけではないですが、自分がやってきたことをしっかり残せたかなって思います」


小松さん「何かをやってみたいけど、何をしたらいいか分からないって人はそういう市が出しているものを見てみたりとかちょっとでいいから自分で動いてみたら何かを見つけることが出来るかもしれない。そしたら自分の糧になるものが見つかるんじゃないかなって思います」

若者の力が光る千歳市にしたい

このプロジェクトを担当しているのは、千歳市教育委員会生涯学習課の山口拓也さん。担当である市の職員の方にもお話をお聞きしました。


chitose_hatachi.jpgこちらが山口さん。このプロジェクトの担当になった際「千歳の若い人たちと何かが出来るのは嬉しい」と思ったそう。

「この成人式の準備期間を知っているからこそ、今はとにかく成功して欲しいなっていう想いです。あと、去年もそうだったんですが実行委員のメンバーがどんどん仲良くなっていく姿を見ることができるのも嬉しいんです。式当日にはみんなで集まって自撮りしていたり、あーそんなに仲良くなってたんだって思うと嬉しいですね」

どうしても成人式は当日のことばかりが注目されがち。しかし、千歳市では夏頃から本番にかけて新成人たちが準備を始めているという事実があります。学校やバイトをこなしながら、800人程が参加する式典を創り上げようとしているのです。

山口さんは教育委員会に配属された後、行政が発信する行事の中で若者の力があまり発揮されていないのでは?と思うようになりました。だからこそ、この成人式では、若者の力を結集できるような場となってほしい、そんな強い想いがあるそうです。

実は千歳市、北海道の中で一番年令層が若いまちなのだそう。
「そうやって謳うならもっと活かしていきたい。そのためにも、こちらが面白いことをやっていれば『市ってこういう面白いことやっているんだ』ってことを感じてもらえるかもしれない」と山口さんは話します。

chitose_hatachi2.JPG「同世代の人と仕事ができること、若い人たちと一緒に同じプロジェクトができるの楽しい。こういうの考えてって言ったら、予想を超える返答をくれたりするのが本当に面白いですね」。山口さんもこうして会議に参加。実行委員メンバーたちからも慕われている様子です

例えば去年の連川くんへの印象は「熱い男なんですよ」とニコリ。
「式が終わったあと、『山口さんありがとうございました』っていうすっごく長文のLINEをくれました。準備期間もそうでしたが、連川くんの存在は心強い!今も後輩たちの会議を引っ張ってくれる大切な存在です」

成人式は、自分たち次第でこんなに変えられる、それを千歳市の成人式に参加する新成人たちにも知ってもらいたい。厳かな雰囲気も残しつつ、でもどこか温かく手作り感のある千歳市の成人式。山口さんは、最後にこう言いました。「今年も素晴らしい成人式になると思います。千歳市は最後までサポートします」

chitose_hatachi14.jpg千歳市の未来を担う若者たち。進学就職で千歳市を離れてしまう人がいるのも事実ではありますが、自宅は引っ越しをしないという人が多い。都会さも田舎さも兼ね揃えた住みやすいこのまちで、2019年の成人式に向けて今日も若者たちが奮闘中です

千歳市教育委員会 生涯学習課
住所

北海道千歳市東雲町2丁目34番地

電話

0123-24-3131

URL

https://www.city.chitose.lg.jp


節目を迎えるその時。千歳市と若者たちが繋ぐ想い。

この記事は2018年10月17日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。