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まちおこしレポート
栗山町

なりわい!にぎわい!俺たちが栗山につくる!20180315

この記事は2018年3月15日に公開した情報です。

なりわい!にぎわい!俺たちが栗山につくる!

北海道は南空知エリアに位置し、札幌市から車で1時間程度で着く「栗山町」。北海道日本ハムファイターズの栗山監督が同じ名前というきっかけから町と交流を深め、その地に自宅を置きさらに「栗の木ファーム」という球場を作ったとしても話題を集めた地です。

「一体どんなまちなのだろう」と、少しだけ田舎の風景を想像しながら車を走らせていくと一気にまちが開けてきました。大型スーパーも、ドラッグストアも、飲食店も、コンビニも何軒も揃っています。「なんだか都会だぞ栗山・・・」と感心していると、大きな1軒家の前に到着しました。

道外出身者が、協力隊として栗山の地へ

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なんとこの大きな家が栗山町地域おこし協力隊の活動オフィス。あたたかな木のぬくもり溢れた、今すぐにでも誰かが住めそうなその場所に今回取材させていただく協力隊の高橋毅(たかはし つよし)さんと石井翔馬(いしい しょうま)さんが出迎えてくれました。

kuriyama_kyouryoku21.jpg中に入るとその家の広さに驚きます。高橋さん(左)と、石井さん(右)です。

このまちの協力隊が何やら面白そうなことをやっているぞ、と気になり始めたのは2017年夏頃。
栗山町協力隊のFacebookに「メロン男子」と名乗るイケメン集団が登場してきたのです。1人ずつ紹介されていくメロン男子なるイケメンたちは、なんと役場職員のみなさん。

kuriyama_kyouryoku15.jpg手にはメロンの箱が・・・?

もちろん役場のイケメンたちをただ紹介するのではありません。写真に写る面々が抱えているものは、栗山町の特産品であり、ふるさと納税の返礼品でもあるメロン。それをアピールするべく行き着いた斬新なアイデアだったのです。お気に入りのイケメンを見つけては注目してしまい、そしてメロンが食べたくなってしまう...?そんな作戦なのでしょうか。このお話は少し置いておいて、まずはそんな仕掛けをつくった方々をご紹介しましょう。

最長3年という任期が決まっている協力隊で、いよいよ3年目を迎えようとしている高橋さんと石井さん。任期後は、ここ栗山町に残りとあるビジネスを始めようと企画を進めているところ...。

農業、観光、医療....色々な畑を渡り歩いて行き着いた栗山町

神奈川県出身の高橋毅さん。大学進学と同時に北海道へ移住してきました。


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大学では酪農を専攻。そこで出会った教授の勧めで、大学院へと進み「農」だけではなく「微生物利用」という知識を深めていきます。その研究の一環で「きのこ」を専攻していた高橋さんは、きのこが出たと聞きつけては道内各地を飛び回るという生活を送っていました。

その際は観光地以外の場所へも足を運ぶことが多く、次第に知らなかった北海道の奥深い魅力に魅了されていき、それと同時に「もっと北海道の魅力を発信した方がいいのに」という思いが沸き起こります。

そんな思いから大学院卒業後の就職先は「株式会社リクルート北海道じゃらん」。ご存知、北海道の魅力を発信している大手メディアです。入社後、道東エリアを主に担当していた高橋さんはB級グルメを町と生み出そうという企画から、別海町とコラボして「別海ジャンボホタテバーガー」という新しいご当地グルメの誕生に携わりました。今ではこのバーガー、地元民から絶大に愛され親しまれているようです。

仕事にやりがいを感じる日々を送りつつも、「観光」「旅行」といった、普段の生活への+αの部分を発信する仕事から、「生活に必要不可欠」なことに携わる仕事がしたいと考えるようになり、全くの畑違いである医療機器メーカーの営業へと転職を果たします。しかし、ここで大病を患い入院を余儀なくされた高橋さんは一度療養のため実家、神奈川に戻ることに...。

神奈川に戻り入院していたある日、ひとりのキーパーソンがお見舞いに現れます。それは今も尚栗山町役場で働かれている三木貴光(みき たかみつ)さん。

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栗山町役場には1年間民間企業に出向するという制度があり、その制度でじゃらんにやって来て、高橋さんと同じ部署で働いていたのが三木さんでした。その時から親交を深めていった二人は、その後互いに別々の道を歩み続けながらも連絡は取り合う仲に。じゃらんでの出向をとっくに終え栗山町へ戻っていた三木さんは、高橋さんの入院を聞きつけ神奈川の病院へと駆けつけて来てくれました。

「その時、いつかこの人に恩返しがしたいってそう思ったんですよね」と当時のことを思い出しながら話す高橋さん。心が弱っていたタイミングだったっていうこともあったのかもしれないですけどね、と照れたように少し笑います。

そして体調も回復した高橋さんのもとに、三木さんから「栗山町で地域おこし協力隊を募集するんだけど、誰か周りの友達や後輩に声をかけて欲しい」という相談を受けます。三木さんに恩返しがしたい、そうずっと思っていた高橋さんにとって、これは友人や後輩ではなく、自分こそが彼の力になりたいと、手を挙げました。

そうして栗山町の協力隊としてやってきた高橋さん。ここで石井翔馬さんという新たな仲間に出会います。

北海道が好きすぎて本気の移住計画

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埼玉県出身の石井さん。調理の道に進み、調理師、管理栄養士などの資格を取得した後、飲食店などに勤務。昔から家族旅行でよく北海道に訪れていた経験があり、自然と北海道が好きに。就職後の忙しい中でも時間を見つけては1泊2日で余市などに観光に訪れウイスキーをたしなんで楽しんでいたのだとか。
それでも北海道への愛が止まらない石井さんは、道外にいながらも「北海道フードマイスター」の資格を取得。自分が進んだ料理の道と、大好きな北海道に関わる資格を見事手に入れたのです。

kuriyama_kyouryoku7.jpg協力隊のオフィス内にはキッチンが。美味しいコーヒーを淹れてくださいました。

そのうち本格的に北海道への移住を考え始め、道内の移住ツアーや「ちょっと暮らし」を体験。そんなタイミングの中、栗山町の地域おこし協力隊の募集を見て「面白そう」と応募を決意し、見事採用。

採用が決まるということは、栗山町への移住も決まったということ。しかしちょうどその頃、石井さんにはお付き合いをスタートさせたばかりの大切な方がいたのです。
「栗山町行きを伝えると、ちょっと拗ねてましたね(笑)」なんて笑っていましたが、あれれ...石井さんの左手の薬指に光るものが...「そう、先日その彼女と結婚しました」と結婚指輪を取材陣に見せてくれニッコリ幸せそう。

栗山町の石井さんを追いかけ移住し、今まで北海道とは縁もゆかりもなかった奥様。「妻は初の北海道の冬に戸惑っている様子ですが、別に雪が多いくらいで、生活には不便ないんですよね」と石井さん。

kuriyama_kyouryoku8.jpg高橋さんが興奮気味に言葉と継ぎます。「うちの家から徒歩3分くらいのところにこの前セイコーマート(※北海道のコンビニ)が出来たんです!」と嬉しそう。生活に不便さは感じない栗山町です。

ふたりで新たな道を切り開く

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協力隊として動き出したふたり。もちろん大変なこともたくさんありました。役場の承認が必要だからこその準備や、提案、決裁待ち...それでも、高橋さんが栗山町に来るきっかけとなった三木さんを始め、協力的な役場職員がいたからこそ、目を惹くような面白い企画を発信していくことが出来ているのではないでしょうか。

その企画の1つが最初の方でもお伝えしていた「メロン男子」。協力隊の仕事としてふるさと納税の管理運営を担当している二人は、栗山町の特産品である「メロン」を多くの方に届けるためにこういった面白い企画を次々と提案していったのです。

kuriyama_kyouryoku18.JPG笑顔が眩しいくらに輝いています。忘れがちですが、みなさん役場の職員です。

このメロン男子のターゲットはもちろん女性。実際にふるさと納税の返礼品を受け取った女性陣からは「私はあのイケメンが好き」などとメッセージを受けることも多くあったそうです。企画の狙い、大成功ですね。

他にも、2017年には東京で開催された「ふるさとチョイスアワード2017」に出場。これは、全国各地の自治体がふるさと納税を活用して行う様々な取り組み、寄付金の使い道、またそれによる地域の変化の中から地域活性につながる素晴らしい事例を厳選し、表彰するもの。全国の自治体が集まる中、堂々としたプレゼンで栗山町の魅力をアピールしてきました。

kuriyama_kyouryoku2.jpg前段中央の3名(左から石井さん、役場でふるさと納税を担当する原田さん、高橋さん)が大舞台でのプレゼンに臨み登壇。栗山町からは仲間達が駆けつけてくれたそうです。ちなみに、一番右後ろに立たれているのが、三木さんです。

若者が集える栗山町に

こうして栗山町の魅力を道内外に発信し続けているうちに二人の間に共通のある考えが浮かんでいました。「栗山って、若者が集える場所がないよね」と。
「だから若者はこのまちを離れて行ってしまう。自分の趣味の話とか、他の人とも共有して発散できる場所がないなって思っていました。飲みに行く場所も、気づけばいつもお決まりのルートだなって」と二人は話します。

高橋さんが続けます。

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「協力隊としてその地に入った場合、3つの道が開けると思います。このまちで起業するか、企業に転職するか、違う場所へ行くか。せっかく来たのだから、このまちに残ろう、そして自分たちで何かを生み出したほうが面白いのでは、という考えから僕たちはこのまちでの起業をいう道を選んだのです」。

そう、今高橋さんと石井さんは任期終了後の起業に向けて少しずつ動き出しているところ。起業内容としては、カフェ&バーとゲストハウスの運営。そして、ふるさと納税の管理やPRの仕事も役場から委託を受けるというビジネスプラン。

細かなところまで練った企画書をたずさえ、役場への承諾を得た今、2018年11月にまずはカフェ&バーをオープンさせるべく夏頃から物件の改装を始めていくそうです。それも、自分たちの手によるDIYで。

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「我々DIYなんてやったこともない初心者です。だからこそ、まちの人たちの力を借りて『みんなでつくる』お店にしたいと考えています」と高橋さん。すでに、栗山町の建築士や設計士の方からサポートするよという温かな声援と、応援を受けているのだとか。

「農家の方も『うちの作物使っていいよ』なんて言って食材の提案までしれくれるんですよ」。取材中も「そういえば、あの人が米農家さん紹介してくれるって〜」なんて業務連絡も飛び交っていました。

人と人とを繋げてくれる栗山町。でも決して、密着度合いが濃厚すぎるわけではなく、適度に近く、そして適度に都会。そんな感覚をこのまちに抱きました。

「そのために今新たなメンバーも募集しているんです」と話すお二人は、情報発信がお得意。積極的に東京のイベントスペースを訪れては栗山町の魅力を、そして二人の今後のビジネスビジョンを伝えに行き仲間募集のPRをしてきました。

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正直、観光地としてはまだ堂々と謳えない栗山町。だからこそ、今ここで何かをつくればそこに人が集まる。少しずつ、少しずつ、でも確実にお二人が実現に向け動いています。

kuriyama_kyouryoku12.jpg日々どんなお店にするか相談。もう話の中身はどんどん具体化していきます。思いついたことは忘れないようにホワイトボードに書き込むというのを忘れずに。

高橋さんはこの計画している事業についてこう話します。
「カフェをやりたい、ゲストハウスをつくりたい、若者がまちに残り集えるような場づくりをしたい...この考えって結構誰もが行き着くと思うんですよね」。

しかし、それを実行するかしないか、そしてどう実行していくかという行動力が問われます。
それに今立ち向かおうとしているお二人。畑違いの道を歩んできた二人だからこそ、力を合わせて出来ることもあり、さらにこのまちで出来た人との繋がりがさらにこの事業のスピードをあげてくれる燃料になっているのではないでしょうか。

外への情報発信や斬新なアイデアをかたちにするのが得意な栗山町地域おこし協力隊。全道の協力隊Facebookのいいね数は今のところ全道2位。ちょっとだけ悔しそうに「2位なんですよね...」と唇を噛む石井さんでした。

今はまだ任期終了後に向けて準備段階。2018年は飛躍の年になりそうな予感。念願のカフェ&バーが完成し、栗山町に新たな「まち立ち寄りスポット」が出来ることが楽しみです。

kuriyama_kyouryoku13.jpg「カフェ&バー、ゲストハウスが出来たらみんな栗山に遊びに来てくれ〜!」

栗山町地域おこし協力隊 高橋毅さん 石井翔馬さん
栗山町地域おこし協力隊 高橋毅さん 石井翔馬さん
住所

北海道夕張郡栗山町湯地60-10くりやまちょうPR隊オフィス

電話

0123-76-7103

栗山町地域おこし協力隊Facebook

栗山町地域おこし協力隊が運営するWEB

栗山町ふるさと納税ページ


なりわい!にぎわい!俺たちが栗山につくる!

この記事は2018年2月21日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。