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自治体を超えた連携に注目
後志エリアにある5つの美術館を結ぶ「後志ミュージアムロード」というドライブルートをご存知ですか?
倶知安町にある小川原脩記念美術館、岩内町の木田金次郎美術館、荒井記念美術館、 ニセコ町の有島記念館、そして、共和町の西村計雄記念美術館。それぞれの美術館では地元にゆかりのある芸術家の作品を展示していて、さらに毎年共同展を開催するなど、互いに連携しながら後志ならではのアートを発信しています。異なる自治体の美術館がこのような活動を展開するのは全国的にも例のないことです。
導かれ、習い、高め合った画家たち
後志ミュージアムロードの美術館が取り上げる芸術家たちは、互いに交流していたり、影響を受けあったりしている点も大きな特徴です。
札幌農学校(のちの北海道大学)の卒業生であり、ニセコ町に農場を所有していた作家の有島武郎が『生れ出づる悩み』で主人公のモデルとしたのは、岩内町で生まれ育った木田金次郎でした。木田金次郎は西村計雄に絵の手ほどきをした師の一人であり、倶知安町に生まれた小川原脩は高校時代に共和町の西村計雄と「緑会」という絵画グループを結成し、その後そろって東京美術学校に進みます。また西村計雄は戦後パリで活躍し、ピカソを育てた画商として知られるカーンワイラー氏に高く評価されました。岩内町の荒井記念美術館では西村計雄とピカソの作品を展示し、「生れ出づる悩み」をテーマにした道内作家の美術館も併設しています。
発端は観光マップづくり
「ミュージアムロードの構想が持ち上がったのは、この美術館ができた今から20年ほど前です」と教えてくれたのは、木田金次郎美術館の館長、瀧澤進さん。
「とは言え、はじめから美術館同士で連携しようという意図があったわけではなく、岩内町の観光スポットをアピールするエリアマップをつくろうという構想がそもそもの発端。せっかくマップをつくるなら、隣接するニセコ町、岩内町も一緒にということで製作が進められ、観光客がそれぞれの町を周遊するような『仕掛け』がつくれないかということで、誰かが言い出したのが『ミュージアムロード』というアイデアだったんです。今では誰の発案だったかはっきりしないんですが、『あのアイデアを考えたのは自分だ!』っていう『自称・発案者』は7、8人いるんじゃないかな(笑)」
テーマに沿った共同展を毎年開催
「毎年夏に行っている共同展が『しりべしミュージアムロード』としての一番の取り組みですね」と、紹介してくれたのは木田金次郎美術館の学芸員、岡部卓さん。
「共同展では毎年ひとつのテーマを決めて、そのテーマに沿った展示に各館が取り組みます。所蔵作品の貸し借りを行うので、1つの美術館で5館の作品を見ることもできるんです。また開催期間中はオリジナルグッズが当たるスタンプラリーやコンサート、入館料の相互割引をするなど、それぞれの美術館を見比べて楽しんでいただける企画を用意してるんです」
こうした企画の中心になっているのは、岡部さんを始めとした各館の学芸員の皆さん。「日ごろから頻繁に交流し、打ち合わせと称した飲み会をよくやっているんです(笑)」
気になる美術館から足を運んでみて
それでは岡部さん。しりべしミュージアムロードの楽しみ方についてアドバイスを!「どの館から見るというルールはありませんので、まずは興味のある館に行ってみるということで良いと思います。実際に絵を見てみてお互いの関係性に興味が湧いたら、ぜひ別の館も見てみてください。距離も離れているので一日で何館も訪れるのは正直かなり大変です。綺麗な景色を見たり、おいしいものを食べたり、アウトドアを楽しんだり。後志のレジャーをいろいろ楽しむルートに、美術館も含めてもらえたらうれしいですね」
- 木田金次郎美術館
- 住所
北海道岩内郡岩内町万代51-3
- 電話
0135-63-2221
- URL