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「森の魅力発信し隊」便り
札幌市

vol.14「林業従事者の育成セミナーをレポート!」20230313

vol.14「林業従事者の育成セミナーをレポート!」

私たちは、「森の魅力発信し隊」という若手林業・木材産業従事者を中心とした仲間を集い、日々情報交換をして盛り上がっています。そんな私たちの活動の一部をご紹介します!

2023年3月某日。この日は、森の魅力発信し隊のメンバーが北海道各地から札幌市に集まり、「林業従事者の育成について」というテーマでセミナーを開催しました。
担い手不足は林業業界全体が背負っている大きな課題です。

担い手不足の解消のためには、林業に就きたいという人を増やし、人材を確保すること。
「林業」という仕事を続けてもらい、定着させること。

この2点が重要になってきます。

もっと多くの人に林業を知ってもらうには?
林業に就いた人を育てていくには?

隊員同士のディスカッションや情報交換も行われたセミナーの様子をレポートします!

morisemi_9.JPG今回のセミナーは、北海道札幌市にある弊社のイベントスペース「ジョブキタプラザ」にて開催いたしました。

林業が魅力ある産業であるために

まずは、森の魅力発信し隊の情報発信のサポートを担当している弊社(株)北海道アルバイト情報社 くらしごと編集部の土谷より、人材の「確保」と「定着」の観点から、情報発信や会社の雰囲気づくりの重要性などについてお話しをさせていただきました。

Z世代、そしてこれからのα世代といった若年層の人材を確保するには、ホームページやSNSを活用した情報発信が不可欠であり、「会社の雰囲気」や「休日の確保」など、若者が重視しているポイントについて、ポジティブな情報を発信していくことが重要であるといった話や、人員の定着率が高い会社に共通していることは、「気にかけて、声をかけてあげている」ことであり、誰かに気にしてもらえている、会社が自分のことを考えてくれているという実感の違いが、定着率に大きく影響するといった話をお伝えさせていただきました。

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続いて、(株)イワクラ 林材事業部 副部長 大宮健二さんより、林業・木材関連企業としての人材確保・育成の事例についてお話をいただきました。
イワクラでは、求人広告やハローワークなど従来の方法での人材獲得のほか、
・北の森づくり専門学院(北海道唯一の林業専門学校)のインターン研修受け入れ
・北海道森林整備担い手支援センターを通した採用
・林業に興味のある人向けの2日間の林業就業体験を通した採用
など、新しい取組みでも人材を獲得することに成功しています。
多種多様な事業部をもち、幅広い仕事内容から自分に向いた職種を選べるメリットがある一方で、会社の古い体質の見直しや、幅広い部署をもつ会社全体の雰囲気づくりが課題というお話もありました。

morisemi_29.JPGこちらが(株)イワクラ 林材事業部 副部長 大宮健二さんです。

また、(株)イワクラのある胆振管内では、「胆振林業青年部」という胆振地区の林業を担う若手の集まりが設立されています。
技術面でのスキルアップをめざした研修会の開催、学校への出前講義やイベント参加による林業の広報などの取組みを行う中で、企業の枠を超えた若手同士の横のつながりも育まれているというお話もありました。

林業の魅力ってなんだろう?働いてみて分かる面白さ。

後半は、森の魅力発信し隊のメンバーでざっくばらんにディスカッションを行いました。その内容の一部をご紹介します!

ディスカッションの1つ目のテーマは、「林業の魅力を世に伝えるには?」
林業の担い手を確保するためには、「林業」の魅力を知ってもらい、興味を持ってもらうことが必要です。
しかし、山の中で作業する「林業」は、日常では目にする機会もなく、なかなかイメージがつきづらい仕事でもあります。
「林業」という仕事をもっと多くの人に知ってもらうために、アピールできる「林業の魅力」はどんなものがあるのか、発信し隊のメンバーで意見を出し合ってみました。

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Q1 林業の世界に入ることになったきっかけは?

林業の現場で働いている人も多いメンバーですが、そもそもどんなところに魅力を感じて林業の世界に踏み込んだのでしょうか?

なかそらち森林組合/藤田悠介さん
「東京から家庭の事情で北海道に帰ってきて、就職先を探している時に『林業』を知りました。他の仕事の内定が決まっていたけれど、体を動かすのが好きなので『林業』を選んだのがはじまり。全く林業を知らずに入ったけど、やっていくうちにどんどん好きになっていった感じです」

北の森づくり専門学院/伊藤英典さん
「元々はプログラマーとして働いていて、コロナ禍以降はほぼ在宅の生活。そんな時に体を動かす仕事がしたくて『林業』という仕事があることを知ったのがきっかけ。林業のことを全く知らなかったのでまずは勉強しようと、北森カレッジに入学しました」

自然の中で働きたい、体を動かす仕事がしたいという希望から、「林業」という業種にたどりついた、という人が多いようです。

morisemi_35.JPG中央の白い服の方が、なかそらち森林組合/藤田悠介さん。その右隣が北の森づくり専門学院/伊藤英典さん。

Q2 働いていて、林業っていい!と感じる瞬間は?

(株)イワクラ/渡邊剛さん
「間伐(かんばつ:成長に伴って混みすぎた林内の立木を一部伐採すること)する前は混みすぎて暗かった林内が、作業後にきれいに光が入るようになった林内に変わるのを見ると、とても気持ちいいし達成感があります。仕事の成果が目に見えて分かるのが林業の良さ」

宮崎木材/宮崎雄次さん
「木を伐倒する時に、自分の想定通りに倒せた時が気持ちいい。技術が身に付いているという実感がやりがいになります。仕事中にきのこや山菜を見つけられるのもうれしい」

(有)久保木材/代表取締役 久保拓哉さん
「林業は人間らしい生活ができるのが魅力。残業や休日出勤もほとんどないですからね。農業や漁業と違い、数十年という長期スパンで取り組む産業なので、収穫時期にものすごく忙しくなるということもありません」

自然の中で働く楽しさ、仕事の達成感、ゆとりのあるライフスタイルなど、「林業ならでは」の魅力がたくさん出てきました!

morisemi_45.JPG(有)久保木材/代表取締役 久保拓哉さんは経営者としての観点からもたくさんご意見いただきました。

Q3 親友から林業に興味があると相談がありました。なんて答える?

自分の大切な人に「林業」という仕事を紹介するなら...と想像して考えてもらいました。

(有)眞貝林工/西田健太さん
「ライフスタイルを伝えますね。林業は朝が早い分、夕方早く家に帰ってプライベートを充実させることができる。実際に野球をしていた友人に、『野球する時間がとれるよ』と話したことがあります」

(株)イエツネ林業/澤田虹大さん
「暑さや寒さなどの辛い部分はちゃんと伝えたうえで、仕事の達成感を伝えますね。下草刈り(苗木が育つように雑草を除去する作業)を終えてきれいになった山を見ると、すごく達成感があるので」

morisemi_55.JPG(有)眞貝林工/西田健太さん。セミナーのために、滝上町から来札して参加してくれました!

林業の魅力って、どうすれば伝わるんだろう?

2つ目のディスカッションのテーマは、「これからの担い手確保と育成を考える」。
1つ目のテーマで出し合った「林業ならでは」の魅力を踏まえて、それらをどんな風に伝えれば担い手確保につながるのか、また、確保した後にどう育成していくのかについて意見を出し合いました。

Q4 どんな採用活動をしている?効果的だった採用活動は?

(有)眞貝林工/西田健太さん
「高校訪問をしています。自分の母校を訪ねることから始めていったところ、今では高卒の採用者が増えました」

北の森づくり専門学院/角藤誠さん
「元々一般企業で採用担当をしていた経験から思うのは、『君はこれが向いてるよ!』と具体的に薦めてもらえると、その仕事に惹かれやすいように思います。単に『林業に向いている』ではなくて、『大型機械を動かすのが向いてるよ』と具体的に薦めてあげると、自分が働いているイメージがしやすい」

最近では、地域おこし協力隊として林業に関わる人も増えていて、行政の制度をうまく使いながら人材を確保・育成する形もいいのでは、という意見もありました。

morisemi_44.JPGみんな真剣に話し合っていました。

Q5 若手育成のために心がけていること、実践していることは?

日頃、部下や後輩とともに働いているメンバーばかりなので、普段心がけていることや育成方法などを意見交換。
多くの意見があったのは、「たくさん話すこと」。仕事以外にも、趣味などの話も交えながらコミュニケーションを多く取って信頼関係を築き、風通しをよくすることを皆さん心がけているそう。
この他にも上司としての立場からこのようなお話も。

(有)高野林業/高野哲臣さん
「自分の立場ではメンタルケアを心がけています。山の作業中は一人一人を見ることはできないので、年末には1対1で話す時間を設けて、1年の振り返りや来年の目標設定を一緒にするようにしています」

(有)久保木材/代表取締役 久保拓哉さん
「部下への『ありがとう』という声がけを心がけています。林内で作業する職員は、一般の人や取引先などから『ありがとう』と直接言われる機会が無い。誰かに喜んでもらえることはやりがいになります。だからこそ、上司がいいところを見つけて『よくやったね』『ありがとう』と褒めたりお礼をきちんと伝えたりして、関係性を作っていかないとと思います」

山の中で機械をつかうなど特殊な作業も多い林業では、安全面の指導も重要です。

小林木材工業(有)/齊藤琢磨さん
「やる気のある子ほど頑張っていっぱい伐ろうとして、作業が雑になってしまいがち。だからこそ、丁寧に安全に作業するよう指導しています。最初は同じ伐根(伐った木の根本)を100本つくるように、と伝えています」

育成に関しては試行錯誤な部分も多いようで、メンバーの皆さんも互いの意見に興味津々の様子。
若手を育成していくためには、給与やキャリアアップの見える化、評価の仕組みづくりも重要であり課題、という話もありました。

morisemi_82.JPG北海道庁林業木材課 成田雅哉さんも、今年度最後のセミナーに気合いが入ります!

現場で実際に働く者同士だからこそできる充実した意見交換ができた今回のセミナー。
担い手の確保と定着は林業業界全体の共通課題なので、お互いの意見が非常に参考になったという声がありました。
メンバーからは、TikTokで情報を配信したら動画の視聴数が伸びたという企業もあって、みんな驚き&興味津々。自分達のいる企業だけでは得られない情報を交換し合える場にもなったようです。

森の魅力発信し隊ではこれからも、意見や情報を交換しながら、林業の魅力を発信していける活動を続けていきたいと思います!

森の魅力発信し隊「人材育成セミナー」ダイジェスト(2023/3/4)

2023年3月4日(土)に開催されました、森の魅力発信し隊の活動の一つである「人材育成セミナー」の様子をダイジェストでお伝えいたします!

森の魅力発信し隊

過去の森の魅力発信し隊便りはこちら


vol.14「林業従事者の育成セミナーをレポート!」

この記事は2023年3月4日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。