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3兄弟の自慢のアップルパイを引っ提げ、留萌から全道、全国各地へ!20240730

3兄弟の自慢のアップルパイを引っ提げ、留萌から全道、全国各地へ!

留萌で食べたアップルパイ。外はサクッ、中はしっとりのパイ生地の中に、増毛産のりんごを使った自家製フィリングがたっぷり。りんご本来のおいしさを生かした程よい甘みと食感がクセになりそうです。こんなおいしいアップルパイを作っているのが、今回取材に伺った、焼きたてパイの店「さんなすび」。小さなお店には、地元の人たちも「おいしいよ!」と太鼓判を押すパイが並び、お客さんの足が絶えません。なんと全国からもお客さんが訪れるとか。どういう経緯でこのお店をオープンしたのか、どんな思いで菓子作りを行っているのか、そして留萌への思いなども合わせて、専務取締役の片岡広貴さんにお話を伺いしました。

母方の実家は留萌の老舗菓子店。幼少期から菓子に囲まれて育つ

rumoi_sannasubi00043.jpgこちらが、さんなすび専務取締役の片岡広貴さん

店名である「さんなすび」と聞いて、初夢のときに見ると縁起がいいと言われる「一富士、二鷹、三茄子」を思い出した方も多いはず。なぜこの名前?と気になるところですが、その理由はのちほど伺うとして、まずはお店のこと、そしてお店をオープンするまでのことを伺っていきましょう。

片岡さんは留萌生まれ、留萌育ち。3人兄弟の末っ子です。母方の実家が留萌でも歴史のある菓子店で、父親が代表を務めていたこともあり、幼いころからいつもカステラやケーキ、和菓子などのおやつが家にはあったそう。兄弟で菓子を入れる箱を組み立てたり、箱を包装したり、店の手伝いもしていたと言います。

「子どものときは漁師になりたいと思っていたこともありましたね」と話す片岡さん。留萌の高校を卒業したあと、札幌の調理師の専門学校へ進みます。「進路先を考えたとき、ちょうど料理をするのが好きだったから調理師になろうかなという感じで専門学校に通って、卒業後は札幌のレストランに就職しました」と振り返ります。

rumoi_sannasubi00082.jpg3兄弟でお店をオープン!

就職して1年ほど経ったころ、父親が引退すると連絡があり、店を手伝わないかと言われ、留萌へ戻ってきます。2人の兄もそれぞれ旭川や海外にいましたが、片岡さんより前に留萌に戻り、菓子店を手伝っていました。

「高校を出たあと、留萌に戻るつもりはまったくなかったんです。そのころはバイクが好きだったので、料理を辞めたらそっち方面の仕事をしたいという気持ちもあったし、留萌にいつか戻らなきゃという愛着も正直なかったんですよね。ただ、両親に一度戻ってきてと言われ、じゃあとりあえずと戻ってきた感じでした」

兄たちとともに菓子作りを手伝いはじめますが、調理師としての経験があるとはいえ、料理と菓子製造はまったく別もの。「料理は注文が入ったら一皿ごとに作っていきますが、店で出す菓子は大量に作るので、そのギャップが難しかったです」と話します。

3兄弟で独立を決意。厳選素材で作ったアップルパイが人気商品に!

rumoi_sannasubi00089.jpg甘すぎず、りんごの美味しさもしっかり感じるアップルパイ。何個でも食べられそう!

しばらくしてから、「兄弟3人で何か新しいことをやってみようよ」という話が浮上。「何をやる?」となった際、そのとき3人がやれることといえば、「菓子作りしかないよね」となり、まずは「とりあえず菓子店をやろうとなりました」と片岡さん。長男とは9歳、次男とは6歳離れているそうですが、昔から兄弟は仲がよかったそう。「とはいえ、誰が自分のジュースを勝手に飲んだとか、本当に些細なくだらないことでケンカとかしますけどね」と笑います。

「最初は東京に店舗を構えて、留萌で作った菓子を東京へ送って...とか、大きな夢を描いていたのですが、周りから猛反対されて(笑)。いきなり東京に出ていったところでうまくはいかないし、そもそも僕たち3人とも菓子の作り方は分かるけど、売り方は分からなかったので...」

rumoi_sannasubi00045.jpg3(人!?)のナスからなるロゴマーク

そんなこんなで、まずは留萌で店を始めることになります。物件を探し、店名を考えたとき、「フランス語で3兄弟とか考えたんですが、なんだかオシャレな感じが自分たちに合わなくて恥ずかしいよねってなって、どうしようかと考えていたとき、次男が『さんなすびでいいんじゃない?』って突然言ったんです。それで、すぐに『それいいね!』となって店名が決まりました」と片岡さん。店をオープンしたころは、「なすび」と付くがゆえに八百屋だと間違えられたこともたびたびあったそう。

そして、2017年12月にオープン。3人が得意だったカステラをメインに販売をはじめますが、サブで出していたアップルパイが評判になります。パイメニューが少しずつ増えていきますが、カステラやどら焼きなども引き続き提供。オーダーがあれば、ホールの誕生日ケーキなども対応しています。取材時も予約のケーキを受け取りに来る人たちがたくさん訪れていました。

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「さんなすび」のこだわりは、厳選した素材を使うこと。増毛産のりんご、上川産のしゅまり小豆をはじめ、北海道産のバターや卵、はちみつを用いているほか、海外のものを使用する場合も良質な素材を選んでいます。また、既製品を用いず、パイ生地もフィリングもあんこもすべて原材料から丁寧に自分たちで作っています。

物産展への出店で全国を回り、キッチンカーで全道各地を回る

アップルパイが評判を呼び、商業施設などで行われる催事や物産展への出店依頼も増え始めます。九州、四国、関東と各地から声がかかり、全国各地でパイを販売。創業時に東京へ店を出すという計画もありましたが、店を出さずとも東京の人たちに自慢の菓子を届けられるようになりました。

2019年、コロナ禍にはキッチンカーを導入。店に行きたいけれど買いに行けないという遠方のファンの方たちのために、「こちらから出向くことにしました」と片岡さん。もともと移動販売にも興味があったそうで、「ちょうどいいタイミングでした」と話します。

rumoi_sannasubi00046.jpg全道をかけまわり、パイを届けます!

全国の物産展は次男が主に担当し、片岡さんはキッチンカーを担当。社長でもある長男は留萌の店舗で製造に専念。「長男は社長として経営者の集まりなど、外に出ることも多く、次男は経理や事務を兼務。僕はPOPや販促物の制作もやっています。それぞれが自分の得意なことをやっているうちにこういう形になりました」と話します。

キッチンカーで全道各地を回ってきた片岡さん。苫小牧や帯広などは何度か行くうちにリピーターも増えたそう。さらに、それらのエリアから留萌まで、アップルパイを買いに足を運んでくれるお客さんたちも現れます。ちなみに、物産展でアップルパイを食べた大阪や東京のお客さんがキャンピングカーに乗ってわざわざ留萠まで来て、立ち寄ってくれたこともあるそうです。

このキッチンカー、片岡さんが好きなアメリカンな雰囲気で統一されています。コンベクションオーブンを設置しており、いつでも焼きたてのパイが味わえます。夏場は車内の温度が上がり、「めちゃめちゃ暑いですよ」と笑います。キッチンカー限定のパイメニュー「白玉あんこ」もあり、片岡さんいわく「イチオシです」とのこと。

rumoi_sannasubi00048.jpg内部も使い勝手良くカスタマイズされたキッチンカー

「キッチンカーは自分たちの名前を知ってもらうためのツールでもあると思って全道を回っていたので、その効果はとてもあったと実感しています。今年もいろいろ回る予定です」

地域の人に、「アップルパイと言えば、さんなすび」と言ってもらいたい

札幌から留萌に帰ってきたころは、地元に対しての思いはそれほどなかったそうですが、「留萌で商売をさせてもらって、全道各地も回って、今は地元愛が芽生えてきました。自分たちが生まれ育った留萌を大切にしたいなと感じています」と片岡さん。

rumoi_sannasubi00069.jpg地域研究をする高校生たちのインタビューにも、笑顔で答えます

留萌の道の駅などで行われる地元のイベントにもキッチンカーを出したり、自分たちでもイベントを主催したり、できることで地元に貢献したいと話します。

「1年に1回、自分たちが主催で、『名もなきマルシェ』というのを開催しています。自分があちこちキッチンカーで回っているときに、キッチンカー仲間ができたので、マルシェでは彼らを呼び、留萌の人たちにいろいろおいしいものを食べてもらいたいと考えています。また、留萌の農家や漁師の人たちが加工品や自分たちの野菜や魚を直接販売できるような機会も作りたいと思っていたので、マルシェには地元の一次産業従事者の人たちにも出てもらっていますし、ハンドメイド作家さんらにも参加してもらっています」

今年も9月に、道の駅を会場にしてこの「名もなきマルシェ」を観光協会のサポートのもと行う予定なのだそう。

また、「キッチンカーで札幌に行くと、店を始めた頃に高校生だった子が、『買いに来ました!』って顔を出してくれることがあって、そういうのもうれしいなと思います」と片岡さん。「地域の子どもたちは未来のお客さまでもあるので、うちのアップルパイを食べて育った子たちが、『アップルパイといえば、さんなすびだよね』と言ってくれるようになれたらと思います」と続けます。

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ちなみに愛犬との散歩コースにある、近所の小学校では、特に意識して笑顔であいさつを心がけているのだそう(笑)。

自分たちがもっと有名になって、留萌の町も宣伝していければ...

キッチンカーでほかの市町村も回っている片岡さんから見て、留萌という町や商店街の今の課題はどういうところにあるかを尋ねると、「発信する力と集客する力がまだ足りないのかなと思います」と話します。

「留萌の中でも、長田鮮魚店や田中青果のようにエリア外からもお客さんを呼べるような店はあるので、みんながもっとそういう風にできれば町全体も活気づくのかなと思います。そのためにも、自分たちも含め、それぞれがやっていることや事業、留萌の町の良さをアピールしていけたらと思います」

rumoi_sannasubi00079.jpg片岡さん兄弟とスタッフさんの4人でも1枚

「さんなすび」では、SNSなどを使った発信はもちろん、これからも自慢のアップルパイをたくさんの人たちに食べてもらうため、物産展に赴いたり、キッチンカーで各地を回ったりしていきたいと話します。留萌の本店をしっかり守る長男がいて、次男と三男は留萌という町の看板を引っ提げ、各地を回る...、これらが同時に行えるのは3兄弟だからこその強みです。

「物産展やキッチンカーで外に出ることで、『さんなすび』の宣伝はもちろん、留萌から来ましたと言えば、結果として留萌の宣伝にもなっていると思うんです。自分たちがもっと有名になって、ここが『さんなすび』の本店なんだよってみんなが訪ねてくれるようになりたいですね」

rumoi_sannasubi00055.jpgあなたの街に、このキッチンカーが訪れたら、是非お立ち寄りください!

ちなみに菓子以外でも、「さんなすび」の3兄弟でやってみたいことがあるそう。「小さいころから、イヌやネコを飼っていて、3人とも動物が好きなんです。いつか、動物の保護施設や、保護ネコのカフェなんかをやれたらいいなと話しています」と片岡さん。3人で力を合わせれば、その夢もあっという間に叶えてしまいそうな気がしました。

さんなすび  片岡広貴さん
さんなすび 片岡広貴さん
住所

北海道留萌市栄町3丁目1番27号

電話

0164-56-4376

URL

facebook.com/sannasubi.rumoi/

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3兄弟の自慢のアップルパイを引っ提げ、留萌から全道、全国各地へ!

この記事は2024年6月28日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。